アメリカに進出する県内企業は 82 社

2017/1/25
松本・長野・飯田支店
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特別企画:米国進出に関する長野県内企業の実態調査
アメリカに進出する県内企業は 82 社
都道府県別では 12 位、4 分の 3 が「製造業」
はじめに
1月 20 日、アメリカ合衆国(以下「米国」
)の第 45 代大統領にドナルド・トランプ氏が就任し
た。選挙期間中から保護主義的な政策を訴え各方面で物議を醸し、選挙戦勝利後もツイッターな
どでの発言が注目を集めてきたが、正式に大統領に就任し、いよいよ本領発揮となる。自動車や
電機メーカーをはじめとして、北米市場との関係が深い日本の産業界。何らかの形で米国に進出
している企業も決して少なくない。長野県内には海外依存度の高い企業が多数存在しており、ト
ランプ政権による通商政策の影響を受ける可能性は十分にあると予想されている。ちなみに、先
般行った「2017 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査」では、今年の懸念材料として
「米国経済」をあげる企業が最も多かった。
そこで帝国データバンクでは、米国に進出していることが判明した県内企業を対象とした実態
調査を行った。2016 年 11 月時点の企業概要データベース「COSMOS2」
(全国約 146 万社)と信用
調査報告書ファイル「CCR」
(同約 170 万社収録)
、及び公開情報をもとに、現地企業への出資、現
地法人・関係会社・関連会社の設立や出資、駐在所・事務所の設置などを通じて、米国に進出し
ていることが判明した県内企業を抽出し、分析している。
調査結果(要旨)
■米国に進出する日本企業は 6814 社、県内企業は 82 社
米国に進出していることが判明した日本企業は 6814 社。本社所在地を都道府県別にみ
ると、
「長野県」は 82 社で多い方から 12 番目に位置している。県内の地区別では、
「南信」
が 31 社で最も多く、
「北信」の 24 社が続いている。
■県内の進出企業、業種別では「製造業」が 75.6%を占める
米国に進出する県内企業 82 社のうち 62 社、率にして 75.6%が「製造業」だった。進出
する日本企業全体における「製造業」の比率は 38.9%で、長野県が大幅に上回っている。
■年商「100 億円以上」が4割近くに
年商規模別にみると、
「100 億円以上」が 39.5%と4割近くを占めた。
「10 億円以上 100
億円未満」と合わせた「10 億円以上」では 75.3%と4社に3社が該当している。
■「カリフォルニア州」への進出が最多
進出地域別では(判明企業対象)
、
「カリフォルニア州」が 34.0%で最多。日本企業全体
でも、同州は 40.1%で最も多く、日本企業の進出が進んでいる。
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特別企画:米国進出に関する長野県内企業の実態調査
1. 都道府県別では「東京都」が 46.7%を占める、
「長野県」は 82 社で 12 位
昨年 11 月末時点で、米国に進出していることが判明した日本企
業は 6814 社。本社所在地別にすると、
「東京都」が 3179 社(構成
比 46.7%)で他を大きく引き離してトップ。2位は「大阪府」
(659
社、同 9.7%)
、3位は「愛知県」
(500 社、同 7.3%)などと上位
には大都市圏が名を連ねる。3位の「愛知県」は、大手完成車メー
カーであるトヨタ自動車や自動車部品メーカーの進出により、米国
への進出が盛んである。
9位の「福岡県」までが 100 社以上。82 社(同 1.2%)の「長野
県」は 12 位。上位 15 都道府県には、
「愛知県」
「静岡県」
「岐阜県」
「長野県」と中部地区の4県が含まれている。
都道府県別(上位15)
順位 都道府県
1
東京都
2
大阪府
3
愛知県
4 神奈川県
5
兵庫県
6
京都府
7
埼玉県
8
静岡県
9
福岡県
10 千葉県
11 岐阜県
12 長野県
13 広島県
14 岡山県
15 北海道
社数
3179
659
500
411
221
189
184
156
102
88
86
82
78
77
72
構成比
(%)
46.7
9.7
7.3
6.0
3.2
2.8
2.7
2.3
1.5
1.3
1.3
1.2
1.1
1.1
1.1
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特別企画:米国進出に関する長野県内企業の実態調査
2.
「南信」37.8%、
「北信」29.3%の順
地区別
米国に進出する県内企業 82 社の本社所在地を4地区別にすると、
地区
「南信」が 31 社(構成比 37.8%)で最も多く、
「北信」が 24 社(同
社数
北信
東信
中信
南信
合計
29.3%)で続いている。
「中信」は 14 社(同 17.1%)
、
「東信」は 13
社
(同 15.9%)
。
市郡別で最多となったのは
「長野市」
(11 社、
同 13.4%)
。
海外進出に関する調査では、「南信」の企業の構成比が高くなる傾
向があるが、2016 年4月に行った「ASEAN 進出に関する長野県内企業
24
13
14
31
82
構成比
(%)
29.3
15.9
17.1
37.8
100.0
の実態調査」
、同年8月に行った「中国進出に関する長野県内企業の実態調査」における「南信」
の構成比をみると、ASEAN が 44.1%、中国が 43.1%とともに 40%を上回っている。米国進出企業
でも「南信」の社数が最大であることに変わりはないが、構成比は低下している。
3.
「製造業」が4分の3を占め最多
82 社の業種別内訳は、
「製造業」が 62 社(構成比 75.6%)と全
体の4分の3を占めた。
「卸売業」
と
「サービス業」
が6社
(同 7.3%)
業種別
で続いているが、大きな差が生じている。
「製造業」を細分類別に
業種
すると、「抵抗器・コンデンサ・変成器・複合部品製造業」
(6社、
社数
建設業
製造業
卸売業
小売業
サービス業
不動産業
その他
合計
同 7.3%)
、
「プラスチック加工機械・同付属装置製造業」
(4社、
同 4.9%)などが多い。
全国の進出企業を業種別にすると、
「製造業」の構成比が 38.9%
で最も高かったものの、長野県の方が 36.7 ポイントも高い。これ
は長野県の産業構造を反映したもので、ASEAN 進出企業の 77.1%、
中国進出企業の 75.1%も「製造業」だった。なお、米国進出企業
1
62
6
3
6
1
3
82
構成比
(%)
1.2
75.6
7.3
3.7
7.3
1.2
3.7
100.0
の「製造業」構成比 75.6%は、47 都道府県の中で秋田県(構成比 81.8%、9社)
、滋賀県(同 76.5%、
26 社)
、和歌山県(同 76.5%、13 社)に次いで4番目の高さだが、この4県のうち進出社数は長
野県が他の3県を大きく上回っている。
全国における「製造業」以外の業種別構成比は「卸売業」の 23.7%、
「サービス業」の 19.3%
などが高く、細分類別では「受託開発ソフトウエア業」
(3.4%)
、
「電気機械器具卸売業」
(3.3%)、
「投資業」
(3.2%)などの順となった。
4.
「年商 10 億円以上」が 75.3%、ASEAN・中国進出を上回る
年商規模別では(年商が判明した 81 社対象)
、
「100 億円
以上」が 32 社(構成比 39.5%)と4割近くに達し、
「10 億
円以上 100 億円未満」
(29 社、同 35.8%)と合わせると、
構成比は 75.3%と4分の3を超える。
「10 億円未満」は 20
年商規模別
年商規模
10億円未満
社数
20
構成比
(%)
24.7
10億円以上100億円未満
29
35.8
100億円以上
32
39.5
合計(判明企業)
81
100.0
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社(同 24.7%)だった。
「10 億円未満」の構成比は、ASEAN 進出企業では 39.7%、中国進出企業では 32.9%。米国進出
企業は、ASEAN を 15.0 ポイント、中国を 8.2 ポイント下回っており、米国に進出している企業は
ASEAN や中国と比べると年商規模の大きな企業が多いという傾向が浮かび上がる。
5.進出州別では「カリフォルニア州」が
3分の1を超える
米国への進出地域が判明した 47 社を対象に進出州をみ
ると、「カリフォルニア州(西海岸)」が 16 社(構成比
34.0%)で最も多かった。全体の3分の1を超えている。
同州は、シリコンバレーを中心としてIT産業が集積して
いることもあり、全国企業の構成比でも 40.1%と高く、日
本からの進出が盛んな地域である。米国第三の都市である
シカゴ市を擁する「イリノイ州(中西部)
」
(9社、同 19.1%)
が2位、3位には世界トップクラスの金融センター・ニュ
進出州別
進出州
カリフォルニア州
イリノイ州
ニューヨーク州
ニュージャージー州
ジョージア州
その他
合計(判明企業)
社数
16
9
6
5
4
7
47
構成比
(%)
34.0
19.1
12.8
10.6
8.5
14.9
100.0
ーヨーク市を含む「ニューヨーク州(東海岸)
」
(6社、同 12.8%)が入った。
なお、下の図は日本企業全体の米国進出状況を表したものである。
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まとめ
調査の結果、米国へ進出している日本企業は 6814 社、県内企業は 82 社判明した。自動車関連
をはじめとする機械金属メーカーなど「製造業」の進出が多く、構成比は日本企業全体で 38.9%、
県内企業に限ると 75.6%に達した。年商規模別では「10 億円未満」の構成比が ASEAN 進出企業や
中国進出企業より低く、規模の小さな企業の進出が比較的少ないことも明らかとなったが、これ
は進出目的が ASEAN や中国とは異なることも関係している可能性がある。一方、進出州別では日
本企業、県内企業とも「カリフォルニア州」が最も多く、「イリノイ州」「ニューヨーク州」など
が、また日本企業では「ハワイ州」
「ミシガン州」なども上位に入ったが、日本企業がほとんど進
出していない州もあるなどバラツキも見え隠れする。
トランプ新大統領が選挙に勝利した昨年 11 月9日以降、
乱高下した為替・株価は短期間で反転、
その後円安・株高で推移したこともあって、
“トランプ・ショック”は落ち着きをみせてきた。し
かし、具体的な影響が生じるのはすべてこれからである。弊社が今月発表した「2017 年の景気見
通しに対する長野県内企業の意識調査」では、今年の懸念材料として「米国経済」をあげる企業
が最も多かったが、トランプノミクスによる日本経済への影響については、「分からない」
(41.1%)が「マイナスの影響」
(36.2%)を上回る結果となっている。
1月 20 日に正式に大統領に就任。これまで口にしてきたような保護主義的な政策が推進されれ
ば、かつてのような日米貿易摩擦の再燃や米国市場における対日圧力の高まりも予想され、進出
企業や輸出関連企業の事業活動に影響が出ることもあり得る。スタートしたばかりの新政権。日
本だけでなく世界中が、トランプ大統領の言動に注目している。
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