すごろくで楽しく学ぶ

第
35 回
すごろくで楽しく学ぶ
- 大学生による子ども向けネットトラブル防止講座 -
京都府消費生活安全センター
このコーナーでは、消費者教育の実践事例を紹介します。
京都府では、2014 年3月に策定した京都府消
(すごろく)
を開発し、小学生を対象に小学校や
費者教育推進計画に基づき、消費者教育施策を
児童館等で出前講座を実施しています。
実施しています。本稿で紹介する大学生による
講座の開催先は、当センター等が関係機関に
子ども向けネットトラブル防止講座
(以下、講
声かけを行って開拓し、運営は大学生協に委託
座)は、子どもたちの間に増えつつあるネット
しています。
被害を未然に防ぐとともに、若い世代の消費者
⑴ 講座の流れ
教育の担い手を養成する事業として同計画に盛
講座の概要は表のとおりです。講座の際は、
り込みました。
情報モラル教育の専門家が同行し導入を行った
後、1グルー
大学生リーダーの養成
プ6名程度に
大学生リーダーには、消費者問題へ関心を持
大学生1~2
ち、自分で考え、選択、行動できる消費者力を
名が付いて進
身につけるとともに、周りの人たちに対し主体
めていきます
的な啓発活動を行うことを期待しました。
(写真1)。講座
具体的には、若者の消費者トラブルの現状や
の 最 後 に は、
消費者市民社会、具体的な啓発手法や実践方法
おうちの人と
等を内容とする
「京都府くらしのヤングリーダー
の約束などを
養成研修」
に応募し、全課程を受講した大学生を、
ワークシート
「京都府くらしのヤングリーダー」
として認定し
に記入しても
ます。認定者は 2016 年 12 月末現在 83 名おり、
らいます。
その後は、大学生に対する啓発チームと、子ども
写真1 講座のようす
に対する啓発チームに分かれて活動します。
大学生と小学生がともに学べる講座
時 間
講座は、子どもに対する啓発チームが中心に
なって行っている事業です。
導 入
5分
●アイスブレーキング
展 開
35 分
●グループ単位でオンラインゲームを題材とし
た“すごろく”を行う(1グループ6名程度)
●ゲーム途中でクイズに挑戦し最後にワーク
シートを記入
まとめ
5分
●家に帰って保護者と話し合えるような声かけ
初めてスマートフォンを持つ子どもが注意し
なければならないことを楽しく学べるように、
情報モラル教育の専門家の指導を受けて、教材
表
2017.2
内 容
27
講座の概要
⑵ 楽しみながら学べるすごろく
オンラインゲームを題材としたすごろくでは、
サイコロを振って止まったマスに記載された文
章を音読し、その内容について大学生が実際の
スマートフォンの画面を印刷した写真等を用い
て、解説します。その際、良い行いが記載され
たマスでは持ち点が加点され、悪い行いが記載
されたマスでは持ち点が減点されます。最終的
に持ち点の最も多い人が勝ちとなります。
マスには、
「スマートフォンやゲーム機でウソ
写真2 すごろくシート*
の年齢を言って登録し、ゲームを始める」や
「オ
ンラインゲームで自分のプロフィールに住所や
電話番号をのせない」など、スマートフォン等
ネットに接続できる機器を持つ前に知っておい
てほしいことが記載されています。また、全員
が止まり、大学生が考えたクイズに答えるマス
写真3 クイズ
もあり、楽しく学べる教材になっています ( 写
真2、3)。
今後の展開
⑶ 小学生・大学生の感想
子ども啓発チームの活動は3年目になりまし
参加した小学生の感想には、
「SNS に友だち
の写真を載せるのはだめ! 自分の住所や名前、
た。1年目にすごろくの作成、2年目にすごろ
電話番号を書かない」
(小学4年生)
「ちゃんと決
くの改良、3年目に普及版を作成し、これまで
まりを決めて使わないと危険なことがある。だ
17 講座を実施し、多くの小学生にすごろくを体
から、親に相談して使うことが大切だと思った」
験してもらいました。
(小学6年生)などがあり、ネットを使うに当た
また、活動をするなかで新たに見えてきた課
り注意すべきことに気づいたことがうかがわれ
題もあります。例えば、小学校や児童館等で講
ます。
座を行う時間帯と大学生の講義が重なり、講座
一方、講師を務めた大学生の感想では、
「小学
に参加できる大学生が少なくなる場合があるこ
生は学びに意欲的で、スマホやゲームでネット
と、ネットトラブル以外の講座をしてほしいと
利用をしたことがある子もそうではない子もす
頼まれる場合もあること、講座に参加する子ど
ごろくを楽しみながらネットとの向き合い方を
もの年齢幅が大きく、一律の内容で行うことが
学べたのではないかと思う」
「実際に小学生を相
難しい場合もあることなどです。
手にすると自分自身の学びも深まった。消費者
このような現状を踏まえ、今後は大学生が参
教育という分野ではどうしても難しい言葉を
加しやすい体制を整え、新たに見えてきたニー
使って説明しがちになってしまうので、しっか
ズに対応するとともに、さまざまな消費者トラ
りかみ砕いて小学生に実感をもってもらうよう
ブルについて、大学生が自ら講座を企画し、消
に進めていくことに力を入れた」などがあり、
費者教育の担い手として活動できるように支援
大学生にとってもネットトラブルを分かりやす
していきたいと思います。
く解説することで、自らの理解が深まったと感
* h t t p : / / w w w. p r e f . k y o t o . j p / s h o h i s e / w a k a m o n o /
daigakusei/documents/sugoroku.pdf
じています。
2017.2
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