写真で見る西武ヒストリー (後編) Ⅳ 再構築期(2004 〜 2016) プリンスホテルの「峻別と集中」 2007 変化するホテル市場のニーズを読む。インバウンド市場が示す未来 いずれにも対応できるホテル。カジュアルでありながら ブランディング戦略 満ち足りた時間を演出してくれる。 西武グループのホテル事業は、創業者の堤康次郎が始 それぞれのホテルの存在価値を高め、さらに3つのブ めた箱根や軽井沢の開発にまで遡ることができる。リ ランドを有機的に展開することで、プリンスホテルはそ ゾートホテルの運営はコクドが、シティホテルについて の可能性を最大限に広げている。 は1956(昭和31)年に西武鉄道のホテル部門が独立した (株) プリンスホテルがおこなっていた。その後、プリン インバウンド市場 スホテルはコクドの100%子会社となったが、各ホテルは 政府は年間の訪日外国人数を現在の1974万人 (2015年 運営手法において、全体を統一する戦略はなかった。 観光庁)から、2020年までに4000万人に増やす目標を立 2006(平成18) 年におこなわれたグループの再編で、プ てている。これに同調して、プリンスホテルはさらなる リンスホテルは西武ホールディングスの100%子会社と 躍進を目指している。 なり、 「峻別と集中」の経営改革をおこなった。167ヵ所 今後、増え続ける海外からの顧客が何を求めているの あった事業所は売却や廃業、営業休止などで現在93ヵ所 か、これを的確にとらえることがリピーターを増やすこ となっている。一方、 「集中」という面では、2007(平成 とにつながる。その一環として、外国人社員の採用や無 19) 年、プリンスホテルをグレードに応じた3つのカテゴ 料Wi-Fi利用可能施設の拡大などに力を入れている。 リーに分類し、ホテルの役割期待に応じてバリューアッ 訪日外国人旅行者の需要をさらに取り込むべく、さら プ投資をおこなった。 なる施策の強化にも取り組む。 『ザ・プリンス』は新生プリンスホテルのフラッグシッ 海外ホテルチェーンとの提携もインバウンド市場開拓 プとも言うべきブランドだ。地上33階。603室の客室の の布石である。 「ザ・プリンス パークタワー東京」 や芦ノ湖畔にたたずむ 2013(平成25)年に世界的ホテルチェーンのマリオッ 「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」 など現在は5施設。 ト・インターナショナル (米メリーランド州) と、2016(平 『グランドプリンスホテル』 は高付加価値で多目的な都 成28)年にはスターウッドホテル&リゾートワールドワ 市型ホテルの理想を極めたブランド。高輪や京都、広島 イド (米コネチカット州) と相次いで提携。プリンスブラ などで展開している。 ンドを世界に発信する礎を着々と築いている。 『プリンスホテル』はビジネス、リゾート、レジャーの 「ザ・プリンス」 ブランドとして2014(平成26)年 7月に開業したザ・プリンス ヴィラ軽井沢 41 Seibu Holdings 10th Anniversary Book 「グランドプリンスホテル」 ブランドの グランドプリンスホテル京都 「プリンスホテル」 ブランドの 新富良野プリンスホテル Ⅰ マリオット 西武鉄道黎明期 〉〉〉〉〉〉外資系ホテルチェーンとの提携〈〈〈〈〈〈 スターウッド Ⅱ 西武グループ 土地開発創始期 (平成25)年9月の「ザ・プリンス さくらタ ワー東 京」のリニューアルオ ープン の 際、プリンスホテルは米国メリーランド州のマリオッ ト・インターナショナルと提携。同社は全世界に18種類 のブランド、コレクションを展開する。独自性のある高 級ホテルが加盟する「オートグラフ・コレクション」に日 本で初めて加わった。 マリオットの販売網を活かして、 「ザ・プリンス」 ブラン (平成28)年1月には、米コネチカット 州・スターウッドホテル&リゾートワー ルドワイドとも提携。同社が展開する11のブランドのな かでも、 「ラグジュアリーコレクション」は最高ランク。歴 史・文化・自然などにおいて、際立った魅力を有する100 軒を超える有名ホテルが加盟している。グランドプリン スホテル赤坂跡地に展開する「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」が、このスターウッドの最高級カテゴリー 「ラグジュアリーコレクション」に加わった。 Ⅳ ドの魅力を世界に発信していく。 2016 事業拡大・刷新期 2013 2016(平成28)年1月21日のスターウッドホテルとの提携調印式 Ⅲ ザ・プリンス さくらタワー東京が加盟した「オートグラフ・コレクション」 再構築期 MICE市場でのシェア拡大 プリンスホテルは2 0 1 0(平成 2 2 )年より 「PRINCE TOKYO MICE CITY PROJECT」 を展開。さまざまなビ ジネスシーンで活躍する顧客の要望に応じてサポートする Ⅴ 試みを続けている。 成長期 MICE市場開拓の主役はシティ型に限らない。リゾート地 に展開するプリンスホテルでも各種コンベンション、国際会議 などのビジネスユースはこれまでにも定評があった。軽井沢 プリンスホテルは 2 011(平成23) 年、ビジネスユースでの長 岸田外務大臣が出席したG7広島外相会合 期滞在を提案する 「避暑地でクールにお仕事プラン」 といっ は、 「国際会議の豊富な実績 ニッポン発のMICEはプリン たユニークなサービスに着手して注目されている。 スホテル」 というリードで、グランドプリンスホテル広島で開 また、2016 (平成28) 年5月27日の日本経済新聞の広告に 催されたG7 広島外相会合の模様も掲載された。 Seibu Holdings 10th Anniversary Book 42
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