ハイブリッド証券のエクイティクレジット

CREDIT POLICY
JANUARY 23, 2017
CROSS-SECTOR
RATING METHODOLOGY
ハイブリッド証券のエクイティクレジット
株主ローンを含むハイブリッド証券
Hybrid Equity Credit
For hybrid instruments including shareholder loans
目次:
本格付手法は、2015 年 3 月に修正された格付手法“Hybrid Equity Credit”(ムーデ
ィーズ・ジャパン版「ハイブリッド証券のエクイティクレジット」2015 年 3 月 26 日)を代
替するものである。無効なリンクが更新された。
I. 株主ローンを含むハイブリッド証券への
エクイティクレジット付与時の一般的な
2
分類の枠組み
II.投資適格等級の銀行以外が発行
するハイブリッド証券へのエクイティ
3
クレジットの付与
III. 株主ローンを含む、投機的等級
の事業会社が発行するハイブリッド
証券へのエクイティクレジットの付与
8
IV. ハイブリッド証券のノッチング方法
11
付録 1
13
ムーディーズの関連リサーチ
15
コンタクト:
東京
本クロス・セクター格付手法は、株主ローンを含むハイブリッド証券全般にエクイティク
レジットを付与するアプローチを統合したものである 1。投資適格等級の事業会社が発
行するハイブリッド証券と、投機的等級の発行体が発行するハイブリッド証券の両方を
取り扱う。これには、形式上は債務だが実態は株式に非常に近い可能性のある、株主
ローンも含まれる 2。
本格付手法の対象となる銀行以外の事業体については、ハイブリッド証券の、「ゴーイ
ング・コンサーン」(損失が、広範な、企業全体のデフォルトが発生する前に吸収される)
ベースおよび「ゴーン・コンサーン」(広範な、企業全体のデフォルト発生に直面しない
限り損失が吸収されない)ベースで損失を吸収するかに基づいてエクイティクレジットを
分類するシステムを用いる。銀行が発行するハイブリッド証券にエクイティクレジットを
付与する際も、同様の広範なアプローチが適用される 3。
03.5408.4100
1
本格付手法のガイダンスは、プロジェクト・ファイナンスや、プロジェクト・ファイナンスにみられるものに
極めて類似した仕組み上の特徴をもつコーポレート・ファイナンスの発行体には適用されない。そうし
た発行体の分析アプローチにも同様に広範な原則を考慮するが、それらに該当する財務上・法律上
の仕組みに沿ったものを適用する。
2
本格付手法は、一定の規制要件が充足されるまでは効力を発しない法管轄域もある。
3
銀行が発行するハイブリッド証券にエクイティクレジットを付与するアプローチについては Bank Rating
Methodology(ムーディーズ・ジャパン版「銀行格付手法」)で説明されている。これらのクロス・セクター
格付手法のリンクについては、本稿の関連リサーチのセクションを参照されたい。
ムーディーズ・ジャパン株式会社
CREDIT POLICY
I. 株主ローンを含むハイブリッド証券へのエクイティクレジット付与時の一般的な
分類の枠組み
ムーディーズのバスケットとエクイティクレジットのパーセンテージ
エクイティクレジットの付与にあたり、ハイブリッド証券は、ムーディーズの負債と株式の連続体上での
A から E までのバスケット(A が最も負債に近く、E が最も株式に近い)に分類される(図表 1 参照)。各
バスケットには、負債と株式の具体的なパーセンテージがあり、これがムーディーズの標準的調整 4
に沿った財務諸表の全般的な調整に用いられる。ハイブリッド証券はその後、各発行体の全体の信
用ファンダメンタルズに照らして考慮され、格付への影響については格付委員会に委ねられる。多く
の場合、ハイブリッド証券のバスケット分類が発行体の信用格付に与える影響は、あったとしてもわず
かである。
これらのエクイティクレジット付与の原則の一部は、投機的等級発行体が発行するハイブリッド証券に
は直接には適用されない。これらの発行体に適用するアプローチの違いについてはセクション III で説
明する。
図表 1
エクイティクレジットの水準
ハイブリッド証券分類におけるムーディーズの 3 つの観点
ムーディーズはバスケット分類の基準として 3 つの観点を設け、「ゴーイング・コンサーン」と「ゴーン・コ
ンサーン」の区分を行う。「ゴーイング・コンサーン」ベースで損失を吸収するハイブリッド証券には通
常、より高いエクイティクレジットが付与され、「ゴーン・コンサーン」ベースで損失を吸収するハイブリッ
ド証券では、それぞれの特徴にもよるが、前者よりエクイティクレジットが低くなる。
ハイブリッド証券へのエクイティクレジットを検討する際には次の 3 つの観点を考慮する。
ハイブリッド証券は「ゴーイング・コンサーン」ベースで損失を吸収するか。
ハイブリッド証券は「ゴーン・コンサーン」ベースで損失を吸収するか。
損失を吸収するハイブリッド証券は必要な際に存在しているか。
1.
ハイブリッド証券は「ゴーイング・コンサーン」ベースで損失を吸収するか。
全ての条件が等しければ、広範な全社的なデフォルトの前に、利払い停止メカニズム(特に非累積
型)、元本削減、株式転換等による「ゴーイング・コンサーン」ベースでの流動性確保により、損失を
吸収し財務上の保護を提供するハイブリッド証券には、より高いエクイティクレジットが付与される。デ
ィストレスド・エクスチェンジもその手段のひとつである。ハイブリッド証券の損失吸収機能を活用するこ
とにより、それより上位の債務のデフォルトが回避されることもある。
本件は信用格付付与の公表で
はありません。文中にて言及さ
れている信用格付については、
ムーディーズのウェブサイト
(www.moodys.com) の 発 行 体 の
ページの Ratings タブで、最新の
格付付与に関する情報および格
付推移をご参照ください。
2
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4
Financial Statement Adjustments in the Analysis of Non-Financial Corporation(ムーディーズ・ジャパン版「事業会社の分析
における財務諸表の調整」)、Financial Statement Adjustments in the Analysis of Financial Institutions(ムーディーズ・ジャ
パン版「金融機関の分析における財務諸表の調整」)およびその他のクロス・セクター格付手法のリンクについては、本
稿の関連リサーチのセクションを参照されたい。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
2.
ハイブリッド証券は「ゴーン・コンサーン」ベースで損失を吸収するか。
一方、発行体が広範なデフォルトに近い状態になるまで損失を吸収せず、支払においても、ある程
度の一時的な柔軟性しかもたらさないハイブリッド証券には、高いエクイティクレジットは付与されない。
すなわち、より上位の債権者にとっての損失吸収クッションは、構造劣後による優先順位から得られ
るクッション以上に大きなものとはならないことを意味する。「ゴーン・コンサーン」のハイブリッド証券は、
累積型あるいは ACSM 決済 5で、発行体の任意、あるいは弱いトリガーへの抵触により利払い停止が
発生するものである。 また、限定的な任意利払停止条項が付されているハイブリッド証券もこのカテ
ゴリーに含まれる。
3.
損失を吸収するハイブリッド証券は必要な際に存在しているか。
最後の観点は、必要な際に損失を吸収するハイブリッド証券が存在しているか否かである。ハイブリ
ッド証券がコールされた場合にどのようにリプレイスされるのかを考慮してバスケットを決定するのでは
なく、リプレイスメントの際、どのような手段で資金調達がなされるのかについては、発行体の全体の
信用分析に織り込まれる。ハイブリッド証券の償還タイミングや、代替証券の特徴を考慮した後、ム
ーディーズは発行体の今後の資本状況にどのような変化がもたらされるのかについて分析する。これ
には、普通株式に加えて損失を吸収するハイブリッド証券の種類、質、満期構成が考慮される。
II.投資適格等級の銀行以外が発行するハイブリッド証券へのエクイティクレジット
の付与
銀行以外のハイブリッド証券には、事業会社、保険会社、ファイナンスカンパニー、REIT が発行する
転換型および非転換型証券が含まれる。これらについては、「ゴーイング・コンサーン」ベースで損失
を吸収するハイブリッド証券(例えば非累積型優先証券)には通常、「ゴーン・コンサーン」ベースで損
失を吸収するハイブリッド証券(例えば累積型下位劣後債務)より高いエクイティクレジットが付与され
る。合理的な観点から、銀行以外の投資適格等級の発行体は、ハイブリッド証券の利払いを行うで
あろうと見込まれるため、累積ならびに非累積の利払停止条項がある優先証券には部分的なエクイ
ティクレジットしか付与しない。一方、投機的等級の事業体が発行する同種の証券には 100%のエク
イティクレジットを付与する。
投資適格等級の銀行以外が発行する非転換型ハイブリッド証券
図表 2 は、銀行以外が発行する非転換型ハイブリッド証券の、バスケット分類に必要な最低限の特
徴を示したものである。それぞれのカテゴリー、すなわち利払い停止と決済、順位、および満期につ
いて、最も負債性の高いものから最も資本性の高いものの特徴を示した。各カテゴリーにおいて、負
債の特徴が強ければ、バスケットは引き下げられ、より強い資本の特徴があれば、より資本性が高い
バスケットに分類される可能性がある。
5
3
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代替支払手段(ACSM)は、支払いが繰り延べられた場合の、利払い決済メカニズムの種類である。ACSM では、普通株
式または一定種類の優先証券の発行により、累積利息の決済を行わなければならない。そのため、ムーディーズは
ACSM のある繰り延べ可能ハイブリッド証券を、累積型とみなす。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
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図表 2
投資適格等級の銀行以外が発行する非転換型ハイブリッド証券へのムーディーズのハイブリッ
ド・ツールキットの適用
利払い停止
強制だが弱い
決済
Column Numbers
累積
#2
#4
#5
X
X
#6
#7
#8
X
X
#9
X
X
任意
任意および強制で有効
#3
#10
#11
#12
X
制限付き任意 2
X
3
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
優先証券
X4
X
非累積
劣後債
順位
#1
1
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
C
C
C
D
普通株
満期
30 年未満
X
30 – 59 年
X
60 年以上
X
X
B
B
X
X
X
X
B
B
C
償還不能
銀行以外のバスケット
A
B
C
注:
1
強制だが弱いトリガーには、低い水準に設定された規制上の最低自己資本比率トリガーを含む。
2
制約付き任意は、発行体が一定のトリガーに抵触するか、ハイブリッド証券の利払いを停止する前に、6 ヵ月以上にわたり同等あるい
は下位の証券に対する支払いを停止していなければならないもの。
3 任意および強制で強いトリガーは、任意利払い停止メカニズムと、全社的なトリガーよりかなり早い段階で抵触する強いまたは「有効な」
トリガーを含む。
4
強制利払い停止は非累積で、任意利払い停止は累積または非累積となる。
例えば、期間 30 年、任意停止条項付きの累積型下位劣後債務はバスケット B に分類される。一方、
期間が 30 年未満であればバスケット A に分類される。永久または期間 60 年の任意停止条項付き
累積型優先株はバスケット C に分類されるが、非累積型で有効なトリガーの抵触により強制的に利
払いが停止される場合はバスケット D に分類される可能性がある。
ハイブリッド証券のエクイティクレジットの額を検討する最初の段階では、まず当該証券が、i) 優先証
券か劣後債務か、ii)累積型か非累積型か、iii)長期か否か、をみる。この検討後、クーポンステップ
アップ、支払い事由、様々なトリガー条項の種類および強さなどの株式としての特性の有無に基づき、
バスケットを決定していく。以下のセクションにおいて、ハイブリッド証券の資本性をみていくうえで追加
または差し引くべき特徴について説明する。
利払い停止のタイミング
銀行以外については、広範な、企業全体のデフォルトに近い状況にならない限り、通常は利払い停
止を行わないとムーディーズは想定している 6。 そのため、累積型ハイブリッド証券と非累積型ハイブ
リッド証券の間で、損失吸収能力にそれほど大きな差はないと考えられる。強いまたは「有効な」トリガ
ーの抵触に結びついた強制利払い停止条項が付加されている場合は、銀行以外の発行体の非累
積型ハイブリッド証券に付与されるエクイティクレジットは高くなる。
6
4
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2012 年 11 月 12 日に発行した“Preferred Stock Impairments and Recovery Rates 1980-2012”で説明されている。リンクにつ
いては、本稿の関連リサーチのセクションを参照されたい。ムーディーズの調査では、1988 年から 2012 年の間、銀行、
保険会社、事業会社、公益企業約 283 社の 616 の優先株でインペアメントが生じていた。283 社のうち、64 社がトラス
トで残りの 219 社がトラスト以外であった。219 社のトラスト以外の発行体の優先株のインペアメントにおいて、84 社
(38%)が広範なデフォルト事由の一環、残りの 135 社のインペアメントのうち 66 社(49%)では後に債券デフォルトが発
生した。64 社のトラスト発行体のうち、30 社(47%)が広範な債券デフォルト、残りの 34 社のインペアメントのうち、6 社
(18%)が広範な債券デフォルトの一環であった。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
トリガー条項はその強度に応じて損失吸収能力が高まる
エクイティクレジットは、強制利払い停止トリガーの強度に応じて付与されることもある。「有効な」トリガ
ーとは、それに抵触すれば、 ハイブリッド証券の利払い停止につながり、財務状況が悪化した状況下
においてキャッシュフローを留保できる。トリガーは、発行体の格付が投資適格等級と投機的等級と
の境界線のすぐ下(すなわち Ba1/Ba2 の格付カテゴリー)で抵触するように設定されている。一方、弱
いトリガーは破産に近い状態でのみ抵触するため、「ゴーイング・コンサーン」としての効果はあったとし
ても極めて小さい(トリガーの種類については図表 3 を参照されたい)。
図表 3
トリガー条項の種類
業種
トリガー条項の強度
ネット・ロス
保険
強い
「有効な」
保険会社および事業会社
強い
規制上の最低自己資本
保険
弱い
一定のハイブリッド証券の特徴により発行体の利払い繰り延べが妨げられることがある
一部の国では、支払い事由は、発行体が利払い停止を選択する能力を制限するものとなり、ムーデ
ィーズはこれを「制限付き任意」利払い停止メカニズムとしている。発行体が、ハイブリッド証券の利
払い停止を行う前に、同等またはより下位の証券の支払いを長期にわたって停止しなければならな
いとすると、ハイブリッド証券がキャッシュフロー確保のために機能すべきときに、それが制限されてし
まう可能性がある。
他の全ての条件が等しければ、6 ヵ月以上の支払い留保期間が含まれている、支払い事由のあるハ
イブリッド証券は、こうした特徴のないハイブリッド証券に比べて、エクイティクレジットが小さくなる。ま
た、それが発行体の判断によって任意に行われた場合を除き、より下位または同等の証券への支
払いがなされることにより、ハイブリッド証券についても支払いが求められる場合にも、エクイティクレジ
ットは小さくなる。
米国 REIT の場合、通常、税法上、発行体が利払いを停止することに対して制約がある。法律により、
米国 REIT においては課税所得の 90%以上の分配が求められるため、課税所得が黒字である場合
にはハイブリッド証券の利払いも強制される。この基準を満たさない場合、REIT としての地位を失い、
発行体の財務状況に大きなマイナスの影響が及ぶことになる。REIT の財務状況が悪化していても、
課税所得がある場合は、ハイブリッド証券の利払いが求められるため、ムーディーズは米国 REIT のハ
イブリッド証券も、制限付き任意利払い停止メカニズムを持つものとみている。
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頻繁に使用される用語
代替支払手段 (ACSM)は、支払いが繰り延べられた場合の、利払い決済メカニズムの種類であ
る。ACSM では、普通株式または一定種類の優先証券の発行により、累積利息の決済を行わな
ければならない。
累積型ハイブリッド証券では、繰延利息が累積され、後日支払われる。
支払い事由とは、支払いが、より下位の証券(または場合によっては同順位の証券)に対してな
された場合に、ハイブリッド証券についても利払いが求められる(同順位または下位の証券に対
する支払いが、ハイブリッド証券の利払いを「強いる」)ことをさす。
支払い停止事由とは、ハイブリッド証券の利払いが停止される場合は、下位の証券(または場合
によっては同順位の証券)の利払いも停止しなければならないことをさす。
支払い留保期間とは、発行体が、ハイブリッド証券の利払いを停止する前に、下位の証券(また
は場合によっては同順位の証券)の利払いを停止する期間をさす。
非累積型ハイブリッド証券では、支払いが停止された利息が再び支払われることはない。
ステップアップとは、ハイブリッド証券が、通常は最初のコール期日にコールされなかった場合
の、当初のクレジットスプレッドに対する上昇分のベーシスポイント数をさす。
ACSM は非累積型ではなく累積型とみなされる
ACSM を用いた利払いは、非累積型ではなく累積型とみなされる。発行体の財務が圧迫された場合、
ACSM を用いた利払いによってキャッシュを留保し、流動性を確保することができる。しかし、この決
済方法では、利息は将来、発行体の財源を用いて決済される必要があるため、ハイブリッド証券は
損失を吸収する機能を果たさない。この点は、永久に支払われない非累積型利息とは異なる。
優先証券と劣後債務の定義
分析を通じて、ムーディーズは優先証券と劣後債務を明確に区分している。しかし、一部の国におい
て、あるいは他国間では、その境界線があいまいとなり、事実上の区分が困難となっている。本稿の
目的と、その名称に関する混乱を避けるため、ムーディーズは優先証券を次のように定義する。
各国の過去および最近の事例に基づき、劣後性が非常に高く、通常、発行体の資本構成上で
普通株式を除いて最も下位の証券。
ハイブリッド証券が期限付きであれば、満期日以外でのデフォルトあるいはクロスデフォルトが発
生しない。例えば、あるハイブリッド証券において利払いを 5-10 年繰り延べることが可能であり、
その期間を超えるとデフォルトとなる場合、この基準に該当するとはみなされない。
破たん処理、あるいは会社更生法等において、残余財産への分配請求件が限られている。
国によって証券法が異なるため、発行体は、ムーディーズの分析上、ハイブリッド証券が優先証券と
みなされるためには、これらの 3 つの条件が全て満たされていることを、市場に開示する必要がある。
ハイブリッド証券がこの基準を満たさない場合、ムーディーズはこれを劣後債務とみなし、エクイティク
レジットの付与においてもそのように取り扱う。
償還を信用分析に織り込む
後述の通り、転換型ハイブリッド証券および元本減額が可能なハイブリッド証券を除くすべてのハイブ
リッド証券が、エクイティクレジットを付与されるためには 30 年以上の満期をもつ必要がある。60 年は
永久と同等とみなす。転換型および元本減額型のハイブリッド証券を除く期限付きハイブリッド証券に
ついては、エクイティクレジットは満期の 10 年前には付与されなくなる。
最初のコール日までの期間は変更後ガイドラインでは重視されず、バスケットの付与においても考慮
されない。しかし、発行体が短期間内にハイブリッド証券をコールする意思を公表している場合には、
6
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クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
その点を全般的な信用分析に織り込む。自社株買いについての分析アプローチと同様、損失を吸収
するハイブリッド証券が早期にコールされる場合、格付け上、ネガティブと見なされる。
ハイブリッド証券のコールのインセンティブが強い場合、エクイティクレジットは低くなる
大幅なステップアップに加え、発行体がハイブリッド証券をコールするインセンティブが強い場合、エ
クイティクレジットは低くなる。ムーディーズは、当初のクレジットスプレッドに対して、100bp 以上のクー
ポンステップアップを伴うハイブリッド証券は、実質的な満期があるものとしてみなす。これに対する唯
一の例外は、全ての上位債権者が同様に保護されるという条件のもとでの、資本拘束条項の発動に
よる最大 500bp のステップアップである。また、ハイブリッド証券の発行日から 10 年以内に 100bp の
ステップアップがある場合も、エクイティクレジットが小さくなる。
エクイティクレジットの上限は引き続き適用
ムーディーズは、資本構成における、ハイブリッド証券の発行に伴うエクイティクレジットの算入額に上
限を設けた。投資適格等級の銀行以外のエクイティクレジットの上限としてムーディーズが用いるの
は、ハイブリッド証券のエクイティクレジット/調整後エクイティが 30%以下 7という水準である 8。普通株
式は、通常、様々な仕組みをもつハイブリッド証券に比べて信用サポートの原資としての確実性が高
いとみられるため、発行体の資本構成において大きな割合を占めるべきである。この上限適用の例
外と考える可能性があるのは、事実上、普通株式と同等とみなされる証券である。銀行以外が発行
するハイブリッド証券への上限の適用に関する詳細な説明は、付録 1 を参照されたい。
転換型ハイブリッド証券
このクラスの証券には、株式や非累積型優先株に転換される、あるいは一定の状況下で元本
が減額されるハイブリッド証券が含まれる。たとえば、強制転換証券は、一定の期日に株式または非
累積型優先株に転換される 9。一方、コンティンジェント・キャピタル証券は、トリガー条項に抵触すれ
ば普通株式への直接転換、あるいは永久元本減額を行い、トリガー条項に抵触しなかった場合は、
投資家が当初保有する「当初」証券を償還期日に償還しなければならない 10。どちらの場合も、「当
初」証券はさまざまであり、上位債務から優先株にわたり、利払い停止メカニズムを伴うことも伴わな
いこともある。
転換型証券(強制転換型証券、コンティンジェント・キャピタル証券を含む)は期限が短い傾向がある
ため、非転換型ハイブリッド証券に比べて高いエクイティクレジットを必ずしも得られない。しかし、より
下位の証券への転換、または元本減額といった、株式に類似した要素があるため、ムーディーズは、
ハイブリッド証券の仕組みに応じて、異なるレベルのエクイティクレジットを付与する可能性がある。エ
クイティクレジットを検討する際には、ハイブリッド証券の「ゴーイング・コンサーン」ベースおよび「ゴー
ン・コンサーン」ベースでの効果を引き続き重視する。
7
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7
ハイブリッド証券のエクイティクレジットとは、バスケット分類に基づく、ハイブリッド証券の金額のうち、資本とみなす金
額をさす。調整後エクイティは、報告ベースのエクイティにムーディーズの標準的調整(ハイブリッド証券のエクイティクレ
ジットを調整項目のひとつとしている)を加えたものである。ムーディーズは、その算入割合の上限を 25%から 30%に引
き上げた。ハイブリッド証券が発行体の不測の財務難において貢献しなかった事例から、そうした市場動向を受けて上
限を設けることとした。
8
エクイティクレジットの上限は投機的等級発行体には適用されない。投機的等級発行体については他に比べて相対的
にリスクが高いため、ハイブリッドが予想と異なる損失吸収となってしまうといったリスクの重要性は、平均的な投機的
等級の発行体にとって、平均的な投資適格等級発行体と比べて大きくない。そのため、投機的等級発行体については、
ハイブリッド証券のエクイティクレジットの上限は不要である。
9
強制転換優先証券は 3 年以内に一定数の普通株式に直接転換される。取引構造は通常、期限付き「当初」証券と 3 年
後株式フォワード契約を組み合わせたものとなっている。3 年目に「当初」証券が売却され、その売却代金を用いて、株
式フォワードの条件に基づいて株式を購入する義務を履行する。破綻時には、清算時の請求は通常、「当初」証券に基
づく。
10
コンティンジェント・キャピタル証券は基本的にこれまでのところ銀行によって発行されている。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
図表4
投資適格等級の銀行以外が発行する転換型証券へのムーディーズのハイブリッド証券のエクイティクレジットの適用
当初証券
証券種類
満期
利払い停止/
決済
順位
転換/元本削減の
タイミング
裏付け証券
転換率または
元本削減率
バスケット
US Common Units
5-10 年
なし
上位債務
3年
株式
固定株式数
A
コンティンジェント・
キャピタル証券
5-10 年
なし
劣後債務
トリガー水準による
株式または元本削 証券による
減
B
US Common Units 11
5年
累積/ACSM 下位劣後債務
3年
株式
固定株式数
B
US Preferred Units
> 10 年
累積/ACSM 下位劣後債務
5 年か、規制上の上 非累積優先
限への抵触のいずれ
か早いほう
額面
B
コンティンジェント・
キャピタル証券
永久
非累積
優先株
トリガー水準による
欧州 強制転換証券
<3年
累積
株式
米国 強制転換証券
3年
累積
優先
12
13
株式または元本削 証券による
減
C
支払い不能または満 株式
期のいずれか早いほ
う
固定株式数
E
満期
固定株式数
E
株式
例えば、図表 4 では、累積 3 年強制転換型優先証券はいずれかの観点でも高いスコアとなる。発行
体が株式転換前に財務が圧迫されていた場合、利払いは「ゴーイング・コンサーン」べースで停止さ
れ、清算時には「ゴーン・コンサーン」ベースで優先株としての請求権があり、一定期日に新株が発行
される。一方、3 年の株式フォワードと上位債務を組み合わせた強制転換型証券(US Common Units)
はバスケット A に分類される。これは、「ゴーイング・コンサーン」ベースでは利払い停止が出来ず、破
綻時の「ゴーン・コンサーン」ベースでは請求権は優先し、さらにリマーケティングを伴い、リマーケティ
ングが不成立とならない限り、株式への直接転換は出来ないからである。
上位債務が当初証券の US Common Units については、普通株式発行前に破産に陥った場合、保
有者が債務を抱えることになるため、バスケットは B から A に変更された。同じ理由から、累積型下
位劣後債務が当初証券の US Common Units、および累積型下位劣後債務が当初証券の US
Common Units で優先株に転換されるものについては C から B に変更となった。こうした変更により、
当初証券へのエクイティクレジットは、コンティンジェント・キャピタル証券へのエクイティクレジットと同
様の形で付与される。
同様の思考プロセスがコンティンジェント・キャピタル証券にも当てはまる。ムーディーズは、「当初」証
券が「ゴーイング・コンサーン」ベースで損失を吸収する能力、普通株に転換されるトリガーに抵触す
る状況、転換時に投資家が受け取る株式数が固定されているのか変動するのかに焦点を当てる。
弱いトリガーへの抵触により、個定数の普通株に転換される、満期の短い劣後債務については、エク
イティクレジットは大きくならないとみられる。一方、非累積利払い停止メカニズムのある永久優先証
券が「当初」証券の場合、エクイティクレジットの面でより高く評価されるとみられる。
III. 株主ローンを含む、投機的等級の事業会社が発行するハイブリッド証券への
エクイティクレジットの付与
前セクションでは、投資適格等級の銀行以外の発行体が発行するハイブリッド証券の負債または株
式としての相対的な特徴を評価する枠組みを提示したが、このアプローチは投機的等級発行体が
発行するハイブリッド証券の評価には適さない。投資適格等級の発行体と比較して、投機的等級の
発行体はデフォルトまでの距離が大幅に近く、資本構成は、永続性が弱く、多様かつより複雑で、債
務にはより多くのコベナンツが付帯されている。また、投機的等級の発行体は、ハイブリッド証券の利
払いを停止しても、契約上、デフォルト事由とならないため、そうした選択をとることも多い。特に、ハイ
8
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11
バスケットBの取り扱いでは、「当初」証券は劣後債務証券としてリマーケティングされる。
12
注 7 と同様。
13
通常、「当初」証券は債務だが、清算時には株式としての請求権となる。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
ブリッド証券の利払いを停止することによってデフォルトが回避できる場合、ハイブリッド証券の利払い
が行われるとの期待値は投資適格等級の発行体より低い。
アプローチ
これらの特徴から、投機的等級の発行体が発行する、ハイブリッド証券の負債および株式としての特
徴を評価するアプローチは、破産シナリオにおけるそれら証券の法的取り扱いに沿ったものとなる。こ
のアプローチはグローバルに適用され、比較的分かりやすい。すなわち、1)負債性のない優先株その
他の類似する株式証券は、当該企業の調整後財務指標の算定において 100%のエクイティクレジッ
トを付与し、ムーディーズの LGD モデル債務ウオーターフォールには含めず、2)負債性のある全ての
証券は、当該企業の調整後財務指標の算定において 100%負債として取り扱い、 ムーディーズの
LGD モデル債務ウオーターフォールに含める。株式は、破産時にも破産以前にも請求権のないもの
と定義され、支払い不履行は直接にも間接にも発行体全体のデフォルト事由とはならない。強制転
換証券については、当初証券が債務証券であればエクイティクレジットを付与しない。
上記 2)の唯一の例外は、普通株主が保有する一部の劣後性の高い負債性証券である。これはしば
しば株主ローンと称され、一定の基準を満たし、実質的に株式に相当する機能をもつ。すなわち、そ
れより上位の債務のデフォルト確率およびデフォルト時損失に影響を及ぼさない。株主ローンが次の
セクションに示した全ての基準を満たせば、信用評価上、株式に類似するものとして取り扱う。
このアプローチは、投資適格等級企業との比較における、投機的等級企業のデフォルトリスクおよび
破産リスクの高さを反映したものであり、投機的等級企業に債務格付を付与する際に用いられてい
るデフォルト時損失(LGD)モデルの適用に沿ったものである 14。また、このアプローチは、負債性証券
のみがデフォルトするとするムーディーズのデフォルトの定義にも沿っている。
投機的等級の発行体による優先株およびその他の株式には破産時の請求権がなく、利払いが行わ
れなくてもデフォルト事由とならない為、100% 株式とみなされるが、投資適格等級の発行体が発行
したそれらの証券は証券の特徴によっては、100%株式とみなさない。投資適格等級の発行体はこ
れらの証券の利払いを行わないことがほとんどないため、それに伴うキャッシュフローは、債務履行に
伴うキャッシュアウトフローに非常に近い(いずれも高い確度で適時に行われる)ものであるとみなされ
る。そのため、優先株およびその他の株式に 100%のエクイティクレジットを付与しないことにより、投
資適格等級の発行体の間での財務力および信用力を一貫性ある形で区別することが可能となる。
ハイブリッド証券の発行体が投資適格等級から投機的等級となった場合には、投機的等級のアプロ
ーチが適用され、その逆の場合も同様となる。そうしたハイブリッド証券の、負債または株式としての
取り扱いは、投機的等級および投資適格等級の発行体に用いるアプローチの違いによって異なる。
例えば、優先株と同等とみなされるが、破産時の債務請求権がある場合には、投機的等級発行体
に適用される手法では 100%負債として取り扱われるが、投資適格等級発行体に適用される手法で
は部分的にエクイティクレジットが付与される。
本格付手法は、調整後財務指標の算定上の、ハイブリッド証券の負債または株式としての取り扱い
に焦点を当てたものだが、そうした指標のみが、企業の信用力評価のベースとなるわけではなく、ム
ーディーズの業種別格付手法に示した通り、多くの要因が、企業のコーポレート・ファミリー・レーティン
グ(CFR)の付与に際して考慮される。また、企業の信用分析では、レバレッジやカバレッジ、将来の資
本構成および現金の利用に関する所有者および経営者にとっての経済的インセンティブの検討など、
常に判断による要素が伴う。
本格付手法は、負債か株式かを判断するアプローチをとるが、重要な点として、本格付手法におい
て、わずかな差で 100%負債としてみなされるか、100%株式としてみなされるかということと、分析上、
普通株式をシニア長期債務としてみなすこととは、必ずしも等しくない。言い換えれば、数値上 100%
負債または 100%株式として取り扱われたとしても、ファンダメンタル信用分析において必ずしも 100%
負債または 100%株式として取り扱われるわけではない。
ハイブリッド証券を 100%負債として取り扱った場合、他の条件が等しければ、CFR に下方圧力が加わ
る。しかし事業会社の場合、それを LGD ウオーターフォールに含めれば、それより上位の債務証券に
14
9
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ムーディーズの LGD モデルは、北米および欧州・中東・アフリカの投機的等級の事業会社の債務証券に対する格付に
用いられる。詳細については、本稿の関連リサーチのセクションのクロス・セクター格付手法のリンクからアクセスできる
Loss Given Default for Speculative Grade Companies を参照されたい。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
対するクッションとなり、CFR に対し、上位証券の格付に上方圧力が加わる。ハイブリッド証券がデフォ
ルト確率格付(PDR)または個々の証券に対する格付に影響を与えない場合は、異なる CFR が適切
である可能性がある。
株主ローンの取り扱い
法的理由または確立された市場慣習により、事業会社による優先株および類似株式証券の発行が
ない、あるいは稀な国では、負債による買収および資本増強に用いる株主資本において普通株式が
占める割合はごく小さいことが多い。そうした国では、それらの取引のための株主資本の多くを、株主
が保有する劣後性の高い負債性証券の発行によって調達することが多い。例えば、欧州の多くの
国々では、そうした証券はしばしば「株主ローン」または「優先株式証券」の名称で発行される。
そうした証券の発行条件は、企業の他の債権者の観点から、株主ローンが信用上、株式に相当する
ものとして発行されることが多い。従って、それより上位の債務のデフォルト確率およびデフォルト時損
失は、資本構成上の株式および株主ローンの割合によって影響を受けることはない。
そのため、投機的等級の事業会社については、以下の全ての 15要件を満たせば、株主ローンには
100%のエクイティクレジットを付与し、LGD モデル債務ウオーターフォールには含めない。全ての要件
16
を満たさない場合は、100%負債として取り扱い LGD モデル債務ウオーターフォールに含める 。そ
のアプローチでは、与信書類全てを全体的に検討し、株主ローンの条件および格付対象グループに
係る他の与信書類(ローンや債券に係る契約、債権者間の契約を含む)との関係を分析する。
株主ローンに 100%のエクイティクレジットを付与するための要件:
株主ローンが、100%のエクイティクレジットを付与する要件を満たす他の株主ローン以外の、全
ての債務に劣後していること
そうした劣後性は、強制執行プロセスや回収金の分配についても規定している、債権者間の契
約(または劣後契約)で把握できるとムーディーズは考えている。また、株主ローンは契約上、格
付対象グループ内の取引債務等の非金融債務を含む全ての債務に劣後し、格付グループ内
の将来生じるであろう債務においても劣後するものとムーディーズは考えている。
一部の事例では、支払い不能事由の発生後に株主ローンの保有者に対して請求権が生じる場
合がある。そうした場合、債権者間の契約において、いかなる請求権も他の全ての債務に対す
る請求権より実質的に劣後することが確実に規定されている必要がある。すなわち、担保に対
する強制執行からの回収金は、他の全ての金融・非金融債務の債権者に、それらの請求権が
完全に消滅するまで優先して分配されるよう規定されていなければならない。
契約上、株主ローンの保有者が、企業のデフォルト確率に対して、もしくは何らかの形のデフォル
トまたは破産手続き後の格付対象グループ内の他の債権者に対する回収の見込みに対して、
直接または間接に影響を与える全ての権利を排除していること
株主ローンおよび債権者間契約の条件には、両者を考慮して以下の事項が規定されている必
要がある。
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–
コベナンツが付帯されておらず(遵守しなかったとしても影響のない情報に関するコベナンツ
以外)、期限の利益喪失条項もなく、デフォルトまたはデフォルト事由を宣言する権利がなく、
そうした権利が存在したとしても上位の債務全てに対する支払いが完全に終了するまでは
権利が行使できないこと。
–
格付対象グループ内に抵当権の設定がないこと。
–
資本構成上、より上位の証券の満期前に、アモチゼーション、償還、その他の期限前支払
いが認められていないこと。ただし、そうした支払いが、100%株式の資本構成において株主
による分配のために実行され、以下に示される支払い制限テスト(普通株式の買い入れに
対する通常の制限と同様のもの)が適用される場合は例外とする。
15
特別または特例的な状況下になければ、株主ローンが株式として取り扱われるためには、全ての条件を満たさなけれ
ばならない。
16
事業会社が優先株を一般的に発行する国(北米等)では、100%のエクイティクレジットが付与される要件を満たす株主
ローンの発行事例を観察していない。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
–
支払い制限テストで認められていたとしても、上位の債務の満期前に行使可能なプットオプ
ションがないこと。
–
多くの国の支払い不能手続きの不確実性から、株主ローンの満期は常に、格付対象グル
ープ内の他の債務の満期の 6 ヵ月以上先でなければならない。
普通株式と株主ローンの経済的利益が ”stapling”されていること
ここで”stapling”とは、株主ローンが普通株主によって保有されており、発行後も普通株主以外
の当事者への譲渡を制限することにより整合性を確保していると、発行時に証明されていること
17
を意味する 。
株主ローンに係る元利払いによる現金の流出に対する保護がなされていること
株主ローンの多くは PIK 証券(Payment-in-kind)のみだが、一部には現金による元利払いの形で
の株主への分配を認めているるものがある。そうした分配は通常、支払い制限テストの対象とな
る。ムーディーズは、株主資金の調達が現金分配額の増加につながらないことを求める。従って、
18
支払い制限テストは、普通株配当と、株主ローンに対する現金支払いを区別してはならない 。
株主ローンの条件に変更があった場合における他の債権者への保護がなされていること
株主ローンまたは債権者間契約の条件を含め、資金調達に関する文書の変更で、 (1)-(5)の条
件に影響を与える場合には、上位の債権者の承認、またはそれに相当する保護が必要である 19。
100%のエクイティクレジットを付与する要件を満たした株主ローンの発行時の当該企業への格
付付与後、いずれかの条件が変更され前述の要件に合致しなくなったと認識した場合、ムーデ
ィーズは、当該企業の調整後財務指標の算定において、株主ローンを 100%負債として取り扱い、
LGD モデル債務ウオーターフォールに含め、当該企業の信用力および上位債務に関するムー
ディーズの見方の変化を反映すべく、必要に応じて全ての格付を調整する。
一部の仕組みでは、企業の上位債務がリファイナンスまたは返済された場合、債権者間契約に
よる制限が適用されなくなり、株主ローンの標準的なコベナンツ(デフォルト事由や期限の利益
喪失事由の発生を含む)が有効となることがある。当初の債権者間契約による保護がなく、当
該発行体がその後、新たな上位債務を発行する権利を有している場合には、エクイティクレジッ
トの付与が困難となる可能性がある。
IV. ハイブリッド証券のノッチング方法
エクイティクレジットの付与は通常、ムーディーズのハイブリッド証券に対する格付慣行に沿って行う。
ムーディーズの一般的なルールとしては、損失吸収能力の高いハイブリッド証券の方は、そうでない
証券に比べてノッチ幅が大きくなり、より高いエクイティクレジットが付与される。ムーディーズは、様々
な仕組み上の考慮事項とともに、満期について、エクイティクレジットを検討するうえで考慮しているが、
格付上では考慮しないため、完全に整合させることは難しい 20。今後、ムーディーズはハイブリッド証
券のパフォーマンスを引き続き注視していく。ハイブリッド証券の損失吸収が予想と異なる場合には、
ノッチングおよびバスケット分類を変更する。
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17
例えば、マネジメントインセンティブを促進するため、普通株と株主ローンの所有比率の差が拡大することがある。しかし、
利益の共通性を確保するため、保有者が十分に重複していることをムーディーズは求める。
18
レバレッジの高い企業における現金の早期分配は信用評価上ネガティブであり、明示的な債務調整がない場合でも
CFR にマイナスの影響を及ぼすことがある。そうした支払いは、キャッシュフローを考慮する他の指標に織り込まれ、財
務方針の検討にも影響を与える。
19
同等の保護では、認められる変更は (i)マイナーな、事務上またはテクニカルなエラーの修正、または (ii) 独立第三者か
らみて、より上位の債権者に比べて大幅に不利ではないものに限られる。
20
例えば、それより下位または同等の証券に対する支払い事由があり、12 ヵ月の支払い保留期間のあるハイブリッド証券
は、6 ヵ月の支払い保留期間のあるハイブリッド証券と同じ格付となる。これは、両社の間ではノッチ差が発生するほど
の予想損失の差はないと考えられるためである。しかし、エクイティクレジットの観点からは、12 ヵ月の支払い保留期間
のあるハイブリッド証券のほうが、6 ヵ月の支払い保留期間のあるハイブリッド証券より、株式との相対的な類似性が低
くなるため、エクイティクレジットが低くなる可能性がある。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
保険会社のハイブリッド証券に対する格付
保険会社に対するムーディーズの格付手法にはそれぞれ、保険会社の持株会社または保険事業
を行う会社が発行するハイブリッド証券に対する、ノッチング・ガイダンスのセクションが設けられている。
ムーディーズは通常、劣後債務格付および下位劣後債務格付を、発行体の上位債務格付より 1-2
ノッチ低い水準とし、累積型・非累積型優先証券は上位債務より 2-3 ノッチ低い水準とする。
事業会社のハイブリッド証券に対する格付
投資適格等級の事業会社については、ムーディーズは保険会社のハイブリッド証券に類似した思考
プロセスをとる。劣後債務または下位劣後債務を上位債務より 1 ノッチ低い水準とし、累積・非累積
優先証券を 2 ノッチ低い水準とする。また、強い強制利払い停止トリガーのある非累積型優先証券
については、上位債務格付より 3 ノッチ低い水準とする。
投機的等級の発行体については、格付委員会は、投資適格等級の発行体に用いる相対的な順位
付、発行体の資本構成、当該発行体がどの程度トリガー抵触に近いかを考慮して格付を検討する。
また、証券クラス間のノッチングは、投資適格等級より投機的等級のほうが差が大きくなるとみられる。
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クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
付録 1
投資適格等級の事業会社のハイブリッド証券に対するムーディーズのエクイティクレジット
ムーディーズは、資本構成において、ハイブリッド証券の発行に伴うエクイティクレジットの合計額に上
限を設けるのが適切と考えている。その比率の算定式および上限は次の通りである。
ハイブリッド証券のエクイティクレジット
Hybrid Equity Credit
< 30%
Equity 調整後エクイティ
+ Hybrid Equity
(1) Credit
(1) 調 整 後 エ ク イ テ ィ と は 、 ハ イ ブ リ ッ ド 証 券 の エ ク イ テ ィ ク レ ジ ッ ト を 含 む 、 ム ー デ ィ ー ズ の 標 準 的 調 整 後 の エ ク イ テ ィ
普通株式は、これまでとは異なる環境あるいはストレス時において、より確実な信用補完の源泉とな
るため、資本構成において主要な構成要素である。とはいえ、他の劣後証券との構成および比率が
適切であれば、ハイブリッド証券が優先債権者にとって、ストレス時のクッションとして有効であるとム
ーディーズは考えている。また、株式がシンプルで単純であるのに対し、ハイブリッド証券はより複雑に
組成されており、特にストレス時には予想外に作用することがある。
例えば、投資適格等級の発行体は、資本市場での調達を維持するため、ハイブリッド証券の配当繰
り延べや見送りに消極的になる可能性がある。株式の配当は企業の利益に応じて変動するが、大半
のハイブリッド証券の投資家には固定利息が支払われる。ハイブリッド証券の利払いは繰り延べられ
たり、完全に停止されたりすることがあるが、企業(特に投資適格等級の企業)は通常、ハイブリッド証
券の利払いを出来る限り実施し、深刻な財務難に直面した場合にのみ繰り延べると予想される。ま
た、ハイブリッド証券の利払い繰り延べは、発行体の信用プロファイルにマイナスの影響を及ぼし、将
来の資本市場での調達が制約される可能性があるという懸念も根強い。
銀行以外へのエクイティクレジット上限の適用
ハイブリッド証券のエクイティクレジットの上限は、投資適格等級の保険会社、ファイナンスカンパニー、
証券会社、事業会社、REIT が発行するハイブリッド証券に適用され、アナリストと格付委員会にとって
の一般的なガイドラインとなる。また、発行体の資本構成管理上、柔軟性を与える水準となっている。
ムーディーズの目的は、ハイブリッド証券全般を制限することではなく、普通株式との対比でハイブリ
ッド証券のエクイティクレジットを制限することにある。
30%の上限は、具体的な分析データセットに基づいたものでも、科学的なアプローチによって決定さ
れたものでもない。個々の発行体がハイブリッド証券の追加発行を検討する際に、アナリストおよび格
付委員会から懸念が示されたおおよその水準を反映している。また、ハイブリッド証券が、発行体の
財務難において予想外に貢献しなかった経験も織り込んでいる。この上限は、ハイブリッド証券のパフ
ォーマンスが予想と異なり、発行体の格付に影響を与える境界点として適切であると考えている。
この上限を超えて発行されたハイブリッド証券もバスケットに分類されるが、財務指標の算定上、
100%負債として取り扱われる。これによって、将来、上限までに余裕が生じた場合にも一貫したバス
ケット分類が維持される。
図表 5 は、発行体がエクイティクレジットを最大限保有した場合の可能性を示したものである。 企業
のハイブリッド証券のエクイティクレジットを含まない調整後株式が 900 で、債務のリファイナンスや買
収資金調達のためにハイブリッド証券の発行を検討していると想定する。この場合、上限に到達せず
に、資本構成に追加することが可能なハイブリッド証券の最大額はどのようになるだろうか。
公式に従えば、ハイブリッド証券のエクイティ比率が高いほど、追加発行可能額が小さくなることは明
白である。この例では、発行体は、バスケット E のハイブリッド証券であれば 300、バスケット D で 400、
バスケット C で 600、バスケット B で 1,200 を発行する余地がある。いずれのハイブリッド証券でも 360
を超えて発行された場合、100%負債として取り扱われる。
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クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
図表 5
エクイティクレジットの比率に基づくハイブリッド証券の発行余裕額
調整後株式(ハイブリッド
証券のエクイティクレジット
を含まない)
ハイブリッド証券
の額面金額
ムーディーズの
バスケット
エクイティ
クレジット
エクイティクレジット
の額**
30%の上限内での
発行可能額***
900
制限なし*
A
なし
なし
n/a
900
1,200
B
25%
300
386
900
600
C
50%
300
386
900
400
D
75%
300
386
900
300
E
100%
300
386
* バスケット A のハイブリッド証券にはエクイティクレジットが付与されないため、事実上、制限はない。
** ハイブリッド証券の額面額 X エクイティクレジットの比率
***ハイブリッド証券のエクイティクレジット/ ハイブリッド証券のエクイティクレジットを含む調整後エクイティ <= 30%.
理論的には、企業は、上限に達することなく多くのバスケット B のハイブリッド証券を資本構成に追加
できる。しかし、負債性の高いハイブリッド証券を大量に発行すれば、資本性の高い証券より負債性
の高い証券が増加するため、レバレッジの上昇につながる。
図表 6 に、上限と調整後株式の算定方法をまとめた。
図表 6
セクター
30%の上限の算定
投資適格等級の銀
ハイブリッド証券のエクイティクレジット / 調整後株式 ≤ 30%
行以外の企業(保険 調整後株式 = 開示情報に基づく株主資本
会社、ファイナンス
+/- ムーディーズの FM による標準的調整(ハイブリッド証券のエクイティクレジットを含む)
カンパニー、証券会
+/アナリストによる調整
社事業会社、REIT)
貸借対照表上の株主資本と、実質的な株主資本価値との間に大きな差異がある場合もある。例え
ば、貸借対照表上の株主資本はマイナスだが、一方で、継続して純利益およびキャッシュフローが
創出されており、実質的な株主資本価値が大幅に高いとみられる場合がある。貸借対照表上の株
主資本が極めて小さい、あるいはマイナスの場合、ムーディーズの格付委員会は、株主資本を計測
する代替手段として EBITDA 倍率を用いることがある 21。
21
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株主資本が低水準またはマイナスの企業については、ムーディーズは通常、6 X EBITDA - 総負債+繰り延べ税金資産
+少数株主持ち分を、ハイブリッド証券のエクイティクレジットの上限算定の分母として用いる。
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
ムーディーズの関連リサーチ
本稿で参照された関連しうる格付手法およびクロス・セクター格付手法については、ムーディーズの
ウェブサイトを参照されたい。
Preferred Stock Impairments and Recovery Rates 1980-2012
Loss Given Default for Speculative Grade Companies
さらなる情報については、「格付記号と定義」を参照されたい。
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クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット
CREDIT POLICY
ムーディーズ・ジャパン株式会社
〒105-6220
東京都港区愛宕 2 丁目 5-1
愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 20F
Report Number:
194024 (Japanese)
1051425 (English)
著者
Margaret Kessler
Michelle Chalker
プロダクション・アソシエイト
高瀬 美紀
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員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー若しくはサプライヤーのうちいずれかの側の過失によるもの(但し、詐欺、故意による違反行為、又は、疑義を避けるために付言すると法
により排除し得ない、その他の種類の責任を除く)、あるいはそれらの者の支配力の範囲内外における偶発事象によるものである場合を含め、責任を負いません。
ここに記載される情報の一部を構成する格付、財務報告分析、予測及びその他の見解(もしあれば)は意見の表明であり、またそのようなものとしてのみ解釈されるべきものであ
り、これによって事実を表明し、又は証券の購入、売却若しくは保有を推奨するものではありません。ここに記載する情報の各利用者は、購入、保有又は売却を検討する各証券に
ついて、自ら研究・評価しなければなりません。
ムーディーズは、いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性について、(明示
的、黙示的を問わず)いかなる保証も行っていません。
Moody's Corporation (以下「MCO」といいます)が全額出資する信用格付会社である Moody's Investors Service, Inc.は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形
及び CP を含みます)及び優先株式の発行者の大部分が、Moody's Investors Service, Inc.が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、1500 ドルから約 250 万ドルの
手数料を Moody's Investors Service, Inc.に支払うことに同意していることを、ここに開示します。また、MCO 及び MIS は、MIS の格付及び格付過程の独立性を確保するための方針と
手続を整備しています。MCO の取締役と格付対象会社との間、及び、MIS から格付を付与され、かつ MCO の株式の 5%以上を保有していることを SEC に公式に報告している会社
間に存在し得る特定の利害関係に関する情報は、ムーディーズのウェブサイト www.moodys.com 上に"Investor Relations-Corporate Governance-Director and Shareholder Affiliation
Policy"という表題で毎年、掲載されます。
オーストラリア専用の追加条項:この文書のオーストラリアでの発行は、ムーディーズの関連会社である Moody's Investors Service Pty Limited ABN 61 003 399 657(オーストラリア金
融サービス認可番号 336969)及び(又は)Moody's Analytics Australia Pty Ltd ABN 94 105 136 972(オーストラリア金融サービス認可番号 383569)(該当する者)のオーストラリア金
融サービス認可に基づき行われます。この文書は 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「ホールセール顧客」のみへの提供を意図したものです。オーストラリア国内からこ
の文書に継続的にアクセスした場合、貴殿は、ムーディーズに対して、貴殿が「ホールセール顧客」であるか又は「ホールセール顧客」の代表者としてこの文書にアクセスしているこ
と、及び、貴殿又は貴殿が代表する法人が、直接又は間接に、この文書又はその内容を 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「リテール顧客」に配布しないことを表明し
たことになります。ムーディーズの信用格付は、発行者の債務の信用力についての意見であり、発行者のエクイティ証券又はリテール投資家が取得可能なその他の形式の証券に
ついて意見を述べるものではありません。リテール投資家が、投資判断を行う際にムーディーズの信用格付及びムーディーズの刊行物を利用することは、慎重を欠き不適切です。
もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家に相談することを推奨します。
日本専用の追加条項:ムーディーズ・ジャパン株式会社(以下、「MJKK」といいます。)は、ムーディーズ・グループ・ジャパン合同会社(MCO の完全子会社である Moody’s Overseas
Holdings Inc.の完全子会社)の完全子会社である信用格付会社です。また、ムーディーズ SF ジャパン株式会社(以下、「MSFJ」といいます。)は、MJKK の完全子会社である信用格付
会社です。MSFJ は、全米で認知された統計的格付機関(以下、「NRSRO」といいます。)ではありません。したがって、MSFJ の信用格付は、NRSRO ではない者により付与された
「NRSRO ではない信用格付」であり、それゆえ、MSFJ の信用格付の対象となる債務は、米国法の下で一定の取扱を受けるための要件を満たしていません。MJKK 及び MSFJ は日本
の金融庁に登録された信用格付業者であり、登録番号はそれぞれ金融庁長官(格付)第 2 号及び第 3 号です。
MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を含みます。)及び優先株式の発行者の大部分が、MJKK 又は MSFJ
(のうち該当する方)が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、20 万円から約 3 億 5,000 万円の手数料を MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)に支払うことに同意
していることを、ここに開示します。
MJKK 及び MSFJ は、日本の規制上の要請を満たすための方針と手続も整備しています。
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JANUARY 23, 2017
クロス・セクター格付手法:ハイブリッド証券のエクイティクレジット