2014冬のボーナス予想調査

平成26年12月
月月
2014冬のボーナス予想調査
「増えそう」が増加するも、消費を控える傾向強まる
今年 4 月の消費税増税により落ち込んだ景気は、円安の効果で業績が改善する企業もあり、
徐々に持ち直しているとみられている。しかしながら、円安や原材料価格の上昇などによる
食料品の値上げが相次いだこと、物価上昇による実質賃金の減少などにより、個人消費の回
復は遅れている。
このような状況の中、当研究所では、今冬のボーナスについてアンケート調査を実施した。
「冬のボーナス調査」は今回が23回目となるが、2011年から調査方法をインターネット調査
に切り替えている。
【調査結果のポイント】
1. 今年の冬のボーナス予想は、
「増えそう」が昨年に比べて9.2ポイント(以下、p)増の
22.8%、
「減りそう」は6.0p減の16.6%となり、支給予想に改善がみられている。
2.ボーナスの使いみちでは、昨年に続き、「貯蓄・資産運用」(62.0% 昨年比+0.5p)が
最も多く、
「ローン・借金の返済」(34.6% 同▲0.6p)、「買い物」(29.3% 同▲4.9p)
、
「生活費補填」
(25.7% 同▲7.8 p)と続いた。
3.ボーナスの使いみちとして最も回答の多かった「貯蓄・資産運用」の中で、具体的に
選ぶ商品は「預貯金」が91.9%と圧倒的に高かった。
4.ボーナスで買う予定のものは、
「洋服」(40.2% 昨年比▲8.4p)が最も多く、「靴・バ
ック」
(24.6% 同+2.9p)
、
「食材・おせち料理」(23.0% 同+10.7p)と続いた。
【調査概要】
1. 調査対象:熊本県内在住 20~50 代のボーナスを支給される予定の人(世帯)
2. 調査時期:2014 年 11 月 1 日~6 日
3. 調査方法:調査会社登録モニターへのネット調査(調査会社:㈱マクロミル)
4. 有効回答:416 人
5. 回答者の属性(人・%)
未既婚
全体
全体
男性
女性
416
100.0
208
100.0
208
100.0
未婚
101
24.3
51
24.5
50
24.0
年代
既婚
315
75.7
157
75.5
158
76.0
20代
90
21.6
38
18.3
52
25.0
30代
118
28.4
66
31.7
52
25.0
勤務先*
40代
104
25.0
52
25.0
52
25.0
50代
104
25.0
52
25.0
52
25.0
民間事業 民間事業
公務員・独
所・団体
所・団体
立行政法
(本社熊本 (本社熊本
人
県内)
県外)
83
20.0
51
24.5
32
15.4
232
55.8
113
54.3
119
57.2
92
22.1
41
19.7
51
24.5
その他
9
2.2
3
1.4
6
2.9
勤務先*:未婚者には自身の勤務先を、既婚者には主に家計を担っている人の勤務先を尋ねた
1
2014冬のボーナス調査
平成26年12月
1.今年の冬のボーナス予想
今年の冬のボーナス増減予想は、昨年と比べて「ほぼ同じ」が 3.2p 減少の 60.6%と最も
高くなった。また、
「増えそう」は 9.2p 増加の 22.8%となり、1992 年の調査開始以来最も高
い比率となった。さらに「減りそう」は 6.0p 減少の 16.6%であり、昨年よりもボーナスの
支給予想に改善傾向がみられている(図表 1)
。
次に、支給月数の予想をみると「1.5ヶ月分超~2ヶ月分以下」が25.0%と最も高く、全体
の4割が「1.5ヶ月分以下」と予想している。また、昨年と比べると「1ヶ月分以下」で2.1p
増加の19.5%、
「2ヶ月分超~2.5ヶ月分以下」で1.5p増加の17.1%となった。
勤務先別にみると、公務員は、人事院および熊本県・市人事委員会の勧告により、期末・
勤勉手当が0.15ヶ月分引き上げられることを受け、大きく改善した。また、県内に本社があ
る企業は、
「1ヶ月分以下」で昨年に比べて2.6p増加している。大都市では、アベノミクス効
果により、ボーナスを増額する企業が多くみられるものの、本県においてはまだ少ないと思
われ、今冬のボーナスについて、慎重な見方をする人が多いようである。一方、県外に本社
がある企業は、
「1.5ヶ月分超~2ヶ月分以下」
「2ヶ月分超~2.5ヶ月分以下」の増加を予想す
る割合が昨年に比べて大きくなっている。(図表2)
。
図表1 ボーナスの増減予想推移
今回
昨年
40%
22.8
60%
80%
60.6
13.6
16.6
63.8
22.6
2012年
8.7
2011年
10.3
54.8
34.9
2010年
9.1
55.6
35.3
2009年
5.5
2008年
4.9
51.2
40.0
41.9
52.6
62.2
増えそう
32.8
ほぼ同じ
0%
100%
減りそう
全体
20%
民間
民間
(本社県 (本社県 公務員・
独法
内)
外)
0%
図表2 支給月数予想(勤務先別)
20%
今回
19.5
昨年
17.4
40%
20.0
21.3
今回 6.0
0.0
昨年
18.1
2.1
今回
25.4
昨年
22.8
今回
21.7
昨年
20.8
60%
80%
25.0
17.1 4.6 13.9
25.1
15.6 7.7 12.9
48.2
22.3
28.0
17.7
22.8
1ヶ月分以下
1.5ヶ月分超~2ヶ月分以下
2.5ヶ月分超
20.8
3.6 14.5
27.7
39.4
12.0
100%
23.9
22.8
15.1
12.9 3.9 12.1
13.2 5.1 12.2
18.5
14.2
5.3 12.8
7.6
15.1
17.4
14.2
1ヶ月分超~1.5ヶ月分以下
2ヶ月分超~2.5ヶ月分以下
わからない・答えたくない
2
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平成26年12月
2.ボーナスの使いみち
次に、ボーナスの使いみちをみると(複数回答)、
「貯蓄・資産運用」が 62.0%と最も高く、
以下「ローン・借金の返済」
(34.6%)
、
「買い物」
(29.3%)、
「生活費補填」
(25.7%)と続いて
いる。
項目ごとに昨年と比べると、
「買い物」
「子供の教育費」
「外食」
「保険料支払」などで2~5p
減少しており、多くの項目で支出を抑えようとしていることがうかがえる。また、
「生活費補
填」は昨年に比べて7.8p減少の25.7%だった。相次ぐ食料品の値上げなどで、購入を控える
人もいると思われ、日頃から生活費を引き締めていることが推察される。
増加した項目をみると、
「海外旅行」が昨年に比べて0.9p増加したことが目を引く。今年の
年末年始は最長で9連休になるなど日並びがよいことから、正月の休暇で海外旅行を計画する
人もいるようである。また、
「貯蓄・資産運用」は昨年同様ボーナスの使いみちの1位である
が、0.5 p増と微増であった(図表3)
。
図表3 ボーナスの使いみち (複数回答)
0
20
40
34.6
35.2
29.3
34.2
25.7
33.5
ローン・借金の返済
買い物
生活費補填
外食
保険料支払
国内旅行
自己投資
海外旅行
住宅補修・改修
その他
未定
80 (%)
62.0
61.5
貯蓄・資産運用
子供の教育費
60
14.7
17.1
10.6
13.9
10.1
12.4
10.1
10.9
4.1
3.5
2.4
1.5
1.9
1.7
4.1
2.2
6.5
6.5
今回
昨年
このように、ボーナスの支給状況は改善傾向にあるものの、今年4月の消費税引き上げや物
価上昇による食料品や生活必需品の値上げなどで、支出の増加を感じる人が多いと推察され、
家計を引き締め、将来に向けての貯蓄や資産運用を増やす傾向が見受けられる。
さらに、ボーナスの使いみちを男女別にみると、
「買い物」「外食」において、女性が男性
を上回っていることが目立つ。また、昨年と比較すると、女性は「貯蓄・資産運用」で1.9p
増加し、
「買い物」
「外食」
「保険料支払」で4p以上減少している。これらのことから、多くの
女性は、日常の買い物を通じて家計の負担増を実感しているものと推察される。また、男性
3
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平成26年12月
は「国内旅行」で昨年比0.4p増加、女性は「自己投資」
「海外旅行」でそれぞれ1.9p増加した。
自分磨きや旅行には、引き締め意向は及んでいないようである(図表4)
。
次に、ボーナスの使いみちのうち「最も金額が大きいもの」を尋ねたところ、
「貯蓄・資産
運用」が42.4%、
「ローン・借金の返済」が23.1%となり、この2項目で全体の7割近くを占め
ている。
昨年と比較して増減に大きな変化はみられないものの、
「買い物」
が昨年に比べて1.1p
減少しており、ここでも家計の引き締め傾向がうかがえる(図表5)。
図表4 ボーナスの使いみち(男女別) (% 複数回答)
順位
使いみち
1
貯蓄・資産運用
2 ローン・借金の返済
3
買い物
4
生活費補填
5
子供の教育費
6
外食
7
保険料支払
7
国内旅行
9
自己投資
10
海外旅行
全体
62.0
34.6
29.3
25.7
14.7
10.6
10.1
10.1
4.1
2.4
男性
昨年比
62.0
-1.1
34.1
-3.8
24.0
-4.7
25.0
-9.4
16.8
-3.2
7.7
-1.5
9.1
-0.1
9.1
0.4
3.8
-0.8
1.0
-0.1
女性
昨年比
62.0
1.9
35.1
2.4
34.6
-4.8
26.4
-6.3
12.5
-1.9
13.5
-4.8
11.1
-4.3
10.6
-1.9
4.3
1.9
3.8
1.9
図表5 最も金額の大きいボーナスの使いみち (%)
順位
使いみち
今回
昨年
差
1
貯蓄・資産運用
42.4
42.3
0.1
2
ローン・借金の返済
23.1
25.7
-2.6
3
生活費補填
9.3
9.4
-0.1
4
子供の教育費
5.4
5.2
0.2
5
買い物
3.6
4.7
-1.1
6
保険料支払
2.3
2.6
-0.3
6
国内旅行
2.3
1.8
0.5
8
住宅補修・改修
1.5
1.6
0.0
9
海外旅行
1.0
1.0
0.0
10
自己投資
0.8
0.5
0.3
11
外食
0.3
0.5
-0.3
12
その他
2.3
1.6
0.8
13
未定
5.7
4.7
1.0
4
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平成26年12月
3.
「貯蓄・資産運用」、
「買い物」の予定
ボーナスの使いみちとして「貯蓄・資産運用」を選んだ258人に対して、
「貯蓄・資産運用」
への総額を尋ねたところ、
「10万円以下」が29.1%と最も高く、次いで「10万円超20万円以下」
が27.1%となった。昨年との比較では、
「30万円超50万円以下」が+3.1p、
「50万円超」で+
2.6pとなり、貯蓄・資産運用に充当する金額を増額する傾向が見受けられる(図表6)
。
さらに、具体的に選ぶ商品を尋ねたところ、
「預貯金」が91.9%と最も高く、
「預貯金」以
外の商品については1割以下となった。将来の支出に備えて資産を貯めておきたいという意識
が強いと思われ、リスクを避け、安全性を重視する傾向が強いようである(図表7)
。
図表6 貯蓄・資産運用への総額
(今回 n=258、昨年 n=248)
0%
20%
今回
29.1
昨年
29.8
40%
60%
27.1
80%
12.0
29.4
12.0
13.3
100%
7.8
12.0
8.9 5.2
13.3
10万円以下
10万円超~20万円以下
20万円超~30万円以下
30万円超~50万円以下
50万円超
未定
図表7 貯蓄・資産運用で選ぶ商品
(複数回答 今回 n=258、昨年 n=248)
0
20
40
60
80
91.9
93.1
預貯金
株式
投資信託
保険商品
FX(外国為替証拠金取引)
外貨建て商品(外貨預金・MRFなど)
公共債・社債
その他
具体的には未定
6.6
6.9
5.0
4.4
3.1
0.8
2.3
2.8
1.6
1.6
0.8
2.0
0.8
0.0
5.4
3.6
(%)
100
今回
昨年
5
2014冬のボーナス調査
平成26年12月
次に、ボーナスの使いみちとして 3 番目に多かった「買い物」を選んだ 122 人に、何を買
うかを尋ねると、
「洋服」が 40.2%と最も高く、以下「靴・バッグ」
(24.6%)、
「食材・おせ
ち料理」
(23.0%)
、
「家具・インテリア用品」
(13.9%)と続いた。昨年と比較すると、
「洋服」
は▲8.4 p となり、
“不要不急”な支出を控える傾向が見受けられた。また、
「食材・おせち
料理」は+10.7 p であることが目につく。日常の食費は抑えるものの、正月などの祝い事に
はお金をかけたいという人が多いようである(図表 8)
。
さらに、ボーナスから買い物への支出総額を尋ねると、
「5 万円以下」が昨年と比べて 2.1 p
減少の 38.5%と最も高く、次いで「5 万円超 10 万円以下」が 0.1 p 減少の 30.3%となった。
年代別にみると、
「未定」が 40 代で 37.5%、50 代で 13.3%となっている。これらの年代は、
教育費などの支出が大きいため、実際の支給額をみて、買い物に使う金額を検討する人が多
いと思われる(図表 9)
。
図表8 買う予定のもの
(複数回答 今回 n=122、昨年 n=138)
図表9 買い物への支出総額
(%)
0
20
40
40.2
洋服
靴・バッグ
食材・おせち料理
家具・インテリア用品
パソコン・タブレット端末
時計・アクセサリー
AV機器
スマートフォン
冷暖房器具
車・バイク
学用品
その他家電製品
その他
具体的には未定
12.3
13.9
12.3
10.7
13.0
7.4
8.7
6.6
5.1
5.7
5.8
4.1
8.7
3.3
3.6
2.5
5.8
1.6
6.5
4.1
5.8
24.6
21.7
23.0
0%
60
48.6
20%
今回
(n=122)
38.5
昨年
(n=138)
40.6
20代
(n=36)
41.7
40%
60%
80%
11.5
1.6
30.3
30.4
100%
3.3
14.8
2.2
10.9
12.3
3.6
2.8
5.6 8.3
41.7
0.0
30代
(n=32)
今回
昨年
40代
(n=24)
37.5
25.0
34.4
25.0
15.6
3.1
6.3
3.1
37.5
8.3 4.2
0.0
23.8
22.5
50代
(n=30)
46.7
5万円以下
10万円超20万円以下
30万円超50万円以下
16.7
16.7
3.3
3.3
13.3
5万円超10万円以下
20万円超30万円以下
未定
おわりに
今年の冬のボーナス予想においては、円安効果などで業績が改善した企業もあり、支給状
況に改善傾向がみられた。しかしながら、消費税増税や物価上昇などの影響で日用品などの
価格は値上がりしており、日常の買い物についても、支出を控える人が多いと推察され、家
計の負担感は大きくなっている。
そのため、ボーナスの支給額が増額になっても消費は控え、
将来に備えて貯蓄を増やすといった堅実な使いみちを検討している人が多いようである。
6