論 説 - 新潟県医師会

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論 説
診療報酬改定に関するアンケート結果
(病院)
について
新潟県医師会社会保険部部長 吉
川
明
本会では昨年の9月15日から10月14日の期間に
かけて、平成28年度診療報酬改定に関するアン
ケート調査を行った。その集計結果を、病院およ
び診療所の設問ごとに報告したい。
今回のアンケートでは診療所と病院を合わせて
合計587の医療機関より回答をいただいた。先生
方におかれては、忙しい診療の合間の貴重な時間
を使ってアンケートへご協力いただいたと思う。
このことについて、まずもってお礼を申し上げ
たい。
入院に関しては回答をいただいた病院中、46病
院(64%)が減収、26病院(36%)が増収であっ
今号では病院へ行ったアンケートの集計結果、
た。これに対して外来では71病院中39病院
(55%)
次号では診療所へのアンケート結果について解説
が増収、32病院(45%)が減収であった。入院収
する。病院では77施設から回答をいただき、回答
益、外来収益ともにマイナスとなる病院が圧倒的
率は59.2%であった。
ではないかと予測していたのだが、結果としては
微減もしくは微増となった病院が多かった。各病
質問1.‌平 成28年度診療報酬改定後の収支-前
院の経営努力によるところが大きいと思うが、近
年(平成27年)4月~6月期との比較:
年の診療報酬改定が緩やかに社会保障費を抑制さ
せることに成功しているようにも感じられた。ま
た、入院収益、外来収益とも前年比で30%以上減
少している病院があるが、収益を上げることが難
しい病院が実は地域住民や開業医にとって重要な
病院になっていることもある。減収が全体の風潮
として避けられないのならば、収益を上げること
が難しい病院であっても、せめて減少幅が数%の
範囲内で収まるような改定が必要であろう。
なお、昨今、高額薬剤が登場したため、大幅に
薬剤購入費が増えるものと予想したが、72病院中
39病院(55%)に留まった。ただ、オプジーボに
ついては薬価が半額になったとしても、諸外国に
比べてまだまだ高額である(100ミリグラムあた
り日本では約73万円、米国では30万円、英国では
14万円)
。高額薬剤が収支に及ぼす影響について
は、引き続き注視する必要がある。
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質問2.‌入院基本料における該当患者の基準が見
直されたことについて:
7対1入院基本料を算定している15の病院から
回答があった。
今回の改定では、一般病棟用の「重症度、医療・
看護必要度」の項目・基準について見直しが行わ
れており、これまでの該当基準では「A項目2点
以上かつB項目3点以上」が求められていたとこ
ろ、改定によって新たにC項目を追加して「A項
目3点以上又はC項目1点以上」であっても該当
基準を満たすことになった。回答結果については
次のとおりである。
7対1入院基本料の算定基準のうち、看護必要
度が15%から25%、在宅復帰率が75%から80%に
引き上げられたが、引き続き7対1を算定する病
院がほとんどで、10対1に下げると回答した病院
はなかった。しかし、このまま7対1入院基本料
を算定できるのか判断できないと回答した病院も
ある。病院にとって入院基本料を変更しなければ
ならない状況というのは大きな問題であり、その
地域の病床については、地域医療構想における病
床の再編なども含めて考えていかなければなら
ない。
質問3.‌新設された退院支援加算および地域連携
診療計画加算について:
新設された退院支援加算は改定前に入院基本料
の加算点数としてあった退院調整加算に相当する
ものであり、同じく、地域連携診療計画加算は改
定前にあった地域連携診療計画料がそれにあた
る。しかし、特に退院支援加算1は退院調整加算
よりも施設基準が難しくなっており(退院調整加
算の施設基準は退院支援加算2に相当する)
、地
域連携診療計画加算については、それまで医学管
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理料であった地域連携診療計画料と異なって、退
院支援加算1の加算点数となっている。アンケー
トの結果としては次のとおりである。
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退院支援加算1については、約8割の病院が算
それら10病院のうち、すでに求められる実績を
定していない。その理由として、専従の退院支援
7病院がクリアしていたが、3病院が1日6単位
職員を配置できないことや、入院早期の患者家族
以上をクリアできなかった。
との面談ができないことなどがある。このため地
回答のあった病院からは、
「当院では8割以上
域連携診療計画加算も8割がとれていない。
の入院患者が除外対象となる患者(FIM 運動項
これまで地域連携診療計画管理料(900点)を
目得点20点以下、FIM 認知項目得点25点未満、
原資として院内における地域連携の体制を整備し
80歳以上等)であるが、実際に除外できるのはこ
ていたことは想像に難くなく、病院は積極的に地
の中から3割しか認められていない。残りの7割
域連携パスの普及に努めてきたという経緯があ
は本来除外すべき重い状態の患者であるにもかか
る。地域において連携パスが欠かせないものと
わらず、効果にかかる実績の対象として計算を行
なった段階で診療報酬が算定できなくなったとい
わなければならないため、除外対象の見直しをし
うのは、まさに「梯子を外された」思いであろう。
てほしい」との意見も寄せられている。
このことについて、最も影響が大きいパターンと
医療にアウトカム評価が導入されることについ
しては「改定前には地域連携診療計画料(900点)
ては評価が分かれるところである。限りある医療
を算定していたところ、改定後は退院支援加算2
資源を有効に活用したいという考えは医療機関側
(190点)しか算定できなくなった」という事例
も同じであるが、アウトカム評価の結果が悪くな
だが、アンケートを分析したところでは、4件の
ろうとも、医療機関は患者の治療を中止したりは
病院がこれに該当していた。診療報酬によって医
しない。極端な話ではあるが、あえて厳しい枠組
療機関の体制を誘導するというのは国の常套手段
みを設定してアウトカム評価による診療報酬の増
であるが、改定のたびに今回のようなことが起こ
減が制度化されると、実質的に算定できる診療報
れば、高いコストをかけてまで体制を整備すること
酬が際限なく引き下げられてしまうことになる。
に疑問を感じ、
躊躇する病院が増えるのではないか。
仮に今後、他分野でもアウトカム評価を導入する
のであれば、医療機関側からも理解が得られるよ
質問4.‌回復期リハビリテーション病棟における
うな、限られた分野にのみ導入されるべきと考える。
アウトカム評価導入について:
回復期リハビリテーション病棟を有する10の病
設された薬剤総合評価調整加算について:
質問5.‌新
院から回答が得られた。
6種類以上内服薬が処方されている患者につい
て、退院時に2種類以上減薬した場合に評価され
るものである。
これについては43%の病院が算定している。し
かし、6種類以上の薬を2つ以上減らすことは医
学的に困難な例があることから、23%以上は算定
していない。現実的には、この診療報酬の「ねら
い」と思われるような、不要な内服薬の処方は行
われていない。
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ほぼ90%の病院が施設基準(在宅療養支援病院
であること、地域包括ケア病棟入院料等の届出)
をクリアできないため、算定していない。
なお、診療所に行った同じ質問でも同様の回答
傾向であり、中小規模の病院であっても求められ
る施設基準は厳しいと考えられる。
自由記載欄の総括
新設を求めるものとして「終末期ケアにおける
相談支援体制の評価」「チーム医療のメンバーと
してのコメディカルや事務職員の評価」
、算定要
件の見直し等を求めるものとして「重症室環境加
算の要件の拡充」「精神科デイケアの減算要件の
見直し」
「向精神薬多剤投与の減算要件の見直し」
について意見が寄せられた。いずれも加算や算定
への不備や不合理が述べられている。今回の改定
質問6.‌200床未満の病院における地域包括診療
料の算定について:
は10年後の高齢化社会を見据えた地域包括ケアシ
ステムの推進を目指しているが、多くの病院で基
準獲得に難渋している様子が伺えた。
また、本県は佐渡市や粟島浦村といった離島が
あり、そのような地域に立地する医療機関は医療
資源が少ないにもかかわらず広範囲な面積をカ
バーしなければならない。昨今、そのような医療
機関への配慮が後退しているのではないかといっ
た声も寄せられた。このことについては、離島、
山間地、豪雪地帯、過疎地域といった実に様々な
表情を持つ地域の医師会として、本会が強く主張
していかなければならないことのひとつである。
次回は医療と介護の同時改定がある。より明確
で合理的な改定内容が示されることを期待したい。
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