慢性腎臓病に伴う骨ミネラル 代謝異常症の病態解明 ー今後の新規治療法開発に向けてー 和歌山県立医科大学 先端医学研究所 分子医学研究部 河上和紀・武下愛・坂口和成 背景 慢性腎臓病における骨ミネラル代謝 ー副甲状腺ホルモン・FGF23・ビタミンD・リンの代謝ー ↑副甲状腺ホルモン ↑副甲状腺ホルモン ? ↑ FGF23 全身に対する作用 骨に対する作用 • 骨脆弱化・骨折 • 骨の痛み • 骨の繊維化 ↑リン ↓活性型ビタミンD 慢性腎臓病 • • • • • 動脈硬化症 心弁膜症 異所性石灰化 皮膚搔痒症 その他 慢性腎臓病におけるFGF23 • 血中FGF23値の上昇は腎臓病のもっとも初期に見い だされる異常である。 • 初期の血中FGF23値の上昇は血中リンのレベルを低 下させ、その後リン値を慢性腎臓病の末期まで正常範 囲に保つ。 • 初期のFGF23値の上昇は血中活性型ビタミンD値を 低下させ、二次性副甲状腺機能亢進症を発症させる。 • FGF23の副甲状腺に対する直接作用:議論有り。 FGF23シグナル伝達とは? 細胞表面でのシグナルの受容は受容体により行われる FGF23 FGF23 FGF23 FGF23 FGF23 FGF23 受容体 受容体 受容体 FGF23の受容体はFGFR1-4とKlothoから成る Klothoの発現臓器は腎臓や副甲状腺に限られている 細胞外 細胞膜 細胞質 細胞内のシグナル伝達 細胞外 細胞膜 細胞質 pERK 核膜 核内 Ki67 細胞増殖へ 方法および結果 Scientific Reports 7, 40534; doi: 10.1038/srep40534 (2017) マウスにおける研究はヒトの病気の 病態の解明や治療法の開発に有用 ヒトにおける診断および 治療法の問題点の提起 病態の解明 診断および治療法の開発 各種代謝異常疾患 遺伝子改変マウスの作製 病態モデルマウスの作製 慢性腎臓病モデルマウスを使った実験 副甲状腺特異的FGF23受容体 (FGFRお よびαKlotho) ノックアウトマウスの作製 + 高リン食 慢性腎臓病モデル 生誕 0 片腎摘出 離乳 高リン食 正常食 4 8 12 採血・組織の採取 24 週齢 コントロール 生誕 0 離乳 4 正常食 週齢 採血・組織の採取 24 副甲状腺でのFGF23の作用を阻害した慢性腎臓病マウス では、副甲状腺の細胞増殖が抑制される pERK αKlotho DAPI & Ki67 αKlotho non-CKD, cKO CKD, non-cKO CKD, cKO Fgfr1-4 Fgfr1-3 Fgfr1-4 Fgfr1-3 増殖シグナルのマーカー 細胞増殖マーカー non-CKD, non-cKO CKD: 腎臓病モデルマウス cKO: 副甲状腺特異的 FGF23受容体ノッ クアウトマウス 慢性腎臓病マウスでは、FGF23受容体を副甲状腺 特異的に欠損させることにより副甲状腺ホルモンの 分泌が低下する (副甲状腺ホルモン) 副甲状腺長期培養 培地 200 μL コラーゲンゲル 副甲状腺 培地の収集 と副甲状腺 組織の固定 FGF23 前培養 16 h 2h 2h ① ② 基礎分泌 の測定 1 mM Ca 培地 : 培地の収集および交換 24h ① 短期刺激 後の分泌 測定 24h ② 24h ③ 24h ④ 長期刺激 後の分泌 測定 0.95 mM Ca, +FGF23 (100 ng/mL) or +生理食塩水 副甲状腺培養系でも同様の結果が得られた Ratio (versus 2-h basal) FGF23の副甲状腺ホルモン分泌に対する作用 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 (n) *** Vehicle FGF23 NS * (6) (7) (6) 1h (7) (6) 13 h *P<0.05; ***P<0.001 (7) NS, not significantly different 4th day 培養4日目におけるFGF23の副甲状腺ホルモン分泌に対する作用 10 8 6 4 2 0 (n) 12 Ratio (24-h secretion/2-h basal) Ratio (24-h secretion/2-h basal) *** *** 12 (7) (7) (6) (5) FGF23 Vehicle Fgfr1-3 *** *** 10 non-cKO cKO 8 6 4 2 0 (n) (5) (5) (6) Vehicle αKlotho (6) FGF23 副甲状腺ホルモン分泌細胞がFGF23刺激で増殖する ことにより一個体内のホルモン分泌量が増加する 副甲状腺細胞 1 2 4 8 今後の期待 FGF23をターゲットとした治療法への期待 ↑副甲状腺ホルモン ↑副甲状腺ホルモン ↑ FGF23 全身に対する作用 骨に対する作用 ↑リン • 骨脆弱化・骨折 • 骨の痛み • 骨の繊維化 ↓活性型ビタミンD 対処が必要 慢性腎臓病 • • • • • 動脈硬化症 心弁膜症 異所性石灰化 皮膚搔痒症 その他 慢性腎臓病の治療 • リン摂取制限 • リン吸着薬 • 活性型ビタミンDアナログ • 副甲状腺のカルシウムに対する感受性を高めることに よるホルモン分泌抑制薬 • 提案:FGF23の分泌阻害薬または作用拮抗薬を開発 する。リン摂取制限およびリン吸着薬と併用する。 ご静聴ありがとうございました
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