法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol.5(2016 年 3 月) 法政大学 町工場のまち - 地域産業の持続・拡張の手法 The city of small factories -The method of the endurance and expansion of the local industry髙橋貴実乃 Kimino TAKAHASHI 主査 赤松佳珠子 副査 網野禎昭・渡邉眞理 法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻修士課程 Nishirokugo, Ota-city is a town of a mixture of houses and factories. The high-rise apartments are going to be built in the sites of demolished factory buildings because of employee's aging and aging in small factories so the town changes into commuter town. In this planning, they reconstruct those small factories simultaneously with public facilities such as public housing, nursery schools and a library.I propose the architecture that improves locality while considering the manner of the coexistence in public facilities and small factories. Key Words : a small factory in a city, mixture of houses and factories, alley, open space, 1.設計概要 2. 工業系の用途地域 敷地である大田区西六郷は住工混在の町である。 新しく建設されるマンションはほとんどの ものが 10 しかし、従業員の高齢化や町工場の老朽化が原因で、町 層を超えており、街の景観を乱しているという事 工場跡地に高層マンションなどが建ち、ベッドタウンに 変化しようとしている。 この計画では町工場に区営住宅・保育園・図書館など の区営の施設を併設しながら、共同建て替えを行う。 公共施設と町工場の共存の仕方を考えながら地域性と高 める建築を提案する。 区内の工場、従業員数の推移 2.町工場の衰退 3.対象範囲 近年、町工場が経営難の傾向がある。その原因として 今回、設計の対象としたのは西六郷三丁目である。こ 1. 高齢化による事業廃止 こは、西六郷の中でも多くの町工場があり、また周辺は 2. 産業の空洞化 築年数の高い住宅が多く建ち並んでいる。 3. 町工場の建築の老朽化 が挙げられる。 上記の理由で事業廃止するに伴い、その土地の使われ方 で以下の問題が起きている 1. 住宅の増加 工場の跡地にマンションが建設され、新しくこの地域 に住む人々が増えており、また、その人々から受ける 音や振動などに対する苦情などにより、今まで通りの 仕事をする事が困難になってきているということ 〜築 10 年 築 11 〜 30 年 築 31 年〜 ① 上図のように、敷地内を歩いてみると二項道路、車は入 れない空き地・路地、駐車場と、この敷地内を巡る空地 の要素を繋げると、接道面ではなく、その奥に広がりを もつ空き地がある事が分かった。道路から細い路地を通 ② り、街区中央にある空地に辿り着くといった空間構成が 多く見られる。 保育園 4.設計趣旨 住宅に囲われた街区の中央の、築年数の高い既存の建 物を抜き、共同建て替えを行い、余白を再構築する。 町工場 ①接道面にヴォリュームを配置する。また、既存の町工 場が多く車の通りが多い道に接して駐車場をつくる。 ②既存住宅に囲われたヴォリュームは保育園、町工場に 近いヴォリュームは既存の町工場のフットプリントを残 して建て替えをする。 ③ ③敷地周辺にある道路と、将来周辺の住宅を建て替えた ときに路地ができるところを想定して、それらと提案す る建築がぶつかるところに小さい広場をつくる。またこ の部分は、土地保有者達が土地を供出した、共有の路地・ 広場となる。 ④既存の住宅や町工場の上層や下層に公共施設を配置し、 担保として貸し出す。そしてそれらは断面的に関係し、 テラスで繋がる。 ④ 住宅内での 一人で暮らすには 空き家部屋問題 既存 大きすぎる住宅 工場主の家 住宅(物置) 工場 住宅 工場従業員 ルームシェア 区営住宅 提案 共有 テラス 工場主 工場 共有 土地所有者 テラス 住宅 公共施設 (保育園) これらをこの街区内に点在して計画する事で、共有の 5.参考文献 路地・広場といったものが、既存の路地や空き地などと 1)大卓立郷土博物館 (1994)『工場まちの探検ガイド 混ざり界隈性を生み出し、地域性を高めるきっかけとな ―大田区工業のあゆみ』 るだろう。 2)彰国社 (2010) 岡本哲志 青木仁 井関和朗 『まち路地再生のデザイン 路地に学ぶ生活空間の再 4.謝辞 生術』 今回、修士設計をするにあたり、様々なアドバイスを 3)彰国社 (1975) 芦原義信『外部空間の設計』 していただいた方々に深くお礼申し上げます。現地調査 4)岩波書店 (1979) 芦原義信『街並みの美学』 でも多くの方々にお世話になり、大変感謝しております。 5)彰国社 (2012) 渡邉眞理 下吹越武人『小さなコミュ そして何より、私の研究したいこと、伝えたいこと、本 ニティ』 設計の魅力を引き出していただき、最後までご指導して 6)大田区ホームページ『二項道路』 いただいた赤松先生、網野先生、渡邉先生には心から感 http://www.city.ota.tokyo.jp/ 謝致します。 seikatsusumaimachinami/douro_kouen_kasen/ こうやって最後まで設計を考えた経験、そしてこの修 douro/dourosyubetsu/douro_Nishi-rokugo.html 士設計は私の人生の誇りです。そして皆さまと共に励ま 7)大田区ホームページ『大田区概要』 しあい、共に学んだ時間は私の人生の宝物です。ありが https://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/ota_p とうございました。 lan/kobetsu_plan/sangyou/sangyoushinkou_ senryaku_kentou/kentou_iinkai/kentouiinkai.files/ kisosiryouichi.pdf
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