Transaction M&A News 2017 年税制改正における CFC 税制の改正 Issue 96, February 2017 In brief 2016 年 12 月 22 日に平成 29 年度税制改正の大綱(以下、「2017 年度税制改正大綱」)が閣議決定されま した。外国子会社合算税制(CFC 税制)については、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との BEPS プロジェクトの基本的考え方を踏まえ、経済実体がない、いわゆる受動的所得は合算対象とする一方 で、実体ある事業からの所得であれば、子会社の税負担率にかかわらず合算対象外とする趣旨の改正とな っています。また、ペーパーカンパニー等に対する合算課税制度も導入されます。これらの CFC 税制の改 正により、特に規模の大きな外国企業グループを買収している日系企業は詳細な対策を求められることにな ると考えられます。 In detail 1. CFC 税制の改正の概要 CFC 税制を①会社単位の合算課税、②一定所得の部分合算課税(受動的所得の合算課税)、ペーパ ーカンパニー等に係る合算課税、の 3 つから構成するものとしています。 外国関係会社の判定について、持株割合の計算方法が見直され、経済実質基準等の判断基準が導入 されます。また、トリガー税率が廃止されます。 納税者の事務負担軽減に配慮し、①~③の適用においては、子会社の居住地国の租税負担割合の基 準を設け、少額免除基準等にかかる確定申告書への添付要件が廃止されます。 受動的所得は、現行の資産性所得の合算課税制度の対象所得よりも詳細に区分・規定されます。 ペーパーカンパニーやキャッシュボックス、情報交換協定のない国等に所在する会社に対する会社単 位の合算課税制度が創設されます。 この改正は、外国子会社の 2018 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から適用されます。 (税制調査会・小委員会提出資料を基に作成) www.pwc.com/jp/tax Transaction M&A News 2. 税制改正の影響例 2017 年度税制改正大綱で明らかにされた CFC 税制の改正により、以下のように、従来は CFC 税制の対象 外とされていた外国子会社等が合算課税の対象になる可能性があります。 外国関係会社の判定(50%超が日本居住者に保有されているか否か)方法が、単純に持株割合を乗じ る間接持分の計算方法から、内国法人等と 50%超の株式等の保有を通じた連鎖関係がある外国法人 が有する持株割合により判定することになります。また、内国法人等がその外国法人の残余財産のおお むね全部を請求することができる等の関係がある場合におけるその外国法人が、新たに外国関係会社 の定義に含まれます。 現行法における適用除外判定において卸売業等に適用される「非関連者基準」について、税制改正に より、非関連者との間で行う取引対象資産・役務提供が、関連者に移転又は提供されることがあらかじめ 定まっている場合には、その非関連者との間の取引は、関連者との間で行われたものとみなされます。 従来、非関連者基準により合算課税が適用されなかった会社について、この改正内容が適用されてし まうと非関連者基準を充足できなくなり、合算課税が適用されます。 現行法において適用除外要件を満たす外国子会社に適用される資産性所得の合算課税について、税 制改正により、外国子会社等が得る一定の要件を充足しない貸付金利息や為替差益等が合算課税の 対象になります。 現行法では、実効税率が 20%以上であれば、実体がなかったとしても合算課税の適用を受けませんで した。税制改正では、実効税率が 30%未満である実体のない外国子会社はペーパーカンパニーとされ、 その所得について合算課税が適用されます(子会社からの配当は合算対象外)。 米国の税制改正の動向次第では、一般的に実効税率が高いといわれている米国にある子会社につい ても新 CFC 税制の影響が生じる可能性があります。 3. 新 CFC 税制への対応 (1) 現状の把握・整理 新 CFC 税制は、改正後の租税特別措置法本法だけでなく、施行令、さらには通達を待たないとその詳細は 明らかにならない部分があると考えられます。しかし、新制度のすべての詳細が明らかになる前であっても、 例えば以下の対応を進める必要があると考えられます。 シンガポールや香港など、従来から実効税率が 20%満たない国に所在する子会社で、現行法における 「適用除外」要件を充足しているものについて、その有する所得の種類をレビューし、新制度の下で潜 在的に新税制により合算される受動的所得の有無を把握する必要があります。 英国は現地の税制改正により実効税率が 20%未満になります。そのため、英国に所在する子会社につ いては、あらためて経済活動基準を満たせる可能性が高いか否か、潜在的に受動的所得に該当する所 得を有するか否かを把握しておく必要があります。米国の税制改正の動向次第では、米国子会社につ いてもこの検討が必要になります。 オランダ、ルクセンブルクなどの実効税率が 20%以上かつ 30%未満の国については、まずはそれらの 国に所在する子会社の有無とその事業内容を把握しておき、施行令等によって「ペーパーカンパニー」 の定義がより明確になった際に迅速な対応を図ることができるように準備しておくことが必要です。 PwC 2 Transaction M&A News (2) 税務ガバナンスの整備 ペーパーカンパニー等に対する合算課税制度の創設からも明らかなとおり、今回の CFC 税制の改正は、外 国子会社等の経済実体の有無に焦点を当てたものになっています。 過去に規模の大きな外国企業グループを買収している場合、そのグループが、実体のない子会社を保有し ていることが多くみられます(金融子会社や、ハイブリット組織体)。また、日本の親会社の税務担当者が認識 していないところで実体のない子会社が設立されている場合もあります。 受動的所得が詳細に定義されたことにより、従来に比して、より詳細に外国子会社の所得の状況等を把握す る必要が生じると考えられます。 外国子会社の実体把握や所得の内容の把握は、現状の整理だけでなく、定期的にモニタリングしていく必要 があり、そのための恒常的な税務ガバナンスの体制構築・整備が求められます。税務ガバナンスの整備にお いては、CFC 税制の改正を踏まえて、例えば以下のような観点での検討が必要であると考えられます。 PwC 地域統括会社等の税務担当者等が新 CFC 税制の概要・留意点を理解しているか。 外国子会社が新たな取引を開始しようとする際に、税務担当者等がその検討に関与している体制にな っているか。 日本の親会社の税務チームと外国子会社の税務担当のコミュニケーションルートが確立しているか。 日本の親会社の税務チームが定期的に情報収集を行い、その情報に基づいて CFC 税制の影響を分 析・チェックする体制が確立できているか。 情報収集にあたり、CFC 税制の影響を分析するに足る情報が収集できているか。 事務負担の観点から、システム・ツールの導入などによる効率化の検討は行っているか。 3 Transaction M&A News Let’s talk より詳しい情報、または個別案件への取り組みにつきましては、当法人の貴社担当者もしくは下記まで お問い合わせください。 PwC 税理士法人 〒100-6015 東京都千代田区霞が関 3 丁目 2 番 5 号 霞が関ビル 15 階 電話 : 03-5251-2400(代表) Email: [email protected] www.pwc.com/jp/tax パートナー 小野寺 美恵 03-5251-2791 [email protected] パートナー 山岸 哲也 03-5251-2460 [email protected] パートナー 山田 祐介 03-5251-2580 [email protected] PwC 税理士法人は、PwC のメンバーファームです。公認会計士、税理士など約 590 人を有する日本最大級のタックスアドバイザーとして、法人・個人の申 告をはじめ、金融・不動産関連、移転価格、M&A、事業再編、国際税務、連結納税制度など幅広い分野において税務コンサルティングを提供しています。 PwC は、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することを Purpose(存在意義)としています。私たちは、世界 157 カ国に及ぶグローバルネットワーク に 223,000 人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細は www.pwc.com をご覧ください。 本書は概略的な内容を紹介する目的のみで作成していますので、プロフェッショナルによるコンサルティングの代替となるものではありません。 © 2017 PwC 税理士法人 無断複写・転載を禁じます。 PwC とはメンバーファームである PwC 税理士法人、または日本における PwC メンバーファームおよび(または)その指定子会社または PwC のネットワーク を指しています。各メンバーファームおよび子会社は、別組織となっています。詳細は www.pwc.com/structure をご覧ください。 PwC 4
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