Special LIVE in Kojima - Med

Special LIVE in Kojima
Special LIVE in Kojima
Educational Lecture
2 月 23 日(木) 18:00∼18:20 せとうち児島ホテル
2F
アンバサダールーム
Chairman:川上祐子(中国学園大学現代生活学部 人間栄養学科)
摂食嚥下障害への対応∼「食べたい」を支援する∼
岡山大学病院 スペシャルニーズ歯科センター
村田尚道
私たちは食べる時、食べ物を認識し、口まで運びます。そして、咀嚼して食塊形成を行った後に、
口腔から胃まで食塊を移送します。その一連の流れは、①先行期、②準備期、③口腔期、④咽頭期、
⑤食道期の 5 期に分類されます。摂食嚥下障害とは、一連の流れの中で機能障害が生じている状態
であり、多くの場合は、
「ムセる」
、「のどに(食べ物が)引っかかる」などの訴えがあります。
摂食嚥下障害は、脳血管疾患や認知機能低下など様々な原因で生じます。この機能障害によって、
誤嚥や窒息といった事故や、低栄養・脱水といった症状が生じやすく、これらのリスク管理を行っ
た上での対応が重要です。摂食嚥下障害のある患者が「食べたい」と望んだ時に、どのようにして
リスクを回避するかを提示することが、安全な支援を提供することにつながります。
食べる機能の支援方法には、食形態の調整や食環境への対応、機能改善のための訓練などが挙げ
られます。安全面から考えると、摂食嚥下機能に応じた食形態を選択することで、食べにくさ、飲
み込みにくさを改善し、誤嚥や窒息などのリスクも回避することができます。また、食べやすくす
ることで食べにくさからくる低栄養や脱水を防ぐこともできます。食環境への対応は、食べやすい
環境を設定することで、自分から食べる意欲の改善にもつながります。私たち医療・福祉に関わる
者は、摂食嚥下障害を診るだけでなく、
「食べたい」気持ちに寄り添った配慮を関連職種と連携して
患者へ提供することも必要です。
本講演では、食べる機能の仕組みと安全面に配慮した食環境や食形態について述べさせていただ
きます。
(804)
日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.32 supplement
2017
Special LIVE in Kojima
Panel Discussion
2 月 23 日(木) 18:20∼19:20 せとうち児島ホテル
2F
アンバサダールーム
Case Report
Chairman:吉田貞夫(沖縄メディカル病院
森光
大(あいの里クリニック
内科/金城大学
客員教授)
栄養管理部)
村田尚道(岡山大学病院 スペシャルニーズ歯科センター)
1)急性期での食支援の実際
2)
特別養護老人ホームにおける認知症、終末期の
栄養ケア
鹿児島市医師会病院 看護部
社会福祉法人北野会特別養護老人ホーム マイライフ徳
丸
松尾晴代
大久保陽子
本邦の認知症高齢者は急速に増加している。複数疾患
当施設では嚥下専門外来の歯科医師との連携開始後、
を有し、医療依存度が高い認知症高齢者が入院し、加療す
誤嚥性肺炎の入院日数は 1/5 に減少し、安全に食べて頂
る中で食支援のあり方が問われている。これは超高齢社
くための多職種での栄養ケアが根付いている。
会に直面する本邦において、栄養管理や摂食嚥下障害、口
その中の 2 症例、アルツハイマー型認知症 A(開始時
腔機能障害への対策が重要な課題となっているためであ
BI:15 点。課題:食事の失行)と脳血管型認知症 B(開始
る。
時 BI:10 点。課題:不顕性誤嚥、食事介助拒否)につい
認知症は、病態が徐々に重症化し、そのプロセスも長期
て検討した。
化する傾向がある。認知機能の低下により生じやすい食
A 症例では、認知症の進行により急激な食事の失行あ
事課題を解決するために、
「生命の維持」
「生活を豊かにす
り。介助を行うも口腔内溜め込みや吐き出しにより体重
ること」への支援が求められる。そのためには、食事介助
減少 3.5kg/3 か月がみられた。頻回な食事介助、栄養剤の
スキルだけでなく、生活機能を維持するための環境調整
付加により認知症状の改善、食事量のアップがみられ、体
や意思決定支援、ゴールの共有などが必要である。看護の
重 3.6kg/3 か月と回復された。B 症例では咽頭期の嚥下障
専門性と患者目線を持つ看護師として、患者の生活像を
害により不顕性誤嚥、また食事介助拒否がみられた。誤嚥
捉えた食支援を心がけたい。また、今の食事環境が適切か
の兆候が見られた際には時間をおいたり麻痺側に食事が
を常に考え環境を修正することが、認知症ケアを中心に
垂れこまない介助の工夫を行い、介助拒否がみられた際
おいた食支援の本来の役割であることを一緒に考えてみ
には同性介助を行うなどのケアで 4 年間誤嚥性肺炎を起
たいと思う。
こすことなく経過した。
日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.32 supplement
2017
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3)在宅における認知症高齢者への食支援
医療法人社団白木会地域栄養サポート自由が丘
米山久美子
「食べる」ということは、栄養を摂るだけではなく、在
宅療養生活の中でも大きな楽しみの一つです。私たち在
宅訪問管理栄養士は在宅療養者を訪問し、生活、医療、介
護の視点を持ち、広い視野で食や栄養についてのアドバ
イスを行っています。在宅における認知症高齢者は、アル
ツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知
症など様々であり、食や栄養に対するアプローチの仕方
もそれぞれ変わってくるため、どの型の認知症なのかを
把握することも大切と考えています。中には低栄養によ
り認知機能が低下しているケースも少なくありません。
在宅には、専門職がいつもいる環境ではないため、介護者
独自の介護をしていることも多く、窒息や誤嚥などのリ
スクと常に隣り合わせの状況もあります。在宅は生活の
場であり、普段食べているものやお好きなものをベース
に、美味しく安全にそして栄養も考慮した食事となるよ
う、在宅療養者や介護者と一緒に力を合わせた支援が求
められます。在宅における認知症高齢者の食支援につい
て、在宅訪問管理栄養士の立場からお話ししたいと思い
ます。
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日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.32 supplement
2017
Special LIVE in Kojima
Special LIVE
2 月 23 日(木) 19:20∼20:00 せとうち児島ホテル
Chairman:森光
大(あいの里クリニック
2F
アンバサダールーム
栄養管理部)
認知症の摂食障害を克服するために私たちにできること
沖縄メディカル病院 内科/金城大学 客員教授
吉田貞夫
本邦では、栄養サポートチーム(NST)の普及にともない、病院や施設における低栄養の改善と
いうコンセプトが浸透してきている。さまざまな種類の食品が開発されたことに加え、PICC などの
安全な静脈栄養も広く行われるようになり、各病態に必要な栄養素を容易に補給できるようになっ
てきた。そのなかで、難渋する問題のひとつが、認知症による摂食障害である。ケアの現場では、
「栄養状態が悪化していくのに、食べてくれない」、
「食事摂取量が少なくて、自宅に退院できない」
「リハビリテーションが進められない」
といった場面に遭遇することも少なくない。認知症が進行し
ていく過程で、食事に関する問題や、誤嚥性肺炎のリスクは、高齢者の死因やケアの倫理性などを
考える上でもきわめて重要である。
認知症症例に対する胃瘻造設についても、数年来議論が行われているが、未だ明確な解決には
至っていない。進行した認知症の症例に、ケアする側の都合で胃瘻造設が薦められたり、逆に、栄
養状態の改善によって十分回復できる可能性のある症例でも、家族の誤解で、胃瘻が拒否されると
いった事例も少なくないように思われる。ケアを行うスタッフや、家族に対して、今後も正しい情
報を提供していくことが望まれる。
認知症高齢者が経口摂取できない原因について、現場の医療・介護スタッフが十分理解していな
いことも今後の大きな課題だと思われる。スタッフ教育を拡充させるとともに、原因と対策をデー
タベース化し、問題に遭遇したスタッフが自ら情報を検索し、実践できるような仕組みを作ってい
く必要があるのではないかと思う。
栄養関連の学会では本邦最大の会員数を有する本学会で、認知症の摂食障害をテーマとしたセッ
ションが開催されることは、とても大きな意義がある。これからますます深刻化していく超高齢社
会を乗り切るためにも、認知症の摂食障害の問題を多くの人に理解していただく機会にしたい。
日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.32 supplement
2017
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