第 18 回「アジアパシフィック衛星通信会議・ 展示会 2015」が開催

第 18 回「アジアパシフィック衛星通信会議・
展示会 2015」が開催
神谷 直亮
先月号に引き続いて、アジアパシフィ
116 度のコリアサット 6 衛星」と説明し
をカバーしている。
ック衛星通信協会(APSCC)が主催した
ていた。再生されていたコンテンツは、ほ
スラーヤ・テレコミュニケーションズ社
「APSCC2015」会議・展示会(9 月 22
とんどが韓国国内制作と思われたので、海
は、東経 44 度と東経 98.5 度でスラーヤ
日から 24 日、韓国のソウル市で開催)に
外から調達しているコンテンツとの比率を
2 と同 3 衛星を運用しており「これら 2 機
ついてレポートする。今回は、まず、KT
聞いてみたら「約 60 対 40」との回答で
で、日本から英国まで 160 か国をカバーし
スカイライフ、KTSat、スラーヤ・テレコ
あった。また、韓国で 4K 番組を制作して
ミュニケーションズ、インテリアン・テク
いる主なプロダクションを確認したら、CJ
ノロジーズ、I DO IT などが出展して賑わ
エンターテイメント社を挙げていた。
色は、世界を代表する 3 種の衛星測位シス
った展示会に触れたいと思う。次いで、日
KTSat 社は、韓国最大手の通信会社で
テム、アメリカの GPS、中国の Beidou、
本を代表する衛星メーカーの三菱電機、打
ある KT の子会社で、衛星通信サービスを
ロ シ ア の Global Orbiting Navigation
ち上げロケットの製造と打ち上げサービス
専業としている。運用中の衛星は、コリ
Satellite System(GLONASS) に 対 応
を行っている三菱重工業が参加した 2 つの
ア サ ッ ト 5( 東 経 113 度 )
、 同 6( 東 経
した世界初の携帯端末」と強調していた。
セッションについて報告する。
116)
、
同 8(東経 75 度)の 3 機であるが、
ブースでは、この他に「スラーヤ IP プラス」
ている」
と売り込んでいた。今回の新製品は、
「Thuraya XT-PRO」で、
「このモデルの特
去る 5 月にコリアサット 5A と同 7 衛星を
も紹介された。このヒューズ製の平面アン
最近の展示会でワクワク感をもたらすの
フランスのタレス・アレニア・スペースに
テナを使用するシステムの特色は、
「重量が
は、
何と言ってもウルトラ HD(4K)映像だ。
発注して、更なる業容の拡大を図る戦略を
1.4kg と超軽量に仕上がっているにもかか
今回の「APSCC2015」展示場でも、KT
打ち出している。今回ブースでは、これら
わらず、最大 444Kbps の IP 伝送を実現
スカイライフ社の 4K が注目の的になった。
2 機の最新鋭衛星の PR に余念がなかった。
する」という。
同社は、韓国を代表する衛星放送事業者と
興味深かったのは、コリアサット 7 衛星に
インテリアン・テクノロジーズ社は、イ
して知られ、ブースにサムスン電子製 75
225MHz という超広帯域の Ka バンド中
ンマルサットのグローバル・エクスプレス
インチ 4K テレビを 2 台設置して、6 月 1
継器と可変スポットビームを 3 本搭載して
(GX)用に製作した「GX60」と「GX120」
日に開局したという 3 チャンネルの 4K 番
いることだ。
アンテナシステムを目玉にしていた。説明
組のハイライトを上映した。ブースの広報
もう 1 点、KTSat は、日本のスカパー
員によれば、
「GX60 は、アンテナ直径が
担当者は、
「UHD 第 1 チャンネルは、ドラ
JSAT がまだカバーしていないヨーロッパ、
65cm で、GX120 は、103cm」とのこ
マとドキュメンタリーが中心で、UHD 第
アフリカに進出を果たしていることがわか
とであった。船上に設置されるこれらアン
2 は、自然を主テーマにしたドキュメンタ
った。ブースに張り出されたポスターによ
テナを船内からコントロールする 1 ラック
リーや癒し系のコンテンツで編成している。
れば、コリアサット 8 衛星の C バンド中継
のユニットには、GX モデムと遠隔操作を
3 番目の UXN は、プレミアム・チャンネ
器は、欧州とアフリカのほぼ全土をカバー
実現する WiFi アンテナが組み込まれている
ルで映画が主体。使用している衛星は東経
し、Ku バンド中継器は、アフリカの南半分
のが特色という。
写真 1 初出展を飾った KT スカイライフは、6 月 1 日に開局した 3 チャンネルの 4K 番組
を紹介した。
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FDI・2015・12
写真 2 スラーヤ・テレコミュニケーションズは、新製品として「Thuraya XT-PRO」
(向か
って右)を売り込んでいた。
写真 3 インテリアン・テクノロジーズ社は、インマルサットのグローバル・エクスプレス(GX)
用に製作した「GX120」アンテナシステムを出展して注目を集めた。
写真 4 I DO IT 社は、
「セルフサット」というブランド名の平面アンテナを披露して来場者
の耳目を集めた。
I DO IT 社という少々変わった名称のメ
BSS は、
同社の最近の販売戦略として「全
今回「打ち上げサービス事業者によるセ
ーカーは、
「セルフサット」というブランド
電気推進システム衛星、フレキシブルペイ
ッション」には、三菱重工業、中国長城工
名の平面アンテナを前面に押し出して出展
ロード衛星の売り込み」を挙げ、具体的に
業公司、スペース X、アリアンスペース、
した。2006 年に韓国に設立されたばかり
受注した衛星として「ABS-3A」と「イン
インターナショナル・ローンチ・サービス
の会社であるが、地上波放送受信用、衛星
テルサット EPIC29e」を紹介した。興味
が出席した。
放送受信用、衛星通信用など多様な平面ア
深いコメントは、
「全電気推進システムの開
三菱重工業は、
「11 月にカナダのテレサ
ンテナを世界各国に出荷しているという。
発には 16 年、フレキシブルペイロードの
ット社のテルスター 12 Vantage 衛星を
ブースの技術者は、
「セルフサットの特色は、
完成には 10 年かかった」と述懐していた。
H-2A 改良型ロケットで打ち上げる。この
ウェイブガイド、ホーンアレイ技術の集積。
SS/L は、
「今年は、タイコムに納入した
後 12 月に、日本の次世代を担う H-3 ロケ
パラボラアンテナより才数面で 1/3 と小さ
iPStar 衛星が軌道上で 10 周年を迎え、日
ットの基本設計審査会を開催することにな
く重量も超軽量に仕上がっている」と語っ
本がウルトラ HD(4K/8K)放送を推進す
っている」と今年の予定を詳しく説明し、
「今
ていた。具体的には、才数が 517 x 277
る BSAT-4a 衛星を受注でき、記念すべき
後は、少なくとも年間 5 機の打ち上げを実
x 44mm の H05H 型で重量は 2.7kg との
年になった。低軌道小型周回衛星に関して
現する態勢で臨む」と強い意気込みで締め
ことであった。
は、スカイボックス社の観測衛星を製作中
くくった。
である」と述べ、ブロードバンド衛星、高
中国長城工業公司の代表は、
「9 月 20 日
毎年のように絞りに絞った智慧や経営戦
出力放送衛星、小型衛星など、幅の広い分
に長征 6 型ロケットの初打ち上げに成功し
略が話題になる衛星メーカーによるセッシ
野の衛星を手掛けていることを強調した。
た。2016 年には、さらに長征 5 型と長征
ョンには、今回、三菱電機、アメリカから
TAS は、イリジウム・ネクスト、O3b、
7 型を投入する。長征 5 型には、直径 5m
ボーイング・サテライト・システムズ(BSS)
LeoSat と言った低中軌道周回衛星の受注
のフェアリングが搭載され、14t までの打
とスペース・システムズ・ロラール(SS/
が続いている点を同社の特色として紹介し
ち上げができる。この 5 型の打ち上げは、
L)
、フランスからタレス・アレニア・スペ
た。具体的なプロジェクトは挙げなかった
国内 4 カ所目となる海南島射場を使って行
ース(TAS)とエアバス・デフェンス&
が、全電気推進システム衛星も製作中と述
う」と、非常に積極的な戦略と実績を誇示
スペース(ADS)
、さらにロシアから ISS-
べていた。
して他のパネリストを圧倒した。
Reshetnev が出席した。常連のロッキード・
ADS は、
「エアバスの実績を買われて
アメリカのスペース X 社は、
「ファルコ
マーチンとオービタル ATK 社がどういう
OneWeb 社のコンサルティング契約を受注
ン 9 AV ロケットを今年 11 月に、ファル
わけか顔を見せなかった。
した。同社は、648 機の小型衛星を低周回
コン Heavy ロケットを 2016 年春に打ち
三菱電機は、
「ひまわり 8 衛星が打ちあ
軌道に打ち上げる計画を進めている」と切
上げる予定。3 カ所目の打ち上げ射場は間
がり、2016 年に同 9 衛星の打ち上げを予
り出し、全電気推進システム衛星について
もなくオープンし、4 番目の射場をテキサ
定している。現在は、カタールから受注し
も「すでに 3 機受注済み」と語った。
ス州に建設中」と語り、中国に対する対抗
た Es’Hailsat-2 衛星の製作に鋭意取り組
ISS-Reshetnev は、
「エクスプレス・プ
意識を燃やしていた。
んでいる」と現状を説明し、
「今後の戦略と
ラットフォームに全電気推進システムを搭
して、最近、業界に勢いが見られるハイ・
載することが可能になり、かつ衛星の発生
スループット・サテライト(HTS)の技術
電力も 18kw まで開発が完了している」と
検討を進めている」と語った。
強調した。
Naoakira Kamiya
衛星システム総研 代表
メディアジャーナリスト
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FDI・2015・12