OZTセミナー案内

「航行妨害ゾーン(OZT)の利用と展望」
主催: 東京海洋大学
共催: 越中島OZT研究会、東京海洋大学「遠隔操船型自律航行船」実現プロジェクトチーム
後援: 国土交通省 、海上保安庁、 (国研)海上技術安全研究所、 (公財)日本海事センター、
(公社)日本海難防止協会、 (公社)日本航海学会、(一社)日本船長協会、
(一社)日本舶用工業会、(一財)日本航路標識協会、 (一財)日本船舶技術研究協会
船舶運航において、AIS情報等のビッグデータの活用は、安全や効率改善の為に欠かせません。しかし、船舶行動
決定プロセスにおいて、相手船情報の収集機能の改善は進んでいますが、その次の衝突危険評価には、今でも相対運
動をベースとした評価法が使われています。これは安全行動の検索を試行錯誤により行いますし、その使い勝手も良
くありません。時々刻々と変化する相手船の動的情報に対応して、迅速な行動決定を可能にするには、素早い衝突危
険評価と、分かり易く、使い易い表現が不可欠です。そうした衝突危険評価法として、真運動をベースとして、衝突
する可能性のある場所(航行妨害ゾーン:OZT)を相手船の針路上に表示する評価法があります。
「遠隔操船型自律航行船」の実現に不可欠な衝突危険度の評価や有効な避航操船の情報として、 OZTは非常に有用
なものと考えられています。セミナーでは、海上保安庁や船社が取り組んでいる課題について、OZTについて、OZT
関連機器について、OZTを用いた研究等について解説します。今回のセミナーで共催する「越中島OZT研究会」では
、OZTの特性を調べると共に、OZTを用いた数々の研究を進めており、これらの成果についても解説します。
日 時 : 2017年2月28日(火) 12:50開場 13:20開始 17:50終了
場 所 : 東京海洋大学・越中島キャンパス 越中島会館 講堂
参加費:無料
JR 京葉線・武蔵野線「越中島駅」(各駅停車のみ) 2番出口 徒歩約2分
東京メトロ 東西線・都営地下鉄 大江戸線 「門前仲町駅」4番出口 徒歩約10分
東京メトロ 有楽町線・都営地下鉄 大江線「月島駅」2番出口 徒歩約10分
(http://www.e.kaiyodai.ac.jp/contact.html)
プログラム
12:50 開場
13:20 開会挨拶
東京海洋大学長 竹内 俊郎
<社会のニーズと航行妨害ゾーン(OZT)>
マリンカフェ
13:30-13:50 AISを活用した施策の現状と今後の課題
海上保安庁交通部企画課 海上交通企画室長 安尾 博志 氏
13:50-14:10 自律航行への取り組み
日本郵船株式会社 海務グループ 桑原 悟 氏
14:10-14:30 航行妨害ゾーン(OZT)とその特性
越中島OZT研究会 主査 今津 隼馬 氏
<航行妨害ゾーン(OZT)の利用例>
14:30-14:50 伊豆大島西方海域における推薦航路設計に関する安全性評価
海上技術安全研究所 三宅 里奈 氏
14:50-15:10 OZT搭載レーダーの実現に向けた取組み
古野電気株式会社 中川 和也 氏
15:10-15:30 休憩
<航行妨害ゾーン(OZT)を用いた研究-基本利用>
15:30-15:50 OZTの計算過程の情報を利用した操船環境の評価
15:50-16:10 OZTを用いた衝突針路エリアの推定
16:10-16:30 OZTを用いた東京湾における衝突海難事例の分析
海上保安大学校 山田 多津人 氏
東海大学 福田 厳 氏
東京海洋大学 西崎 ちひろ 氏
<航行妨害ゾーン(OZT)を用いた研究-応用利用>
16:30-16:50 OZTを利用した操船者の見張り特性の分析
東京海洋大学 榧野 純 氏
16:50-17:10 バーチャル汐路丸で用いられる相手船のシナリオ作成について
東京海洋大学 田丸 人意 氏
17:10-17:30 衝突予防と自動航行・自律航行
日本無線株式会社 高山 正樹 氏
17:30-17:40 質疑応答
17:40 閉会挨拶 海洋工学部長 塚本 達郎
セミナー終了後、本学のマリンカフェにて、越中島OZT研究会主催で情報交換会を催しますので、是非ご参加く
ださい。(18:00~19:30 参加費 3,000円)
<参加申し込み及び連絡先>
お名前、ご所属、連絡先(eメールアドレス、電話番号)および情報交換会への出欠をご記入の上、
2月25日までに、東京海洋大学 田丸人意([email protected])へメールにてご連絡下さい。
各講演の概要
<社会のニーズと航行妨害ゾーン(OZT)>
AISを活用した施策の現状と今後の課題(海上保安庁交通部企画課 海上交通企画室長 安尾博志氏)
我が国の周辺海域で毎年発生している約2,400隻の船舶事故は、尊い人命や財産を損失させ、経済活動や海洋環境への
多大な影響を及ぼすおそれがある。船舶の動静把握システムの高度化や情報分析から得られる知見から展開される新
たな方策により、船舶事故の減少と安全な航行環境の構築が期待される。海上保安庁が取り組む動静監視に基づく乗
揚事故の防止などAIS等を活用した安全対策の現状と今後の課題について紹介する。
自律航行への取り組み(日本郵船株式会社 海務グループ 航海チーム 桑原悟氏)
現在、様々なメディアで頻繁に目にする自動車の自動化・自律化への取り組み。船舶も同様で、欧州を中心に船舶の
自動化・自律化の研究開発が進められている。その国際的な流れに後れを取らないように、日本の技術力を活かし、
もう一段上の安全を求めながら船舶の自動化・自律化を目指したいと考えている。検討に当たっての背景と課題につ
いて述べる。
航行妨害ゾーン(OZT)とその特性(東京海洋大学名誉教授 今津隼馬氏)
AISにより相手船の動きは良く判るが、多くの相手船の動きに対応するには、時々刻々の衝突危険を素早く捉え、こ
れを分かり易く、また使い易く表現する必要がある。ここでは、真運動による衝突をベースに開発した衝突危険評価
法の、衝突予測線(LOPC)と航行妨害ゾーン(OZT)の捉え方とその特性について、また輻輳域で利用した場合の
OZT分布について、そして今後このOZTを役立てることが期待できる分野等について解説する。
<利用例>
伊豆大島西方海域における推薦航路設計に関する安全性評価
(海上技術安全研究所 三宅里奈氏、福戸淳司氏、伊藤博子氏、東京海洋大学 西崎ちひろ氏)
海上技術安全研究所では,海上保安庁の第3次交通ビジョン「船舶交通の安全・安心を目指した取り組み」による準ふ
くそう海域における「AIS仮想航路標識等を活用した安全対策の推進」に参画し,伊豆大島西方海域をモデル海域と
した推薦航路の設計案を客観的に評価して提案した.本発表では,OZTによる安全性評価を中心に,伊豆大島西方海
域での推薦航路の設計・評価について述べる.
OZT搭載レーダーの実現に向けた取組み(古野電気株式会社 中川和也 氏)
古野電気では、安全航海を支える新たな航海支援機能として、舶用レーダーへのOZT危険領域表示機能の技術開発を
行っている。OZT搭載レーダーの実現には、OZT計算の高信頼化と実用的なOZT提示方法の確立が課題となる。本講
演では、課題解決に向けた取組みとOZT搭載レーダーの表示の紹介を通して、操船に不慣れな操船者でも直感的に危
険領域と回避ルートを把握できるOZT搭載レーダーの効果をお伝えする。
<航行妨害ゾーン(OZT)を用いた研究-基本利用-避航判断、海域特性、衝突分析等>
OZTの計算過程の情報を利用した操船環境の評価
(海上保安大学校 山田多津人氏、庄司るり氏、月坂明彦氏、水井真治氏)
衝突予測線からOZT計算に至る過程を、付加する情報の側面から整理した上で、付加する情報レベルにより多面的な
操船環境の評価の可能性を示すと共に、簡易なシナリオを使って具体的な操船環境の評価方法例を解説する。
OZTを用いた衝突針路エリアの推定(東海大学 福田厳氏、庄司るり)
本研究では船舶の地震発生時の安全な港外避泊に利用するためのOZTを用いた衝突針路エリアの推定を行っている。
大地震が発生し大津波発生が予測される時には、船舶が一斉に安全な水深に向け、港外避泊を行うことが予測される。
この時、船舶が安全に航行できるよう、通常の状態でのOZTの存在が高い衝突針路エリアの推定を行い、その結果を
関係者に周知することにより事故の軽減につながると考える。
OZTを用いた東京湾における衝突海難事例の分析(東京海洋大学 西崎ちひろ氏、キム ヒョンギ氏、庄司 るり氏)
東京海洋大学の先端ナビゲートシステムでは、過去5年間の東京湾内における船舶運航・気象海象情報を収集している。
一方、過去のAISデータからOZTの分布を示し、分析することが可能である。そこで本研究では、先端ナビゲートシス
テムに蓄積された過去のAISデータとOZTを用いて、東京湾で発生した衝突海難事例の分析を行った。
<航行妨害ゾーン(OZT)を用いた研究-応用利用-操船支援、交通流シミュレーション等>
OZTを利用した操船者の見張り特性の分析(東京海洋大学 榧野純氏、西崎ちひろ氏、村井康二氏、今津隼馬氏)
一般に、操船経験が豊富な操船者は比較的早い時期に衝突の危険を察知し、その危険を回避する為の適切な見張りを
行っているといわれている。従って、操船経験が豊富な操船者が行っている見張りの特徴を見い出す事は、衝突海難
を減少させるための一助となる。そこで、操船経験が豊富な操船者とそうでない操船者が行っている見張りの特徴の
違いをOZTを用いて調べる事とした。今回は、シミュレーション実験で得られたデータについて分析した結果につい
て報告する。
バーチャル汐路丸で用いられる相手船のシナリオ作成について(東京海洋大学 田丸人意氏、國枝佳明氏)
本学のECDIS訓練に使用されているヴァーチャル汐路丸(簡易シミュレータ)では、訓練目的に応じて相手船の動向
を設定しスクリーンおよびECDIS画面に情報を表示させることができる。ここではECDIS訓練に用いる相手船動向を
OZTを用いて評価し、相手船のシナリオを作成した方法について述べる。
衝突予防と自動航行・自律航行(日本無線株式会社 高山正樹氏)
自動車業界の自動運転の大きな流れと同様に海運業界においても船舶の無人化、自動化、自律化の研究の流れが加速
している。船舶の無人化、自動化、自律化実現に要求される技術とその取組状況について紹介する。