放射線生物・防護

放射線の歴史
1 8 9 5年
5年 :X 線の 発見
急性 皮膚炎 ・脱毛
1 8 9 6年
6年 :
1 8 9 6年
6年 :ウラン 線の 発見
1 8 9 8年
8年 :ラジュ ウムの 分離
動 物実験 での流 産
1 9 0 1年
1年 :
1 9 0 2年
2年 :純粋 な ラジュウムの 分離
放射線皮膚 炎 から発ガン ・ 腋窩リンパ 節転移
1 9 1 9年
9年 :
胎児被爆 による 奇形
1 9 2 1年
1年 :
1 9 2 3年
3年 :
XRP ( エ ッ ク ス 線 ・ ラ ジ ュ ウ ム 防 護 委 員 会 ) 発 足
ダイ アルペインタ ー 被曝事故
放射線生物学
9 名 死 亡 ・ 70
70名
名 傷害 ・ラジウ ム 顎
白血球減 少性貧血 (再 生不良性貧血 )
1 9 2 6年
6年 :
1 9 2 8年
8年 :
遮 蔽 の 必 要 性 : IX RP ( 国 際 エ ッ ク ス 線 ・ ラ ジ ュ ウ ム 防 護 委 員 会
骨肉腫
1 9 2 9年
9年 :
1 9 3 4年
4年 :人工放 射能 を発見
1 9 4 5年
5年 :原曝投 下 ( 広島 ・長 崎 )
熱傷・感 染症 ・出血・ 潰瘍
1 9 4 6年
6年 :ロスア ラモス 臨界事 故
2名 死 亡 ・ 2名 傷 害
AB CC ( ア メ リ カ 原 爆 障 害 調 査 委 員 会 )
1 9 5 0年
0年 :
最大許 容量採用
1 9 5 4年
4年 :福竜丸 事件 (水爆実 験 )
1 名 死 亡 ・ 9 3名
3名 傷 害
1 9 6 8年
8年 :放射線 治療装置事故 ( ワシントン )
1名 死 亡
IC RP (国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 )
1 9 6 0年
0 年 : エ ッ ク ス 線 撮 影 装 置 事 故 (ニ ュ - ヨ ー ク ) 2 名 傷 害
1 9 6 5年
5年 :
行 為 の 正 当 化 を 勧 告 IC RP
1 9 7 5年
5年 :
放射線 影響研究所 ( 広島 ・長崎 )
1 9 7 6年
6年 :放射線 治療装置事故 ( オハイオ )
1 0名
0 名 死 亡 ・ 8 8名
8名 傷 害
1 9 7 7年
7年 :
確 率 的 影 響 ・非 確 率 的 影 響 ICRP
1 9 7 8年
8年 :福島第 一原発事故
1 9 8 3年
3年 :
公 衆 被 曝 ( 環 境 被 曝 ) を 制 限 ICRP
1 名 死 亡 ・ 2 3 8+傷
8+ 傷 害
1 9 8 6年
6 年 : チ ェ ル ノ ブ イ リ 臨 界 事 故 (ウ ク ラ イ ナ ) 3 1名
1 9 9 0年
0年 :チェル ノブイリ 再臨 界事故
1
1 9 9 1年
1年 :浜岡原 発臨界事故
1 9 9 9年
9年 :東海村 臨界事故 ・志 賀原発臨界事 故
2名 死 亡 ・ 1 名 傷 害
2 0 1 1年
1年 :福島第 一原発事故
1 名 死 亡 ・ 1 7名
7名 傷 害
紫外線
波長:10nmから380nm
エネルギー:約3eVから12eV
放射線とは
2
治療用エックス線
波長:1pm以上
エネルギー:約10MeVから1000GeV
・放射または放散されるエネルギーの総称
林
3
孝文.歯科画 像診断 と医療 被曝
講演資 料改変
診断用エックス線
波長:約10nmから1pm
エネルギー:約1.2eVから120keV
4
電離放射線の物質との相互作用
電離放射線
「物質との相互作用の主要モードが電離である所の放射線」と定義し、
電子ボルト単位でエネルギーが10eV以上のものであるが、紫外線は
含めない。また、中性子は低エネルギーでも含める:国際放射線防護
委員会(International Commission on Radiation Protection・
ICRP)
電離作用:放射線が物質の中で透過・散乱・吸収される過程で物質内の分子や原
子の電子にエネルギーを与え、その電子(自由電子)を物質外に放出
させる作用(コンプトン散乱):比較的低エネルギーの電離放射線が
水や軟組織に衝突したときに起きる。
励起作用:電離にまでは至らないが、軌道電子にエネルギーを与え外側の軌道に
移動させる作用(光電効果):比較的エネルギーの低い電離放射線が
硬組織に衝突したときに起きる。
非電離放射線
「物質との相互作用の主要モードが電離でない所の放射線」と定義し、
電子ボルト単位でエネルギーが10eV以下のもの:国際放射線防護委
員会(International Commission on Radiation Protection・
ICRP)
5
6
1
放射線の種類のまとめ
放射線の種類
電離放射線とは:物質との相互作用の主要モードが電離である所の放射線
電離とは:電気的に中性の原子が外からエネルギーが与えられて、陽子イオンと自由
電子に分離すること
電離放射線
(エックス線、γ線、β線、電子線、陽子線、中性子線)
・電離能力の有無
(間接電離放射線)
非電離放射線 (電波、赤外線、可視光線、紫外線)
直接電離放射線 (β線、電子線、陽子線、)
・電荷の有無
間接電離放射線 (エックス線、γ線、中性子線)
電磁波
(エックス線、γ線)
粒子線
(β線、電子線、陽子線、中性子線)
・質量の有無
7
8
放射線の透過力
放射線の性質
•
• 透過作用
– 放射線が
物質を透過する性質
• 電離作用
– 放射線が物質を透過する際、物質の原子の中の電子を
飛び出させる性質
• 感光作用
– 通常の光と同じく写真フィルムを感光させる性質
• 蛍光作用
– 蛍光物質に当たると光を発生させる性質
•
•
•
アルファ線 :ラジウム、プルトニウム、ウラニウム、ラドン、
電離作用:大
ベータ線 :トリチウム、炭素14、リン32、ストロンチウム90、
ヨウ素131 、電離作用:中
ガンマ線 :コバルト60、セシウム137、電離作用:小
中性子 :ウラニウム、プルトニウム 、電離作用:小
紙
アルミニウム等の
薄い金属板
鉛や厚い鉄の板
水やコンクリート
9
放射線の単位
a.照射線量:クーロン毎キログラム(C/kg)
X線またはγ線が空気中にどれだけの強さ出されているか(どれだけ電離させれる
か)を示す放射線量。
b.吸収線量:グレイ(Gy: J/kg)
放射線が物質に照射され、相互作用を行った時、そのエネルギーがどれだけ物質
に吸収されたかを示す値。
1グレイとは物質1kgあたり1ジュールのエネルギー吸収を生じる時の放射線量。
吸収される物質により照射線量と吸収線量は異なる。1J = 0.24 cal 1cal = 4.2J
10
e. 放射線エネルギー:エレクトロンボルト(eV: J)
放射線固有のエネルギー
f.線エネルギー付与(LET:Linear Energy Transfer):エレクトロンボ
ルト毎メートル(ev/m: J/m)
電離放射線が物質の中を通過する際に、飛距離の単位長さ当たりに物質に与
えるエネルギー量のことであり、放射線の線質の違いを知る指標である。
X線、γ線はLETが小さいので、低LETといい、α線、中性子線、重粒子線
はLETが大きいので高LETという。
c.線量当量:シーベルト(Sv: J/kg)
吸収線量を放射線の種類やエネルギーによる影響によって補正して得た値で、人
体への影響の程度を表す。
1シーベルトとはX線の1グレイによってもたらされるのと同じ程度の損傷を人体
に引き起こす放射線の量。
d.放射能:ベクレル(Bq: 1/sec)
原子の放射線を出す強さを表すもので、一定時間内に何個の原子が崩壊し放射線
を放出するかで示される。
1ベクレルとは、1秒間に1個の原子核が崩壊している状態の放射線の強さ、また
11
は放射性物質の量。
g.生物学的効果比(RBE:Relative Biological Effectiveness、能力比な
ので単位はない )
放射線の線質による生物効果の大きさの違いを量的に示す値である。
RBEとは、問題にしている放射線の吸収線量(D)が、標準放射線
(250keVのX線)の吸収線量(Ds)に比べて何倍の生物効果を与えるかを
数字であらわしたものである。RBE = Ds/ D
12
2
放射線の分子レベルの影響
(直接作用と間接作用)
間接作用の主体(影響の2/3)
(水和電子)
(過酸化水素分子)
(水素分子)
電離・イオン化
A C
T G
励起
A C
T G
C A
C A
G T
G T
直接作用
(水素ラディカル)
(ヒドロキシラディカル)
その他の用語
O
H
H
希釈効果
間接作用は水が多いほど強くなる。水が多くなり標的分子数
が相対的に減ると影響分子が増えること
化学的防護作用
SH基・アミノ酸・アルコール等の放射線防護物質を入れた
水溶液を照射すると防護剤と競合し標的分子の影響が減少す
ること
酸素効果
高酸素下では低酸素下と比べ標的分子は大きな影響を受ける
14
こと
間接作用
13
希釈効果
化学的防護作用
SH
OH*
R
OH*
OH*
R
H2O
H22O
O
H
OH*
R
OH*
H*
H2O
R
OH*
H2O
H*
H*
H2O
OH*
OH*
H*
R
SH
O
HH22O
R
H*
H*
H*
H*
SH
15
酸素効果
16
放射線の細胞への影響
酸素下で起きるラジカル反
応
eaq- + O2→ O2HR + O2→ HO2 R
RH + HO2→RR + H2O2
RH + HO2→ROR + H2O
RH + HOR → R R + H2O
RR + O2→ RO2 R
M期:分裂期
G1期:DNA合成準備期
S期:DNA合成期
G2期:分裂準備期
放射線高感受性
酸素増感比(OER, oxygen enhancement ratio):
酸素のある状態(飽和状態)で特定の効果を引き起こすのに必要な線量(A)に対
する酸素がない状態で必要な線量(B)の割合;OER = B / A
低LETの電離放射線ほど著しく、高LETのものはあまり関与しない
17
参考;気圧760mmHg, 酸素21%,大気の酸素分圧155mmHg
G0
同様の分化時期、同様の組織の細胞でも個々の細胞周期により放射線感受性が異なる
分裂期、分裂準備期後期、DNA合成準備期前期の放射線感受性が高い。
18
3
標的論
(Target Theory)
多標的1ヒット型:
低線量(1-2Gy)では曲線で、大線量になると直線的になる。高線量で
実験値と一致、人のような哺乳動物では N=1-10、all or none
直線2次曲線モデル:
仮定:
1)Targetとなる個々の分子や細胞は、放射線に
対して全く独立に影響を受ける。
2)線量に対する効果は確率的過程として扱うこ
とができる
→線量に依存した細胞の生死の確率を示すモデル。
低線量では直線的で、大線量で曲線となる。放射線治療に使用される線
量 (2-8Gy)で実験値と一致、 repair
理論の前提:
1)放射線はエネルギーを粒子として無差別に物
質に付与。
2)粒子と細胞の相互作用(ヒット)は独立的に
起き Poisson分布に従う。
3)放射線は標的細胞を不活化するための標的数
が決まっている。
19
20
直線-2次理論
(Linear Quadratic Theory)
線量-細胞生存曲線の考え方
(線量と細胞死の関係を示す考え方の実験モデル)
仮定:
1)Targetは2本鎖DNAである。
2)細胞死は1粒子による2本鎖切断と2粒子による2本鎖切断からなる。
3)放射線はエネルギーを粒子として無差別に物質に付与。
4)1粒子による切断は吸収線量に比例する。
5)2粒子によれる切断は吸収線量の2乗に比例する。
6)1粒子による切断は修復する。
標的論
(Target Theory)
背景:
1回の電離で必ずしも1ヒットが生じないため、標的理論の意味が薄れたため考
え出された理論。
早期反応
晩期反応
10
生存 率(
%)
S = e -(α D+β D )
E = n(αD+βD 2)
E/α = BER(生物学 的効果線量)
10
1
1
αD
αD 2
βD2
+
0.1
0 .01
=
0.1
0 .0 1
0.0 01
βD 2
0.1
5
10
15
Gy
直線2次曲線モデル
(Linear Quadratic
Model)
早期反応・腫瘍
α/β = 10-20 Gy
晩 期反応
α/β = 1-5 Gy
1個
N個
・
・
バクテリア・酵素
ほ乳動物・造血幹細胞
D37
D0
発ガン
突然変異
染色体異常
2本鎖切断
1本鎖切断
DNA
21
0
5
10
15
Gy
0
5
10
15
22
Gy
放射線の組織への影響
細胞数の低下
死
照射
放射線の組織への影響
萎縮
組織
分裂速度の低下
機能細 胞
幹細胞
放射線
増殖死
その他
0 .01
0.00 1
0
対象
2
10
1
1標的1ヒット型
多標的1ヒット型
1標的多ヒット型
多標的多ヒット型
標的
間期死
Bergonie-Tribondeauの法則
低い
低い
高い
分化・完成までの分裂回数
多い
23
少ない
照射
間期死
組織
分裂速度の低下
細胞数の低下
死
高い
放射線
分裂頻度
形態や機能の分化度
増殖死
萎縮
小
機能細 胞
大
幹細胞
(ベルゴニエ・トリボンドー)放射線感受性
24
4
放射線感受性の組織での違い
放射線効果と生体防護作用
修復:DNA・細胞内構造のレベルでの損傷が治される現象
回復:細胞・組織以上のレベルでの機能障害が治される現象
唾液腺
血管
1・2
対象
細胞再生系、3
条件的組織再生系、4
細胞非再生系
損傷部位
細胞内
・DNA塩基損傷
・損傷塩基・ヌクレオチドが除去され損傷のな
・DNA一本鎖切断
い新しいものが挿入
・DNA二本鎖切断 ・再結合
細胞
・亜致死性損傷
・潜在的致死損傷
・死まで至らない細胞が回復
・細胞が増殖しにくい環境を与えると回復に余
裕ができ生存率が上昇
組織・器官
・細胞損傷
細胞数の減少により幹細胞増殖が起き回復
Bergonie-Tribondeauの法則
(ベルゴニー・トリボンドー)
感受性
大
小
分裂頻度
高い
低い
形態や機能の分化度
低い
高い
分化・完成までの分裂回数
多い
少ない
塩基損傷
修復・回復法
一本鎖切断
25
亜致死性損傷回復(Repair SLD・sublethal damage recovery)は実際の低LET
(線エネルギー付与・Linear Energy Transfer)放射線治療に利用されている。
26
しかし、高LET放射線治療では利用できない
二本鎖切断
放射線による生体への作用過程
放射線エネルギー
A
T G
C A
C
G
A C
T G
C
C
C
G T
間
接
作
用
G
G
水分子の電離・励起
生体高分子の電離・励起
高反応性物質の生成
(活性酸素・ラジカル)
直
接
作
用
生体高分子の損傷
修復
生化学的変化
修復
形態的変化
A C
T G
C A
G T
A C
C G
突然変異
・
遺伝子異常
・
細胞死
突然変異・染色体異常
細胞死
C A
組織障害
G A
27
発癌・遺伝的影響
発癌以外の身体的影響
林
作用
0
照射
10 -18
電離・励起
10 -12
ラジカル形成→分子反応
10 -6
DNA損傷
10
DNA修復
数十分
細胞死・染色体異常
数日~数月
組織障害・個体死
数年
発ガン
数十年
遺伝的影響
28
講演資 料 より
ー線量率と生物学的効果との関係ー
放射線の生物作用の時間経過
時間(秒)
孝 文 . 歯 科 画 像 診 断 と医 療 被 曝
物理的過程
化学的過程
線量率効果
同一種類の放射線で同一の吸収線量であっても線
量率が異なると生物学的効果が異なること、エッ
クス線やγ線では起こるが、重粒子線や中性子線
では起こらない。
吸収線量 (Gy)
生体内に吸収された放射線エネルギー量
吸収線量率 (Gy/h)
単位時間あたりの吸収線量
線量率が高いほど生物学的効果は大きくなる。
LETが高いほど生物学的効果は大きい。
生物的過程
29
30
5
生存期間
ー全身被爆線量との関係ー
放射線の人体への影響
(発症と線量との関係の分類)
ICRP
(国際放射線防護委会・
高線量致死:中枢神経死
International
線量不依存:消化管死
Commission
on
)に
おける放射線防護の観点か
らの考え方であり、現実と
は若干異なる
Radiological
低線量致死:骨髄死(造血器死)
Protection
Bergonie-Tribondeauの法則
(ベルゴニー・トリボンドー )
感受性
大
小
分裂頻度
高い
低い
形態や機能の分化度
低い
高い
分化・完成までの分裂回数
多い
少ない
広い範囲で線量不依存域が存在(生存期間が一定領域)
31
定義
疾患
確率的影響
しきい値がない
重篤度は線量不依存
ガン
遺伝的影響
確定的影響
しきい値がある
重篤度は線量依存
不妊
白内障
放射線の人体への影響
放射線の人体への影響(発症と線量との関係の分類)
定義
疾患
確率的影響
しきい値がない
重篤度は線量不依存
ガン
遺伝的影響
(奇形、低成長、染色体異常)
確定的影響
しきい値がある
重篤度は線量依存
不妊
白内障
脱毛
33
身体的影響
32
(発症時期による分類)
定義
対象
身体的影響
被爆者個人に現れる
体細胞
遺伝的影響
被爆者の子孫に現れる
生殖細胞
早期(急性)影響
被爆後数週間以内に現れる
器官や組織の死
晩発影響
被爆後数ヶ月の長い潜伏期の後に
現れる
器官や組織の修復・
34
回復不能細胞
急性障害・造血器
中枢神経系
造血器官:骨髄・脾臓・リンパ節
構成:造血幹細胞・造血支持組織
早期(急性)障害では造血器官・胃腸管系・中枢神経系・生殖器、
晩発性障害ではガン(白血病・固形ガン)・白内障・胎内被曝での胎児の影響・
35
寿命の短縮が重要
Bergonie-Tribondeauの法則
(ベルゴニー・トリボンドー )
感受性
大
小
分裂頻度
高い
低い
形態や機能の分化度
低い
高い
36
分化・完成までの分裂回数
多い
少ない
6
急性障害・消化管
急性障害・造血器
放射線感受性
リンパ球>好中球>血小板
•吸収障害
血小板
好中球
リンパ球
•感染症
•下血
•出血
•10-100 Sv
•貧血
•3-10日
•2-10 Sv
•10-60日
37
38
急性障害・生殖器
急性障害・中枢神経
分裂速度の低下
特徴
女性では高齢者ほど感受性が高い
萎縮
幹細胞
放射線
照射
機能細 胞
組織
細胞数の低下
死
低線量による染色体異常(遺伝的影響)
が大問題
増殖死
放射線感受性が低い(中枢神経は成人において細胞分裂していない)
中枢神経死の大部分は脳血管障害による
死
1-5日
萎縮
>100Gy
組織
透過性の亢進
脳浮腫
>15Gy
機能細 胞
放射線
血管
照射
Bergonie-Tribondeauの法則
細胞数の低下
(ベルゴニー・トリボンドー)
感 受性
大
核の濃染
39
急性被爆による死(急性放射線死)のまとめ
41
高い
形 態 や機 能の 分化 度
低い
分 化・ 完成 まで の分 裂回 数
多い
小
低い
高い
40
少 ない
晩発障害・白内障
原爆被爆者における白内障の発症と線量との関係
線量閾値
傷害名
発症時期
0.2-5 Sv
水晶体傷害
線量に依存
5 Sv
白内障
被曝期間
全身に短期間で大量の放射線を受けた場合に起きる
線量は感受性に依存し、死までの期間は細胞の寿命に依存する
分 裂頻 度
線量に依存
水晶体線量
2-3 Sv
4-10 Sv
10-20 Sv
11.8年
5.3年
4.2年
1-3ヶ月
6.6年
3ヶ月 <
10.8年
1回
20-40 Sv
> 40 Sv
5.2年
2.8年
2.6年
6.2年
4.4年
3.6年
42
7
晩発障害・寿命(1)
晩期障害・生殖機能
線量効果関係:
死亡率と線量は直線関係となる
白血病・胸腺腫瘍の発生率の増加と潜伏期の短
縮による
短命は1Gyあたり4-7週である
線量率効果:
死亡率は線量率が高くなるほど高くなる
特徴
女性では高齢者ほど感受性が高い
43
44
晩発障害・ 胎児の体内被曝
晩発障害・寿命(2)
高感受性
年齢依存性:
マウスにおいて、感受性は胎生期よりも出生初期
が高くその後低下する
肝癌、肺癌の発生率と関係がある
この時期は人の胎生後期にあたる
しきい値(Gy) 0.05-0.1
1.0
・発育 遅延
晩発障害・ 胎児の体内被曝
0.12-0.2
・精神 発達遅延
45
・自覚 なしに流産
・正常 な新生児
時期特異性がある
0.1
・奇形
ホルミンス効果(hormesis effect) :
致死線量照射前に微量放射線を照射すると寿命の
延長が認められる
この効果はSPF(Specific Pathogen Free・特定
病原菌なし)にはなく、対照群と比べ発ガン率の
上昇が認められたことから発ガン率の低下ではな
く免疫活性効果と考えられている
46
晩発障害・ 胎児の体内被曝
がんの発生
体内被曝による重度精神発達遅延
図録
0.2 Gy
ヒロシマを 世界 により
がん発生率上昇:胎内被曝<出生児被曝
0.50
国 連放 射線 影響 科学 委員会 1988年Reportより
47
10mSvの体内被曝で明らかなリスク上
(オッヅ比 1.3)
48
8
低線量被曝と発がん
晩発障害・発ガン
被曝によるがん上昇率=0.041 x Sv x 年齢リスク倍増率
5-100mSv(平均29mSv)から明らかにリスク上昇
原子力発電所 5km圏内と
70km圏外では5才以下の小児
白血病の有病率を比較すると前
者が2.3倍多い
49
50
Int.J.Cancer 2007:ドイツのグループによる 1980-2003年の大規模調査
その他の晩期障害
イ ン ド ・ ケ ケ ラ 州 : 1 0-1 2 mSv
1 8 0家 族 ・ 7 30人 ・ 5 95 DN A
コ ン ト ロ ー ル : 1.1 m Sv
6 8家 族 ・2 5 8人 ・ 20 0 D NA を 分 析
米 国 科 学 ア カ デ ミ ー 紀 要 2 002 よ り
すべての突然変異(267 DNA突然変異)のうち
高線量地域で22/595、低線量地域で1/200が放射線が原因のDNA突然変異
ICRPは確率的影響を遺伝的疾
患・がんと限定。
しかし、現在の見解ではすべての
放射線が悪影響する疾患は確率的
52
影響
しかし、広島・長崎の被爆者データーも含め、
51
高線量被曝者の遺伝影響(先天異常)の発生の増加は認められていない。
晩期障害のまとめ
1回急性被爆
(Gy)
その他
水晶体混濁
0.5 - 2
0.1Gy/年x50年
白内障
5
0.15Gy/年x54年
放射線障害の分類のまとめ
• 発生時期
• 線量・発症
男
一時不妊
永久不妊
0.15
3.5 - 6
女
一時不妊
永久不妊
0.65 - 1.5
2.5 - 6
胎児
重度奇形
永久発育遅滞
精神遅滞
0.2 - 0.5
0.5 – 1.0
0.12 – 0.2
妊娠 2 – 8週
妊娠 8- 出産
妊娠 8-15週
ガン
遺伝疾患
発生率増加
5% / Gy
0.5% / Gy
25%
1-2%
53
早期(急性)障害・晩期障害
確率的影響・確定的影響
• 被曝時間
急性被曝・慢性被曝
• 障害対象
身体的影響・遺伝的影響
• 被曝範囲
全身被曝・局所被曝
• 被曝様式
外部被曝・内部被曝・胎内被曝
54
9