2017/2/13 東京都新宿区本塩町 22-8 TEL: 03-5919-9341(直通) URL:http://www.tdb.co.jp/ 特別企画:国内菓子メーカーの経営実態調査 菓子市場、インバウンドで売り上げ増加 ~新幹線効果で北陸・九州の増収目立つ~ はじめに 14 日に控えたバレンタインデー目前に、小売業界では賑わいを見せている。今年は、バレンタ インデーが 3 年ぶりの平日となることから、下火になりつつあった友達や上司、同僚への「義理 チョコ」需要の増加が見込まれる。大手百貨店では、日本未上陸ブランドを含めた世界中の有名 チョコレートブランドを特設会場に集め、女性自身が自分用に購入する「自分チョコ」需要や高 級チョコレートの販売拡大を狙っている。 帝国データバンクは、2017 年 1 月末時点の企業概要データベース「COSMOS2」(146 万 社収録)の中から、2015 年度(2015 年 4 月~2016 年 3 月期)決算の年売上高が判明した国内菓 子メーカー522 社(年売上高 10 億円以上、一部推計値を含む)を抽出し、売上高総額の推移、損 益状況、地域・業歴別について分析した。 ※国内菓子メーカー522 社のうち、2014 年度~2015 年度の年売上高が判明し比較対象としたのは 515 社。2014 年度および 2015 年度決算の当期純損益が判明し比較対象としたのは 428 社。 同様の調査は 2015 年 2 月に続き 5 回目。 調査結果(要旨) 1.年売上高総額をみると、2015 年度は 4 兆 876 億 1400 万円となり、2014 年度(3 兆 9005 億 1100 万円)比で 1871 億 300 万円の増加(4.8%増)となった。 2.2015 年度は「黒字」企業が 85.3%(365 社)となり、全体の 8 割超を占めた。一方「赤 字」企業は 14.7%(63 社)で、原材料価格の上昇、コンビニスイーツとの競合激化などが影 響した。 3.2015 年度決算で増収企業の割合を地域別でみると、トップは「北陸」 (23 社、構成比 71.9%) となり、北陸新幹線開業や外国人観光客増加の恩恵を受けた。 4.業歴別でみると、「50~100 年未満」が 245 社(構成比 46.9%)で最多となった。 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 1 2017/2/13 特別企画:国内菓子メーカーの経営実態調査 1.売上状況 ~インバウンド効果で前年度比 1871 億 300 万円増加 国内菓子メーカー522 社のうち、2014 年 売上高総額 (百万円) 度および 2015 年度決算の年売上高が判明し 前年度比 (%) た 515 社を対象に各年度の年売上高総額を 2013年度 3,798,073 みると、2015 年度は 4 兆 876 億 1400 万円 2014年度 3,900,511 2.7 2015年度 4,087,614 4.8 となり、2014 年度(3 兆 9005 億 1100 万円)比で - 2015年度の売上状況 1871 億 300 万円の増加(4.8%増)となった。 また、2014 年度、2015 年度決算の年売上高が判 明した 515 社の動向を比較すると、2015 年度に「増 収」となった企業は 321 社(構成比 62.3%)となり、 減収・横ばい 37.7% (194社) 増収 62.3% (321社) 増収企業の割合が 6 割超を占めている。ここ数年で インバウンド特需があり、国内の空港や免税店、ス ーパーマーケットなどで菓子類の販売が拡大したこ とも、各社の売り上げを押し上げる要因となった。 ※ 集計対象は、2014年度及び2015年度の 売上高が判明した515社 2. 損益状況 ~黒字企業が 85.3%、増益企業が増加傾向に 2014 年度および 2015 年度決算の損益状況をみると、2015 年度は「黒字」企業が 85.3%(365 社)となり、全体の 8 割超を占めた。そのうち、 「2 期連続黒字」となった企業は 320 社(構成比 74.8%)となった。 一方、「赤字」企業は 14.7%(63 社)となっており、前年度比 2.1 ポイント減少。 「2 期連続赤 字」は 27 社(構成比 6.3%)であった。 赤字企業には、過去の設備投資や不採算店舗のスクラップアンドビルドで赤字計上を余儀なく される老舗菓子メーカーが散見された。近時は、消費税率の引き上げに加えて、原材料価格の上 昇による価格改定により、割高感を感じた消費者の買い控えの影響を受けた企業も含まれる。ま た、ここ数年で進化を遂げるコンビニスイーツとの競合が厳しさを増しており、影響を受ける菓 子メーカーが増えつつある。 損益比較 2014年度 社数 黒字 赤字 合計 構成比 (%) 356 83.2 72 16.8 428 100.0 2015年度 社数 構成比 (%) 365 85.3 63 14.7 428 100.0 ※各年度において、当期純損益額が判明している428社を集計 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 2 2017/2/13 特別企画:国内菓子メーカーの経営実態調査 3. 地域別 ~増収企業の割合、北陸がトップ 地域別でみると、「関東」が 163 社(構成比 31.2%)で最 地域別 多となった。次いで、 「中部」 (101 社、同 19.3%)、 「近畿」 (100 社、同 19.2%)と続いた。 社数 北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州 合計 522 社のうち、2014 年度および 2015 年度の年売上高が判 明した 515 社を地域別にみると、増収企業の割合が最も高か ったのは「北陸」(23 社、構成比 71.9%)で、北陸新幹線開 業に伴う観光客数の増加が土産用銘菓などの売り上げに寄与 した。次いで「九州」(30 社、同 68.2%)は、九州新幹線効 果や、訪日観光客増加によるインバウンドの恩恵を受けた企 業が多くみられた。 27 25 163 32 101 100 15 14 45 522 2015年度の地域別増収・減収比較 地域別 増収 北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州 合計 14 16 96 23 59 65 9 9 30 321 構成比 (%) 51.9 64.0 60.0 71.9 59.6 65.7 60.0 64.3 68.2 62.3 (社) 減収 8 7 46 4 31 28 6 5 13 148 構成比 (%) 29.6 28.0 28.8 12.5 31.3 28.3 40.0 35.7 29.5 28.7 横ばい 5 2 18 5 9 6 0 0 1 46 【参考】2015年度の地域別損益比較 地域別 北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州 合計 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 黒字 22 15 105 21 74 76 11 8 34 366 構成比 (%) 5.2 4.8 31.2 6.1 19.3 19.2 2.9 2.7 8.6 100.0 構成比 (%) 88.0 65.2 81.4 91.3 89.2 93.8 84.6 72.7 85.0 85.5 構成比 (%) 18.5 8.0 11.3 15.6 9.1 6.1 0.0 0.0 2.3 8.9 合計 27 25 160 32 99 99 15 14 44 515 (社) 赤字 3 8 24 2 9 5 2 3 6 62 構成比 (%) 12.0 34.8 18.6 8.7 10.8 6.2 15.4 27.3 15.0 14.5 合計 25 23 129 23 83 81 13 11 40 428 3 2017/2/13 特別企画:国内菓子メーカーの経営実態調査 4. 業歴別 ~業歴 50~100 年が最多、業歴 50 年以上の老舗企業が 6 割占める 業歴別でみると「50~100 年未満」が 245 社(構 成比 46.9%)で最多となり、次いで「30~50 年未満」 が 106 社(同 20.3%)となった。業歴 50 年以上が 全体の 63.4%を占めていることから、全業種のなか でも相対的に老舗企業が多い特徴がある。 522 社のうち、2014 年度および 2015 年度決算の 年売上高が判明した 515 社を業歴別でみると、 「100 業歴別 10年未満 10~30年未満 30~50年未満 50~100年未満 100年以上 合計 社数 18 67 106 245 86 522 構成比 (%) 3.4 12.8 20.3 46.9 16.5 100.0 年以上」の長寿企業 86 社のうち、半数以上の企業が増収となった。しかし、全体で比較すると「100 年以上」は増収比率が最も低かった。 業歴別業績比較 業歴別 10年未満 10~30年未満 30~50年未満 50~100年未満 100年以上 合計 ©TEIKOKU DATABANK,LTD (社) 増収 9 35 71 161 45 321 構成比 (%) 64.3 53.0 67.0 66.3 52.3 62.3 減収 3 21 26 65 33 148 構成比 横ばい 構成比 (%) (%) 21.4 2 14.3 31.8 10 15.2 24.5 9 8.5 26.7 17 7.0 38.4 8 9.3 28.7 46 8.9 合計 14 66 106 243 86 515 4 2017/2/13 特別企画:国内菓子メーカーの経営実態調査 【地域別売上高上位3社】 TDB 企業コード 北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州 商号 所在地 2015年度 売上高 (百万円) 主なブランド・製品 030003362 六花亭製菓(株) 北海道 14,200 010013693 石屋製菓(株) 北海道 9,777 マルセイバターサンド、ストロベリーチョコ 白い恋人 090100751 (株)ケイシイシイ 北海道 9,112 LeTAO(ルタオ)、ドゥーブルフロマージュ 160003151 (株)でん六 山形県 21,204 でん六豆 100424188 (株)菓匠三全 宮城県 8,000 萩の月 190316568 (株)三万石 福島県 4,708 ままどおる、エキソンパイ 985814507 (株)明治 東京都 744,845 ミルクチョコレート、カール、キシリッシュ 600009030 カルビー(株) 東京都 183,220 ポテトチップス、じゃがりこ、かっぱえびせん 985821600 森永製菓(株) 東京都 159,403 森永ビスケット、チョコボール、ハイチュウ 360003441 (株)ブルボン 新潟県 106,792 ルマンド、エリーゼ、アルフォート 340100241 亀田製菓(株) 新潟県 75,293 亀田の柿の種、ぽたぽた焼、ハッピーターン 340342073 (株)三幸 新潟県 48,719 雪の宿、ぱりんこ、チーズアーモンド 968364052 (株)シャトレーゼ 山梨県 46,453 シャトレーゼ 671001004 井村屋(株) 三重県 31,600 あずきバー、水ようかん 395012284 (株)おやつカンパニー 三重県 18,800 ベビースター、フランスパン工房 580020051 江崎グリコ(株) 大阪府 209,778 ポッキー、ビスコ、プリッツ 580023456 日世(株) 大阪府 33,733 日世ソフトクリームミックス、コーンカップ 530104331 (株)ユーハイム 兵庫県 31,000 ユーハイム、バウムクーヘン 610011819 カバヤ食品(株) 岡山県 28,138 カバヤ、ゴールドチョコレート、ジューC 600090372 (株)やまひろ 広島県 18,160 アイスクリーム 690181381 壽製菓(株) 鳥取県 8,377 とち餅、因幡の白うさぎ 740096604 (株)あわしま堂 愛媛県 12,539 どらやき、カステラ 740161462 サンタ(株) 愛媛県 5,200 アイスクリーム 740086582 ルナ物産(株) 愛媛県 4,543 OEM商品(チルドデザートなど) 810159303 (株)森田あられ 福岡県 10,328 餅のおまつり 820019342 丸永製菓(株) 福岡県 8,627 あいすまんじゅう 800389300 (株)セリア・ロイル 福岡県 7,120 ロイヤルアイスクリーム ※1 一部推計値を含む ※2 (株)おやつカンパニーは2014年8月1日に(株)OCホールディングスに吸収合併され、同社は商号を(株)おやつカンパニーに変更し事業を引き継いでいる ©TEIKOKU DATABANK,LTD 5 2017/2/13 特別企画:国内菓子メーカーの経営実態調査 5.まとめ 国内菓子メーカー522 社のうち、2014 年度および 2015 年度決算の年売上高が判明した 515 社 を対象に各年度の年売上高総額をみると、2015 年度は 4 兆 876 億 1400 万円となり、2014 年度 (3 兆 9005 億 1100 万円)比で 1871 億 300 万円増加(4.8%増)となった。 また、2014 年度、2015 年度決算の年売上高が判明した 515 社の動向を比較すると、2015 年度 に「増収」となった企業は 321 件(構成比 62.3%)となり、業績好調な菓子メーカーが見受けら れた。 2015 年度は、外国人観光客増加によるインバウンド特需で、土産物の銘菓や大手菓子メーカー の菓子類の販売が好調に推移した影響が大きい。大手菓子メーカーを中心に、空港や免税店での 販売が総売上の増加に直結した企業が目立った。地域別で増収企業の割合が最も高かったのは「北 陸」(23 社、構成比 71.9%)となり、北陸新幹線の開通で国内外からの観光客が訪れたことが売 り上げに寄与していることが伺える。また、菓子メーカーのなかでアイスクリームなどの冷菓を 主力に展開している企業は、夏の天候の変動で売れ行きが左右されやすい。2015 年を振り返ると、 東日本は猛暑となったものの、西日本は冷夏となっており、年ごとに販売地域の天候によって販 売量が変化しやすい傾向がある。 2015 年度は、増収企業の割合が 6 割強を占めていたが、原材料価格の高騰で価格改定を余儀な くされたメーカーも多く、一時的に売り上げがダウンした企業もあった。大手企業のOEMを手 がけている企業は大口取引先への依存度が高く、高額な機械などの設備投資に加え、円安や原材 料価格の上昇分を価格転嫁できず、赤字を余儀なくされる企業もある。 今後は、インバウンド特需に陰りが見えているほか、有名菓子店に引けをとらない本格的なコ ンビニスイーツ人気も相まって、老舗・中堅の菓子メーカーを取り巻く環境が厳しさを増す可能 性があり、動向が注目される。 【内容に関する問い合わせ先】(株)帝国データバンク 東京支社情報部 担当:田中 祐実 TEL 03-5919-9341 FAX 03-5919-9348 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的 以外の利用につきましては、著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 6
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