音質至上主義が認めた Windows 用ソフトウェア 逆木 一 Text by Hajime Sakaki とは何か? かつて「音質を極限まで追求した再生ソフト」として、一部のネットオーディオファンの間で絶大な支持 を集めた JPLAY。いま、その JPLAY がそのサウンドクオリティはそのままに「使いやすさ」を実現 したことをご存知だろうか? 音質至上主義のマニアをも唸らせる機能とネットワークによるコントロー ルの利便性を持つ、再生ソフトの「究極系」とも言える JPLAY の世界をお伝えしよう。 JPLAY Windows 用再生ソフト €99.00(日本語サポートつき) JPLAY6.2 ダウンロード先 URL ▶ www.jplay.info ● 動 作 可 能 OS:Windows7/8.1/10、Windows Server 2012 R2 ※ JPLAYStreamerは 単 体 PC モ ー ド の 場 合 Windows7 は非対応(デュアル PC モード時は Audio PC として動作可能)●推奨動作環境:Windows 10 64bit ● 推奨オーディオデバイス:カーネルストリーミング対応機 器(ASIO、WASAPI 対応) ※ DSD 再生の場合はカーネ ルストリーミング対応機かつ DoP 対応機が必須 ● DSD 伝送方式:DoP、ASIO Native ※ USB DAC への出力は DoP のみ●再生連携対応ソフトウェア:foobar2000、 Bug Head 等 ASIO ドライバ対応再生ソフトウェア Specifications ◀ JPLAY の基本設定画面。基本的に JPLAY そのも ののコントロール画面はこれのみ。最新版では新た に「JPLAYStreamer」というネットワーク再生機 能を搭載する PLAYの開発チームはJPLA YStreamerでこそ最高音 質が実現されると言っている。ま して使えるようにするもので、O PCをネットワークプレーヤーと はJPLAYをインストールした 勝手が格段に向上している。これ erという新機能を実装し、使い いまではJPLAYStream やすいとは言えなかった。 しかし、 ら、まだまだ万人にとって馴染み という特殊性や設定の複雑さか 再生ソフトとの組み合わせが前提 ドライバとしての使い方も、他の いソフトだった。また、ASIO など、とても一般向けとは言えな たずコマンドで動かす必要がある 当初のJPLAYは完全に音質 に特化したソフトで、GUIを持 を持っている。 reamerというふたつの機能 イバと、後述するJPLAYSt て音質を改善させるASIOドラ り、他の再生ソフトと組み合わせ 生ソフトとは使い方が少々異な ファンを抱えている。一般的な再 s用のソフトで、国内外に熱烈な JPLAYは音質面で非常に高 い評価を受けているWindow に特化させて高音質化を図るデュ 楽信号のストリーミング機能のみ SBデバイスを接続したPCを音 る。さらに、PCを2台使い、U wsをオーディオ再生に特化させ 延もしくは停止させ、Windo JPLAYは無関係なタスクを遅 る。「完璧なタイミング」 のために、 グの改善によって実現されてい オーディオ再生におけるタイミン データ加工ではなく、デジタル・ JPLAYの再生品質は、音源 のアップサンプリングといった グサービスも楽しめる。 応でき、ロスレス・ストリーミン DALとQobuzの再生にも対 さらに、JPLAYStrea merはコントロールアプリのB 適な音楽再生を存分に味わえる。 トワークオーディオならではの快 設定さえ済ませれば、あとはネッ 設定も随分と分かりやすくなり、 ない手はない。JPLAY本体の PLAYStreamerを使わ であり、JPLAYを使うならJ 無関係なタスクを全て止め 音楽再生にのみ特化させる penHomeに対応するおかげ アルPCという仕組みも用意され さしく優れた音質と操作性の両立 で優れた単体プレーヤーと遜色の ている。究極的なレベルで再生品 ubbleUPnPを使えばTI ない操作性が得られる。また、J 98 Net Audio Recommended Products JPLAY ◀ JPLAY Streamer での操作イメージ。同一のネッ トワークにあるスマホ/タブレットデバイスのコン トロールアプリから再生指示を行うことができる。 デュアル PC モードでは、究極とも言える再生に特 化した動作を可能とする JPLAY USB DAC PC USB 接続 ▶日本語でのやり取り に対応したサポートデ スクがあることも大き な特徴。基本設定のマ ニュアルのほか、デュ アル PC モードなどの 設定方法なども分かり かりやすく記載 オーディオ機器へ コントロール App コントロール SmartPhone JCAT USB Isolator USB アイソレーター €365.00(+ 送料 €10.00) ※オンラインサイトからの個人輸入扱いで販売 Specifications ●対応速度:ハイ・スピード 480Mbps 対応● 筐体:アルミニウム製●入出力端子:ホスト 側 USB-B、デバイス側 USB-A ●電源:USB 入 力 の 電 源 で 動 作 ● サ イ ズ:130W × 25H × 65Dmm ●質量:17g OS 環境に関係なく使える! 強力な効果を誇るアイソレーター JPLAY のサブ・ブランドである JCAT は、PC・ネットワークオーディオで高音 質再生を目指すための周辺機器やケーブル などを扱っている。中でも JCAT USB カー ド FEMTO は PC からの USB 出力を著し く改善して根本的な音質向上が得られる が、PCI Express カードであるため、搭載 できる PC が限られるのが難点だ。 そこで、ノート PC や他の USB 出力を 持ったオーディオ機器のユーザーにお薦め できるのが、JCAT USB アイソレーター だ。ドイツ Intona 社の USB アイソレーター をベースにした製品で、USB2.0 規格 で OS に 依 存 せ ず 動 作 し、USB 出 力 を持つ全ての機器で使用できる。音 質改善の方向性は JCAT USB カード FEMTO に近く、ノイズ感の低減と それに伴う色彩感の向上に強力な効果 を発揮する。 同種の製品は他社からもリリース されているが、本製品はほかならぬ JPLAY が効果を認めるものとして、 一聴に値する。 (逆木) ▲ OpenHome を採用したコントロールア プリであれば、JPLAYStreamer での操作 が可能。操作性はアプリの完成度に比例 する。Bubble UPnP(写真上)の場合は TIDAL や Qobuz などの再生も可能だ。写 真下は Kazoo からのブラウズ ると、繊細にして伸びやかな声の まずラドカ・トネフのアルバム 『フェアリーテイルズ』を再生す DDCとして組み合わせた。 オのnano iDSDをUSB ングが使用可能なiFIオーディ 両立してくれるものであり、決し 高音質と快適な音楽再生を容易に ている。 すなわちJPLAYとは、 おかげで良好な操作性も担保され るし、OpenHomeに対応す も十分に優れた再生品質が得られ ただし、繰り返しになるが、J PLAYはシビアな追求をせずと 挑戦してみるだけの価値はある。 て、そのような状況から頭ひとつ 表現や、ピアノの透徹した輝きが て高音質だけを目的にする玄人向 質の追求を行えることこそ、JP 鮮烈な印象を残した。その後どの 抜け出す再生品質こそ、JPLA ようなジャンルの音源を聴いても、 けのソフトではない。他と一線を LAYの最大の特徴と言えよう。 単純な押しの強さや強調感とは無 画した再生音の追求に注目が集ま Yの大きな魅力なのだと言える。 縁な一方、丹念に磨き込まれた音 ることは事実だとしても、この点 PC環境や組み合わせるUSB DACも含め、JPLAYの最高 が強い存在感を放っている。音の は強調しておきたい。 ハイレベルなソフトの中で 頭ひとつ抜き出た再生品質 ほぐれ方、豊かなディテール、重 なお、JPLAYはサブ・ブラ ンドのJCATで、PCに搭載す 性能を引き出すには多くのハード さと明快な輪郭を両立した見事な るUSBカードや外づけのUSB ルを越える必要があることは確か 低音など、端的に言って素晴らし アイソレーターといったアクセサ JPLAYの試聴にはJPLA YStreamerを用い、プレ い再生品質である。しかも、設定 リーも扱っている。アクセサリー だ。それでもなお、 究極を目指し、 の追い込みやデュアルPCへの発 やケーブルにも目を向けている辺 イバックデザインズの最新鋭U 展など、さらなる向上の余地も残 SB DACであるMerlot DACと、カーネル・ストリーミ されているのだから底知れない。 て高音質再生に取り組んでいるこ 99 るJPLAYStreamerの 正直な話、昨今の再生ソフトの 音質はどれも高いレベルで拮抗し とが見て取れる。 り、JPLAYが広い視野を持っ ていると筆者は感じている。そし ● JPLAY および JCAT の取り扱い:JPLAY 日本語デスク URL:www.jplay.info オーディオの新たな可能性がここに。 オーディオ専用PC canarino Filsで JPLAYとROONを使い分ける QNAP のカスタマイズでも有名なOLIOSPEC は、 もともとWindowsPC のカスタマイズ専門ショップで、全国でも屈指のオーディオ専用PCメーカー でもある。 その最新鋭機「canarino Fils」は、USB DAC に接続して使う 音質最重視のPCトランスポート。PC ならではの自由度の高さで、今回は、 JPLAY とROON というタイプの違う旬の再生ソフトウェアを試してみた。 逆木 一氏がレポートする。 OLIOSPEC canarino Fils 標準仕様価格 ¥185,000(税別) Text by 逆木 一 hajime Sakaki Photo by 田代法生 (メイン) 、逆木 一 (取材カット) S p e c i f i c a t i o n s ● CPU:インテル Corei3 6100T プロセッサー 35W Core Skylake (デュアルコア, 3.2GHz ,3MB L3 キャッシュ) (カスタマイズ可) ●メモリ:DDR4 SDRAM 8GB PC4-17000 (4GB x2 デュアルチャネル 最大 64GB 空きスロット× 2) (カスタマイズ可) ●チップセット:Intel H170 ●起動ディスク:2.5 インチ 120GB SSD (カスタマイズ可) ●光学ドラ イブ:なし (シャーシ変更により搭載可能)●ビデオカード:CPU 内蔵 Intel HD グラフィックス (HDMI、DVI-D、VGA 各 1 ポート)●サウンド:Realtek ALC887 8-Channel High Definition Audio CODEC ● LAN:Gigabit LANx1 (Intel I219V)● OS:Microsoft Windows10 Home 64bit プリインストール●リアポート:USB3.0 × 2、USB2.0 × 2、USB 5Gb/s port(s) Type-C × 1、 DVI × 1、 VGA × 1、 HDMI × 1、 Gigabit LAN × 1、 ステレオミニ× 3、 PS/2 × 2、 拡張スロット空きなし (SOtM tx-USBexp 搭載済) ●ドライブベイ (空き) : 3.5 インチシャドウベイ× 1(1) 2.5 インチ SSD × 2(1) ●電源:108W AC Adapter (12V, 9A, Max 108W) ●サイズ:435W × 325H × 60Dmm ●取り扱い: (有) オリオスペック 音楽再生用に 突き詰めた専用PC 音楽再生にデジタル・ファイル音 源を用いるネットオーディオの領域 において、PCの存在は欠かすこと ができない。 特に一般的なPCオーディオで は、PCは再生機器という重要な役 割を担う。それでいてPCは突き詰 めたオーディオ用途を想定しておら ず、システムのボトルネックになる 可能性を常に孕んでいる。そのため 必然的に、PCそれ自体をオーディ オ機器として磨き上げる試みが長ら く行われてきた。こうして、ソフト とハードの両面から高音質を目指す オーディオPCというジャンルが産 声を上げた。 その決定打とも言える製品が、P Cショップとして積極的にPCオー ディオのシーンを牽引してきたオリ オスペックが提案するcanari no Filsである。 canarino Fils は元々 SOtM のインターフェースカードが搭 載されているが、いま話題の JCAT のフェムトクロック使用 の USB インターフェースカード FEMTO も装填可能。 今 回は FEMTO バージョンを試聴した sはオーディオ的な発想に基づく 「オーディオPC」を名乗るだけ あって、canarino Fil 数々の配慮が施されている。 まず、筐体には重厚なフロントパ ネルが印象的な、フルアルミのケー スが使われている。ここで重要なの は、オーディオ機器の佇まいを感じ るということもそうなのだが、冷却 をヒートシンクで行うことでファン レスを実現している点。一般的な用 途ならばいざ知らず、静寂感や繊細 なディテールの表現を追求するオー ディオの世界では、明らかに音や振 動で感じられるノイズを出さないこ とが大前提なのは言うまでもない。 また、本機はSOtMのオーディ オ専用USBハブまたはJCAT USBカードFEMTOを搭載し、 USBオーディオ機器へ流れ込むP C内部のノイズを抑制し、より高品 位な再生が可能。さらにトロイダル トランスを採用したリニア電源もオ プションで用意され、本機だけでな 設定さえきちんとしてしまえば、 音楽を聴く際にマウスやキー ボードを使う必要はない。モニ タを用 意する必 要すらない。 Roon と JPLAY はどちらも、 手元のスマホ/タブレット端末 から音楽再生の全操作が可能 であり、視聴位置から一歩も動 くことなく音楽に耽溺できる canarino Fils のオール アルミ筐体は剛性に優れ るだけでなく、オーディオ ラックにもよく馴 染む。 PLAYBACK DESIGNS の Merlot DAC を 組 み 合わせて聴いた 100 日々の暮らしを音楽で彩るにはROON、音楽にじっくり向き合うにはJPLAY 左は Roon のアーティスト画面。 詳細 なバイオグラフィ、TIDAL と統合された ディスコグラフィ、関連するアーティスト など、膨大な情報とその繋がりが視覚 化されている。 筆者が「音楽の海」と 表現する、聴くだけに留まらない音楽体 験を端的に示すものだと言える JPLAY は「JPLAYStreamer」という機能によ り、ネットワークオーディオプレーヤーとして機能 する。OpenHome に対応するおかげで優れた 汎用アプリが十全に機能し、その操作感は単体 プレーヤーと比べても劣らない。 左画像は汎用 アプリ BubbleUPnP ブラウズ画面 C anarino Filsで聴いた ■ ROONの音質 力みのない すっきりとした鳴り方 払拭されている。PCをシステムに 動感の減退といった諸問題は見事に 曇り、高音域に纏わりつく雑味、躍 ステムでいつも耳にしてきた空間の う。筆者がPCを組み込んだ再生シ これらの対策を経て実際に再生さ れる音は、通常のPCとは次元が違 っている。 く、他の機器への悪影響の抑制も図 ので、 高度な処理能力が必要な再生 くわえてcanarino Fil sはかなり高速なCPUを搭載する れている。 に特化させるという選択肢も用意さ 汎用性をある程度犠牲にして音質面 らではの楽しみがある。もちろん、 単機能に特化したオーディオ機器で 向き合う際にはJPLAYを使う。 高いPCのスペックが要求されるR ソフトや、 将来への対応も万全。 特に は味わえない、オーディオ用PCな 組み込むことに強い懸念を抱いてい る人も、canarino Fil ーズにして快適そのものだ。 純粋な oonを使った場合でも、 動作はスム sならば安心して迎え入れられよ う。powerampで作成したタ オーディオ機器として作られた単体 グ及びMQAファイルのアルバムア ート表示にも対応を果たした。 搭載するCPUの関係で、 動作の滑 Roon Serverと比べると、 さて、オーディオ用とはいえPC である以上、 「汎用性」もまた大き 中心にはさまざまなソフトの存在が 今後ネットオーディオの領域がど のように発展していくにせよ、その らかさには無視できない違いがある。 なメリットとなる。canarin あるだろう。そしてcanarin 使用する再生ソフトウェアを シーンによって選べる o Filsは使うソフト次第で、 持つことで、進化を続けるソフトや 品質を保ちながら潤沢な処理能力を サービスを十全に機能させ、将来に o Filsは、オーディオ機器の 聴くだけに留まらない多面的な音楽 渡って先端のオーディオ/音楽体験 ネットオーディオにおけるさまざま の楽しみが得られる「Roon」や、 を実現するデジタル・ファイル再生 な機能を担うことができる。 例えば、 音質面で高く評価されている「JP 再生時にPCの存在を意識せずに済 の原器となる。 み、なおかつきちんとオーディオ機 LAY」といったソフトを同時に、 これらのソフトはスマホやタブレ ット端末からの操作に対応している 器として作られた製品。canar 好みや状況に応じて使い分けること ため、きちんと設定を済ませれば、 ino Filsはまさに、理想の マシンスペックや汎用性において 間違いなくPCでありながら、音楽 もはやマウスやディスプレイと向き が可能になるのだ。 合う必要もない。 だと言える。 オーディオPCの姿を体現する製品 日々の暮らしを音楽で彩るために Roonを使い、じっくりと音楽に 101 ■c anarino Filsで聴いたJPLAYの音質 丹念に磨き込まれた音 他のソフトの水準を超えた存在 端的に言って、丹念に磨き込まれた音。一音一音の粒立ちが良く、押し出しの強さ に頼ることなく際立った存在感を放っている。響きや余韻も透明感に溢れ、音の消え 際まで克明に描き切る。特にピアノの輝くような音色は強い印象を残した。細部の情 報量や音の分離にも優れ、その高い音質評価に違わず、オーディオ的な再生能力は 他のソフトの水準を越えている。(逆木) 全体的に力みのないすっきりとした鳴り 方で、音のほぐれが良く、左右と奥行 きの両面で空間の広がりに優れる。低 域の輪郭が明瞭なおかげで、リズムや ベースラインが聴き取りやすく、躍動感 を生む。中高域は低域と比べると特徴 に乏しいが、その分ニュートラルな表 現に徹していると言える。音数の豊富 な曲よりも、シンプルで空間性に富む 曲の再生に適するようだ。(逆木) JPLAY 設定画面。PC の環境や接続する USB DAC に応じてきめ細かい設定が可 能で、好みの音質に追い込んでいくことができる Roon ではアルバムごとに専用のページ が用意されている。アーティストの他の アルバムへのリンクだけでなく、制作に 携わった人々の詳細なクレジットからも、 新しい音楽との出会いがある JPLAY ROON
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