大阪大学薬学部卒後研修会 抗がん剤誘発末梢神経障害の発症機構と

大阪大学薬学部卒後研修会
抗がん剤誘発末梢神経障害の発症機構とその治療戦略
京都大学医学部附属病院薬剤部
中川 貴之
がん化学療法時に発生する多種多様な副作用は、患者の QOL を損なうだけで
なく、がん治療の継続にも影響を及ぼし、抗がん剤の減量あるいは中止に追い
込まれることもある。がん化学療法の完遂、治療成績の向上には、副作用のマ
ネジメントが必要であり、最近では、薬剤師が非常に重要な役割を担うように
なってきた。がん化学療法時の末梢神経障害は、微小管阻害薬(パクリタキセ
ル、ビンクリスチンなど)や白金製剤(シスプラチン、オキサリプラチンなど)
などの抗がん剤で高率に生じる副作用であり、四肢末端のしびれ、異常感覚、
感覚鈍磨、痛みなどの症状を呈する。しかし、今なお有効な予防法や治療法は
確立されておらず、難渋することも多い。本研修会では、この抗がん剤誘発末
梢神経障害を取り上げ、対応策などの現状と、基礎研究などにより明らかとな
ってきた発症機構、さらには新たな治療戦略の展望などについて演者らの知見
も踏まえて紹介する。また、リバース・トランスレーショナルリサーチ、ドラ
ッグ・リポジショニングなど薬学研究者/薬剤師にも親和性の高い言葉をキーワ
ードに、抗がん剤の副作用に対する研究の必要性と可能性についても紹介し、
特に薬剤師による臨床研究を促すための議論の場としたい。