松山バレエ団について 2017.2.2

松山バレエ団
日本の松山バレエ団と言えば、すこし年上の方ならみんな知っているほど著名なバレエ団で、日中友好のた
めに多大な貢献をした日本の民間団体のことです。
著名?どこまで著名ですか?松山バレエ団は1958年から、13回ほど中国を
訪問し、中国各地で何百回も公演し、かつ何度も毛沢東主席、周恩来総理など
中国共産党と国家最高指導者とも面会し、当時の中国では知らない人がいない
ほど有名です。
松山バレエ団の偉大さのひとつは、世界で初めてバレエ劇「白毛女」を上演したことです。上海舞踊学校は19
64年に映画「白毛女」をベースにバレエ劇「白毛女」を創作し、1965年に初めて公演しました。しかし、松山バ
レエ団はその10年前に、すでにこの劇を日本のバレエの舞台で公演し、かつ1958年に初めて中国を訪問した
時にも公演しました。このため、毛沢東主席は松山バレエ団の団長と面会した際、彼らのことを「大先輩」と絶賛
したのです。1つの外国の芸術団体として、十年一日のごとく、日中両国友好のためにこんな大きな役割を果た
し続けているのは、空前絶後としか言えません。いままで、誰もやったこともなく、やろうとしてもできないことだと
思います。
松山バレエ団は東京の南青山にあり、建物は大変格調高い建築物です。トラブルを
避けるため、入口およびその周囲には表札も看板も全くありません。
松山バレエ団は清水正夫氏とバレリーナである松山樹子氏が1948年に創立しました。2013年に公益財団法
人になり、総代表は清水正夫氏の息子である清水哲太郎氏で、その夫人の森下洋子さんが団長を務めていま
す。劇団のレパートリーは「白鳥の湖」、「くるみ割り人形」、「眠れる森の美女」、「ドン・キホーテ」、「コッペリア」、
「シンデレラ」、「ジゼル」、「ロミオとジュリエット」など、すばらしい演目ばかりで、もちろん「白毛女」もあります。
東京の松山バレエ学校の稽古場は「ムーセオン」を呼ばれています。名前の由来はギリシア
神話に出てくる女神ムーサを受けた知性に関する土地のことです。
団長の森下洋子さんについては、松山バレエ団とともに、知らない人はいません。彼女は1948年に広島市で
生まれ、三歳からバレエを学び、1974年にハンガリーのヴァルナ国際バレエコンクールで日本人初の金メダル
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を獲得。1985年にロンドンのローレンス・オリビエ賞を獲得した日本の最も有名なバレリーナで、日本のバレエ
のために世界の舞台で活躍し巨大な貢献をされました。今年すでに68歳というご高齢の洋子さんが現役のバレ
リーナとして舞台に活躍し、人々に敬服の念を抱かせています。
ここで、二十数年前の個人的な思い出をみなさんにご紹介します。1994年、松山バレエ団が大好きだった私
は「くるみ割り人形」の公演チケットを購入しました。しかしその時、娘はまだ 1 歳未満で、片時も目が離せない状
態でした。公演は、ちょうどクリスマス・イブの日だったので、やむを得ず、娘を近くの日本の友達に預かっていた
だき、夫婦二人でバレエの鑑賞に出かけました。主人公のクララ役は、もちろん森下洋子さんが演じていました。
舞踊の芸術が巧みで完璧で、演目も人々を大変感動させました。終わってから帰宅して分かったのは、娘がお
母さんを探し続け、泣き続けていた、ということでした。とてもかわいそうなことをしてしまったと、妻は、すばらしか
ったバレエの想い出とともに、娘一人を置いていったことを大変後悔したのでした。
2017年松山バレエ団の新春公演チラシ
2017年1月、松山バレエ団が東京のNHKホールで「新白鳥の湖」を上演することになりました。今回は、バレ
エ団及び「日中児童の友好交流後援会」のご招待を頂戴いただき、会場まで足を運ぶことができまして、たいへ
んうれしく感謝しています。
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特定非営利活動法人日中児童の友好交流後援会から
届いた招待状と公演チケット。
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観劇のため用意した双眼鏡
公演は、1月27日、ちょうど旧暦の除夜(大晦日)の日でした。夜のとばりが訪れたころ、渋谷の街の灯は劇場
の近くにまでロマンチックな情緒を醸し出していました。ホールまでの道を歩きながら、観客達がいろいろな方向
から、続々と劇場に集まり始めている様子が、これから鑑賞する芸術へのわくわくとした高揚感をさらに掻き立て
ます。
NHKホールに入場する観客たち
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NHKホールは1972年11月に東京の渋谷に建設されました。この劇場の観衆席は三階席まであり、全部で3,
600席もあります。大晦日のテレビで生中継される紅白歌合戦、クラシック音楽コンサートやバレエ公演がこのホ
ールで行われています。
夕やみの中のNHKホール前にはすでにたくさんの観客たちが集まっていました。そして17:45開場。ホール
のロビーには、個人や関係団体から贈呈された花がきれいに飾られています。人々が劇場に入ると、至る所に
興奮と期待があふれています。この夜の演奏を担当するのは新東京フィルハーモニック管弦楽団で、オーケスト
ラボックスではすでに事前の音合わせが始まり、その調整する各種の楽器の音が、更に観客の胸を高めていま
した。
舞台の片側から劇場全体を望みます
日本の有名なファッションデザイナー森英恵氏からの贈呈花
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ホールの入口に置かれた公演のタイムテーブル
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演目の筋の説明とスチール写真
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2階の観衆席から
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舞台の前のオーケストラボックス
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18:30、場内の照明がだんだん暗くなり、音楽の演奏が始まりました。ステージの赤い緞帳があがり、「白鳥の
湖」の序幕が始まりました。すでに、劇の筋については、みなさん熟知されていらっしゃることと思い、ここでの説
明は省かせていただきます。劇の舞台装置、衣装の豪華さは、さすが松山バレエ団、と感動しました。特に森下
洋子さんの演技は、満場の観衆に感動を与えます。彼女の一挙手一投足は、バレエのすべての技術力と演技
力を持っている人だけが持つ巧みさと完璧さを表現しています。彼女は一人で白鳥のオデット姫と黒白鳥のオ
ディールの2役の、性格のはっきり異なる役を舞い分け、オデット姫の優しさと苦しみ、オディールの妖艶さと険し
さ、すべてを、徹底的に表現しています。このような舞台は森下洋子さんにとってすでに枚挙にいとまがないの
でしょうが、彼女の舞う姿は、全身全霊の集中により表現されており、ひとかけらのすきもない完璧さの造形で、
それが人々を感動させてやまないのです。
特筆すべきところは、この劇の終わり方です。通常のこの演目の場合、最後は、ジークフリート王子とオデット
姫が共に湖の中に身を投じるという悲劇的な結末で、ジークフリード王子とオデット姫が幸せに暮らすというエン
ディングもあります。今回の松山バレエ団の公演で表現されたのは、ジークフリート王子と魔王が決闘する際、オ
デット姫と白鳥たちは力の限りを尽くして王子を助け、ついに魔王を打ち負かして平和な世界を作りハッピーエ
ンドを迎える、というものでした。ここからも松山バレエ団が、民衆の価値を重んじ、理想的な社会づくりを追求す
る理念を、自らが演じる「バレエ」で追及していることがよくわかります。
今回の座席は、2階の左側でした
3時間近くのすばらしい公演が終わり、すべての団員たちがカーテンコールに応えて観衆の前に挨拶に現れ
ます。一回、また一回と現れるたびに、出演者の皆様を、観客たちの大きな感動を表す大きな拍手が包みこみま
した。
今回、公演を観て、私はふたたび松山バレエ団、そして森下洋子さんに近づくことが出来ました。劇場の中に
は、たくさんの若者や学生さんたちがいました。その、みなさんが感激している様子を拝見し、松山バレエ団のク
ラシックの舞台芸術に献身するすばらしい精神は、必ずや若い世代に継承され、実を結んでいくであろうと感じ
させてくれました。同時に、公演を観に来ていた人々の中に、たくさんの中国の人々がいることに気がつきました。
大先輩の清水正夫氏と松山樹子氏の日中友好に捧げたご努力が、たくさんの日中の若者たちに受け継がれ、
さらにますます発展していくであろうことを確信した次第です。そして、松山バレエ団が、日中両国の国民の交流
を促進するために捧げてこられた多大なる貢献は、すでに多くの人々の心の中に響き渡っていることを確信した
のでした。
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このたび、ご招待チケットを頂戴しましたことに、心より厚く御礼申し上げます。松山バレエ団の舞台芸術のま
すますの発展を祈ります。そして、最後に、人類の真・善・美を一生追及する偉大なる芸術家森下洋子さんに心
からの感謝を捧げます。本当に有難うございました。
(文/撮影:黄 程陽 2017年新春)
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