富津市地域公共交通網形成計画策定調査業務概要(案) 1.富津市の

資料5
富津市地域公共交通網形成計画策定調査業務概要(案)
1.富津市の概要及び本業務目的
(1)富津市の概要
富津市は、千葉県房総半島の中西部東京湾側に位置し、千葉県内54市町村中、7位の面積(205.53km2)
及び17位の可住地面積(80.71km2)である。
昭和46年4月25日富津町、大佐和町、天羽町の3町合併により、富津町となり、同年9月1日に市制
施行により富津市となった。
市の西部は東京湾に面し、南北40㎞に及ぶ自然の海岸線がある。市北部は君津市、東部は鴨川市、
南部は鋸南町と接し、東京湾を隔て、神奈川県横須賀市と東京湾フェリーにより接続しており、南房
総地域の玄関口となっている。
市北東部から市南部にかけて富津中央インターチェンジ(以下「IC」)、富津竹岡IC、富津金
谷ICを有する高速自動車道が縦断しており、平成9年のアクアライン開通により東京、神奈川まで
約60分と首都圏からのアクセスは向上した。
市の人口は、45,601人(平成27年国勢調査)で、昭和60年国勢調査の56,777人をピークとして減少
に転じている。市の65歳以上人口の割合は34.4%(平成27年国勢調査)で、千葉県平均の25.5%を大
きく上回る。また、平成27年度に策定した「富津市人口ビジョン2040」の推計では、少子高齢化が進
み、生産年齢人口も減少が続くことを見込んでいる。
また、富津市の観光入込客数は約215万人(平成27年千葉県観光客入込調査)で、東日本大震災に
より減少したが、回復しつつある。
本市の公共交通機関は、鉄道、フェリー、高速バス、路線バス、タクシーがある。
鉄道は、JR内房線が市の北西部の市街地から南西部の海岸部に走り、6つの駅(北から青堀駅、
大貫駅、佐貫町駅、上総湊駅、竹岡駅、浜金谷駅)がある。JR内房線は、隣接自治体の君津市まで複
線化されており、富津市の最北駅の青堀駅につながる区間から単線となっている。市内の全ての駅で
昭和45年をピークに利用者が減少している。また、いずれの駅も点状ブロックは整備されているもの
の、エレベーター等のバリアフリー化は未整備である。
フェリーは、東京湾フェリーが富津市金谷港から横須賀市久里浜港を約40分で結び、「かなや丸」
と「しらはま丸」の2隻で1日12便又は14便運航している。東京湾アクアラインの開通及び利用料金
が800円に引き下げられたことに伴い、利用者数が減少している。
市内に停車する高速バスは、青堀駅に停車する「君津東京線」及び上総湊駅前及び高速竹岡に停車
する「房総なのはな号(白浜-東京線)」の2路線あり、利用客は増加傾向にある。
市内を走行する路線バスは、天羽日東バスが市内を中心に6路線(富津市役所君津駅線、鹿野山線、
湊富津線、笹毛線、竹岡線、戸面原ダム線)、市内外を結ぶ路線として日東交通が2路線(富津線、
イオンモール富津線)、鴨川日東バスが1路線(金谷線)運行しているが、少子高齢化、人口減少、
自家用車の普及等により、利用者の減少が続いており、路線維持確保のために公費(平成27年度:約
6,700万円)が支出されている。
タクシーは、利用者の減少に伴い配車数も減少している。現在は市内に2事業所(富津公園タクシ
ー、日の丸マリーンタクシー)があり、市の北部に配車が集中している。
また、その他の交通手段として、小中学校の統廃合により、遠距離通学となる児童生徒の通学手段
としてスクールバス(3路線:朝1便、夕1~3便)が運行し、一部が市民混乗である。
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(2)本業務の目的
(1)のとおり、市民の移動手段として交通手段、特に路線バスの運行を維持しているところであ
るが、バス路線を始めとした交通網は過去20年間その形を大きく変えていないことから、現在のニ
ーズに沿ったものでない可能性が考えられ、当市が負担する年間経費は、約5,000万円(路線バス補
助金約4,000万円、スクールバス経費約1,000万円)に及んでおり、財政負担の軽減を図る意味からも、
全市における総合的かつ効率的な公共交通体系の構築が喫緊の課題となっている。
このような中で、公共交通の満足度という漠然とした市民の意識を確認した従前の調査方法を改め、
市域における地域概況や公共交通機関の状況等についての現状を把握するとともに、交通体系の見直
しに際しての市民及び来訪者の移動需要を詳細に把握することが必要である。
また、今回策定する計画では、持続的な公共交通として地域に定着させることを見据え、路線の見
直しにあたっての地域住民の行動変容状況や利用意識、OD調査等により、公共交通を必要とする人
の移動のニーズにあった持続可能な公共交通網を形成するため、詳細な調査を行ったうえで地域公共
交通網形成計画の策定を行う。
2.業務内容
業務全般に関する共通事項として、各業務において整理・分析した情報は、市及び交通事業者だけで
なく、公共交通の現状及び課題を市民が理解しやすいよう図、グラフ等を活用し表現する。
(1)公共交通実態調査
既存資料の収集・整理を行い、本市の地理的条件や道路網の状況、人口分布、インフラの整備状況、
上位計画、これまでの開発事業の経緯と経過状況など地域特性を把握・整理する。また、既存公共交
通の運行経費やサービス水準等現状を把握し、必要な分析を行う。
具体的な検討内容は以下のとおり。
①地域特性と公共交通の現状
(ア)市現況データの収集・整理
既存資料や市民の生活圏として想定される隣接自治体の資料を基に、路線バス系統の沿線地域
における人口特性を始めとし、商業施設や医療機関等の主要施設の分布、さらには交流施設の分
布といった、人の流れを生む出発地と目的地に係る沿線地域状況を把握する。
(イ)交通機関運営状況データ及び利用実態データの収集・整理
ⅰ 公共交通の現状把握
既存資料、地域経済分析システム(RESAS:リーサス)や公共交通の運行事業者が所有する
資料やデータを収集し、市における公共交通の運行状況や利用状況、費用対効果などを詳細に
分析する。また、民間バスについて評価可能なデータが不足する場合、調査員による直接的な
乗降調査を実施する。
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ⅱ 交通事業者等ヒアリング調査
鉄道、フェリー、高速バス、路線バス、タクシー及び交流施設の関係者等に聞き取り調査を
行い、定性的な利用特性や富津市の公共交通の問題点、地域公共交通の見直しにあたって留意
すべき点等を把握する。
(2)市民の利用実態やニーズ把握調査
各地域における公共交通の問題や課題、市民ニーズや利用意向、費用負担等についての市民意識を
把握するため、市民を対象とした意向調査を実施し、必要な分析を行う。
「公共交通機関を自分では使わないが、あった方が良い」ではなく、真に公共交通を必要とする人
を対象としたサービスが検討できるよう対象のニーズを詳細に調査、分析する。また、分析を基に既
成概念や市域にとらわれず、ニーズに合うサービスを柔軟に提供するための路線再編を検討ができる
ものとする。
具体的な検討内容は以下のとおり。
①市民アンケート調査
・各地域における公共交通の問題や課題、市民ニーズや利用意向、個人の移動実態、費用負担、公
共交通機関への依存度(利用実態(ODや頻度など))についての市民意識を把握し、今後のあ
り方等を検討することができるよう、市民を対象としたアンケート調査を実施し、必要な分析を
行う。
・調査対象は、市全体(約17,000世帯)のうち3,000世帯を対象として抽出することを想定する。
・郵送による配布・回収を前提とする。なお、回収率50%以上とする。
②真に公共交通を必要とする公共交通利用者等の“生の声”を収集できる効率的・効果的な調査
・市内の公共交通利用者等、非利用者の外出実態や地域公共交通の利用状況等を把握する効率的・
効果的な調査を行う。
③地域住民座談会開催
・各作業の節目となる時点での地元説明や、意見の広聴及び決定を目的とした住民座談会を開催す
る。対象は富津市における地域区分として3箇所(富津、大佐和、天羽地区)を想定し、年間で
延べ6回の開催を目安とする。
(3)公共交通施策に関する調査・分析
富津市では、鉄道、フェリー、高速バス、路線バス及びタクシーによる移動手段があるが、既存の
サービスにおいて費用対効果が低くなる状況を改善するためには新たな交通手段の検討が必要とな
る。このため、調査結果を踏まえ、既導入市町村が実施するデマンド型交通、NPOや地域が主体と
なって実施する旅客輸送等について、運営主体、運営方法、運行形式、利用状況や採算性等、導入さ
れている地域と富津市との地域特性を分析し、富津市に導入する場合のメリット、デメリット等を幅
広く整理する。
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(4)将来構想(案)
調査結果により、各種データ及び課題等を検証し、既存の公共交通機関に対する改善点など、地域
の実情及び富津市人口ビジョン2040の推計人口に即しつつ、交通網を機軸としたまちづくりによ
り、社会基盤整備の低コスト化や住民満足度の向上を目指すため、公共交通体系構築に向けた将来構
想を作成する。
(5)地域公共交通網形成計画(案)
調査結果等を踏まえ、公共交通を確保するにあたっての問題点や課題を整理し、公共交通の位置づ
け、地域の実態に即した方向性などの基本方針をまとめ、方針に沿って、各地域における具体的な交
通手段について検討を行い、確保・導入・再編に向けた計画を作成する。
利用者の側からも、
「私達の地域には公共交通が必要であり、地域も公共交通の維持に協力する」
という意識を醸成し、
「適切に自己負担し利用される公共交通網」を構築する。そのためには、交通
サービスの確保・導入・再編にあたり、費用対効果を適切に予測し、また、導入後の地域の姿、地域
住民のライフスタイルを想定できることが重要である。
具体的な検討内容は以下のとおり。
①地域公共交通網形成計画(案)の作成
・地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づく、市全体の地域公共交通の将来像がまとめ
られた地域公共交通網形成計画(案)を作成する。
②新たな公共交通サービスに関する運行実施計画(案)の作成
・これまでの調査結果等を活用しつつ、路線バスを始めとした交通サービスの運行・利用実態、市
街地の関係を整理・分析し、輸送力と事業収支的にバスが輸送手段として最適なエリアであるか、
また、その他の交通手段についても、その特性に応じ、新たな地域公共交通サービスの運行実施
計画(案)を作成する。
・持続可能な公共交通網を実現するために、新たな地域公共交通サービスの運行実施計画(案)に
おいては、導入・維持あるいは見直しにあたり、ルール・基準、関係主体の役割を設定するとと
もに、新たに地域から導入・維持あるいは見直しの要望があることを踏まえ、費用対効果(提供
する交通サービスに対し、適切な費用負担に基づく利用が見込めること)に基づく、協議を行う
ことができるよう導入要領を作成する。
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