た。そこで、O. polymorpha でもこの PHO 経路の構成について検討を

た。そこで、O. polymorpha でもこの PHO 経路の構成について検討を行った。ドラフトゲ
ノム配列情報を用いた BLAST 検索の結果から、パン酵母で PHO 経路を構成する遺伝子
(PHO2、PHO4、PHO80、PHO81、PHO85)と相同性が高い遺伝子を検出することがで
き、それらの遺伝子破壊株を作製して AP 生産表現型を確認した。その結果、PHO2 を除く
遺伝子ではパン酵母と同じ AP 生産に関する変異表現型を示したが、pho2 欠失変異のみ野
生型表現型のままであった。さらに、紫外
線変異処理で AP 生産が構成性になる突
PtdIP2
然変異として劣性変異 3 種類(pho51、
IP3
pho52、pho53 と命名)と優性変異 1 種類
(PHO61C と命名)を分離でき、これらと
の 遺 伝 解 析 の 結 果 か ら 、 PHO61C は
IP4
IP5
PtdIP2
Plc1
IP3
Arg82
IP4
Arg82
IP6
IP5
Plc1
Arg82
Arg82
IP6
PHO81 の優性変異遺伝子座であること
や pho52 が PHO80 の劣性変異遺伝子座
であることがわかった。したがって、本酵
母の PHO 経路もパン酵母とほぼ同様の
CDK-CKI 複合体による転写活性化因子
Pho4 の核局在制御様式であると思われ
る。一方、自前 YCp ベクターによる遺伝
子ライブラリーのスクリーニングで得られた pho51 構成性変異を相補するクローンの解析
か ら 、 PHO51 は Inositol hexakisphosphate (IP6) 生 合 成 に 必 要 な Inositol 1,3,4,5,6pentakisphosphate 2-kinase 遺伝子(IPK1)であることがわかった。IP7 を合成するイノ
シトールピロリン酸合成酵素である Kcs1 と Vip1 の遺伝子欠失変異株の AP 表現型は野生
型と同じであり、二重欠失変異株でも野生型表現型を示した。パン酵母の ipk1∆は野生型と
同じ AP 表現型を示し、O. polymorpha とは異なる。両酵母でイノシトールポリリン酸生合
成経路遺伝子変異の表現型に違いが見られたという結果は、O. polymorpha の PHO 経路で
はパン酵母で報告されているような IP7 が Pho81CKI の活性化に働くという機構とは異な
る機構によって Pho81CKI 活性が調節されている可能性を示唆している(図参照)。
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プロフィール:
1983 年大阪大学工学研究科後期課程単位取得退学、同年武田薬品工業株式会社(財団
法人発酵研究所出向)、1990 年工学博士(大阪大学)、1993 年大阪大学工学部助教授、
2011 年 10 月大阪大学工学研究科寄附講座教授、現在に至る