リサーチ TODAY 2017 年 1 月 25 日 2017年世界経済どこも改善、珍しいほどの好環境 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 先週のTODAYでは、1年前と異なり、日本経済を巡る環境が大きく改善しているとした1。1年前に2016年 を展望した時と状況が大きく変わり、2017年は現段階の想定以上に改善の可能性があるとした。その主因 は、海外経済の改善にある。一方でトランプ政権の誕生、英国のハードBrexit等、昨年来の2大想定外イベ ントがあるため不透明感は大きい。ただし、今日の海外状況が珍しいほど改善に向かっていることを認識す る必要がある。日本では、依然として先述の2大不透明感があるなか、慎重な見方が強い。ただし、これだ け好環境のなかもう少し前向きな姿勢も必要というのが本稿の趣旨である。下記の図表は先進国と新興国 の製造業PMIの推移である。足元ではどちらも改善の流れにあり、2014年初の水準にまで戻っている。昨 年初、新興国が停滞し、先進国も減速にあった状況とは正反対だ。 ■図表:先進国と新興国の製造業PMI推移 56 (Pt) 世界 先進国 新興国 持ち直し 拡張 54 減速 ← 景気 52 50 →縮小 減速 停滞 48 2014 15 16 (年) (資料)Markit よりみずほ総合研究所が作成 新興国の改善の主因は、中国経済の急回復にある。先週20日に中国の2016年の成長率が6.7%と26年 ぶりの水準に低下したと報道され、中国経済の減速不安が語られやすい。一方、次ページの図表で中国 経済の実態をより反映すると言われる李克強指数は昨年初から急上昇し、中国の現地専門家からは「過熱 に近い」とのコメントまで聞かれるほどである。この背景には、昨年、中国がG20の議長国であったこともあり、 公共投資を中心に大幅な景気てこ入れを行ったことがある。今年も秋の共産党大会を前に更なるてこ入れ が続いている。その結果として原油価格を含めた世界的な資源価格の底入れが生じたことも、大きな安心 1 リサーチTODAY 2017 年 1 月 25 日 材料になっている。 ■図表:中国の李克強指数の推移 (前年比、%) 16 (前年比、%) 李克強指数(左目盛) 12 実質GDP成長率(右目盛) 14 12 10 10 8 8 6 4 6 2 0 4 (年/月) -2 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 (注)李克強指数は、中長期貸出残高、電力消費量、鉄道貨物輸送量の 3 カ月移動平均値の前年比伸び率を それぞれ 1/3 のウェイトで合成した指数。 (資料)中国人民銀行、中国電力企業連合会、中国国家統計局、中国鉄路総公司・国家鉄路局、CEIC Data より みずほ総合研究所作成 下記の図表に示されるように、米国の経済指標は昨年11月以降、好転している。米国における景況感の 改善はトランプ新政権の政策を好感しただけでなく、実際の景気動向の支えもあった。しかも、意外にも、 不安の塊と言われる欧州でも昨年10~12月期には予想以上に景況感が改善している。Brexitの不安が高 まる英国の景況感も良い。世界中の景況感が好転していることを直視する必要があるのではないか。 ■図表:米経済指標の市場予想と公表値の比較、Cumulative Surprise Index(CSI) (DI、%) 2016年度 20 10 0 -10 2015年度 -20 -30 -40 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) (注)Bloomberg が公表している全ての米国経済指標の市場コンセンサスと公表値を比較して、DI化。コンセンサス よりも良好な場合はプラス圏、下回っている場合はマイナス圏を示すインデックス。単一の指標でも前月比と前年 比があれば夫々を市場コンセンサスと比較してカウント。30 日間の累計値。直近は 2017/1/23。 (資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成 1 「2017 年日本経済は明るい、追い風を活かせるか」(みずほ総合研究所 『リサーチ TODAY』 2017 年 1 月 20 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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