24 日 々 雑 感 丸 山 弦 今冬もいまのところ少雪である。日常の生活に 女はそのまま中学へ上がっても続け、また長男、 おいて雪の少ない事に越したことはないが、皆さ 次男もクロスカントリースキーを始めることにな んがご存知の通り、十日町市・津南地域は「豪雪 り、やはり小・中学校とわかれると、どうしても 地帯」と思われている。そのため、ある程度雪が 私と嫁も分担して練習や大会の手伝いに行かなけ 降らないと「仕事」にならないこともある。冬期 ればならない。おまけに、十日町病院の建て替え は除雪を主とする建設業や、スキー客を受け入れ に伴い私は今年家を新築した。設計の段階で気付 る旅館業、また十日町雪まつりは多くの観光客を いてはいたが、1階の中央部にスキーの「ワック 呼び込む一大イベントだ。 スルーム」も設計されていた。もう少し車庫や部 しかし、ここ数年は本当に雪が少ない(数年前、 屋が広くなったはずだが・・・まんまと騙されたも 雪まつり期間だけ大雪となりイベントの方や観光 のだ。 客が来られないことがあり、イベントが中止に このクロスカントリー、子ども以上に「親」が なったことがあったが)。地球が変わってきてい 一生懸命である事がおもしろい。この競技は選手 るのがよくわかる。 だけでなく、先生、コーチ、保護者が頑張らない そんな中、子ども達が行っているスキーもそう と成り立たないのだ。他の競技もきっとそうなの だ。私が言うスキーとは、ゲレンデを滑る「アル だろうが、あまりにも自分が子どもの頃にやって ペンスキー」ではなく、野山を走る「クロスカン いた事とはかけ離れているように思える。先ほど トリースキー」のことだ。 話した3日間、30年ぶりにクロスカントリース この地域は、特にこのクロスカントリースキー キーを履いて一緒に走ってみた。小学生について が盛んである。 行くのがやっと、腕や脚がパンパンとなりその夜 何が楽しいかやっている本人もわからないとこ のクリスマスも酒もほとんど飲まず寝てしまった。 ろがあると思うが、実際練習や大会に参加すると そんなこの地域の中核病院である十日町病院に 非常に盛り上がる。十日町市にも全日本大会が行 赴任して12年になろうとしている。ご存知の方も われるような立派なスキーコースがあるのだが、 おられるだろうが、当院は年間2千台の救急車の まったく雪がないため、雪を求めて、この12月23 受け入れを行っており、この地域の救急医療を 日から25日の3日間、次男坊と一緒に、となりの 担っている。正直、周辺の病院に救急医療を行う 津南町までクラブチームの練習に付き添った。あ 体力はなく、 「断らない病院」が当院救急の看板 まり気が進まなかったが・・・。 でもある。近年は魚沼基幹病院もでき、この地域 ことの始まりは長女が小学校でどうしてもクロ の高エネルギー外傷や心疾患が疑われる患者(当 スカントリースキーをやりたいと言ったことから 院は心カテがない)は直接、基幹病院に搬送され だ。反対する気はなかったが、 1つ条件を出した。 るケースも多くなった。それでも当院の受け入れ スキーの手入れやワックスなど相当時間を費やし 救急車台数は変わっていない。こんな状況のため 大変な事はわかっていた。このため「パパは絶対 日当直はかなり厳しい。現状、1人当直で全科対 に手伝わない」が条件だった。長女と嫁は喜んで 応、何かあれば各科拘束医が呼ばれる。日当直を 条件を呑んだように思えたが、いざ始まると、長 行っている先生は、私を含め13名。眼科、泌尿器 新潟県医師会報 H29.1 № 802 25 科は常勤医はおらず、それでも全てを受け入れて 医療関係者、住民、自治体がもっと深刻に考えて、 やっている。 「専門外」を診る負担は若い先生方 十日町市・津南町圏域が1つの医療体とならない には相当な負担であり、この人数であると月の回 と難しいと考えている。当地域は2025年問題と現 数も現状が限界である。これ以上の負担は医局ス 時点で同じ人口構成であり、ある意味モデルケー タッフには無理強いできず、 「断らない病院」の スになってもおかしくないのである。 存続に関わってくる。当然、患者教育も大事であ それについて医師会を中心に少し動きがでだし るが、カツカツの状況であることを自治体に示し た。とても良い徴候だ。私も参加している。私も ていかないといけない。本当に当直ではなく「夜 微力ではあるが医療圏域の連携ができるなら協力 間外来」になっており、受診抑制のため、救急外 したい。十日町病院としては、当院の魅力を全国 来受診料を取るようにするのも1つの手である。 に発信し、興味を示してくれた若い先生方に有意 それ以上に、この地域の医療過疎は深刻であり、 義な研修を受けてもらい、またそこから発信し、 やはり医療連携が課題である。この地域には同じ 「総合医療」 の聖地になるように努めていきたい。 県立病院もあれば公立病院、私立病院、そして医 「若い時の苦労は買ってでも・・・」は、今の若い 師会があり、病院間同士の人材交流や医師会と在 先生には通用しないのかもしれないが、スキーを 宅介護を含めての連携など、限られた医療資源を 通しても自分の時代とは違うという事を肌に感じ フルに活用することが必要である。経営母体が異 ている今、これからやるべき事を模索している次 なると何かとハードルは高くなるが何でも受け入 第である。 れる十日町病院が潰れたら、 出来なくなったらと、 (県立十日町病院) 25 渡部会長ホットライン 渡部会長へのホットラインを開設しております。ぜひ、忌憚のないご意見をお寄せ下さい。 F A X:025-224-6103 E-mail:[email protected] ※ご連絡は、会員の方に限定させていただきます。 新潟県医師会報 H29.1 № 802
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