(続紙 1 ) 京都大学 論文題目 博士(工学) 氏名 松 田 博 和 発泡コアサンドイッチパネルの静的・疲労き裂進展特性の実験と解析による研究 (論文内容の要旨) 複合材料の長所を活かした構造として航空機の一次構造部材への適用が期待され ている発泡コアサンドイッチパネルは、一体構造であるため、損傷許容性の確立が 実用化へ向けての大きな課題となっている。本論文は、き裂進展を抑制する構造要 素であるクラックアレスターについて、その効果を定量的に評価するとともに、発 泡コアサンドイッチパネル特有の成型時に生じる熱残留応力や異材界面による混合 モード状態の影響を考慮し、様々な負荷状況下に対する統一的なき裂進展挙動の定 量的評価手法を示したものである。本論文は以下に示す 7 章からなる。 第1章は緒論であり、研究背景および本論文の目的を述べている。まず、航空機 における軽量化の必要性と、軽量化に適した発泡コアサンドイッチパネルに対する 損傷許容性確立の重要性について述べている。次にこれまで提案されたき裂進展抑 制構造やき裂進展挙動の評価手法に関する研究動向について示した上で、本研究の 目的を述べている。 第2章では、半円断面形状の標準型クラックアレスターについて、混合モード型 静荷重負荷に対するき裂進展抑制効果を、破壊靭性試験および解析により破壊力学 的に実証した。き裂進展抑制効果を見かけの破壊じん性値上昇率で評価し、モード Ⅱ成分が大きいほどき裂進展抑制効果が大きいことを示した。さらに、発泡コアサ ンドイッチパネル成形時に、面板、アレスター、コアの線膨張率の違いにより生じ る熱残留応力の影響により、無負荷状態でもき裂面を閉口させる力が働くことを示 した。アレスターがある場合、き裂面を閉口させる力が増加し、熱残留応力を考慮 しない場合よりもさらにエネルギ解放率低減効果が大きくなることを示した。この 効果を考慮することで、アレスターのき裂進展抑制効果を定量的に評価できること を示した。 第3章では、モードⅠ型疲労荷重負荷に対する半円断面形状の標準型クラックア レスターのき裂進展抑制効果を、疲労き裂進展試験および解析により破壊力学的に 実証した。き裂先端がアレスターに近づくにつれ、疲労き裂進展速度が低下し、見 かけの疲労き裂進展下限界が上昇することを示した。また、破壊じん性の評価の場 合 と 同 様 に 、 熱 残 留 応 力 の 影 響 を 考 慮 し た 最 大 エ ネ ル ギ 解 放 率 G *ma x で 疲 労 き 裂 進 展挙動が評価できることを示した。さらに、荷重比の異なる疲労試験を実施し、応 力比依存性について調査した。熱残留応力を考慮した解析的評価により、き裂先端 の 真 の 応 力 比 R n e t は 荷 重 比 R P よ り も 大 き な 値 と な る こ と を 示 し た 。ま た 、真 の 応 力 京都大学 博士(工学) 氏名 松 田 博 和 比 R n e t が 異 な る 条 件 に お い て も 、G * m a x を 用 い て き 裂 進 展 挙 動 を 整 理 で き 、破 壊 機 構 が最大応力支配型であることを示した。 第4章では、モードⅡ型疲労荷重負荷に対する半円断面形状の標準型クラックア レスターのき裂進展抑制効果を、疲労き裂進展試験および解析により破壊力学的に 実証した。さらに、荷重比の異なる疲労試験を実施して応力比依存性について調査 し 、 モ ー ド Ⅱ 型 負 荷 下 の 疲 労 き 裂 進 展 挙 動 に は 、 最 大 エ ネ ル ギ 解 放 率 G *ma x と 修 正 エ ネ ル ギ 解 放 率 範 囲 (Δ√G * ) 2 の 両 方 が 寄 与 す る こ と を 示 し た 。す べ て の き 裂 進 展 速 度 領 域 で 、 複 合 材 料 積 層 板 の 層 間 き 裂 の 場 合 に 比 べ て 、 最 大 エ ネ ル ギ 解 放 率 G *ma x の 寄与が大きく、樹脂層を主に伝ぱする複合材料積層板の層間き裂の場合と破壊機構 が異なることを示した。破面は破壊じん性試験の結果と似た様相であり、脆性的な 破壊機構であることが示唆された。 第5章では、混合モード型疲労荷重負荷に対する半円断面形状の標準型クラック アレスターのき裂進展抑制効果を、疲労き裂進展試験および解析により破壊力学的 に実証した。さらに、モードⅠ型負荷とモードⅡ型負荷の結果と比較することによ り、混合モード型負荷下の疲労き裂進展挙動に対する最大エネルギ解放率の寄与率 が熱残留応力の影響を考慮した真の混合モード比と相関があることを見出すととも に、この関係を用いてき裂進展挙動を定量的に評価できることを示した。これによ り、あらゆる混合モード比、応力比における疲労き裂進展挙動の統一的な定量的評 価法を示した。 第6章では、実構造への適用がしやすいアレスター構造の例として、発泡コア同 士を結合するスプライス部にき裂進展抑制効果を付与した、スプライス兼用型クラ ッ ク ア レ ス タ ー を 提 案 し 、そ の 効 果 に 対 す る 構 造 、材 料 の 影 響 を 検 討 し た 。さ ら に 、 モードⅠ型静荷重負荷に対するき裂進展抑制効果を破壊じん性試験および解析によ り破壊力学的に実証し、スプライス兼用型アレスターのき裂進展抑制効果が標準型 アレスターよりも高いことを示した。 第7章は結論であり、本研究で得られた成果ならびに今後の課題を述べている。 調査委員 京都大学大学院工学研究科 教 授 北 條 正 樹 京都大学大学院工学研究科 教 授 北 村 隆 行 京都大学大学院工学研究科 教 授 琵 琶 志 朗
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