中国に進出する長野県内企業は 225 社

2016/10/26
松本・長野・飯田支店
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特別企画:中国進出に関する長野県内企業の実態調査〈2016 年〉
中国に進出する長野県内企業は 225 社
全国では前回調査時から増加するも、県内企業は微減
はじめに
長年にわたり中国と日本は経済的に相互依存関係を築いてきた。日本企業は安価な労働力の確
保を目的に積極的な中国進出を図るほか、巨大な市場、大消費地としての魅力も大きく、新たな
需要の開拓に取り組んできた。それに対し、近年は日中間の政治リスクの拡大や中国経済の成長
鈍化、人件費の高騰といった“チャイナ・リスク”も表面化。中国に対する企業の考え方には変
化もみられるようになり、
“チャイナ・プラス・ワン”として ASEAN 諸国への注目も高まっている。
各社の中国への進出や撤退といった判断が引き続き注目されているが、現時点の進出状況はど
うなっているのだろうか。帝国データバンクでは、自社データベース・信用調査報告書ファイル
「CCR」
(全国約 170 万社収録)をもとに、2016 年8月末時点で抽出した企画商品「ATTACK(海外
進出企業)
」の中から、中国へ進出していることが判明した長野県内企業について、全国の中での
位置づけに加え、地区別、業種別、年商規模別などに分析を行った。なお、前回調査は 2015 年7
月(データは 2015 年5月末時点)に行っている。
調査結果(要旨)
■中国に進出する県内企業は 225 社、都道府県別では 13 位
今回の調査で、中国に進出している日本企業は1万 3934 社判明したが、そのうち長野県
内に本社を置く企業は 225 社(構成比 1.6%)だった。前回調査時の 226 社からは1社減
とほぼ横ばい。都道府県別では多い方から 13 番目に位置している
■地区別で最も多かったのは「南信」の 97 社、構成比は 43.1%
中国に進出する県内企業の本社所在地を4地区別にすると、「南信」が 97 社、構成比
43.1%で最多となった。以下、
「北信」
(65 社、28.9%)
、
「東信」
(40 社、17.8%)
、
「中信」
(23 社、10.2%)の順。また、市郡別で最も多かったのは「長野市」
(28 社、12.4%)だ
った。
■業種別では「製造業」が 169 社(75.1%)で他を大きく引き離す
業種別では、
「製造業」が 169 社、構成比は 75.1%と全体の4分の3を占め、他の業種
を大きく引き離した。細分類別にすると、「工業用プラスチック製品製造業」の 11 社
(4.9%)が最も多い。一方、年商規模別では「10 億円未満」の区分に 74 社(32.9%)が
該当、規模の小さな企業でも中国に進出している状況が窺える。
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2016/10/26
特別企画:中国進出に関する長野県内企業の実態調査〈2016 年〉
1.中国に進出する日本企業は前回調査から増加、県内企業は1社減少
中国に進出していることが判明した日本企業は、2016 年8月時点で1万 3934 社。下表は、進出
企業を都道府県別にしたものである。最も多かったのは「東京都」の 4743 社(構成比 34.0%)で、
全体の3分の1以上を占めた。2位は「大阪府」
(2096 社、15.0%)
、3位は「愛知県」
(1103 社、
7.9%)で、この3都府県を合計すると 57.0%と6割近くに及ぶ。
以下、
「神奈川県」
(651 社、4.7%)、
「兵庫県」
(496 社、3.6%)
、
「埼玉県」
(452 社、3.2%)
、
「静岡県」
(350 社、2.5%)などと続く。
「長野県」は 225 社で構成比は 1.6%、都道府県別では
13 位である。
2015 年7月に行った前回調査(データは 2015 年5月末時点)との比較では、日本企業は 678 社、
率にして 5.1%増加している。47 都道府県のうち増加したのは 34 都道府県、横ばい・減少となっ
たのは 13 県。前回調査時に 226 社だった「長野県」は1社減少(0.4%減)している。
都道府県別社数
地域
北海道
東北
関東
北陸
中部
都道府県
社数
北海道
111
青森県
21
岩手県
22
宮城県
78
秋田県
33
山形県
53
福島県
84
茨城県
90
栃木県
91
群馬県
137
埼玉県
452
千葉県
242
東京都 4,743
神奈川県
651
新潟県
175
富山県
104
石川県
116
福井県
109
山梨県
48
長野県
225
岐阜県
302
静岡県
350
愛知県 1,103
三重県
121
構成比
(%)
順位
前回比
(%)
0.8
11.0
0.2 ▲ 16.0
0.2
22.2
0.6
1.3
0.2
10.0
0.4
1.9
0.6
20.0
0.6 ▲ 1.1
0.7
15.2
1.0
2.2
3.2
3.4
1.7
8.0
34.0
5.1
4.7
1.9
1.3
5.4
0.7
16.9
0.8 ▲ 1.7
0.8
11.2
0.3
17.1
1.6 ▲ 0.4
2.2
10.6
2.5
7.4
7.9
5.4
0.9
7.1
前回順位
19
44
43
28
38
32
27
25
24
16
6
12
1
4
15
22
18
20
34
13
9
7
3
17
→
↓
↑
↓
→
→
↑
↓
↑
→
→
↑
→
→
→
↑
↓
↑
→
↓
→
→
→
↑
19
41
46
27
38
32
29
23
26
16
6
13
1
4
15
24
17
21
34
12
9
7
3
18
地域
都道府県
社数
滋賀県
106
京都府
338
大阪府 2,096
近畿
兵庫県
496
奈良県
71
和歌山県
64
鳥取県
43
島根県
16
中国
岡山県
219
広島県
251
山口県
52
徳島県
40
香川県
95
四国
愛媛県
88
高知県
20
福岡県
249
佐賀県
28
長崎県
40
熊本県
55
九州・
沖縄
大分県
31
宮崎県
19
鹿児島県
24
沖縄県
32
合計
13,934
構成比
(%)
0.8
2.4
15.0
3.6
0.5
0.5
0.3
0.1
1.6
1.8
0.4
0.3
0.7
0.6
0.1
1.8
0.2
0.3
0.4
0.2
0.1
0.2
0.2
100.0
前回比
(%)
順位
前回順位
7.1
21 ↓
20
6.0
8 →
8
4.6
2 →
2
4.9
5 →
5
▲ 2.7
29 ↓
28
▲ 4.5
30 →
30
7.5
35 →
35
▲ 20.0
47 ↓
45
18.4
14 →
14
2.9
10 →
10
▲ 18.8
33 ↓
31
8.1
36 ↑
37
▲ 3.1
23 ↓
21
0.0
26 ↓
25
▲ 16.7
45 ↓
43
8.3
11 →
11
0.0
41 ↓
39
2.6
36 →
36
10.0
31 ↑
33
19.2
40 →
40
▲ 20.8
46 ↓
43
50.0
42 ↑
47
28.0
39 ↑
41
5.1 前回合計 13,256
※前回比(%)は、前回調査と比較した進出企業数の増減率を表す
2.県内地区別では「南信」
、市郡別では「長野市」が最多
中国へ進出している県内企業 225 社を地区別にすると、
「南信」が 97 社(構成比 43.1%)で最
も多く、以下「北信」
(65 社、28.9%)
、
「東信」
(40 社、17.8%)
、
「中信」
(23 社、10.2%)
。前回
調査との比較では、
「中信」2社増、
「南信」1社増、
「北信」社1減、
「東信」3社減。
市郡別では、
「長野市」
(28 社、12.4%)が最も多く、以下「上田市」
(18 社、8.0%)
、
「千曲市」
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特別企画:中国進出に関する長野県内企業の実態調査〈2016 年〉
(17 社、7.6%)、
「岡谷市」
「諏訪市」
(各 16 社、7.1%)などと続く。前回調査から大きな変化は
みられないが、上位 10 市郡に「伊那市」
(9社、4.0%)が新たに顔を出している(以上次頁の表
参照)
。
地区別
地区
北信
東信
中信
南信
合計
社数 構成比(%)
65
28.9
40
17.8
23
10.2
97
43.1
225
100.0
市郡別(上位10市郡)
市郡
長野市
上田市
千曲市
岡谷市
諏訪市
茅野市
松本市
上伊那郡
飯田市
伊那市
社数 構成比(%)
28
12.4
18
8.0
17
7.6
16
7.1
16
7.1
14
6.2
14
6.2
14
6.2
14
6.2
9
4.0
3.業種別では「製造」が全体の4分の3を占める、構成比は前回調査から微減
業種別(大分類)では、
「製造業」が 169 社(構成比 75.1%)に達し、全体の4分の3に及んだ。
以下、
「卸売業」
(33 社、14.7%)
、
「サービス業」
(11 社、4.9%)などと続くが、
「製造業」との
差は大きい。全国でも「製造業」の構成比は 42.0%と全業種の中で最も高いが、長野県は全国を
33.1 ポイントも上回っており、県内に集積する「製造業」が積極的に進出してきたことがわかる。
前回調査との比較では、
「製造業」
「卸売業」が2社減少したのに対し、
「サービス業」が4社増
加。
「製造業」の構成比は前回の 75.7%から 0.6 ポイント減、全国では 0.9 ポイント減とともに微
減となった。
なお、細分類別にすると「工業用プラスチック製品製造業」が 11 社(4.9%)で最多。5社以
上が該当した上位7業種のうち、「製造業」が6業種を占め、「卸売業」から唯一「電気機械器具
卸売業」が入っている。
業種別(大分類)
業種
業種別(細分類、5社以上)
社数
構成比(%)
業種
社数
構成比(%)
建設業
3
1.3
工業用プラスチック製品製造業
11
4.9
製造業
169
75.1
抵抗器・コンデンサー等製造業
7
3.1
卸売業
33
14.7
電気機械器具卸売業
7
3.1
小売業
6
2.7
金属プレス製品製造業
6
2.7
サービス業
11
4.9
開閉装置・配電盤・制御装置製造業
6
2.7
その他
3
1.3
半導体製造装置製造業
5
2.2
225
100.0
プリント回路製造業
5
2.2
合計
4.年商「10 億円未満」の企業が約3分の1
年商規模別にみると、
「10 億円以上 100 億円未満」
(104 社、46.2%)が最も多い。また、
「100
億円以上」
(47 社、20.9%)が2割を超える一方で、
「10 億円未満」
(2区分の合計、74 社、32.9%)
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特別企画:中国進出に関する長野県内企業の実態調査〈2016 年〉
が3分の1近くに達するなど、比較的規模の小さな
企業も進出している。前回調査から増加したのは、
「100 億円以上」
(6社増)と「1億円未満」
(2社
増)
。
なお、全国の調査結果は「1億円未満」4.0%、
「1億円以上 10 億円未満」29.8%、「10 億円以上
年商規模別
年商
社数
1億円未満
4.0
65
28.9
104
46.2
1億円以上10億円未満
10億円以上100億円未満
100億円以上
合計
構成比(%)
9
47
20.9
225
100.0
100 億円未満」43.5%、
「100 億円以上」22.5%。
5.ASEAN 進出との比較 ~ ASEAN に進出する県内企業は 227 社、中国進出と拮抗
県内企業の中国進出状況を、ASEAN 進出状況と比べてみた。今年7月に行った「ASEAN に進出す
る長野県内企業の実態調査」
(2016 年4月末時点のデータに基づいて分析)によると、ASEAN のい
ずれかに進出している県内企業は 227 社(複数の
国に進出している企業をそれぞれカウントする
と 337 社)と、ASEAN トータルでは中国進出企業
数を上回っている。都道府県別では9位と高く、
進出先は「タイ」(116 社、34.4%)が最も多か
った。
〈参考〉ASEANに進出する県内企業
進出国
社数
構成比(%)
タイ
116
34.4
インドネシア
55
16.3
シンガポール
48
14.2
業種別は「製造業」が 77.1%(中国進出企業
ベトナム
45
13.4
フィリピン
39
11.6
は 75.1%)
、
地区別は
「南信」
が 44.1%
(同 43.1%)
マレーシア
28
8.3
を占め、中国進出と同じような傾向が生じている。
ミャンマー
4
1.2
また、年商規模別では「10 億円未満」が 39.6%
カンボジア
2
0.6
337
100.0
(同 32.9%)と、ASEAN へは中国以上に規模の小
さな企業が進出している状況も浮かび上がる。
合計
※「ASEAN進出に関する長野県内企業の実態調査」より
※進出社数は227社だが、同一企業の複数進出をすべてカウント
すると337社となる
まとめ
今回の調査で、中国に進出している日本企業は1万 3934 社、長野県内企業は 225 社判明した。
前回調査との比較では、日本企業は 678 社増加したのに対し、県内企業は1社減少と対照的だが、
日本全体としてみれば中国経済の減速や外交摩擦といった諸問題はあるものの、反日感情の高ま
りは比較的落ち着いて推移したことも影響し、こうした結果となったものとみられる。
持続的な成長を目指す日本企業にとって、約 13 億人の巨大市場を有する中国は無視できなくな
っており、近年は生産拠点としてだけでなく、販売拠点としての重要性が上昇。県内の進出企業
を業種別にみると、圧倒的多数を占める「製造業」の構成比が前回調査から若干ではあるが減少
している。また、弊社が昨年秋に行った「中国の成長鈍化に対する長野県内企業の影響調査」に
よると、中国の成長鈍化が自社の業績に「悪影響がある」と回答した県内企業の構成比は 34.5%
達し、47 都道府県の中で最も高かった。県内には中国経済に対し慎重な見方をする企業も多く、
そうしたことが今回の調査結果の一因となった可能性もある。
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2016/10/26
特別企画:中国進出に関する長野県内企業の実態調査〈2016 年〉
中国に進出する県内企業の総数が前回調査時から微減したといっても、この間新たな進出が確
認できた企業も存在。上記の通り、販売先として中国を重視する企業、取引先との関係で新たに
進出した企業もある。海外経済と密接に関係する企業が多い長野県。中国への進出状況は今後も
引き続き注視すると同時に、
“チャイナ・プラス・ワン”として関心を高めている ASEAN 諸国への
進出状況も合わせて把握・分析していく必要があろう。
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