相場展望レポート (2017 年 2 月)

相場展望レポート (2017 年 2 月)
2017.1.27
水上 紀行 氏(元インターバンク・ディーラー)
2 月の予想レンジ
ドル/円
110.00〜120.00
ユーロ/ドル
1.0300〜1.1000
ユーロ/円
118.00〜128.00
豪ドル/円
80.00〜90.00
ドル/円
ドル/円 月足
1 月 20 ⽇、⽶⼤統領就任式が⾏われ、トランプ⽒は正式に第 45 代⽶⼤統領となりました。
そして就任後早々、いろいろ物議を醸すような発言や決定がなされてきました。
この状態が続くようであれば、相場を⼀⽅向に向かわせるためのフロー(資⾦の移動)を発⽣させる投資家
や実需の動きは、滞るものと思われます。
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2017.1.27
投資家とは、政府系ファンド、年⾦運⽤機関であるペンション・ファンド、GPIF に代表されるような機関投
資家、そして中央銀⾏などを言います。
彼らは、元々、公的あるいは準公的のお堅い人達だけに、投資判断を下すのに、4〜5 ヶ月ぐらいかけるのは、
決して珍しいことではありません。
今年の注目がトランプ⼤統領に集まることは避けがたく、やはり少なく⾒ても、同⼤統領の施策とその実践
の確認には、十分な時間をかけるものと思われます。
ということは、その間は、特に投資家からの⼀⽅向のフローは期待できず、そのため、マーケットには、売
ったり買ったりの投機筋の動きしかない、言い換えれば、レンジ相場が続くということになるものと思われ
ます。
レンジ相場は、厄介な相場です。
私自身、過去に、トレンド相場で⼤儲けした直後のレンジ相場で相当やられた経験があり、その教訓から、
レンジ相場を徹底研究したことがありました。
それで、わかったことは、レンジ相場は、⼀般的に三段階から成り⽴っているということでした。
レンジ相場の三段階
第⼀段階は、トレンド相場からレンジ相場に転換したばかりの時です。
この段階は、非常に荒っぽく乱高下しますので、乱高下期と呼んでいます。
その前のトレンド相場は、ある意味、イージーに儲けられる相場だったのですが、この乱高下期に突入する
ことによって、トレンド相場で積み上げた利益を減らしたり⾶ばしたりするのは、いとも簡単なことです。
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2017.1.27
ですので、トレンドラインがブレイクしたら、即刻、トレンド相場からキャリー(転がす)してきたポジシ
ョンは、手仕舞うことが賢明です。
第二段階は、いわゆる⼀般にレンジ相場とイメージする、ある⼀定の値幅の中を⾏ったり来たりする安定期
で、逆張りがワークしやすいと言えます。
そして、第三段階は、安定期よりさらに値幅が狭くなる収束期です。
実はこの収束期は、⼤変重要です。
というのは、⻑く続いたレンジ相場が、トレンド相場に移⾏するタイミングが近づいていることを⽰唆して
いるからです。
往々にしてあることは、第二段階の安定期以降、限られた値幅の中で、逆張りで利益をどうにか出そうとす
る動きがマーケットでは、活発になります。
しかし収束期が、本来、レンジ相場からトレンド相場への転換期であるということは、レンジをブレイクア
ウトして、⼀⽅向に相場がどんどん進んでしまう⼤きなリスクがあり、収束期では逆張りは避けるべきだと
いうことです。
もしも、逆張りをしてしまったら、ヘタをするとポジションを抱えたまま、⼀気に損失を膨らませることに
もなりかねません。
⼀⽅、逆に、トレンドに沿った順張りのポジションを持っていたら、⼀攫千⾦も夢ではありません。
こうした明暗を分けるタイミングだけに、ポジションを持って、動き出すのを待つよりも、動き出したら、
流れに乗ることは、決して遅くはなく、むしろ安全確実だということです。
レンジ相場は、今申し上げたようないろいろな局⾯がありますので、各局⾯に⾒合ったトレードができるよ
うにならなければなりません。
今年は、最初にも申し上げましたように、トランプ⼤統領という不確定要素が加わり、特に投資家は慎重に
なるものと思われますので、トレンドは出来づらいと思います。
したがって、レンジ相場が延々と続く可能性があるため、レンジ相場について詳しくお話してきたわけです。
ですので、年間のほとんどの部分を、たぶん、110 円から 120 円の間で過ごすものと思われます。
その後については、個人的には、100 円⽅向に向かうと⾒ていますが、それはまた近づきましてからお話し
たいと思います。
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2017.1.27
ユーロ/ドル
ユーロ/ドル 月足
ドル/円がレンジなら、ユーロ/ドルは尚更のこと、レンジになる可能性が高いと思います。
なぜなら、⼤⻄洋を挟んで、アメリカとヨーロッパの間の資⾦フローは、ドル/円どころではないからです。
基本的に、投資家が資⾦を移動させています。
私がニューヨークに駐在していた頃、ある⽶系投資銀⾏のファンドマネージャーと、親しくさせて頂いてい
ました。
そこでわかったことは、ひとつには、欧⽶間の資⾦移動の額はすさまじいということ。
そして、もうひとつは、いつ、どこからどこへ、どれぐらいの資⾦が移動するかを、その投資銀⾏は把握し
ていたということです。これで、儲からないはずはないと思いました。
しかし、彼からの情報は、本当に助かりました。
ある時など、先⽅から電話をしてきて、
「今、ドル/独マルクを売ってください。」とまで言ってこられたのに、
驚きました。
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2017.1.27
このように、欧⽶間の資⾦移動がすさまじいのは、資⾦をドルに置くほうが有利か安全か、あるいはユーロ
に置くほうが有利か安全かという尺度で、投資家が資⾦を動かしているためです。
当然資⾦を動かすにはそれなりの理由があります。
最近で言えば、アメリカのトランプ政権の樹⽴、あるいは今年がヨーロッパの多くの国で選挙があるという
こともあります。
しかし、実際のユーロ/ドルは、⽅向感がありません。
これも、基本的には、ドル/円と同じく、不確定要素が多すぎて、資⾦をどちらにもよりウェイトを置けない
ということだと考えています。
さらに、リーマンショック以降、ヨーロッパの⾦融機関の体⼒がどんどん落ちていて、自分が⽣き残ること
に精⼀杯で、投機的な取引もほとんどできなくなっているということも挙げられます。
したがって、当分、1.0300 ドル〜1.1000 ドルぐらいのレンジをやるのではないかと⾒ています。
ユーロ/円
ユーロ/円 月足
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ドル/円も、ユーロ/ドルも、当⾯レンジであれば、もちろんユーロ/円もレンジということになりそうです。
レンジは、ざっくりとしたところで、118 円から 128 円ぐらいで⾒ています
豪ドル/円
豪ドル/円 月足
これも、基本的には、レンジだと思います。
目先は、80 円〜90 円近辺と⾒ています。
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■ 水上 紀行 氏 氏プロフィール
1978 年三和銀行(現、三菱東京 UFJ 銀行)入行。
1983 年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。
東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。
1995 年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジスト
として広く活躍中。バーニャ マーケット フォーカスト代表。
長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。
公式ホームページ:「Banya Market Forecast」
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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 165 号
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