Economic Indicators 定例経済指標レポート

EU Trends
フランス大統領選に新たな波乱の芽
発表日:2017年2月3日(金)
~フィヨン候補が失速、アモン候補が急浮上~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ 共和党は不正報酬疑惑のフィヨン候補に代わる候補者を擁立する可能性が高まっている。社会党予備
選を制したアモン候補の躍進と相俟って、大統領選の行方は混沌としている。決選投票進出の切符は、
今のところ国民戦線のルペン候補と独立系のマクロン候補の2人がリードしているが、共和党が新た
な候補で巻き返しを図る可能性や、社会党のアモン候補がこのまま大逆転劇を演じる可能性もある。
フランス大統領選挙の初回投票まで80日を切った。当初、次期大統領に最も近いとされた共和党のフィ
ヨン元首相は、妻が議員スタッフとして不正に報酬を受給していたとの疑惑が響き、世論調査で19~21%
程度まで支持を落としている(図表1)。疑惑が発覚した1月末、フィヨン候補は潔白を主張、正式に告
訴されれば身を引くことを示唆し、共和党に2週間の猶予を求めた。だが、その後に子供の不正報酬疑惑
も浮上、捜査が長引けば選挙戦に影響しかねない。共和党内には同氏の立候補取り止めを求める声が広が
っている。同氏が立候補を取り止めた場合、共和党がどの候補を擁立するかについて予め定められた手順
はない。再び予備選を行なう時間的な余裕がないため、党執行部が選考に大きな影響力を持つ可能性が高
い。予備選の決選投票でフィヨン候補に敗れたジュペ元首相を筆頭に、サルコジ政権下で財務相や経済相
を歴任したバロワン氏、2015年12月のノル・パ・ド・カレ=ピカルディ(現オ・ド・フランス)地域圏
(レギオン)議会選挙で国民戦線のルペン党首を破ったベルトラン氏、サルコジ政権下の教育相で首都パ
リを中心としたイル・ド・フランス地域圏議会議長を務めるペクレス氏などの名前が挙がっている。
最近の世論調査でもう1つ見逃せない動きが、社会党予備選を制したアモン元教育相の躍進だ。当初、
1桁台の支持率で低迷していたが、最新の世論調査では17~18%まで伸ばし、フィヨン候補に迫っている
(前掲図表1)。敗戦ムードが濃厚だった社会党内には、オランド政権下の経済相で独立系候補として立
候補したマクロン氏に鞍替えする動きも見られたが、自党の候補が決選投票に進出する芽が出てきたこと
で、今後一部がアモン候補支持に回る可能性がある。ただ、マクロン候補を支持する党内中道派が、党内
最左翼に位置するアモン候補の支持に回るかは不透明なところもある。加えて、左翼党から立候補してい
るメランション候補が立候補を取り止め、イデオロギーが近いアモン候補支持に回れば、同氏の支持はさ
らに拡大する。とは言え、メランション候補はアモン候補を支持する条件として、社会党内の中道派議員
が6月の国民議会選挙に立候補しないことを求めており、今のところ両党が共闘する可能性は低い。
フィヨン候補の不正報酬疑惑の浮上により、現時点での大統領選の最有力シナリオは、国民戦線のルペ
ン候補と独立系のマクロン候補が決選投票に進出し、マクロン候補がルペン候補を破って大統領に就任す
るとのものだ(図表2)。ただ、今後共和党が新たな候補を擁立して巻き返しを図る可能性があるほか、
アモン候補がこのままの勢いで共和党候補やマクロン候補を逆転する可能性も残る。ルペン候補とアモン
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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候補が決選投票で対峙する世論調査はこれまでにないが、その場合、行き場を失った中道票がどう流れる
かは全く読めない。選挙戦の行方は混沌としている。
(図表1)フランス大統領選の世論調査(初回投票)
【バイルー候補出馬】
30
25
ルペン(国民戦線)
20
フィヨン(共和党)
15
マクロン(アン・マルシュ)
10
メランション(左翼党)
5
バイルー(民主運動)
アモン(社会党)
2017/2/2
2017/2/1
2017/1/31
2017/1/27
2017/1/8
2017/1/6
2016/12/3
2017/1/4
0
【バイルー候補不出馬】
30
25
20
ルペン(国民戦線)
15
フィヨン(共和党)
10
マクロン(アン・マルシュ)
アモン(社会党)
2017/1/20
2017/1/15
2017/1/31
0
2017/1/27
メランション(左翼党)
2017/1/4
5
出所:各種世論調査より第一生命経済研究所が作成
(図表2)フランス大統領選の世論調査(決選投票)
2017/2/2
2017/2/1
2017/1/31
20
2017/1/27
20
2017/1/6
20
2017/1/20
30
2016/12/3
40
30
2016/4/15
40
30
2016/1/15
40
2017/2/2
50
2017/1/31
50
2017/1/6
50
2017/1/20
60
2016/12/3
60
2016/11/28
60
2016/6/17
70
2016/11/25
70
2016/5/16
70
2016/4/14
マクロン(アン・マルシュ)
(%)
80
フィヨン(共和党)
2017/1/27
ルペン(国民戦線)
2017/1/20
マクロン(アン・マルシュ)
(%)
80
ルペン(国民戦線)
2017/1/6
フィヨン(共和党)
(%)
80
出所:各種世論調査より第一生命経済研究所が作成
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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