この症例の新しい意義は? 日常臨床から学ぶ 好酸球性肺炎の像を呈し 全身播種に至った肺接合菌症の1例 A case of disseminated Zygomycosis presenting as eosinophilic pneumonia during its course 山田 充啓 ・平野 泰三 ・佐藤 慶 ・高橋 秀徳 ・村上 康司 ・玉井ときわ *3 *1 Mitsuhiro Yamada Taizo Hirano *1 Kei Sato *1 *2 *2 Hidenori Takahashi Yasushi Murakami Tokiwa Tamai 玉田 勉 ・杉浦 久敏 ・佐藤 直実 ・齋藤 涼子 ・一ノ瀬正和 *4 Tsutomu Tamada *5 *7 Hisatoshi Sugiura Naomi Sato *8 Ryoko Saito *6 Masakazu Ichinose 東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座呼吸器内科学分野*1・助教*2・院内講師*3・講師*4・准教授*5・教授*6 東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座病理診断学分野*7・助教*8 :肺接合菌症,深在性真菌症,好酸球性肺炎,Cunninghamella bertholletiae はじめに 脈瘤破裂術後に発症した,好酸球性肺 された。腱板断裂の手術は断念し,呼 肺接合菌症は接合菌門の Mucor 目に 炎の像を呈し全身播種に至った肺接合 吸器疾患についても通院を自己中断し 属する真菌による肺感染症である 。 菌症の剖検症例を経験したので報告す ていた。201X 年9月下旬に腹部大動脈 本感染症は,血液悪性腫瘍の化学療法 る。 瘤破裂のため,当院に緊急搬送され, 1) Y graft 置換術を施行された。手術は成 などで発生する好中球減少症の患者や 造血幹細胞移植後患者,さらに免疫抑 1.症例 功したものの,第10病日より発熱,安 制剤を投与されている患者に主に発症 症例:74歳,男性 静時呼吸困難および喘鳴を認めるよう すると報告されている 。症状は発熱, 主訴:発熱,咳嗽,喘鳴,安静時呼吸 になった。第15病日に胸部 CT を施行, 咳,呼吸困難,胸痛など非特異的な症 困難 入院時より認めた左上葉の浸潤影の悪 状で発症することが多いが,本病原体 既往歴:虫垂炎術後,ヘルニア術後 化を認めた。喀痰培養にてメチシリン は血管侵襲性が強く肺組織の壊死を起 併存症:気管支喘息,慢性閉塞性肺疾 耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)を認め, こし,空洞形成さらには致命的な喀血 患 院内肺炎と考え,術後より使用されて を起こすこともある。診断が遅れ,病 家族歴:特記すべきことなし いたフロモキセフからメロぺネム・テ 状が進行すると対側肺や全身臓器への 喫煙歴:20~60歳 20本/日 (40箱・年) イコプラニンに抗菌薬が変更された。 血行性播種が惹起され予後不良とな 生活歴:入院直前まで ADL 自立 しかし,症状の改善を認めず,第25病 る。真菌症は侵襲性真菌症,非侵襲性 職業歴:稲作農家,粉塵曝露歴なし 日に呼吸器内科転科・転棟となった 真菌症,菌体に対するアレルギー反応 現病歴:201X-1年2月に近医より腱板 など様々な病態を呈することが知られ 断裂のため X 総合病院整形外科に紹 ているが,侵襲性真菌症とアレルギー 介,術前の肺機能検査により閉塞性障 2.転科時現症 反応の同時発症例はこれまで報告が限 害を認め,同院呼吸器内科を紹介受診。 身 長 150.0cm, 体 重 47.6kg, 体 温 られている。今回われわれは腹部大動 気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患と診断 1) 2( 338 ) THE LUNG perspectives Vol.24 No.4 SAMPLE (図1:転科までの経過)。 37.5℃,血圧 114/82mmHg,脈拍 68/分・ Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd.
© Copyright 2024 ExpyDoc