地域医療 - 新潟県医師会

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地域医療
訪問看護教育プログラムの実施について
-1人でも多くの訪問看護師の確保・定着と訪問看護の質の向上を目指して-
公益社団法人 新潟県看護協会 常務理事
太
田
昭
子
実施の背景
対象者
2025年を見据え、地域における医療・看護・介
新潟県内の離職中の看護職、または訪問看護ス
護提供体制の改革が進んでいます。誰もが住み慣
テーションに就業している新任看護職、病院看護
れた地域で人生の最終段階まで安心して過ごせる
職の方々を対象としています。再就職をお考えの
ようにするために、新潟県においても、圏域単位
方で訪問看護に関心のある方はもちろんですが、
や市町村において「地域包括ケアシステム」の構
訪問看護ステーションに勤務して間もない方や医
築が図られています。地域包括ケアシステムの構
療機関、施設に勤務している方が在宅療養の実際
築のためには、その人の生活を視野に入れた医療・
を理解する機会として活用いただき、退院支援や
福祉の連携が求められており、なかでも生活と医
地域包括ケアの構築等にも役立てていただければ
療の双方をみることができる訪問看護の役割が重
と考えています。
要と感じておりますが、新潟県においては、在宅
ケアを担う看護職の不足が喫緊の課題となってい
開始時期
ます。そこで新潟県看護協会では、1人でも多く
平成28年11月から開始しています。通年(土、
の訪問看護師の確保及び人材の定着並びに訪問看
日、
祝日を除く)で随時申し込みを受け付けます。
護の質の向上を目指し、協会立訪問看護ステー
受け入れ人数は、1日あたり1名を予定していま
ション1か所に教育機能を位置づけ訪問看護教育
す。開始早々に受講の申込みをいただき、教育ス
プログラムに基づいた事業を実施することとしま
テーションのニーズがあることを感じております。
したのでご紹介させていただきます。
教育プログラムの内容等
実施にあたっての準備
取組にあたっては、担当者が日本看護協会主催
平成27年度から準備を開始し、2回の準備委員
の「訪問看護入門プログラム」説明会へ参加し、
会を開催しました。委員は医師会、教育機関、新
教育プログラムについて理解を深めるとともに日
潟県訪問看護ステーション協議会、県及び新潟市
本看護協会「訪問看護入門プログラム・指導要綱」
の関係する部門等の関係機関にお願いしました。
や先行実施されている各県のプログラム等を参考
今年6月には担当者が、東京都の委託を受けて実
に本協会プログラムを作成しました。
施している都内の訪問看護教育ステーションを訪
訪問看護に興味のある看護職が、そのやりがい
問し、教育活動状況を視察してきました。
や楽しさを知り、訪問看護をやってみようと思え
ることや、従事して間もない看護職が早期に退職
実施場所
している実態もあることから、看護職が自分ので
新潟県看護協会では、
4か所のステーション
(新
きていることを確認し、自信を持つことにつなが
潟市、長岡市、柏崎市、見附市)で訪問看護事業
る等、訪問看護への就業意欲を継続あるいは高め
を展開していますが、そのうちの1か所「訪問看
られる内容としています。
対象者に合わせて3コー
護ステーションにいがた」
で活動を開始しています。
スを設定しています。詳細は、
以下のとおりです。
新潟県医師会報 H29.1 № 802
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A:1日コース(訪問看護お試し体験編)
・訪問看護の見学のみのコース
・訪問看護に興味はあるが、個人的事情等で時間のない人向け
・訪問看護ステーションに就職を考えている人向け
B:2日間コース(入門編)
・訪問看護体験コース
・訪問看護の概論学習と同行訪問1~ 1.5日
・医療機関勤務者や地域包括ケアに携わる人向け
C:2日間コース(実践編)
(新任訪問看護師等)
に対して同行訪問により指導・
・‌訪問看護ステーションに勤務している看護職
助言を行う。
・‌医療依存度の高いケース(人工呼吸器や医療機器を使用、看取りのケア、ストーマケアなど)
の同行訪問で実際のケアを知る。
・同行訪問後は振り返りを行い、自己の課題を知り、認定看護師等が助言を行う。
(日頃の訪問看護についてのリフレクション)
・希望がある場合はフィジカルアセスメントの演習を行う(オプション)
指導者は、訪問看護ステーションにいがた及び
今後の課題等
本協会の訪問看護認定看護師や経験豊富な訪問看
事業として開始しましたが課題もあると感じて
護師が担当します。2名の訪問看護認定看護師を
います。1点目は、費用の確保です。現時点では
中心に受講者の希望や経験に合わせ丁寧に相談、
受講者から受講料をいただくことにしています
指導に当たります。また、教育プログラム修了者
が、特に潜在看護職の方には、自己負担は受講を
には、本協会から修了証を発行します。
躊躇する要因になると思います。地域医療介護総
合確保基金の活用等、行政機関とも情報交換しな
研修費用
がら進めていきたいと考えています。2点目は、
研修は有料になります。受講者から1人1日あ
教育ステーションとしての体制の充実です。訪問看
たり10,000円を負担していただきます。東京都は、
護ステーションにいがたに機能を位置づけました
都として事業を実施しており受講料は無料です。
が、職員体制や施設整備は充分とは言えない状況で
対象者にとってより活用しやすくなるために受講
す。実績等を考慮しながら職員が前向きに取り組め
料助成のための費用を確保することも今後必要と
る環境整備も図っていく必要があると感じています。
考えています。
現在進められている地域医療構想においては、
病床の適正化を図ることとされており在宅医療の
申し込み方法
充実が不可欠となります。充実の要となる医師が
教育プログラムの開始は、新潟県看護協会ホー
不足している新潟県において、協働する立場の看
ムページに公開しています。また、チラシをナー
護職を確保するために、本協会としても当事業や
スセンターおよび県内3か所の相談窓口に配置す
ナースセンター事業を通じて、役割を果たして行
るとともに県内の訪問看護ステーションと病院に
きたいと考えております。初めての試みであり、
送付させていただきました。これらを確認してい
事業展開する中でさまざまな課題が見えてくると
ただきご活用いただければと思います。
思いますが、1つ1つ改善し、充実を図っていき
たいと考えておりますので今後ともご協力をよろ
しくお願い致します。
新潟県医師会報 H29.1 № 802