リサーチ TODAY 2017 年 2 月 16 日 訪日外客数、2017年は2,800万人を予想 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 下記の図表にあるように、2016年の訪日外国人客数は4年連続で過去最高を更新し、前年比+22%で 2,400万人を突破した。2,400万人という水準は、2015年のギリシャ(2,359万人・第15位)を上回る水準であり、 日本が2016年に世界上位15位に浮上する可能性がある。2017年も前年比+16%と堅調に推移し、客数は 2,800万人程度になるとみずほ総合研究所は予想する。この訪日ペースが続けば、2020年の訪日外客数 は、政府目標の4,000万人に到達する計算になる。当社は、日本のインバウンドの展望に関するリポートを 発表している1。また、同リポートでは2020年のホテル需給に関する試算を、最新の新規オープン計画を基 に更新した。その結果、東京ではホテル不足数が大幅に緩和されるが、大阪では依然として大幅に不足す るとの結果となった。 2016年は円高の影響もあり、訪日外客の伸びが鈍化すると懸念されていたものの、実際には堅調に推 移した。その要因として、LCCなどの航空路線数やクルーズ船寄港数の増加がある。また、中国を中心に 訪日観光のリピーターが着実に増加していることも下支えになっている。 ■図表:訪日外客数推移 3,000 (万人) (前年比、%) 前年比(右目盛) 60 50 2,500 40 30 2,000 20 1,500 10 0 1,000 -10 -20 500 -30 0 2005 2007 2009 2011 2013 2015 -40 2017 (年) (注)2017 年は予測値。 (資料)JNTO より、みずほ総合研究所作成 一方で、2016年のインバウンド消費額は、一人当たり支出が伸び悩んだことで一桁台の伸びにとどまり、 3.7兆円となった。2017年は訪日外客数が堅調に推移することで4.4兆円程度に増加すると予測している。 1 リサーチTODAY 2017 年 2 月 16 日 一人当たりの支出が下げ止まると見込まれることに加え、2016年同様に、2017年も訪日外客数の増加が全 体の伸びをけん引すると展望される。また、2016年に比べ円安の効果が追い風になると見込まれる。中国 人の爆買いは一巡し、一人当たりの買物代は若干の増加にとどまると見込まれるが、サービス支出につい ては、日本文化体験など「コト消費」への関心から、増加が期待される。 ■図表:インバウンド消費額推移 (兆円) 5.0 インバウンド消費額 (万円/人) 一人当たり支出額(右目盛) 18 4.5 17 4.0 16 3.5 3.0 15 2.5 14 2.0 13 1.5 12 1.0 11 0.5 0.0 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 10 2017 (年) (注)2017 年は予測値。 (資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」よりみずほ総合研究所作成 加えて当社では、昨年8月に引き続き、今回改めて2020年の客室需給バランスを9つのシナリオを想定 して試算した。その結果、最も標準的な想定の下での試算では、東京のホテル不足は新規オープン計画 の急増によりほぼ解消すると展望される。ただし、大阪については、前回の試算と比べてホテルの新規オ ープンは増えると見込まれるものの、いずれの想定でもホテルの客室数は不足するとの結果となった。今 次試算により、ホテル客室数の不足感が緩和されたとはいえ、いずれの想定でも客室数不足が発生する 状況に変わりない。特に大阪でのホテルへの超過需要を勘案すれば、民泊の潜在力が大きいだけに、今 後の民泊の活用は日本の観光産業にとって重要な課題であろう。 1 宮嶋貴之 「インバウンドの展望と中期的なホテル不足の試算」 (みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2017 年 1 月 20 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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