産業給食における炊飯方法についての研究

(16)
労働科学 4
4巻 1 号(1
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5
産業給食における炊飯方法についての研究
(集団給食に関する研究一一第 6報
〉
高木和男ネ
土元喜美子料
高橋貴美子**
STUDIESONTHERICEBOILINGINTHEINDUSTRIALFEEDING
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)
By
KazuoTAKAGI*, KimikoTSUCHIMOTO
料 & KimikoTAKAHASHI**
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I はじめに
は穂のまま貯蔵されたようである。安藤氏によれば,稲
こきが行なわれ初めたのは,延喜の頃( 900年頃)から
集団給食において,その給食に必要な労働力を推定し
であろうとのことであって,この頃から稲の根刈りも千子
,必
ようとする場合,各調理作業の科学的検討にょっ τ
なわれるようになり,籾米の精自には加良宇須(カラウ
要な作業量を各調理毎に知ることが必要となる。この第
ス,確)が用いられるようになったとのことである。から
一着手として,複雑な各種の調理作業のうち,多くの集
うすは本来製粉用のものであるから,籾米をこれにかけ
団給食場で毎日必ず行なわれている炊飯作業についてし
て精白する場合,かなり粉米もできたはずで,それを防
らベた。
ごうとすれば,米の精白はかなり不完全のものに止まっ
日本人の文化は稲の栽培の発展とともに向上して,今
たであろう。カラウスが籾摺り専用に用いられるように
に至ったといっても決して過言ではない。しかし,米を
なったのは足利時代からであろうといわれる。米が玄米
いかに調理して食べるかということは,時代とともに変
として貯蔵される習慣になったのは,江戸時代に入る少
って来ている。
し前からで,足利一戦国時代にかけてのことではないか
ごく古くは稲穂が摘まれて,穂のまま臼に入れられ,
と思われる。なお米の完全精白の普及は江戸の元緑時代
。
) この頃は米
堅杵で揖いて脱殻,精米が行なわれた 1)2
(
1
7
0
0頃)からといわれる。これは国民病としての脚気‘
中労働科学研究所・労働栄養学研究室
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林立正学園短大栄養科
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(17)
の流行と深い関係がある 3
。
)
中くわっくわ,親はじぬるとふたとるなと云伝へたり,
米は古くは心蒸して強飯として食べられるか,または
雑穀,芋類,野菜などを入れて
H
カユ”として食べられて
但し塩の入飯じ鍋にてたくとは,少し水を控ふべし」
(かなづかい原文のまま)とある。この後段の諺は今でも中年
いたものである,強飯はむしろ本格的な米の食べ方で,米
以上の人には知られている諺である。しかし火の強さに
のみを食するという点で貴族階級の食べ方であり,また
は異説もあった。次のものは夏季に飯がすえないように
それも,古くは毎回供するということにはならなかった
炊く方法を述べたものだが,細菌学的に見ると,芽胞成
らしい。強飯は「コシキ」を用いて蒸して食したもので
生菌の性質をよく利用していると思える。
「日用助食,カマド(原文漢字)の賑い 9)」の「夏飯の腐
「コシキ」には木製,石製,土製のものがあったことは
官を弄(ツクリ)として,木肩,石肩,瓦肩の宇がすべ
らざる焚きゃう」の項には「仲夏より仲秋迄,飯を焚く
て「コシキ」とよまれていることでもわかり,ことに土
には米性をかしすべし,米性あしきと洗いたらざるははや
製の「コシキ」は弥生式文化の初期と考えられる遠賀川
く腐る也,随分よく洗ふベし,又川水に焚くと井水にて
立屋敷遺跡その他からも出土している九(p
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)
たくは,井水の方は半日もたもちかた悪し,中略朝焚か
カユはこれに反し,むしろ庶民にも食べられる食べも
んと思はば,前日夕方,右のごとく洗いて釜にいれ,其
のであったのである。米の収量が増加し,経済的に豊か
のまま焚ゃうの水かげんにしかけ置,翌朝水を仕かゆる
になるに従って次第にかたく炊かれた。カタガユはまた
事なく焚くべし,火は初め強く,吹上りたらば半分に薪
虫臣飯ともいわれて,奈良時代にも見られるが,特殊なも
を減じ,随分蓋を明かざるやう焼くべし後冊目」,
のであった。カタガユが普及して来たのは鎌倉時代の頃
この書の文はかなり経験的な実験の後に書かれたと見
からで,当時経済的に急速に向上して来た鎌倉武士の間
ることができるもので,前述の御伽双紙の文にくらべれ
に始められたものと考えられる。これは j
完飯とも称せら
ば一段と科学性をもっている。著者の考え方としても,
,れているが,院飯(オウパン,ワウパン)は本来,鎌倉
前二者よりもこの文の火加減の方が適切なものと思われ
幕府の頃から,下臣が将軍に献上する食膳であったよう
る
。
であるが,このとき米は姫飯に炊かれて,椀に山盛に盛
られた。このようなことから姫飯のことを境飯というよ
また,特殊なたき方として「三省録」
)の文を掲げて
10
おく。「鍋なくて食するやう,米を手拭につつみ,水にて
うになったようである。いずれにしろ現在多く行なわれ
よくぬらして,地を堀り埋み,その上にて火をたけば飯
ている米飯の炊き方が普及したのは,まず鎌倉時代の関
になるなり」この方法は焼き方から煮方への調理の進化
東の武士階級の社会での事と考えられる。この時代以
の過程を示しているものと思える。またこの方法と全く
後,米の生産の増大と経済の向上に応じて現行の米の炊
同じ方法は,宝井馬琴の「南総里見八犬伝」
き方が,武士階級以外にも普及したものであろう。米飯
節の言葉として述べてある。
)に犬山道
1
1
の普及につれて,従来,湯を沸かすために専ら用いられ
の X線回
最近における炊飯の研究としては,桜田ら 12)
た深底の鉄鍋が,これに用いられ,長い経験の後に現行
折による澱粉の糊化に関する研究がある。氏らの研究は
のツパ釜の形に改良されたものと考えてよいであろう。
江戸時代に至れば,米の炊き方についての指導書が多
く見られるようになる。
「和漢三歳図会7」
) (
1
7
1
3年大阪で発行)の飯の項に
糊化に際し,澱粉の回折象が A
,B
, C 型から V型にう
つるに従い,澱粉のミセノレがくずれて行くことを観察
し
, X線回折象の変化から澱粉の糊化と,水分,温度,
所要時間との関係をしらベた。この結果,米澱粉におい
は,「前略按風炊飯新精米一斗i
争断用水ー斗炊之,如古米
ては水分量に関係なく,
者,水増二升佳,或不拘多少,釜中水面詑掌後節上者為
変化が起るが, 65°C では 10時間, 10°c では数時間,
一準,尋常日用之飯也」とあって一般に行なわれている。
90°Cでは 2∼3時間, 98°Cで 20∼3
0分を必要とする
6
0∼65°Cでミセルの V型への
手の節の上まで水加減する方法をとっている。しかし火
ことがわかった。なお加熱まえに浸潰しておくと, V型
加減については何も触れていない。
へ変化が速かに進むと報告している。この研究は炊飯
「勘者御伽双紙下」 8)にはカシキ(原書漢字サン, 火
一
部 25劃)法の事
として「たとへば, 釜にて古米壱升
につわての基礎的な重要な研究である。この研究の結果
は炊飯に際して,水加減は第ーに重要なものではないこ
玉合を食(めし)に焼かんと欲するとき,其水何程と問,
とを示している。熊田 13)は洗米と炊飯との間隔につい
答云,
てしらベ,
7
}<壱升九合三勺七才玉術日,米の升目を置て,是
を九倍して定法三升をくはへ,得数を凡ツに割れば水の
まき炊きでは 2時間,電気炊飯器では 30
分,ガス炊飯器では 60分でよいと発ー支し,
また炊飯時
升・めしらる。しかれども升め又は火の焼やらそまつにて
2∼1
5分を必要とすると述べてい
の沸とう継続時間は 1
はあひがたし,故に諺に,飯たくば,始めちょろちょろ,
る。中浜ら 14),坂入ら 15)は電気炊飯器についてその種類
(1
8)
Table1 S
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調査調理場における炊飯用熱源の種類
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2
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5
1
3
1
1
5
と器内の温度分布について研究を行なっており,加藤 16)
主とする集団給食施設(寮,学生食堂の三カ所を含む)で
は米飯の食味についてレオロジー的研究を行なってい
あるが,回答を得られた 1
1
7カ所について炊飯方法をし
る。伊香田 17)は穀類澱粉の蒸煮による変化について浸水
らベた。これらの調理場において用いられている熱源お
時間と吸収量,温度などとの関係について研究を行なつ
よび炊飯設備の種類は表 1
, 2の如くであった。
ている。
調査施設は京浜地区のものであるが,炊飯用熱源は市
以上を要約するに,炊飯という調理は, 日常,最も繰
ガスを用いるものが最も多く,ガス,蒸気併用の施設を
返し行なわれている調理であるに拘らず,これについて
加えれば 116カ所のうち 84カ所を占める。これに反し,
の研究は,桜田らのものを除き基本的なものはなく,ま
蒸気のみを炊飯用熱源として用いるところは 25カ所で
た江戸時代の炊飯の指導書が,むしろ大量の米の炊飯に
あり,ガス,蒸気併用の施設を加えれば 3
3カ所となる。こ
ついて指導しているものが多いのに反 L,最近の研究は
の数はガス熱源の施設にくらべれば少ないが,しかし,蒸
いずれも家庭むきの小規模炊飯に関するものに限られる
気による炊飯が産業給食施設において重要な位置を占め
ことを見るのである。
また最近の研究や指導の方向として,水加減に関する
ていることがわかる。調査施設のうち 9カ所は両種の熱
ものが多いが,桜田らの研究によれば,水加減のことよ
源をそろえている。これは一つには朝昼夕の給食め食数
の大きさにより使用熱源を使いわけていることおよびボ
りも,温度の保持が重要であることがわかるが,これら
イラーの故障,定期検査など不時のための準備であるこ
については報告は少ない。著者らは集団給食における炊
とを示す。プロパンを熱源としているところもあるが,
飯を合理的に行なうためには,大量炊飯について研究を
まだその数は少ない。なお本調査は産業給食の施設のみ
行なラ必要を感じ,まず現行の炊飯方法を調査し,次に
を対象としたものであるが,病院給食は蒸気を用いるも
実験を行なったので,これについて報告する。
のが多いから,学校給食を除いては集団給食に蒸気を用
I
I 産業給食施設における炊飯方法に
ついての調査
いるところはかなり多いのではないかと推定できる。
最大給食数とは, 1日何回かの給食のうち,最も多い
食数を示したものであるが,多くの産業給食では昼食に
A
. 調査対象の熱源と炊飯設備
最大の食数を給食することが多い。しかし本回の調査で
調査表を発送した箇所は都内約 3
0
0カ所の産業給食を
は 1カ所朝食に最大の食数を示したものがあったが,こ
(1
9)
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蒸気,ガスまたは蒸気,プロパン両熱源の両形の炊飯器の併設するため例数は 2
倍となる
れは港湾労働者に対する弁当の給食で,実質は朝食では
動式を備えたところが見られた。
なく昼食である。最大給食数と熱源との関係は,余り小
B
. 炊飯方法
さな施設には蒸気を熱源とするものは少なく,蒸気は食
炊飯操作の工程としては,洗米,力D
7
l
<,浸漬,加熱,
数が大きな場合には有利のようであり,ことに 2,000食
保温(むらし)などの操作がある。次にこれらの各操作
以上では,蒸気熱源の施設は半数を超える。これに反し
について,調査施設においてどのように行なっているか
ガス熱源は,食数と関係なく施設の 2
/
aにおいて用いら
について,調査結果を述べる。
れているが,
しかし 1
,
0
0
0食を越えると仇を越えるこ
とはなく,蒸気熱源が増してくる。
炊飯器の種類については表 2に示された如くである。
1
. 洗米洗米設備についての調査結果は表 3の如乙
である。
洗米方法についての回答で手で洗うと回答し特別な洗
表において蒸気平釜は二重釜または三重釜を意味し,ガ
米器を用いておらない施設が, 750食以上のところでも
ス平釜のうち 1例はつば釜であり,他の多くは回転釜で
僅かながら見られが,これはむしろなぜこのようなこと
あった。ガス熱源の場合,竪形炊飯器が圧倒的に多く,
になっているかその理由に苦しむ。 2,000食以上になる
平釜による炊飯は少ない。しかし蒸気熱源の場合は平釜
とさすがに手洗はなく,連続洗米機の設備が半数の施設
と竪形がほぼ同数である。このことは蒸気竪形炊飯器
に見られるようになる。水圧式,電動式のものは 250食以
が,蒸気消費量が少ないに拘らず,その設備費が比較的
上の施設に広く用いられ,ことに水圧式は 2,000食未満
高価な上に,よい炊飯が困難で、あるという事情によるも
の施設ではかなりよく用いられている。これらは 250食
のであろう。これに反しガス竪形炊飯器は比較的安価で
未満の規模では用いられておらない。手動式の洗米器も
あり,しかも平釜で炊くときのように焦げることが少な
各規模のところに広く見られる。 5
0
食未満では洗米機を
く,蒸らしをきかせることができるので,一般に美味な
設備したところはない。
飯を炊けるということがこの使用を多くしている理由で
洗米は朝食だけは前日に行なわれているが,他は当日
あろう。なお最近は自動スイッチつきのものも製作さ
に行なうものが多かった。しかし昼食の洗米も前日に行
れ,調理員は水加減した米を,竪形炊飯器に入れて,タ
なっているところもないわけではない。洗米から炊飯ま
イマーを入れておけばよいというものもできたので,ガ
での時間は桜田氏の実験によっても炊飯時聞に影響する
ス熱源のあるところに,この種類は一層普及するであろ
ことがわかっているが,書込のあったものについても浸
うと考えられる。調査対象となった施設中にも,数例自
漬時間 0分のものから 1
2
0分のものまであり,この長短
(20)
Table3 Oft
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洗米機の設備について
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最大給食数
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連続洗米機
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手洗い
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3
形
二重釜
V
e
r
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i
c
a
lK
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t
l
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2
日二
形
目分量でする
47%
P
l
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e
t
t
l
e
Steam
計器ではかる
明日t
hnoS
c
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l
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1
5
釜
V
e
r
t
i
c
a
lK
e
t
t
l
e
ガス
WithS
c
a
l
e
は炊飯器の種類とは関係はない。この項目の回答は不完
的は米でん粉の糊化速度を速めるためである。桜田氏の
C に近い温
このためには 100。
全であったが,とれは調査表に示した浸漬時間の定義が
実験に明らかなように,
回答者により異なっていたためと思われる。
度に,少なくとも 20∼25分間保つことが必要で、ある。
2
. 加水量(水加減)
この定義も実はかなりあいま
一般に炊飯担当者が,最も注意を払っているものは火
いのものが多く,乾物の米に対する量をいう場合と,洗
加減で、あって,このため調査表に書き込まれたものも,
いあげた米に対する量をいう場合とがあり,また重量比
加熱時間については細かく記録されている。しかし全般
の場合と容量比の場合とがある。しかし一般には加水量
的に見ると,加熱方法はほとんど同ーのものはなし炊
は余り注意されておらず,水加減を目分量で行なってい
飯器具の相違,炊飯量の多少など色々の条件のもとに,
るという回答は次の表 4の如くである。
各自経験的に施設ごとの方式を作り出しているように思
表 4の如く,水加減を目分量で行なう施設が案外に多
われる。以下炊飯器具の種類別に調査の結果を観察して
く,しかも,炊飯担当者がきまっていない場合も多い。
見る。なお調査表にあらわれた加熱方法を見ると,強火,
これらのことは大量炊飯において,水加減はそれほど厳
中火,弱火,むらしの 4種類が見られる。しかし施設によ
密を要するものではないことを示すものであろう。水加
っては中火のないところが多い。著者らの考え方として
減の分量を計量しているところでも,その方法はまちま
は強火は水温および米粒の温度を 1
0
0。
C 近くまで上昇
ちであり,またその分量も米に対して 0.8から 1
.
5まで
するに必要なものであるが,それ以後はもし外気との断
の比率が示されており一定しておらない。蒸気竪形炊飯
熱が完全ならば,加熱することは不必要であると考えて
器で上段は 0.8の水加減とし,下段は 0.75とするよう
いる。それゆえ,集計に際しては強火,中火,弱火およ
に水加減を段の高さに応じて変えているところもあり,
びむらし時間の総計を示した総加温時間,強火時間,総
またそのようなことを全然考慮しないところもある。
加温時聞から強火時間を差し引いた保温時間,すなわち
3
. 加熱,保温,炊飯の主体は加熱であるが,この目
中火,弱火,むらし時間の合計時間に分けた。また,同
(2
1)
Table5 Timeo
fWarming (
R
i
c
ecookingwithg
a
sp
l
a
n
ek
e
t
t
l
e
,i
nm
i
n
.
)
ガス用平釜を用いる施設での炊飯時間(分)
Numbero
fTimeso
f
RepeatingUse
繰返し使用回数
例
数
i~;e
T
m
e火
s
f
r
:
;
'
時
n
田
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h
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f
Example
5
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温
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間
e
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i
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fWarm
保K
温
e
e
時
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n
間
g
B
(B-A)
”
A
叫 Max.,Min. Me叫Max.,Min. Me刊Max.,Min.
平均最大最小 平均最大最小 平均最大最小
M
5
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1
5
1
0
35.2
41
30
22.0
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1
6
4
12.0
1
5
6
38.2
53
25
26.2
47
10
3
2
14.0
1
5
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3
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45
22
20.0
30
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円
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s
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湯炊き 2回 繰 返 し
|
PO一 F
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1
1
計
ハU 一
PO
T
o
t
a
l
l
1
2
I
17 I I
一炊飯器を同一食事の炊飯のために何回も繰返して使用
り行なうようになったものも見られ,回答中に,このよ
するところでは,炊飯時間を無理に短縮していることが
うな自動化した器具を設備したものも 4∼5見られた
見られるので,集計は繰返し使用回数別に行なった。
(1)
が,このようなところでは,火加減についての回答は不
十分で、,したがって表 6に示した集計には,このような
ガス平釜
表 5に見る如く,強火時間の平均はほぼ 1
2∼1
3分で,
ものはすべてはぶいてしまった。本集計の中にも湯炊き
最大 15分である。また総加温時間も 35分前後が多い。
による炊飯を行なっているところは 1カ所あったが,他
しかし,繰返し 3回以上の炊飯を行なっているところで
の施設とくらべて,かなり急いて炊飯する必要があるた
は幾分短くなっており,
めに湯炊きを採用しているように見られた。
ことに最短のものは 22分であ
表 6の集計は表 5の平釜の場合と同じく繰返し使用回
る
。
総加温時聞から強火時間を差引いて得た保温時間は,
数によって分類したが,
ここでも繰返しが増えるに従
平均値としては 20分以上になるが,はなはだしいものは
って,加熱時間は少しずつ短くなって行く傾向が見え
9分というところもあり,このような時間では米でん粉
る。しかし 3回使用と 4回使用との差はほとんどないか
の糊化が十分に行なわれているとは考えられない。昼食
ら,ガス用竪形炊飯器の所要時間としては総時間 35分
時食数の多いときは湯炊きとして,朝夕は水炊きの方法
程度のところが最低のものであろう。この時間は平釜の
をとっている施設が 1カ所あったが,ここでの強火加熱
場合と一致する。しかし強火時間,総加温時間,保温時聞
時間は湯炊きの場合は 8分,水炊きの場合は 15分であ
に分けて集計した場合,その平均値は繰返し回数にかか
った。しかし保温時聞に両者の差はないから,湯炊きの場
わらずその差は僅かであるが,施設により,各所要時聞
合,他に別に湯を沸かす設備があれば,約 7分の炊飯時
は大きな聞きがあることが見られる。そこで,強火時間
間の短縮になり,その外,強火加熱時に起り易い,釜内
の長短別に集計すると表 7に示すようになる。すなわち
の温度の不均ーを防ぐことができる。強火加熱時の加熱
強火時間の長い炊飯方法をとっているところでは,総炊
の不均ーをおそれで強火時間後,撹持を行なう施設もあ
飯時間も長くなっているようである。炊飯の必要条件と
った。古くから大量炊飯は湯炊きで行なえといういい伝
して,前述の如く 95°C以上に 20∼25分間保温するこ
えがあったが,これはまきなどを燃料とした場合,加熱
とが,米でん粉の糊化に必要なものであるということを
の不均等を防ぐということが主旨であろう。ガスその他
考慮に入れるとき炊飯器の設計は強火時聞が 15分以内
最近用いられている器具で不均等加熱が生ずるとすれば
でよいように設計すべきものと考える。
器具の設計に問題があると考えられる。
(2)
ガス用竪形炊飯器
強火時間 15分のとき総炊飯時間の平均は 37分,保温
時間は 22分になっており,強火時間 17∼23分の場合に
ガス用の竪形炊飯器は戦前には余り使われていなかっ
も同じく保温時間は 22分になっている。このことは強
た器具で,戦後に集団給食が再開されて以後,念、に広範
火時聞が長いということは単に総時間を長くしたという
に用いられるようになったものであるから,歴史は比較
5分未満のと
ことであることを示す。また強火時聞が 1
的浅いが,しかし現在は給食規模の大小に拘らず最も広
ころでは保温時聞がかえって長くなっている。このこと
く用いられており,また加熱時間もタイムスイッチによ
は強火時間 1
5分程度が,最も適当なことを示し, 強火
〔2
2)
Table6 Timeo
fWarming (
R
i
c
ec
o
o
k
i
n
gw
i
t
hg
a
sv
e
r
t
i
c
a
lk
e
t
t
l
e
,i
nmin)
ガス用竪形炊飯器を用いる施設での 炊飯時間(分)
l
Numbero
fTimeso
f
R
e
p
e
a
t
i
n
gUse
操返し使用回数
数
例
1
3
4
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K
t
温
B
ep時i~間
総W加ak温~時~;g間in~:d)
Me
引Max.IMin. M叫 Max. Min.IMeベ
Max.,Min.
平均最大最小 平均最大最小平均最大最小
I
8
3
o
v
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以上使用の平均
回
eo
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v
e
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t
i
m
e
sUse
Avefg
以上使用の平均
1
5
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20
1
5
1
4
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18
1
3
Ave~g回
eo
fo
v
e
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i
m
e
sUse
Timeo
fWarm
w
i
t
h
S
火
:
:
時
:gF
i
r
e
強 間
1
7
2
1
2
20
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1
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1
1
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1
0
3
9
8
1
5
0
1
0
1
0
3
5
3
5
5
5
45
/
1
5∼2
8 /
20
25
3
2
24
66
3
5
5
1
3
1
9
20
3
5
9
20
2
1
30
1
0
/
O∼1
6 /
/
42
1
5
20
1
0
37
5
5
1
9
22
3
5
9
2
1
1
5
20
1
0
3
5
5
5
1
9
2
1
3
5
9
1
7
/
/
18
/
/
1
1
/
HotWateru
s
e
d
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TimesRlp
回
e
a
繰
tU
s
e
.
湯炊き,
T
o
t
a
lTimeo
f
Timeo
fHeating
Numbero
f
Example
/
返し
Table7 R
e
l
a
t
i
o
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fTimeo
fHeatingwithS
t
r
o
n
gF
i
r
eandT
o
t
a
lWarmingandKeeping
強火時間と総炊飯時間との関係
山{;]吋nple I
1
Timeo
fS
t
r
o
n
時
gH
e
a
t
i
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1
0
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2
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4
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1
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20
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25
3
0
5
3
3
1
3
7
45
37
3
9
4
3
45
43
6
0
47
2
1
2
5
3
1
22
22
2
3
22
1
8
3
0
1
強 火 間
T
o
t
a
lTimeo
fWarming
andK
旧1
且
e
e
f
寺
i
n
g
総力日
I
8
I 11 I
2
I 29 I
2
I 10 I
2
I
2
I
2
間
Timeo
fWarmKeeping
保温時間
時聞がこれ以上長いということは, l ガスの燃焼量が
れを使用しているところは 1
2カ所あった。
少ないこと, 2
. 加熱が単に水分の蒸発に用いられてい
は記入不正確のため 1
0カ所のみ集計して表 8に示した b
ること, 3
. 加熱が不均等なため十分な強火で炊けない
うち 2カ所
この 1
0カ所は釜の繰返し使用回数は全部 1回であっ
の三つの原因によると考えてよいであろう。強
た。平均 2kg の圧力の蒸気(約 120°C)を用いており,
火加熱は水と米の温度を上昇するために必要なものであ
約 145°C)で、あったが,多くは 1.5kg
最大は 4kg (
こと,
るが,強火により 100。C に近い温度に到達した後は,
(ll0°C)以下であった。通気時間は 20分で,蒸気圧力
もし釜の保温が完全ならばそれ以上の加熱は必要ないは
の高いところではこれより短時間で、終っていた。蒸らし
ずである。調査回答の中にも強火終了後の加熱,すなわ
8分であるが,実際の操作としては蓋をし
時間は平均 1
ち中火,弱火加熱をほとんど行なわないものもあり,ま
たまま放置するだけであり,釜が鋳物で厚く作られ,保
た弱火で、 5分間程度行なうものもある。それゆえ強火終
熱量が多いので,むしろ底と接する部分が焦げるくらい
了後,加熱しないでおいた場合に釜の温度がどの程度低
に,よく保温されるのである。しかし蓋は木の板が多く
下するかということは強火所要時間の試験とともに,ガ
断熱は必ずしもよくないので,上部の飯は十分に糊化さ
ス用竪形炊飯器の性能試験として重要な項目である。
れないで、芯があるようなことも見られる。しかしこの種
(3) 蒸気平釜を用いる炊飯
集団給食に採用された加熱器具としては,薪用平釜に
ついで,最も古くから使用されていた。このためこれを
の釜は保温がよい点で,ガス平釜よりも炊飯用としては
取扱い易いものと思われる。
(4)
蒸気直接加熱式竪形炊飯器による炊飯
用いる炊飯は一般調理員もよく慣れており, f よい飯が炊
蒸気消毒器にヒントを得て,恐らく旧海軍の指示によ
けると信じられている器具である。調査対象のうち,こ
って創作されたものであろう。蒸気平釜に比し,占床面
(2
3)
Table8 Timeo
fWarming (
R
i
c
ec
o
o
k
i
n
gwiths
t
e
a
mp
l
a
n
ek
e
t
t
l
e
,i
nmin)
蒸気平釜を用いる施設での炊飯時間(分)
l
Numbero
fT
i
m
s
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lNumbero
fI
Timeo
fSteaming/P
r
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s
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fSteam/Timeo
fKeepwa子
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f
o
fR
e
o
e
a
tUse/Examole / 通 , 気 時 間
I (
k
g) 蒸 窒 圧 / min
車保温時間/C
ooki
堕総理要時間
.
t
'
I
.
t
'
I
MeanI
Max.I
Min. I
MeanI
Max.I
Min.I
MeanI
Max.I
Min.I
平均 l
Max.I
Min.
繰返し使用回数|例
数|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
1平 均 | 最 大 | 最 小 | 平 均 | 最 大 | 最 小 | 平 均 | : 最 大 | 最 小 川 島a
n|
I最 大 | 最 小
司
ι
l
1
1
1
0
I20 I30 I15 I2 I4 I1 I18 I30
J
12
I38 I60 I27
Table9 Timeo
fWarming (
R
i
c
ec
o
o
k
i
n
gw
i
t
hsteamv
e
r
t
i
c
a
lk
e
t
t
l
e
,i
nm
i
n
)
蒸気竪形炊飯器を用いる施設での炊飯時間(分)
Numbero
fTimes Numbero
f
o
fR
e
p
e
a
tUse Example
繰返し使用回数
1
2
3
unknown
不
明
例 数
Timeo
fSteaming P
r
e
s
s
u
r
eo
fSteam Ti
T
o
t
a
lTimeo
f
凹eo
f保
Ke
温
e
p
時
−w
間a
r
mmg
(
k
g) 蒸 気 圧
通気時間
Cooking総 所 要 時 間
Me Max.I
Min. Me Max, Min. Me Max.I
Min. Me Max.¥Min.
叶
平均最大最小
叶
J
平均最大最小
叶
平均最大最小
22
叶
平均最大最小
7
4
2
26
2
3
30
3
5
25
30
20
20
30
0
.
9
0
.
5
1
.
0
1
.
0
0
.
5
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.
0
0
.
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0
.
4
0
.
9
20
1
4
3
5
2
5
1
5
1
0
1
5
1
3
48
43
44
6
0
5
0
45
40
40
43
4
2
9
3
0
2
5
1
.
0
1
.
0
1
.
0
1
6
2
5
1
0
4
5
50
40
積が小さく,使用蒸気の圧力が低くてよく,熱の損失少
に分布されていないこと,したがって加熱が均一にで、き
なく,したがって蒸気使用量が少ないという特徴があ
ないことなどが原因と思われる。蒸気平釜の場合は使用
る。炊飯時の蒸気使用量について明確に指示した調理機
圧力が 2kgであるのに,竪形のものは 1kgに達しない
具の型録もなく,また現場での測定はほんとど行なわれ
ことが多く,多くは 0
.71
屯程度の圧力があればよいと
ていないが,吉本氏 18)の測定によれば,米 30kg を蒸気
いうことが,蒸気配管が細くてもよいという考えを導い
平釜で炊くとき 26.1kgの蒸気を必要としたが, 竪形
て,単位時間に必要な蒸気量を忘れさせているのではな
蒸気炊飯器を用いるときは, 85.5kgの米を炊飯すると
いかと思われる。表 9に示されている如く,繰返し 3回
き 42.5kgの蒸気を必要とするに過ぎず,
これを 30
使用しているところでは通気時聞が長く,蒸らし時聞が
kgの米に換算すれば 15kgの蒸気消費となり,蒸気使
短くなっている。通気時聞が長いことは竪形蒸気炊飯器
用量が著しく少ないことがわかる。しかし現行のものは
の場合はたして効果的かどうか疑問がある。いずれにし
その構造にいまだ不備のものが多く,均一な加熱が行な
ろ蒸気竪形炊飯器はもう少し本質からして検討する必要
い難いものや,水加減がうまく行かぬものなどの訴えが
があるようである。
多く,使用法に困難な点が多いため,調理員にはこの使
用をいやがるものが多いようである。
回答のあったもののうち,炊飯方法についての記述が
あったものは 1
7カ所であった。これを表 9に示す。
I
I
I 炊飯実験
A. 加熱条件についての実験
集団給食施設で実際に行なわれている炊飯の方法は,
1回の炊飯量の大きいことはこの器具の特徴である
上述の如く,各所各様という感じのものである。これは
が,総所要時聞が,他の炊飯方法に比し長いことが,こ
炊飯器および熱源の状況が多種多様であるためであっ
の炊飯器の欠点であることがわかる。しかし,むらし時
て,実際の様子を聞いて見ると,調理器具メーカーすら,
間は 2
0分前後であって,ガス熱源の炊飯器の場合と比
注文を受けて,給食施設に納入した自家製造の炊飯器の
較しでも長いとはいえない。それゆえこの炊飯器の総所
性能を正確には知っておらず,したがってその正常な取
要時聞が長くなった原因は通気時間の長いことにある。
扱い方を納入先の取扱者に指示するようにはなっていな
ガス平釜炊飯器,ガス竪形炊飯器の強火時間は約 1
5分
いようで、あって,その器具を扱う調理員が従来の経験を
であり,蒸気平釜でも平均 20分であることから見れば,
参考としながら,その炊飯器の取扱いの条件を経験的に
表 9に示した竪形蒸気炊飯器の通気時間平均 26分は長
きめている状態であることが現実である。
すぎることがわかる。この原因として,竪形炊飯器の熱
以上の理由から,炊飯方式決定の条件としては,炊飯
容量が大きいためとも考えられるが,それよりも炊飯容
器の性質を細かく知ることが第一に必要なことであるこ
量に比し蒸気配管が細いこと,蒸気導入口が少なく均等
左がわかったので,土元らは校内の集団給食設備に設備
(2
4)
三
」
、
》
−−!
−−
i
f iih
JJ
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品、川明 A川MW比川川W11川市
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州内、司
川沿胤WUW
。 ② ③ @ @ ー 陥i
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附T
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l
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.熱対の位置
F
i
g
. 2 ThePanUsedf
o
rExperimento
f
CookingR
i
c
e
.
炊飯試験に用いた釜
を炊くときの各種条件について行ない, 2kgの米を用
いた能力内の炊飯と 9kgの米を用いた能力以上の炊飯
とについての実験も,あわせ試みた。
F
i
g
. 1 AnEarthenV
e
s
s
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Steamer”D
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d
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h
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R
i
v
e
rOngaKyushu
1
.
実験方法
上述の 3段式ガス用竪形炊飯器の中段の中釜を用いて
実験した。中釜はアノレミ製でその大きさは 4
0
0×4
0
0×
九州遠賀川立屋敷遺跡より出土の弥生式土器,蒸器
170mm. である。 5kgの米を入れると底から 40mm
しであるガス用 3段式竪形炊飯器を用いて,内部温度の
それに同容量の水を加えると,ほぼ 75mmの高さまで
上昇の状況と米および水の量との関係を測定した。
満たされる。したがって釜の大きさは著しく余裕があ
当校(立正学園短大栄養科)の集団調理場に備えつけ
る。この釜の中に熱電対の感応部を固定し,炊飯を行な
のガス用 3段式竪形炊飯器は,公称(型録に示しである
い,温度の変化をしらベた。感応部の位置は図 2の如く
規格)は 20kg (
1
.
5斗)炊きといわれているゆえ, 1
である。用いた米は昭和 4
0年度新潟県産「越ひびき」
コの中釜にて 7kg弱の米の炊飯ができるはずで‘あるが,
を精米したもので,水分 14%であった。米は 5回洗米
実際には 5kg の米を炊くことができる程度の能力をも
し,含水量を一定にするため, 1
0分間水切りし,その後
っているに過ぎない。それゆえ,実験は主に 5kg の米
加える水の容量をはかり,
その中に 60分間浸漬し,
Table1
0 P
l
a
n
n
i
n
go
fExperiment
実 験 条 件
No. o
f
Experiment
実験番号
1
2
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4
5
6
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本
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i
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5
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注:
Timeo
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a
t
i
n
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)
加熱時間
強S
t
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n
g
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20
20
20
20
1
5
1
5
20
1
5
2
0
中釜の蓋とる
Medium
中
火
5
5
5
5
5
5
5
5
5
Low
§
j
§
j
火
5
5
5
5
5
5
5
5
5
そ
Table1
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fCookedR
i
c
eExperimented
米飯の炊上り状態
!
!
W ~gJ1~ t~:Ce
No. o
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Experiment R
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Volume B
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o
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o・
実験番号
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c
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e
a
s
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ぶo
え
ok
率
i
n
g
w
i
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hC
炊き
官能試験の結果
水分含有率%
Uper Middle Under
Weight Volume p
a
r
t
p
a
r
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p
a
r
t
L
炊
c
i
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飯
g
k
前
g K
炊1
n
飯
g
k
桂
g 重量容量
米 の 重 量 kg水 容 量 比
R
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n
c
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i
o
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u
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上層部
中層部下層部
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n
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百
平
部分
No. 1
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0
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1
0
.
9
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1
1
5
4
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5
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No. 2
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1
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1
1
.
4
5
1
0
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2.12
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5
9
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1
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中
Under 下
No. 3
5
1
.
1
1
2
.
1
5
1
1
.
7
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2.36
2.26
57.2
57.7
65.2
No. 4
5
1
.
2
1
2
.
5
5
1
2
.
1
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2.18
57.8
61.6
No. 5
5
1
.
0
1
1
.
2
5
1
0
.
9
7
2.20
1
.
9
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No. 6
5
1
.
1
1
2
.
1
5
1
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.
1
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No. 7
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1
.
1
1
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.
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良い
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やや軟い,良い
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少
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U、
しめっぽい
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乾
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U、
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中
表面げ が こ げ る
こる
一部炭化
~dd
No. 9
やや軟
固い
少しかい
わずかにこげる
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No. 8
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非常に軟かい
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(26.
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ののち加熱を行なった。炊飯の条件は表 10の 9種であ
る。なお消火後 20分間竪形炊飯器内に放置して
m
t
むら
し”を行なった。食味,固さその他の試験はすべてその
,後に行なった。
1
2
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1
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〆
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〆
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号印
2
. 炊き上がりの米飯の状況
1の如くである。
表1
表1
1のような結果を示したが,官能試験の結果が最も
よかったものは実験 No. 3で
,
これより水容量比が少
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うであるが,強火時聞が短い場合には,同じ水量でも水
中火弱火
等に加熱されないようである。また実験 No. 8
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の結果は炊飯器にはその熱源の火力(工率)に応じた炊
強火 1
5分加熱の中心部の温度上昇
っぽくなる。蓋なしで、炊いた場合には上中下の各層が均
1)底層の中央部(①の位置)の温度変化
底層の中央部①の温度上昇を加えた水量別に比較する
と図 3のようになる。
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1
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こは加熱その他に特別の考案が必要なことを示す。
3,釜内の温度変化
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強火 20分加熱の中心部の温度上昇
1
5分の強火加熱で十分であることがわかる。図 4に示し
た強火加熱 1
5分の場合の条件では, 水容量比 1
.
1の場
合には少し不十分なことが示されている。
3)中層の奥の部分(④の位置)と手前の部分(①の
位置)の温度の変化)図 6
中層の奥の部分④の温度上昇は他の部分と同じような
No. 4の条件すなわち水容量比が米に対し 1
.
2のもの
速さで温度が上昇するが,手前の部分①の温度上昇は水
を除いて,水量が多くなるに従って温度上昇が遅くな
容量比の差にかかわらず,釜内の他の部分よりもはるか
.
9
,1
.
0までは 1
5分の加熱でほぼ最高の
る。水容量比 0
に遅れて上昇し,最高温度に達するには 25分を必要と
:温度に達するが, 1
.
1の場合には 2
0分の時聞が必要で
する。このような現象が起る原因として考えられること
ある。それゆえ実験 No.sc
水容量比 1
.
0)の条件でも
は
, 1
. ガスの燃焼口の位置が,奥の方にかたよってい
5分で十分であると考えられ
底の温度上昇は強火時間 1
. 炊飯器の蓋の熱絶縁が不十分なこと,の二
ること, 2
る。しかし実験 No. 6の場合(水容量比 1
.
1)には強火
つが考えられるが,いずれにしても,この炊飯器の設計
:
1
.
5分,中火 5分を経て初めて’最高の温度に達する。それ
上にミスのあることがわかる。図 6に水容量比 1
.
2の場
.
1以上では 1
5分間の
ゆえ,この炊飯器では水容量比 1
合,すなわち水量多く水の対流が最も自由な場合(実験
1
虫火加熱では不十分で、あることがわかる。(F
i
g
.4参照)
No. 4)の中層の奥部,中央部と手前の部分の温度変化
中層の中央部一(①の位置)の温度変化
を比較する。強火 20分の加熱でも最高に達するために
2)
中層の中央部①の温度変化は図 5のようになる。この
5分間強火加熱を行な
まだ不十分であるのであるから, 1
:場合も No.4の条件を除いて,水容量比が増加するにし
う実験( No.5,No.6)では,到底この部分は十分な
.たがって,温度上昇は遅くなるが,水容量比 1.0までは
温度に達しない。それゆえ,この炊飯器によって 1
5分
(27)
℃
℃
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1
2
0
1
1
0
1
1
1
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中層部,奥側と手前側の温度上昇
米の量と温度上昇
は 45分後にもなお最高温度に達しない。
B
. 混麦炊飯についての実験
集団給食担当者は,昨今の米の値上がりの対策として
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た同時に給食対象に対するビタミン B
1給与を目的とし
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て,強化精麦を混入することの是非を考えるようになっ
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た。強化精麦混入の炊飯の実験は;家庭向きの小規模の
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炊飯については,従来数多く見られているが,集団給食
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化の状態などは最も関心のあることであるが,これらの
問題についての研究はほとんど見られない。著者らは,
このような目的で精麦混飯の実験を以下の如く行なつ
f
こ
。
1)実験条件
温度上昇に対する蓋の影響
用いた炊飯器は実験Aに用いたものである。米は秋田
聞の強火加熱により 5kg の米を炊くことは不可能であ
県産問よねしろ”を精白したもので,水分 15%を含有
る
。
する。麦は( 50)日本精麦協会の推奨する精白麦でビタ
このようなことは,この炊飯器のみに起ることとは考
ミン B
1が強化されているものである。この麦は精白に
えられないもので,市販の他の多くの炊飯器にもこのよ
際し麦粒の中央部の溝の部分で 2分して中割精白したも
うな設計のミスがあるのではないかと思われる。
で,したがって粒子はむしろ米粒より小さくなってい
4)中釜の蓋の効果
る
。
図 7に示したように中釜の蓋をとった場合には中層中
実験の条件をその結果とともに表 1
2に示す。なお米
央部が最高温度に達するのは 25分の後である。このこと
および麦は 5回洗米し, 10分間水切りした後,
は竪形炊飯器のように外部が密閉されている場合にも,
水に浸潰して,のち加熱した。加熱は前述の実験と同ーの
なお中釜の蓋が重要な役割をもっていることを明らかに
炊飯器を用いて,強火 20分,中火,弱火各 5分である。
示すものである。
2)炊きふえ率と麦粒の分布
5)炊飯量を減少した場合(実験 No.8)および過量
の米を炊いた場合(実験 No.9)の温度変化
図 8に示された知く,
60分間
いため,炊きぶえは重量から見るも,容量から見るも,
2kg のようにこの炊飯器の適
量比にし,少量の米を炊いた場合には,
表1
2に示した知く,混麦飯は炊飯時に加える水量が多
ほぼ 10分で最
純米飯より多く,したがって給食に際し量の問題で喫食
者に不満を呼び起すおそれがないことがわかった。ただ、
高温度に達するが, 9kg の如く過量の米を炊いた場合
しこの炊きぶえとは,水分含有量が多くなったためで、あ
には 25分後に,はじめて最高温度に達する。
ることは明らかで,栄養価の上では,むしろ希薄化され
しかし図
1
2f
こ示さなかったが炊飯器の手前の部分(①の位置)
たということになるわけである。なお表中,炊きぶえ率
注
宝
訳
N
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起験番号
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混麦炊飯実験の結果
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I1.1 ¥ 12.12¥ 11.55¥ 0.57 ¥ 2.31 ¥ 14.7 I2.47 I59.5
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上
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.
5
4
3
.
9
とは用いた米および麦の調理前の重量または容量に対す
る炊き上がり時の重量または容量で、ある。
米麦を炊飯した場合,従来用いられた,挽き割り麦,
下
山
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9
.
6 8
I11.0 l
I19.7 I
均
UnderP
a
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t
層
中
得られた。
5に示された結果は麦混炊が喫食者に著しく不快
表1
を与えるというものではないことを示した。
麦粒が浮き上がって釜の上層
麦飯が白米飯より腐敗し易いということは,よくいわ
部に集まり,米とよく混らないということが起った。大量
れることである。この原因は支粒は精白し難いため,枯
炊飯に際してこのようなことが起るとすれば,喫食者に
草菌などの雑菌が残り易いということにあるといわれ
または押麦の場合には,
対する均等な分配が困難になるので,このことは給食担
る。本実験に用いた大麦は中溝を取り除いて精白したも
当者にとって重要な関心事である。表 1
3は麦と米との
のであるので,従来いわれたような欠点は少ないと考え
上中下各層における混合状態を知るために得た結果であ
られる。炊き上がった飯を減菌したシャレーにとり,
って,炊上がり後,釜の中央部に直径 5.3cm の円筒を差
37°Cの恒温器に放置して,
腐敗臭発生の有無を観察し
し込み,この中に抜き出した飯の円柱を上中下の 3層に
たが, 5
3時間後,麦混飯には腐敗臭が感じられ,それ以
3分し,各層に含まれる米と麦との粒を数えたものであ
後の変質状態も米飯よりもはなはだしかった。
3の如く, 各層聞にほとんど差はな
る。この結果は表 1
かったが,しいていえば麦は下層部に最も多く,中層部
に最も少ない分布を示した。
IV 考察ならびに結論
炊飯ということは,かなり古くから行なわれている調
3)官能試験その他
理であるにかかわらず,決して一定の方式があるわけで
1
0名の女子学生をパネルとして,表 1
4の用紙を用い
はなく,また科学的な理論づ、けもほとんど行なわれてい
て官能試験を行なった結果は表 1
5に示すような結果が
ない。わずかに桜田氏によって行なわれた X線回折を用
(29)
Table1
4T
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年
月
日
下 記 の 質 問 に つ い て 白 米 の 飯 と 麦 飯 と を 比 較 し て が い と う す る と こ ろ に O印 を つ け て お 答 え く だ さ い
1
. 白飯米と麦飯と見くらべて麦飯の麦がめだちます
4
. 白米飯と比較して麦飯の固さについておこたえく
記
T
I
.
.
ぃ
:
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ザコペコ
I
よ
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2
. 麦飯のにおいについてはいかがですか
1
2
3
4
6
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ll非 常 に 水 っ ぽ い
るところに O印 を つ け て く だ さ い
27お い し い
3
. 白米飯と比較して麦飯の水分についてがいとうす
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ださい
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、
5
. 白米飯と麦飯とを比較して味についておこたえく
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T 少しまずい
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松
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少
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−一|少し固い
余
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−一|少しやわらかい
全
然
め
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-3
O一 白 飯 と 同 じ
ださい
1
2
3
4
5
| | | | |
2 一|大分やわらかい
か
Table1
5 TheR
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3
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1
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2
.
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白米飯と比較して麦飯の味はよいか
いた米で、ん粉の糊化の条件についての研究があるにすぎ
0
.
0
7
-0.36
-0.17
燃料の平釜で、あって,次にその熱源が蒸気に代えられ
ず,しかもこの研究成果が H 理研葉報”に報告されてい
て,蒸気平釜が用いられた。しかしこれはすでに化学工
るため,調理関係の識者の目にふれることが少ない。
場で用いられていた加熱用器具の転用であったが,これ
大量炊飯器の発達を歴史的に見れば,初期のものは薪
は,海軍および工場の寄宿舎で用いられた。次に旧海軍
(30)
によって竪形炊飯器が作られた。ガス用のものは戦前に
調査の結果以上のことが見られたので,ガス用竪形炊
もあったが,戦時中は市ガスは炊事用に用いられない事
飯器を用いて炊飯実験を行なった。しかし用いた炊飯器
情にあったためほとんど用いらず,反対に鉄材の節約の
の設計が悪いらしく,中ー釜一つが 7kg炊きと呼称して
目的から蒸気用の木桶式の炊飯器が発明され,広く用い
いるにかかわらず,実際には 5kg 炊いても,一般のも
られた。戦後に至って,回転式ガス用平釜,ガス用竪形
のよりも長時間の加熱を必要とし,また他の条件も一般
炊飯器が広く普及して来た。このように炊飯という調理
のものより悪いようであった。この炊飯器で、は水の添加
がわが国独特の調理であるため,この用具の発明もわが
量が,米に対し 1
.
1の容量比の場合に最もよく炊けたが
国でのみ行なわれて来た。
この場合 1
5分の強火加熱時間では不足で 20分を必要と
以上のように蒸気炊飯器の歴史はかなり古いものであ
した。もし,水容量比が 1
.
0でよければ 1
5分の強火加
るが,その後の改良は少ないようである。ことに桶式炊
熱でも十分である。炊飯器の設計上のミスと思われる
飯器が影をひそめたことはさびしい感じがする。現行の
が,中釜の温度分布は均一でなく,手前の方,すなわち
産業給食施設の炊飯器は大きく分類して,ガス用平釜,
外枠の蓋に近い方は温度が低かった。このように外枠の
ガス用竪形,蒸気平釜,蒸気竪形の 4種に分けられる。
保温が悪いため強火加熱以後各 5分間の中火,弱火の加
調査の結果は,施設の規模に関係なく最も広く用いられ
熱を必要とした。中釜の蓋は保温および水分保持のため
ているものはガス用竪形炊飯器で、大規模の施設には蒸気
に重要な役割をもつことがわかった。
以上炊飯に関する調査と実験との結果によって,炊飯
竪形式が見られた。
炊飯時間は設備の充実の程度によって影響される。同
じ炊飯器を同一食事の炊飯に 3回以上繰返し使用してい
るところもあるが,このようなところでは炊飯時聞は著
用加熱器具としては,次の条件を満すことが必要である
ことがわかった。
1
. 加熱により各釜の釜内の水温が 1
0
0。
C に達
しく切りつめられている。はなはだしいものは総加温時
間1
9分というものもあったが,これはよい飯が炊ける条
するまでの時聞が短いこと
2
. 各釜の釜内の各部温度がすべて均一に上昇す
件ではない。加熱時間の相違はガスや蒸気の配管の太さ
にもよるはずで,したがって
m炊飯は加熱時間何分にす
ること
3
. 消火後,釜内の温度が長く 1
0
0。
C 近くに保
べし”ときめることはできないが,もし釜の保温が十分
ならば強火(蒸気の場合,全開)の加熱は釜の中の水温
が 1
0
0。
C に達するまでの時間でよいはずで、ある。理論
たれること
炊飯器購入に際して,これら条件を満すか否かの試験
は必要なものと考える。
的には釜内が均一に加熱されるならば,この時間はなる
また現行の炊飯器を用いて炊飯を行なうに必要な,最
べく短い方が能率的である。強火終了後の加熱は不必要
低の所要時間はガス燃料の場合, 強火加熱 1
5分,総時
なはずで,その後 25分以上の保温が行なえるならば,
間3
5分,蒸気熱源の場合通気 2
0∼2
5分,総時間 40∼5
0
米のでん粉は完全に糊化するはずである。このことは桜
分であることがわかった。
田氏の実験によって明らかである。調査表に示されたか
米に精白麦(中割精白)を混入して炊飯した場合,水
ぎりでは,各調理員はただ経験によって与えられた器具
容量比を 1
.
2とする必要のあること以外はすべて,米の
の性格を知って,これを取扱っているに過ぎないという
みの炊飯と同様の条件でよいことがわかった。なお米と
感じを受けた。それゆえ少数ではあるが不合理と思われ
麦との混合も,釜内の各部で不均ーは見られず,味も米
る取扱いのものも見られる。
のみと著しい差はなく,容積においても,重量において
大量の炊飯は m 湯炊きにしろ”ということは古くから
も炊きぶえは米のみの場合より多かった。それゆえ,集
いわれてきたことであるが,マキを用いた古いカマドの
団給食において,米飯の代りに米麦混飯を用いることは
場合には加熱が不均等になり易いからこのようなことも
給食に差支えないと考えられる。
必要であろうが,十分な加熱力(工率)があって,器械
V 要 約
の設計に不備がないならば,湯炊きにすることによって
得る効果は 7∼8分の時間の短縮に過ぎないようで,こ
の場合にも,他に湯を沸かすための設備が必要になる。
蒸気竪形炊飯器の場合には,器の外枠の熱容量が大き
集団給食の調理において最もしばしば繰返される。炊
飯作業に色々と問題のあることを知ったので,まずこの
実態を調査し,これに実験を加えて,合理的な炊飯方法
いためと, Drainが釜の内部に貯まるため中釜を入れぬ
についての示唆を得ょうとして調査および実験を行なっ
うちに・予め外枠を温めておき,後 Drain を抜いて,改
た。なお混麦飯の炊飯についても実験して,次の結果が
めて中釜を入れる必要があるようである。
得られた。
(31 )
1
. 東京都内産業給食施設において,最も多く用いら
;れている炊飯器はガス用竪形炊飯器で、ある。大規模のと
ころでは蒸気竪形炊飯器も多く用いられているが,他に
ガスまたは蒸気用の平釜も使用されている。
2
. ガス用平釜,竪形炊飯器の強火加熱時間はとも
J
こ,約 12∼15分であり,その後の保温時聞は 20∼25分
ーであって,総炊飯時間として 35分かかっている。
3
. 蒸気による炊飯では平釜の場合も,竪形の場合
も,総、炊飯時聞は 40∼45分である。竪形炊飯器はまだ
不完全のものが多く見られるようである。
4
. 洗米器としては水圧式,電動式が多く用いられ,
一大規模のところで連続洗米器が見られる。また手で淘い
でいるところもかなり見られたことは意外で、あった。
5
. 加水量は 1
.
0前後,まちまちで,半数以上の施設
で目分量で行なっている。浸漬時間は Oのものも多く,
I
軽視されている。
6
. 炊飯実験の結果,火力の不足,加熱時の釜内の温
度上昇の不均等など,また釜の保温にも問題があること
カミわかった。
7
. 市販炊飯器の科学的改良じ炊飯器の検定規準が
A
必要と思われる。
8
. 現行の炊飯器を用いて炊飯を行なう場合に必要な
:最低の所要時間はガス燃料の場合,強火加熱 15分,総
百庁要時間約 35分,蒸気加熱の場合,通気 20∼25分,総
;所要時間 40∼50分である。
9
. 中割精白麦を米に混じて炊飯する場合,麦の米に
対する重量比が 20%程度までならば−,集団給食に用い
て支障のないものと思われる。
参考文献
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.332,時潮社,
2
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和漢三歳図会縮刷版, p
治3
9
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8)古事類苑飲食部: p
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1
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1
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2
,2
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6
6
.
13)熊田ムメ:栄養と料理, 3
14
)中浜信子外:家政学雑誌, 1
0
,2
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5
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1
5)坂入,幸田: 立正学園女子短大研究紀要, 4
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0
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16)加藤寿美子:家政学雑誌, 1
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17)伊香田,波橋:家政学研究, 8
,1
,1
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1
8) 高 木 和 男 , 吉 本 貞 外 : 集 団 給 食 の 理 論 と 実 際
p
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3第一出版,昭 4
0
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(受付: 1967年 9月 20日
)