もったいない学会&縮小社会研究会 関西シンポジウム 2017.2.11 なぜ成長がダメで、縮小が必要か 松久 寛 一般社団法人 縮小社会研究会 代表理事 成長には、量と質がある 子どもの成長: 量と質 大人の成長: 質 経済の成長: 量 社会の成長: 量と質 量の成長とは、より多くの物を 生産することであり、資源と廃 棄物処理が必要。過度になる と、過去の遺産を食いつぶし、 未来へつけをまわす。 成長: 幾何級数、指数関数 100 90 80 2% 5% 8% 70 倍率 60 50 40 30 20 成長率 2% 5% 8% 2倍になる年 35年 15年 9年 50年後 2.7倍 11倍 47倍 100年後 7.2倍 132倍 2200倍 35年後 28年後 100年分の 54年後 資源が枯渇 10 0 0 20 40 60 80 100 年 指数関数による成長 経済成長は生産の増大を意味し、資源、エネルギー消費が増大する。 指数関数的成長はネズミ算、高利貸しと同じで、修羅場を経て滅亡へ。 私は(1947年生)、歴史上もっとも 幸運な世代 1.飢えなし(飽食) 2.戦争なし(兵役もなし) 3.身分制なし 4.成長の時代 次の世代は? 次の世代は? 給料:厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、 日本国民の平均世帯年収は1994年の664.2万円を ピークに減少を続け、2011年は548.2万円。 非正規雇用:37.4%(2014年) 生活保護受給者:215.9万人(2014年年4月) 日本の未来? 赤字国債、高齢化、人口減、政治、経済、 技術立国、戦争・・・、問題山積 食料、エネルギー 5 生存の基本 =食料 食料の生産に必要 なエネルギー 6 食料自給率 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E6%96%99%E8%87%AA%E7%B5%A6%E7%8E%87 オース フラン イギリ アメリカ ドイツ イタリア スイス トラリア ス ス 国名 カナダ 生産額ベース (2009年) 121% 128% 83% 92% 70% 58% 80% 70% 70% 258% 205% 129% 127% 92% 72% 61% 57% 39% カロリーベース (2011年) 日本 最重要:食料 日本の自給率39%、石油に依存 農地面積/人 (ha/人): 日:0.036, 米:1.27, 独:0.21, 仏:0.46, 英:0.28, 中:0.082 人口 (百万人): 日:127, 米:318, 独:82, 仏:63, 英:62, 中:1350 農林省:http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/pdf/area.pdf 原始時代は、一人一日、必要熱量2000kcalであった。 現在24万kcal使用。これは2000kcalの120倍。この大半は化石燃 料。 日本人は10万kcal: 50倍 http://www.ecobeing.net/people/peo0403/kakawari_chart_l.html 化石燃料等の埋蔵量・消費量・可採年数(単位:石油換算億トン) 石油 天然ガス 石炭 ウラン 合計 A:埋蔵量 B:年間消費量 A/B:可採年数 2,337*1 3,753*4 1,662*1 4,603*5 4,277*2 38.8*3 60年 97年 63年 174年 130年 479*1 8,755 13,112 26.5*3 32.8*3 6.1*3 104.2 78年 84年(2%成長:49年) 126年(2%成長:63年) 出所:*1 「世界国勢図会2011/12」(矢野恒太記念会) 、*2 「図表で語るエネルギーの基礎2009-2010」(電気事業連合会) 、*3 「原子力・エネルギー」図面集2011、*4 オイルサンド、シェールオイルなど非在来型を加算(石油工業連盟、2007年)、*5 シェールガス等の埋蔵量の1/2を加算(BP2012年) 青字はシェールガス、オイルを加算。 石炭は大量にあるように見えるが、石油、天然ガスがなくなれば、その分、石炭の 使用量が増加し、すぐになくなる。結局、全エネルギーで計算すると、84年(126 年)で枯渇する。成長を加味すると、わずか2%でも、49年(63年)で枯渇する。 1972年 ローマクラブ 「人類の危機」レポート:「成長の限界」 幾何級数的成長と資源 と環境の制約により、人 口は2050年にピーク 「成長の限界」、ダイアモンド社、 図35 世界モデルの標準計算 日本の人口の縮小予測 「国土の長期展望」 中間とりまとめ概要 平成23年2月21日 国土審議会政策部会長期展望委員会 イースター島の滅亡 燃料(木)がなくなれば、文明は滅亡する。 滅亡の過程は弱肉強食の修羅場である。 • • • http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A 2%E3%82%A2%E3%82%A4 南太平洋に位置するイースター島はモアイとよばれる大石 像で有名である。最大のモアイは20mを超え、270トンにもな る。モアイは、887体も彫られ、半数は台座に設置されたが、 社会の崩壊過程での氏族間の戦いで、すべて倒された。で はなぜ、そのようなモアイを作れる社会が、崩壊したのであ ろうか。「文明崩壊(ジャレド・ダイアモンド著、草思社)によれ ば、木材の伐採が原因である。 1000年から1400年あたりには、推定6000-30,000人が11 ないし12の氏族にわかれて住んでおり、それぞれが大きな モアイを作るのを競っていた。彼らは、イモ、バナナ、サトウ キビを栽培し、ニワトリを飼育し、イルカを捕獲して生活して いた。当時は、モアイの運搬道具になる高さが20mにもなる 巨大なヤシや、カヌーの材料になる高さが15-30mになる木 などが生えていた。その木は住居、煮炊きから火葬にも利用 された。 しかし、1400年ごろから、森林破壊が始まり、木材がなくな り、草や芝がなくなり、土壌侵食が起こり、ついに食糧がとだ えた。その過程で、氏族間の食糧の奪い合いの戦いとなり、 モアイ像も倒された.人口は十分の一になった。さらに、 1800年代にはペルーによる奴隷狩りと天然痘の持ち込みで 1864年には島民は111名になった。 ティコピア島 • サンタクルーズ諸島、面積5km2 • 紀元前900年頃に人間が到着。定住が始まって700年後あたり に、島民は鳥類、軟体動物、魚類の減少を埋め合わせるため にブタの生産を増やした。 定住が始まって1000年から2000年の間に、ティコピア島民は 独自の農法を採用し始めた。堆積層から発見された植物の残 渣から、果樹栽培が導入されたことが判明し、また、木炭の微 粒子の量が減っていることから焼畑農業を止めたことが推察さ れた。16世紀の終わり頃には、大切な農園に害をなすという理 由で、島の首長らは島からブタを一掃している。 現在は海沿いの20ほどの村々におよそ1200人が住む。 食料生産の持続と人口ゼロ成長 焼畑、ブタはやめ、重層的な原始の熱帯林を模した立体的 な食料生産樹木園 首長は毎年の儀式で人口ゼロ成長を説く 避妊、中絶、堕胎、新生児間引き、独身、自殺を奨励 • • • • • • • 残存可採年数 300 可採年数 250 200 150 100 50 0 0 10 0 20 30 -1% 40 50 年 -2% 60 -3% 70 80 +2% 90 100 南北問題 世界で年1%のエネルギー縮小モデル 先進国人口12億人(日本、アメリカ合衆国、カナダ、ヨーロッパ、オーストラ リア、ニュージーランド)、途上国人口58億人。先進国と途上国の一人当たり 格差を10倍とした。先進国のエネルギー-4%/年。先進国人口-1%/年、途 上国人口、+1、0、-1%/年 100 世界 全E エネルギー(全エネルギーを100とする)と人口(億人) 90 先 全E 80 先 E/人 (x10億) 70 後 全E 60 後 E/人-1% (x10 億) 後 E/人0% (x10 億) 後 E/人+1% (x10 億) 先 人口 -1% 50 40 30 20 後 人口0% 10 後 人口-1% 0 後 人口+1% 0 5 10 15 20 25 年 30 35 40 45 50 家電の省エネ • • • • • • ビデオ: 73.6% (1997-2003) エアコン: 67.8% (1997-2004) 冷蔵庫: 55.2% (1998-2004) 照明: 35.7% (1997-2005) コピー機: 72.5% (1997-2006) 温熱便座: 14.6% (2000-2006) ハイブリッドカー? ライフサイクルコスト? 家電の省エネトコトンやさしい省エネの本、山川文子、日刊工業新聞 社、原典:省エネ性能カタログ2010冬版、(資源エネルギー庁) 非枯渇性(再生可能)エネルギー 1GWの発電に必要な各種発電装置の数と費用 装置 一台の容量 住宅太陽光 4kW メガソーラー 1MW 小水力 (1MW以下) 0.5MW 必要数 費用 (兆円) 稼働 年数 210万 4.2 20 8300 4.2 20 2600 1.4 40 稼設備利用率70%、100万円/kW 2011年:495地点209MW、 包蔵水力3GW 風力 2MW 地熱 15MW 2000 1.2 20 67 1.0 40 設備利用率25%、30万円/kW 2014年2000基 設備利用率70%、100万円/kW 現:29地点、515MW 包蔵力14GW (53度以上の利用) 火力 1GW 原子力 1.3GW 1.1 0.1 40 1.1 ? 40 備考(稼働率、コスト、など) 設備利用率12%、50万円/kW 日本の総住宅数5759万戸 稼設備利用率12%、50万円/kW 設備利用率90% 要燃料費 設備利用率70% 非枯渇性エネルギー 電力の50%を非枯渇性エネルギーにしても、全 エネルギーの20% 電力は一次エネルギーの40% (二次エネルギーの23%) 木材 江戸時代は3000万人, 3000kcal/人・日、 現在の全エネルギー: 10万kcal/人・日 消費量の縮小が必然 エネルギー:年2%の縮小 (一人一日: 2000kcal = 石油0.2リットル) • • • • • • • • 太陽熱温水器(20度x200L ): 4,000kcal 太陽光発電(3.5kW, 3500kWh/year) : 8200kcal/day 木材: 3,000kcal/kg 車使用:1000kcal/1km 水道水:3kcal/L、一人(400L/day)で1,200kcal/day エアコン(1kw:860cal/hour ): 860kcal/hour 車 製造(14,420,000kcal, 10年寿命を20年使用):2,000kcl/day 住宅(100平米38,840,000,50年寿命を100年使用): 1,000kcal/day • テレビ(21型):380,000kcal, ・ジャケット:70,000kcal 2%の縮小は可能である。 成長の原動力は作られたもの 電通PRの「戦略十訓」(1970年代) ・もっと使わせろ ・組み合わせで買わせろ ・捨てさせろ ・きっかけを投じろ ・無駄使いさせろ ・流行遅れにさせろ ・季節を忘れさせろ ・気安く買わせろ ・贈り物をさせろ ・混乱をつくり出せ 元のアイデアはヴァンス・パッカード著『浪費をつくり出す人々』(1960年) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E9%80%9A 現在: 使い捨て、オール電化、大量生産・大量 消費、24時間営業、高速、グローバリズム、・・・ 縮小社会の実現はまず意識改革から 縮小の戦略10訓 23 縮小社会が目指すもの =今日&明日&みんなの幸せ ・GDPは世界3位、個人GDPは25位, ・地球幸福度指数は75位(2009年) 生活満足度・寿命・環境負荷 ・OECDの「より良い暮らし指標(幸福度指数)」21位/3 6か国 (2012年) 住宅、収入、雇用、共同体、教育、環境、ガバナンス、医 療、生活満足度、安全、仕事と生活の両立 価値観の転換 楽しく縮小 幸せな社会 縮小社会像 • • • • 生産効率の低下→物を大事に、手仕事の増加 運輸の減少→地産地消 大都市の縮小→地方へ 核家族→大家族へ(子ども、老人ケアー) • 教育の無料化、大学の減員、専門学校、生涯 教育 • 医療の無料化、簡素化 • 元気な人は働く、延命治療はしない 縮小社会での政策 • 30年後まで責任 • 成長束縛からの解放 • もったいない、 倹約、 丈夫で長持ち、 省エネ、 エ コ、 リサイクル、 リユース、 バスに乗ろう、 無駄使 いは止めよう、 地産地消や里山保護の運動、 等々 • ベーシックインカム、 ワークシェア、炭素税、 金融取 引や利子利益の制限、 汚染物の廃棄規制、 海洋資 源の捕獲制限や森林保護協定、 法定準備率の増 加、 減価貨幣、 地域通貨、 国際貿易の制限、 各 種の雇用者保護、 公共交通の振興、 ベーシックインカム 全員に最低生活費を支給 2013年10月800万枚のコイン Enno Schmidt http://on.rt.com/kj8vvc (平智之講演より) 世界のベーシックインカムの状況 • 70年代にカナダのマニトバ州のドーフィンという町で4~5年間ミンカム (Mincome)実験、貧困家庭に年1200ドル • ブラジルでは通称市民ベーシックインカム法、ボウサ・ファミリア、所得制 限付きの児童手当数千円、4,600万人 • アラスカ州では天然資源から得られる政府収入分を運用して全州民に年 2000ドル程度の現金給付 • スイスでベーシックインカム導入の是非を問う国民投票が行われ,否決 (2016年6月)、毎月2500スイスフラン(約30万円) • 2016年8月25日、フィンランド政府は「ベーシックインカム」実験についての 法案を提出。この法案では、現在失業手当を受け取っている人のなかか ら無作為に2000人~3000人を選び出し、毎月560ユーロ(約6万4000円)を 支給。 • オランダのユトレヒトも導入実験を計画 • カナダが2013年の国勢調査でベーシックインカムに賛成する人が反対す る人を上回る。 BIへの反論: 財源がない 働かなくなる、金持ちに不要 日本での試案 • 一人月6万円、家族5人で30万円、基本的な生 活費は確保。(90兆円、GDPは500兆円) 財源 (6万円/人・月、計90兆円) 世帯配布ではなく個人配布 • GDP500兆円、税収54兆円、歳出96兆円:社会保障31兆円 (年金11兆円(10兆円) 、医療9兆円、福祉11兆円)、教育5 兆円、公共6兆円、防衛5兆円(5兆円)、国債23兆円、地方 交付税16兆円、その他10兆円。 • 国民年金21兆円(5兆円)、厚生共済年金32兆円(10兆 円)、受給者4000万人(BI=29兆円) • 医療費35兆円(4割が個人負担) • 国の事務経費減5兆円、企業の経費と手当減10兆円 • 扶養、寄付など各種税金控除を廃止による税金増10兆円 • 地方税39兆円(5兆円) • 増税(所得、相続、法人、消費)(30兆円) 一律給付?: 義務教育、道路、公園、救急車、消防車な どは受益者負担ではない。空気は無料。選挙権 受給の有無によるコンプレックスや優越感をなくす。現在 の生活保護は資格者の1/5しか受給していない。生活保 護ではなく、生存権の保障である。 働かない?:人は働くことによって社会の一員となり、存在 価値を生じる。収入に関係なく働く。 労働体系の変化: ・賃金:人気のない仕事は高賃金 ・正規、非正規はなくなる。年功序列、終身雇用はなくなる ・賃労働時間の短縮、社会活動の増加 行政の簡素化: 生活保護、税金の控除 企業事務の簡素化と手当ての廃止: 扶養手当、税金控 除、健保を廃止。(医療の無料化) 人権、差別 ・収入の多寡による人権無視、差別構造の解消 子供、主婦 生活保護受給者 職種による差別 労働、キャリアデザイン • 賃労働時間の短縮 生産量の縮小 ロボット、IT ? • 職業選択幅の拡大、転職が容易 • 勉学の機会増大(生涯教育) • 一流大学、一流企業を目指した受験勉強か らの解放。初等、中等教育の変質 産業 • 労働形態の変化 • 大量生産→丈夫、修理可能な製品 生産量の縮小 • 企業間競争 • 労働者の企業からの独立 エネルギーコストの上昇 → 労働力の増加 地方の活性化 • • • • 家族5名で30万円 地方でも、生活できる 農業の復活、自産自消、地産地消 第1次、第2次産業の成長 (貿易の減少) • 大都市集中から地方分散へ 家族像 • 大家族、グループホーム • 子ども、老人も役割分担 • 全員に収入があるので、家族内での上下関 係は薄まる。 • 育児、介護の個人への集中の回避と費用(個 人、国)の軽減 生活 • • • • • • 労働(地元、1,2次産業の増加) 自産自消 地方分散 地域共同体の復活 楽しみ:人とのつながり 大家族、グループホーム 医療費の無料化 • 40兆円 • 75歳以上が医療費全体の36%を占める(1人当 たり平均で93万円、なお、75歳未満は21万)。 • 終末医療、無駄な医療 • 高額医療 オプジーボ 教育 (無料) • 教育目的が変化 一流大学、一流企業を目指した受験勉強からの解放。初等、中 等教育の変質 • 大学生(280万人)の2/3は勉強をしていない。→ 大学の削減 • BIと無料化でアルバイトが不要になる。 • 学歴と収入の分離 • 専門教育 • 生涯教育 • 塾など不要 軍の放棄 • 憲法を順守。 • 軍は王や体制を守るが、国民を守らない。コ スタリカ。 • 戦争を仕掛ける。軍備拡張など自己増殖。 • 隣国とは話し合い。 • 自衛隊の防災業務は消防に。 ご静聴ありがとうございました。 一般社団法人 縮小社会研究会 http://vibration.jp/shrink/
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