インド:2017 年度予算案

平成 29 年(2017 年)2 月 6 日
BTMU Global Business Insight 臨時増刊号
AREA Report 465
インド:2017 年度予算案
Transform, Energise and Clean India
インドの 2017 年度予算案は公共事業拡大を通じた景気刺激型となりました。農業分野、地
方が重視されており、「中小企業に対する減税」、「低所得者に対する減税」、「外国投資促
進委員会の廃止」も盛り込まれています。
2 月 1 日、インド政府は 2017 年度予算案(2017 年 4 月~2018 年 3 月)を発表した。本予算案で
は、資本支出(含む公共インフラ投資)が前年度当初予算比 25.4%と大幅に増加しており、イン
フラ投資を通じて景気刺激を図る姿勢が示された。また、農業や地方が重視された支出となって
いる。財政赤字の対 GDP 比率は 3.2%と、政府の目標とする 3%を若干上回っており、目標達成
時期は 1 年先送りされた。
予算案には「中小企業に対する減税」、「低所得者に対する減税」、「外国投資促進委員会
(FIPB)の廃止」などが盛り込まれた。外国投資促進委員会の廃止に伴い、今後、外国投資規制
緩和が検討される。外国人投資家には朗報。
打ち出された政策
中小企業に対する減税
外国投資促進委員会の廃止
低所得者に対する減税
概要
年間売上高 5 億ルピー(約 8.5 億円)以下の中小企業の法人税率
を 25%に引下げる(現在、30%)。
外国投資促進委員会を廃止。より一層の投資を促進するための新
組織を立ち上げる。
年間所得 20 万~50 万ルピー(約 34 万~85 万円)の個人の所得税
率を 5%に引下げる(現在、10%)。
本予算のアジェンダは、Transform, Energise and Clean India(TEC India)である。
「①インド
国民の生活の質向上(=Transform)、②特に若者や弱者など様々な社会階層活性化による潜在力
発揮(=Energise)、③汚職・不正所得・不明朗な政治資金の一掃(=Clean)
」を目指している。
1
このアジェンダを推進するために以下の 10 のテーマが取り上げられている。うち 9 つは前年か
らの継続テーマ、今年は「デジタル・エコノミー」が追加されている。
テーマ
農民
地方住民
若者
貧困層、恵まれない人々
インフラストラクチャー
金融セクター
デジタル・エコノミー
公共サービス
堅実な財政運営
税務管理
取組みの例
5 年間で所得倍増。
・農業分野への融資額を 1 兆ルピーに。
・農民は借入に対する 60 日間の利子免除(2016 年 12 月 31 日アナ
ウンス分)
。
雇用機会の創出、基礎的インフラ提供。
・1,000 万世帯を貧困状態から脱出させる。
・2018 年 5 月 1 日までに 100%の村落を電化。
教育、技能、職業の提供を通じ活性化。
社会保障制度、医療、手ごろな値段で買える住居の拡充。
・村落の女性の技能開発、就業支援。
・妊娠女性に 6,000 ルピーを給付、口座に入金。
・2 次、3 次レベルの医療機関充実のため、年 5,000 名の医師育成。
効率的、生産的で価値ある生活の実現。
・鉄道、道路、海運等の整備に 2 兆 4,139 億ルピー(約 4 兆円)を
投じる。鉄道整備に 1 兆 3,100 億ルピー投資。
・中期的に 7,000 の駅に太陽光発電装置を設置。
より強固な金融機関による成長と安定。
・農業セクターの作物関連のスポットとデリバティブ・マーケット
を整備。
スピーディーかつ信頼性、透明性を確保。
人々の参画により効果的なガバナンス、効率的サービスを実現。
・主要郵便局をパスポート・サービスの拠点として活用。
・国軍兵のための旅券システム、ウエブ利用の双方向年金支給シス
テムの開発。
・裁判所の合理化。
最適な配賦、財政の安定性を保持。
・資本支出を前年度比 25.4%増加。
公正さを評価。
オフショアファイナンスの源泉徴収税については、以下の 2 点が発表されている。
・ECB の外貨借入に関する源泉徴収税率 5%適用について、現行 2017 年 6 月までの特例措置を
2020 年 6 月まで延長。
・マサラボンドの源泉徴収税についても 2020 年 6 月まで 5%適用。
その他、以下が盛り込まれた。
・過少資本税制の導入。
・個人所得税に関して、年間所得が 500 万~1,000 万ルピーの層に、10%のサーチャージを課す
(本件、多くの日本人駐在員の税額負担増となるもの)。
関税率の改定も発表されており「太陽光や風力発電関連製品部材の輸入関税軽減」などが打ち
出されている。
2
【予算案の主要計数】
(10 百万ルピー、%)
2015年度
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
項目
2016年度
実績
経常収入
税収(ネット)
税外収入
資本的収入
債権回収
その他収入
借入及びその他の負債
総収入(1+4)
スキーム支出
経常勘定
資本勘定
非スキーム支出(13+15)
経常勘定
うち利払い
資本勘定
総支出(9+12)
経常勘定
うち固定資本形成補助金
資本勘定
経常勘定赤字(17-1)
対GDP比(%)
21 実効経常赤字勘定赤字(20-18)
対GDP比(%)
22 財政赤字(16-(1+5+6))
対GDP比(%)
23 基礎的財政赤字(22-14)
対GDP比(%)
予算案①
実績見込み
1,195,025
1,377,022
1,423,562
943,765
251,260
595,748
20,835
42,132
532,791
1,790,783
725,114
545,619
179,495
1,065,669
992,142
441,659
73,527
1,790,783
1,537,761
131,754
253,022
342,736
2.5
210,982
1.6
532,791
3.9
91,132
0.7
1,054,101
322,921
601,038
10,634
56,500
533,904
1,978,060
801,966
601,900
200,066
1,176,094
1,129,137
492,670
46,957
1,978,060
1,731,037
166,840
247,023
354,015
2.3
187,175
1.2
533,904
3.5
41,234
0.3
1,088,792
334,770
590,845
11,071
45,500
534,274
2,014,407
869,847
631,511
238,336
1,144,560
1,103,049
483,069
41,511
2,014,407
1,734,560
171,472
279,847
310,998
2.1
139,526
0.9
534,274
3.5
51,205
0.3
2017年度
前年度比
予算案②
②/①
(%)
1,515,771
10.1
1,227,014
288,757
630,964
11,932
72,500
546,532
2,146,735
945,078
674,057
271,021
1,201,657
1,162,877
523,078
38,780
2,146,735
1,836,934
195,350
309,801
321,163
1.9
125,813
0.7
546,532
3.2
23,454
0.1
16.4
-10.6
5.0
12.2
28.3
2.4
8.5
17.8
12.0
35.5
2.2
3.0
6.2
-17.4
8.5
6.1
17.1
25.4
-9.3
-32.8
2.4
-43.1
(出所)インド政府資料より三菱東京 UFJ 銀行国際業務部作成
レポート作成: 三菱東京UFJ銀行 国際業務部
北村 広明
[email protected]
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情報室
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