VOL. 33

CODEN : HIKGE3
ISSN 0916-0930
VOL.
VOL. 33 2017
Printed in Japan 2017− 1(H)
33
2017
30 μm
【表紙写真】
共連続構造を用いた産業用ケーブル被覆材料の断面 SEM 画像
表紙写真説明
表紙の SEM(Scanning Electron Microscope)写真は,産業用電線・ケーブル向け
に開発した,難燃・強靭・柔軟な被覆材料の断面画像である。色の濃い部分がエンジ
ニアリングプラスチック( 以下,エンプラ)
,薄い部分がエラストマで,粒子状の添加
物は無機難燃材である。
エンプラは被覆材の難燃性と強度を高めるために用い,エラストマは柔軟性を向上
するために配合した。2 つの材料を単純に混ぜ合わせるのではなく,相互が 3 次元に
連続した共連続構造を形成している。共連続構造の大きさや分散状態を材料配合,混
練,押出成形工程を通して制御することで,おのおのの特性を生かした被覆材を形成
でき,難燃・強靭性に加え,柔軟性も実現した。無機難燃材は,難燃性をさらに高め
るために添加しており,エラストマ相に選択的に分散させることで柔軟性の向上にも
寄与している。
エンプラは燃焼時にシェル構造を形成して延焼を抑制し,無機難燃材は加熱分解時
に吸熱反応で樹脂を冷却する効果を発現する。両作用の相乗効果により、本被覆材料
は産業用ケーブルの厳しい難燃仕様に適合しており,燃焼時にも有毒ガスの発生はき
わめて少ない。
このような複合材料では通常の方法で SEM 像を撮影してもエンプラとエラストマ
の識別が困難で,共連続構造は観察できない。日立金属では,電子染色技術とイオン
ミリング法を活用して,樹脂材料の評価技術を確立した。電子染色は,RuO4 ガスの
浸透作用を用い,エンプラとエラストマへの沈着量の違いで SEM 像のコントラスト
を高める効果を持つ。イオンミリングでは,加速した Ar イオンで,樹脂や添加粒子
など特性の異なる複合材料を,平坦にエッチングすることができる。これらの技術を
併用することで,相構造の観察を可能にし,開発効率の向上につなげている。
日立金属は,高機能な複合材料を開発する技術と,材料に最適な評価・解析技術を用
い,さらに高信頼・多機能ケーブルの開発を進め,産業インフラの発展に貢献していく。
日立金属技報 V o l . 3 3
発 行 日
発 行 元
発 行 人
編 集
2017 年 1 月
日立金属株式会社
〒 108-8224 東京都港区港南一丁目 2 番 70 号(品川シーズンテラス)
電話(03)6774 − 3001(ダイヤルイン案内)
0800 − 500 − 5055(フリーコール)
後藤 良
日立金属株式会社 技術開発本部 開発センター 株式会社 東京映画社
本誌の内容は,ホームページにも掲載されております。 http://www.hitachi-metals.co.jp/rad/rad02.html
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日立金属技報 Vol. 33(2017)
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