Applying IFRS 消費財産業及び小売業 IASB が新たなリース基準 を公表 — 消費財産業及び小売業 2016 年 6 月 目次 概要 2 1. 主なポイント 3 1.1 適用範囲 3 1.2 リースの定義 3 1.3 契約の構成要素の識別及び区分並びに契約対価の配分 8 2. リースの分類 10 3. 借手の会計処理 10 3.1 短期リースの認識の免除 10 3.2 少額資産のリースの認識の免除 11 貸手の会計処理 11 4.1 サブリース — 中間の貸手の会計処理 11 その他の留意点 12 5.1 セール・アンド・リースバック取引 12 5.2 変動リース料 12 4. 5. 次のステップ 13 付録 A:IFRS 第 16 号 B31 項からの抜粋 — リース判定のフローチャート 14 付録 B:借手の会計処理例 15 弊法人のコメント • IASB が公表した新リース基準では、借手にリースの大部分を貸借対照表 に計上することを求めている。これにより、借手である消費財企業及び小売 企業は、現在オペレーティング・リースとして会計処理している店舗や配送 センターに関するリースの大部分について、資産及び負債を計上すること になる。 • 借手はすべてのリースについて単一の会計モデルを適用する(免除規定あ り)。 • 貸手の会計処理は実質的に変更されておらず、IAS 第 17 号におけるリー スの分類が、IFRS 第 16 号に引き継がれている。 • 消費財企業及び小売企業は、製造契約やその他の契約にリースが含まれ ているかどうかを決定するにあたって判断が求められる。 • 新基準は 2019 年 1 月 1 日以後開始する事業年度に適用され、条件付き で早期適用も認められている。 1 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 概要 消費財企業及び小売企業は、国際会計基準審議会(IASB)が公表した IFRS 第 16 号「リース」を適用するに当たり、現在のリース会計実務の一部を変える必要 がある。IFRS 第 16 号では借手のリースの会計処理が大幅に変更されており、消 費財企業及び小売企業の財務や業務フローに大きな影響を与える可能性がある。 借手はリースの大部分について使用権資産及びリース負債を認識しなければな らず、当該産業におけるリース取引の件数が一般的に多いことからすると、貸借 対照表に重要な影響を与えることが考えられる。IFRS 第 16 号に関する IASB の 影響度分析によると、IASB のサンプルに含まれた小売企業において、オペレー ティング・リースに関する将来の支払額の見積現在価値は、その企業の資産総額 の 21.4%、4,310 億米ドル 1 であった。 貸手の会計処理は現在の会計処理から実質的に変更はない。IAS 第 17 号「リー ス」と同様に、IFRS 第 16 号では、貸手はリースをファイナンス・リースとオペレー ティング・リースの二つのタイプに分類することが求められる。リースの分類の結 果により、貸手がいつ、どのようにリース収益を認識し、何を資産として計上する かが決定される。 IFRS 第 16 号では、借手はリースの大部分について、リース負債とそれに対応す る使用権資産を貸借対照表に計上することを求められている。借手はリースの大 部分について単一のモデルを適用する。(現在のファイナンス・リースの会計処理 と同様に)損益計算書上で支払利息と償却費が区別して認識されることから、通 常、損益の認識パターンは変化することになる。 しかし、借手は「短期」リース及び「少額」資産のリースに関して、IAS 第 17 号のオ ペレーティング・リースの会計処理と同様の会計処理を会計方針として選択するこ とができる。 借手である消費財企業及び小売企業は、リース関連資産及び負債を認識するこ とにより、財務報告及び事業に大きな影響を受ける可能性がある。リースの大部 分についてリース負債を認識すると、特定の主要な指標に影響を与える場合があ り、その影響は多数の店舗や、賃料の高い地域の店舗をリースしている企業に とって重要なものとなることが考えられる。新たな基準を適用することにより、企業 は、(1)リースの識別、(2)リース関連資産及び負債の当初測定及び事後測定、 (3)対価の識別とリース及び非リース構成要素への配分、(4)開示に必要な情報 の収集及び集約等、リース取引を把握し会計処理するための新たなプロセスや統 制を策定することも必要となるだろう。 IFRS 第 16 号は、2019 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用される。早 期適用は、IFRS 第 15 号「顧客との契約から生じる収益」をすでに適用しているか、 IFRS 第 16 号と同時に適用する場合にのみ認められる。借手は、完全遡及適用 アプローチ又は修正遡及適用アプローチのいずれかを用いて IFRS 第 16 号を適 用しなければならない。 本冊子では新基準の要点と、消費財企業及び小売企業が留意すべき業界特有 の論点について解説している。消費財企業及び小売企業も他の業種の企業と同 様に、IFRS 第 16 号の範囲に含まれるオフィススペースやオフィス機器、その他の 資産のリースについて新基準を適用する必要がある。 1 「IFRS 第 16 号リース、影響分析」セクション 3 – リースの会計処理の変更により影響を受け る企業 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 2 なお、近日刊行予定の「Applying IFRS ― 新たなリース基準(2016 年 8 月)」で は IFRS 第 16 号について詳しく解説しており、本冊子で議論されている会計上の 論点やその考え方のより詳細な情報については、そちらを参照されたい。 本冊子での我々の見解は、2016 年 6 月現在の暫定的なものである。今後弊法 人が IFRS 第 16 号の分析を進め、企業の基準の理解が進むことによって、さらに 追加的な論点が識別される可能性もあるため、その過程で弊法人の見解が変化 していくことも考えられる。 1. 主なポイント 1.1 適用範囲 IFRS 第 16 号は、以下を除くすべての資産のリースに適用される。 • 非再生資源の探査又は使用のためのリース • 借手が保有する生物資源のリース • サービス委譲契約 • 貸手が供与する知的財産のライセンス • ライセンス契約に基づいて借手が保有する権利(例:映画フィルム、特許権、 著作権) 借手は、上記以外の無形資産のリースに IFRS 第 16 号を適用することができる が、要求はされない。 1.2 リースの定義 リースとは、「一定期間にわたり資産(原資産)を使用する権利を対価と交換に移 転する契約又は契約の一部分」である(契約とは、強制可能な権利及び義務を創 出する複数の当事者間の合意)。契約がリースに該当するためには、契約は特定 された資産の使用を支配する権利を移転するものでなければならない。 1.2.1 特定された資産 特定された資産の概念は、IFRIC 第 4 号「契約にリースが含まれているか否かの 判断」の「特定の資産」の考え方と概ね整合している。IFRS 第 16 号によれば、特 定された資産は、契約上明示されている場合もあれば、黙示的ではあるものの特 定されている場合もあり、より大きな資産の中の物理的に区分可能な一部分であ ることもある(例:ショッピングセンター内の店舗)。ただし、資産が特定されていて も、顧客が当該資産を使用する権利を有していない場合がある。それは、契約の 開始時において、供給者が使用期間全体を通じて資産を入れ替える実質的な権 利を有している場合である。供給者が使用期間全体を通じて代替資産に入れ替 える実質的な権利を有しており、かつ、供給者が資産を入れ替える権利の行使に より経済的便益を得る場合、入替権は実質的なものであると判断される。供給者 が実質的な入替権を有しているかどうかを顧客が容易に判定できない場合、実質 的な入替権はないものとみなす。 3 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 消費財企業及び小売企業は様々な供給契約を締結するが、それらの契約に特定 の資産の使用が含まれるかどうかを判断するための評価が必要となる。例えば、 供給契約の中には、明示的又は黙示的に特定の資産の使用を求める契約や (例:施設全体)、より大きい資産の一部(例:施設内の生産ライン)の使用を含む 契約がある。消費財企業及び小売企業は、契約で資産が明示されていたとしても、 当該資産がリースに該当する可能性のある特定の資産であるかどうかを判断す るために、上記の通り供給者が実質的な入替権を有しているかどうかを慎重に評 価する必要がある。 IFRS 第 16 号には、以下のような、小売スペースに関するリースの定義に係る判 断の設例が示されている。 IFRS 第 16 号の設例の抜粋 設例 2 — 小売スペース コーヒー会社(顧客)が、3 年間、自社の商品を販売するために空港内のあるス ペースを使用する契約を空港運営者(供給者)と締結する。契約は、スペースの 広さと、当該スペースが空港内のいくつかの搭乗エリアのどこにでも配置される 可能性がある旨を定めている。供給者は、顧客に割り当てるスペースの立地を 使用期間中いつでも変更する権利を有している。顧客のスペースの変更に関連 する供給者のコストは最小限である。顧客は、商品を販売するために、容易に移 動できるキオスク(顧客が所有する)を使用する。空港内には、利用可能で契約 におけるスペースの仕様を満たす多くのエリアがある。 この契約はリースを含んでいない。 顧客が使用するスペースの広さは契約で定められているが、特定された資産は ない。顧客は自社所有のキオスクを支配している。しかし、契約は空港内のス ペースに係るものであり、このスペースは供給者の裁量で変更される可能性が ある。供給者は顧客が使用するスペースを入れ替える実質的な権利を有してい る。理由は次のとおりである。 (a) 供給者は、使用期間全体を通じて顧客が使用するスペースを変更する実際 上の能力を有している(B14 項(a)参照)。空港内には契約におけるスペー スの仕様を満たす多くのエリアがあり、供給者は、そのスペースの立地を顧 客の承認なしにいつでも当該仕様を満たす他のスペースに変更する権利を 有している。 (b) 供給者は、スペースの入替えにより経済的に便益を得ることになる(B14 項 (b)参照)。キオスクは容易に移動できるので、顧客が使用するスペースの 変更に関連するコストは最小限となる。供給者は空港内のスペースの入替 えにより便益を得る。入替えにより、供給者は、状況の変化に合うように空 港内の搭乗エリアにおけるスペースを最も有効に利用できるようになるから である。 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 4 1.2.2 特定された資産の使用を支配する権利 使用期間全体を通じて顧客が以下のいずれの権利も有している場合、契約は、 特定された資産の使用を一定期間にわたり支配する権利を移転している。 • 特定された資産の使用から生じる経済的便益のほとんどすべてを獲得 する権利 • 特定された資産の使用を指図する権利 顧客は、資産の使用から生じる経済的便益を直接又は間接に得ることができる (例:資産の使用、保有又はサブリースによる)。経済的便益には、主要なアウト プット(すなわち、財又はサービス)及び副産物(例:資産の使用によって生成され る再生可能なエネルギー・クレジット)、及びこれらから生じる可能性のあるキャッ シュ・フローが含まれる。経済的便益には、第三者との取引(例:資産のサブリー ス)など、資産の使用から生じる便益も含まれる。しかし、特定された資産の所有 権から生じる経済的便益(例:減価償却に由来する税務上の便益、投資税額控除) は資産の使用から生じる経済的便益とはみなされない。 顧客は、下記のいずれかの場合、使用期間全体にわたり特定された資産の使用 を指図する権利を有する。 (a) 顧客は使用期間中の資産の使用方法及び使用目的を変更する権利を有 している 又は (b) 資産の使用方法及び使用目的について関連性のある決定が事前になさ れており、かつ、下記のいずれかである場合 i. 顧客が使用期間全体を通じて、資産を稼働させる権利、又は自 らの決定する方法で他者に資産を稼働させるよう指図する権利 を有していて、供給者にはそれらの稼働指示を変更する権利が ない 又は ii. 顧客が、使用期間全体にわたる資産の使用方法及び使用目的 を事前に決定するような方法で、資産又は資産の特定の部分を 設計した 顧客が使用期間全体にわたる資産の使用方法及び使用目的を指図する権利を 有しているか否かを評価する際には、顧客が、資産の使用から得られる経済的便 益に、最も大きく影響を与える意思決定権を有しているかどうかに着目する。最も 関連性のある意思決定権は、契約対象である資産の性質及び契約条件に左右さ れる可能性が高い。IFRS 第 16 号ではまた、顧客が特定された資産の使用を契 約期間の一部分についてのみ支配する権利を有している場合には、当該契約は 契約期間の一部分についてのリースを含むことが定められている。 IFRS 第 16 号に記載されているフローチャートは、契約がリースに該当するか又 はリースを含んだものであるかどうかの評価を企業が行う際の一助となる。本冊 子の付録 A にこのフローチャートを掲載している。 5 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 IFRS 第 16 号には、以下のような、小売区画に関するリースの定義に係る判断の 設例が示されている。 IFRS 第 16 号の設例の抜粋 設例 4 — 小売区画 顧客が、小売区画 A を 5 年間にわたり使用するため、不動産所有者(供給者)と 契約を締結する。小売区画 A は多くの小売区画があるより大きな小売スペース の一部である。 顧客は小売区画 A を使用する権利を付与される。供給者は、顧客に別の小売区 画に移動することを要求できる。その場合、供給者は、質と仕様が小売区画 A と 同様の小売区画を顧客に提供し、顧客の移転コストを支払うことが要求される。 供給者が顧客を再配置することから経済的に便益を得るのは、大口の新着テナ ントが、大量の小売スペースを顧客及び当該小売スペース内の他のテナントの 再配置のコストをカバーするのに十分なほど有利な賃料で占有することを決定し た場合のみであろう。そうした状況が生じることはあり得るが、契約の開始時に は、それらが生じる可能性が高いとは考えられない。 契約では、顧客が小売区画 A を使用して有名店ブランドを運営し、より大きな小 売スペースの営業時間中に当該ブランドの商品を販売することを顧客に要求し ている。顧客は、使用期間中の小売区画の使用に関する決定のすべてを行う。 例えば、顧客は、当該区画から販売する商品の組合せ、販売する商品の価格設 定及び保有する在庫数量を決定する。顧客は 5 年の使用期間全体を通じて当 該区画への物理的なアクセスも支配する。 契約では、顧客が供給者に対して固定支払を小売区画 A からの売上の一定割 合となる変動支払とともに行うことを要求している。 供給者は、清掃とセキュリティのサービスを広告サービスとともに契約の一部と して提供する。 この契約は小売スペースのリースを含んでいる。顧客は小売区画 A を 5 年間に わたり使用する権利を有している。 小売区画 A は特定された資産である。当該区画は契約で明示的に定められてい る。供給者は、小売区画を入れ替える実際上の能力を有しているが、入替えか ら経済的に便益を受けるのは所定の状況においてのみである。供給者の入替え の権利は実質的なものではない。契約の開始時において、それらの状況が生じ る可能性は高くないと考えられるからである(B16 項参照)。 顧客は、5 年の使用期間全体を通じて小売区画 A の使用を支配する権利を有し ている。理由は次のとおりである。 (a)顧客は、5 年の使用期間にわたり小売区画 A の使用による経済的便益のほ とんどすべてを得る権利を有している。顧客は、使用期間全体を通じて小売 区画 A を独占的に使用する。小売区画 A での販売から得られるキャッシュ・ フローの一部分は、顧客から供給者に移転することになるが、これは、顧客 が当該小売区画を使用する権利に対して供給者に支払う対価を表している。 それは顧客が小売区画 A の使用による経済的便益のほとんどすべてを得 る権利を有することを妨げるものではない。 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 6 IFRS 第 16 号の設例の抜粋(続き) (b)顧客は、小売区画 A の使用を指図する権利を有している。B24 項(a)の条件 が存在しているからである。小売区画 A から販売できる商品及び小売区画 A をいつ営業するのかに関する契約上の制限は、小売区画 A を使用する顧 客の権利の範囲を定めている。契約で定められた使用権の範囲内で、顧客 は、例えば、当該小売区画で販売する商品の組合せ及び当該商品の販売 価格を決定できることによって、小売区画 A の使用方法及び使用目的につ いての関連性のある決定を行う。顧客は、5 年の使用期間中にこれらの決 定を変更する権利を有している。 清掃、セキュリティ及び広告サービスは、小売区画 A の効率的な使用に不可欠 であるが、これに関する供給者の決定は、小売区画 A の使用方法及び使用目 的を指図する権利を供給者に与えるものではない。 したがって、供給者は使用期間中に小売区画 A の使用を支配しておらず、供給 者の決定は小売区画 A の使用に対する顧客の支配に提供を与えない。 消費財企業及び小売企業は、契約がリースであるか、又は契約にリースが含ま れているかどうかを判断するにあたって、供給契約を慎重に分析する必要がある。 例えば、製造契約において、顧客が、生産する製品の種類(例:シャツのサイズや 色)及び生産の時期や量を決定する場合、又は使用期間全体を通じてこれらの決 定を変更する権利を有する場合、特定の資産(例:生産設備、専用の生産ライン) の使用を指図する権利を有している可能性がある。IFRS 第 16 号には、製造契約 に関する以下の設例が含まれている。 IFRS 第 16 号の設例の抜粋 設例 8 — シャツに関する契約 顧客が、3 年間、特定の種類、品質及び数量のシャツを購入する契約を製造業 者(供給者)と締結する。シャツの種類、品質及び数量は、契約で定められている。 供給者には、顧客のニーズを満たすことができる工場が 1 つしかない。供給者 は、別の工場からシャツを供給することや第三者の供給者からシャツを調達する ことはできない。工場の稼働能力は顧客が契約したアウトプットを超えている(す なわち、顧客は工場の稼働能力のほとんどすべてについて契約したわけではな い)。 供給者は工場の稼働に関するすべての決定を行う。これには、工場を稼働させ る生産水準や、顧客の契約の履行に使用されない工場のアウトプットを用いて 他のどの顧客の契約を履行するのかが含まれる。 この契約はリースを含んでいない。 工場は特定された資産である。工場は黙示的に定められている。供給者が契約 を履行できるのは、この資産の使用を通じてのみであるからである。 顧客は工場の使用を支配していない。工場の使用による経済的便益のほとんど すべてを得る権利を有していないからである。これは、供給者が使用期間中に工 場を他の顧客との契約を履行するために使用することを決定する可能性がある からである。 7 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 IFRS 第 16 号の設例の抜粋(続き) また、顧客は工場の使用を指図する権利を有していないので、工場の使用を支 配していない。顧客は 3 年の使用期間中の工場の使用方法及び使用目的を指 図する権利を有していない。顧客の権利は、供給者との契約における工場から のアウトプットの指定に限定されている。顧客が工場の使用に関して有している 権利は、工場からシャツを購入する他の顧客と同じである。供給者は工場の使 用を指図する権利を有している。供給者が工場の使用方法及び使用目的を決 定できるからである(すなわち、供給者は、工場を操業する生産レベル及び生産 されるアウトプットを用いてどの顧客の契約を履行するのかを決定する権利を有 している)。 顧客が工場の使用による経済的便益のほとんどすべてを得る権利を有していな いという事実と、顧客が工場の使用を指図する権利を有していないという事実の いずれも、単独で、顧客が工場の使用を支配していないという結論を下すのに十 分となる。 弊法人のコメント IFRS 第 16 号では、借手は大部分のリースを貸借対照表に計上する必要があ るため、供給契約(製造契約を含む)を締結した顧客にとってより重要なのは、 契約にリースが含まれているかどうか判断することである。 1.3 契約の構成要素の識別及び区分並びに契約対価の配分 リース構成要素及び非 リース構成要素を識別 するために判断が必要 となる場合がある。 複数の資産を使用する権利を含む契約(例:倉庫及び設備、複数の設備)につい て、以下の条件をいずれも満たす場合には、各資産の使用権は別個のリース構 成要素であるとみなされる。 (1)借手が、原資産の使用からそれ単独で、又は容易に利用可能な他の資源 と組み合わせて便益を得ることができる (2)原資産が、契約に含まれる他の原資産に大きく依存しておらず、かつ相互 関連性が高くない 例えば、倉庫と、それに隣接した開発予定の土地のリース契約は、借手が隣接し た土地を開発することなく倉庫から便益を得ることができるため、通常二つのリー ス構成要素を含んでいると考えられる。 実務では、リースと他の財又はサービス(非リース構成要素)を売買する取決めを 組み合わせた形態の契約も多く見られる。こうした契約では、非リース構成要素 はリース構成要素と区別して識別され、他の基準に従い会計処理される。 例えば、非リース構成要素について、借手(顧客)が未履行の契約として会計処 理する場合や、貸手(供給者)が IFRS 第 15 号が適用される契約として会計処理 する場合がある。 IFRS 第 16 号では、実務上の簡便法として、借手が原資産の種類ごとに会計方 針を選択することによって、リース構成要素と関連する非リース構成要素を単一 のリース構成要素として会計処理することを認めている。借手がこの実務上の簡 便法を適用しない場合には、契約対価を、関連する独立販売価格の比率に基づ いて、リース構成要素と非リース構成要素に配分することが求められる。 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 8 借手は、入手可能な場合には、観察可能な独立販売価格(すなわち、顧客が契約 の構成要素を個別に購入する場合の価格)を使用する必要がある。観察可能な 独立販売価格が容易に利用可能でない場合には、借手は、観察可能な情報を最 大限利用して、独立販売価格を見積もらなければならない。 貸手には、リース構成要素及び非リース構成要素を単一のリース構成要素として 会計処理するための実務上の簡便法は存在しない。貸手は IFRS 第 15 号を適用 して、契約対価をリース構成要素と非リース構成要素に配分するに当たり、通常 は各要素の独立販売価格の比率に基づいてこれを行う必要がある。独立販売価 格とは、企業が約束した財又はサービスを別個に顧客に販売する場合の価格で ある。独立販売価格を直接観察することができない場合、貸手は独立販売価格を 見積らなければならない。IFRS 第 15 号では、独立販売価格の適切な見積方法 が示されている。 小売業者への店舗のリースには、共用部分のメンテナンス(CAM)(例:建物のロ ビーの清掃、従業員や顧客のための駐車場の雪かき)を含むメンテナンス活動、 及び借手に移転されたその他の財又はサービス(例:電気・ガス等の供給、ゴミの 撤去)に対する支払いが含まれることが多い。IFRS 第 16 号では、このような活動 に対する支払いは借手にサービスを提供するものであるため、非リース構成要素 とみなされる。 一部のリース契約では、当該リース資産に関連する支出であるものの、借手に対 して何らの財又はサービスが移転されず、非リース構成要素とみなされない活動 やコストについて、これを借手が貸手に補填する(又は貸手に代わって一定の支 払いを行なう)場合がある。典型例としては以下のものがあげられる。 • 各種の不動産税(建物をリースしているかどうか、借手が誰であるかにかか わらず、貸手が支払うべきもの) • 貸手の建物内部に関する投資を保護するための保険(保険金請求に基づ き受領する保険金の受取人は貸手である) IFRS 第 16 号では、このようなコストは契約の別個の構成要素ではないが、契約 の個々に識別された構成要素(すなわち、リース構成要素及び非リース構成要素) に配分される合計対価の一部とみなされる。 リース構成要素に配分されるこのような支払いについて、企業は固定(又は実質 的に固定)リース料か変動リース料かを評価する必要がある。固定リース料は リース資産及び負債の当初測定に含まれる。変動リース料の会計処理の議論に ついては、セクション 5.2 変動リース料参照。 弊法人のコメント 契約の非リース構成要素(例:共用部分のメンテナンス)を識別しなければなら ないことにより、消費財産業及び小売業の借手の会計処理実務が変わる可能 性がある。現在はリース構成要素と非リース構成要素の会計処理(例:オペ レーティング・リースとサービス契約の会計処理)が同じであることが多いため、 企業はそもそもリース構成要素及び非リース構成要素の識別にそれほど注意 を払っていないことが考えられる。 しかし、IFRS 第 16 号によると大部分のリースが借手の貸借対照表に計上され ることになるため、借手は契約のリース構成要素及び非リース構成要素を識別 するためにより詳細なプロセスを構築することが必要となる可能性がある。 9 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 2. リースの分類 IFRS 第 16 号では、貸手は、IAS 第 17 号と同一の方法(ファイナンス・リースと オペレーティング・リースの 2 種類に区別)ですべてのリースを分類する。貸手 は条件変更(すなわち、当初の契約期間及び条件に含まれていないリースの範 囲又は対価の変更)の際、リースの分類を再評価しなければならないが、これ により必ずしも別個のリースと判定されるわけではない。 一方で、借手はすべてのリースについて、単一の会計モデルを適用する(短期 リース及び少額資産のリースを貸借対照表に認識しない選択肢はある)。この ような免除規定に関する議論については、3.1 短期リースの認識の免除、及び 3.2 少額資産のリースの認識の免除のセクション参照。 3. 借手の会計処理 リース・インセンティブは リース資産及び負債の 当初測定に影響を与える。 リースの開始日において、借手はリース期間にわたるリース料支払いのための 負債(すなわち、リース負債)、及び原資産の使用権を表す資産(すなわち、使 用権資産)を認識する。 借手は、リースの計算利子率を容易に算定できる場合には、当該利子率を用い てリース負債を測定する。当該利子率を容易に算定できない場合には、借手は 借手の追加借入利率を使用しなければならない。借手は、前払リース料、受領 したリース・インセンティブ、借手の初期直接コスト(例:手数料)及び解体、撤去 並びに原状回復の見積コストを調整したリース負債の金額で使用権資産を測 定する。 借手はリース負債の利息費用と、使用権資産の償却費を区別して認識する必 要がある。使用権資産を定額法で減価償却した場合、通常、リース期間の初期 に費用を多く認識するパターンとなる。これは、IAS 第 17 号のファイナンス・リー スの事後測定と整合した処理となる。 IFRS 第 16 号では、リース負債及び使用権資産を測定する際のリース・インセン ティブ(例:借手に発生した不動産に係る手数料の貸手による補填)の会計処理 が定められている。開始日時点で貸手から未収のリース・インセンティブは、使 用権資産から控除する。開始日以前に受領したリース・インセンティブは、使用 権資産の当初測定額の減額となる。「権利金」(key money)は、新たな賃借人 が優位性のある場所を確保するために退去する賃借人に対して支払うもので あり、リース料には該当しないため、借手のリース負債には含まれない。 3.1 短期リースの認識の免除 借手は、開始日時点でリース期間が 12 カ月以下であり、原資産を購入するオ プションを含まないリース(短期リース)に対して、使用権に対応する原資産の 分類ごとに会計方針を選択し、IAS 第 17 号のオペレーティング・リース会計に 類似した会計処理を適用することができる。借手がこの免除を適用する場合、 短期リースは貸借対照表に認識されず、関連リース費用はリース期間にわたり 定額法又は他の規則的な方法(その方法が借手の便益のパターンをより適切 に表す場合)で認識される。 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 10 短期リースの免除を適用するかどうかを検討するに当たり、企業はリース期間を 検討する必要がある(すなわち、リースの解約不能期間の検討の際には、リース を延長するオプションを借手が行使することが合理的に確実である場合、及び リースを解約するオプションを借手が行使しないことが合理的に確実である場合 を考慮する)。また、購入オプションを含んだリースは、短期リースではない。 3.2 少額資産のリースの認識の免除 原資産が少額(少額資産)である場合、借手はリースごとに現在のオペレーティン グ・リースの会計処理に類似した会計処理の適用を選択することができる。少額 資産と判断されるためには、借手がその資産単独で、又は借手が容易に利用可 能な他の資源と組み合わせて、当該資産から便益を得ることができなければなら ない。さらに、少額資産の他の資産への依存性や相互関連性が高くないことが必 要である。なお、IASB は、当該免除規定を設けることを決定した際、新品時の価 格が 5 千米ドル以下の原資産のリースに適用することを念頭に置いていた。 4. 貸手の会計処理 消費財企業及び小売企業は、資産をサブリースした場合や、リースを含むと判断 される供給契約又は製造契約を顧客と結んだ場合に、貸手となることがある。 IFRS 第 16 号では、貸手が IAS 第 17 号から実質的に変わらない方法を用いてオ ペレーティング・リースの会計処理を行うことを求めている。すなわち、貸手は原資 産を認識を継続し、リース料はリース期間にわたって、定額法又は他の規則的な 方法(原資産の使用から得られる便益が減少していくパターンがより適切に表さ れる方法)で収益として認識される。 IFRS 第 16 号でもまた、貸手は IAS 第 17 号と実質的に変わらない方法を用いて ファイナンス・リースを会計処理することが求められている。すなわち、貸手は原 資産の帳簿価額の認識の中止を行い、リース債権 2 を認識し、売却損益がある場 合には、損益を認識する。 4.1 サブリース — 中間の貸手の会計処理 消費財企業及び小売企業が第三者に小売スペースをサブリースすることは一般 的である。IFRS 第 16 号では、中間の貸手は、ヘッドリースの会計処理はセクショ ン 3. 借手の会計処理、サブリース(貸手側)は上記の記述に従って会計処理を 行う。ただし、サブリースをファイナンス・リース又はオペレーティング・リースとして 分類するにあたって、中間の貸手は、ヘッドリースから生じる原資産(例:リース対 象の建物)ではなく、残存する使用権資産を参照してリース分類の判定要件を検 討する。 リース不動産が投資不動産の定義を満たし、サブリースがオペレーティング・リー スとして分類され、中間の貸手が IAS 第 40 号「投資不動産」の公正価値モデルを 会計方針として選択している場合、IFRS 第 16 号では、中間の貸手がリース不動 産から生じる使用権資産を IAS 第 40 号に従って測定することを求めている。この 点は現在の IAS 第 40 号の適用対象に変更が生じることを意味する。現行基準で は、これは個々の不動産物件ごとに選択可能である。 2 11 開始日におけるリース料債権及び無保証残存価値の合計を、リースの計算利子率で割り引いた金額 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 一般的に、中間の貸手はヘッドリース(借手として)とサブリース(貸手として)を 二つの異なるリース契約として会計処理する。しかし、同一の契約相手又は契 約相手の関連当事者と同時又はほぼ同時に契約を締結した場合、中間の貸手 は、契約の結合を行うかどうかの要件を検討する必要がある(すなわち、契約 が単一の経済的目的を持つパッケージとして交渉されているかどうか、片方の 契約で支払われる対価が、もう一方の契約の価格又は履行に左右されるかど うか、又は契約で移転される原資産の使用権は単一のリース構成要素を構成 するかどうか)。いずれかの要件を満たす場合、中間の貸手はヘッドリース及び サブリースを単一の結合取引として会計処理する。 5. その他の留意点 5.1 セール・アンド・リースバック取引 売 手 である借 手 は、 セール・アンド・リース バック取 引 によるオフ バランス金 融 の手 段 を 失 うことになる。 借手は大部分のリース(すなわち、借手が短期リース及び少額資産のリースに 係る免除規定を適用する会計方針を選択した場合の、短期リース及び少額資 産のリースを除くすべてのリース)を貸借対照表に計上することが求められるた め、売手である借手は、セール・アンド・リースバック取引を用いたオフバランス 金融の手段を失うことになる。 IFRS 第 16 号では、売手である借手及び買手である貸手が、セール・アンド・ リースバック取引で売却が発生したかどうか判定するために、IFRS 第 15 号の 要件を適用することが求められている。原資産の支配が買手である貸手に移転 した場合、当該セール・アンド・リースバック取引は売却(又は購入)及び両者に よるリース取引として会計処理される。そうでない場合、両者は当該取引を金融 取引として会計処理する。 弊法人のコメント 新たな規定は、売手である借手の現行実務に非常に大きな変更をもたらす ことになる。IFRS 第 16 号では、売手である借手は IFRS 第 15 号の要件を 適用して売却があったかどうかを判断しなければならないため、これが新た な制約要因となる。また、仮に売却の要件を満たしたとしても、通常はセー ル・アンド・リースバック取引を用いることによりオフバランス金融を実現する ことはできなくなる。 5.2 変動リース料 指数又はレートに応じて決定される変動リース料は、リース料総額に含まれ、測 定日の実勢の指数又はレートを用いて測定される(例:当初測定を行うリース開 始日)。指数又はレートではなく、業績(例:売上のパーセント)や原資産の使用 に基づく変動リース料は、リース料総額に含まれない。 指数又はレートに基づかず、実質的な固定リース料とみなされない変動リース 料は、現在の会計処理と同様の方法で認識される。つまり借手は、このような 支払が発生するきっかけとなる事象が生じた期に費用を認識する。IFRS 第 16 号は指数又はレートに基づかない変動リース料についての貸手の会計処理を 定めていないが、IASB が IAS 第 17 号の貸手の会計処理モデルを実質的に引 き継ぐ決定をしていることからすると、貸手はこのような変動リース料を、現行の 会計処理と整合させ、稼得した期の収益として認識することになると考えられる。 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 12 IFRS 第 16 号では、リース料の決定に使用される指数やレートの変動によって将 来リース料総額に変動が生じた場合など、一定の条件下で、借手はリース負債を 再測定することが求められる。借手は、キャッシュ・フローの変動があった場合 (すなわち、リース料総額の修正が生じた場合)にのみ、リース負債を修正後の リース料総額を反映するように再測定しなければならない。例えば、契約上の リース料が 2 年ごとに見直され、当該変更は 2 年間の消費者物価指数(CPI)に 関連したものである場合、借手は CPI が変化する時点ではなく、契約上のリース 料が変更される 2 年ごとにリース負債を再測定する。この点については、付録 B の設例を参照されたい。 次のステップ 新たなリース基準が自社に及ぼす影響を判断するために、企業はできるだ け早期に予備的評価を行うべきである。最初に行うべき 2 つの重要なステッ プは、(1)リースに関する情報としてどこにどのようなものがあるかを特定 し、(2)IFRS 第 16 号の円滑な導入を意識した手法による当該データの集 計方法を検討することである。分散型のオペレーション形態をとる企業(例: 地理的に分散しているグローバル企業)にとっては、事業、経済、及び法的 環境が異なる可能性を考慮すると、これは複雑なプロセスとなる可能性が 高い。 企業は内部統制を含むプロセス、及び IFRS 第 16 号を適用するために必 要となる情報(必要な財務諸表の開示の作成を含む)を収集するためのシ ステムを確立する必要がある。 消費財企業及び小売企業は、投資家及びその他のステークホルダーに対 して、財務報告に与える影響をどのように伝えるかを検討しなければならない。 13 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 付録 A:IFRS 第 16 号 B31 項からの抜粋 — リース判定のフローチャート 特定された資産があるか。 B13 項から B20 項を考慮する。 いいえ はい 顧客が使用期間全体を通じて資産の 使用から生じる経済的便益のほとんど すべてを得る権利を有しているか。 いいえ B21 項から B23 項を考慮する。 はい 顧客 使用期間全体を通じて資産の使用方法 及び使用目的を指図する権利を有して いるのは、顧客か、供給者か、 それとも、どちらにもないのか。 供給者 B25 項から B30 項を考慮する。 どちらにもない。 資産の使用方法及び使用 目的が事前に決定されて いる。 はい 顧客が使用期間全体を通じて資産 を稼働させる権利を有していて、 供給者にはそれらの稼働指示を 変更する権利がないか。 B24 項(b)(i)を考慮する。 いいえ 顧客が、使用期間全体にわたる資産の 使用方法及び使用目的を事前に決定 するように資産を設計したか。 いいえ B24 項(b)(ii)を考慮する。 はい 当該契約は リースを含んで いる 2016 年 6 月 当該契約は リースを含んで いない Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 14 付録 B:借手の会計処理例 例 — 借手の会計処理 Food 社(借手)は物流倉庫で使用するフォークリフトの 3 年間のリース契約を締結 した。Food 社は各年度末に、それぞれ第 1 年度:CU10,000、第 2 年度: CU12,000、第 3 年度:CU14,000 を支払うことに合意している。便宜的に、購入 オプション、開始日前の貸手への支払い、貸手からのリース・インセンティブ又は 初期直接コストは存在しないものとする。使用権資産及びリース負債の当初測定 は CU33,000 である(割引率 4.235%を使用したリース料の現在価値)。Food 社 はリースの計算利子率を容易に算定できないため、割引率として追加借入利子率 を使用している。Food 社は使用権資産をリース期間にわたり定額法で減価償却 する。 分析:リース開始時、Food 社は使用権資産とリース負債を現行のファイナンス・ リースと同様の方法で認識する。 CU33,000 使用権資産 CU33,000 リース負債 リース関連資産及び負債の当初認識 第 1 年度に以下の仕訳が計上される CU1,398 利息費用 CU1,398 リース負債 利息法による利息費用及びリース負債の計上(CU33,000 x 4.235%) CU11,000 減価償却費 CU11,000 使用権資産 使用権資産の減価償却費の計上(CU33,000 ÷ 3 年) CU10,000 リース負債 CU10,000 現金 リース料の支払 以下は、当該リース契約の会計処理をまとめたものである(リース負債の見直しは ないものとする)。 開始時 現金によるリース料支払 第 1 年度 第 2 年度 第 3 年度 CU10,000 CU12,000 CU14,000 CU1,398 CU1,033 CU569 11,000 11,000 11,000 CU12,398 CU12,033 CU11,569 認識されたリース費用 利息費用 減価償却費 期間費用合計 貸借対照表 使用権資産 CU33,000 CU22,000 CU11,000 CU— リース負債 CU(33,000) CU(24,398) CU(13,431) CU— 端数処理の影響により、再計算した場合に軽微な差異が生じる。 15 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 IFRS 第 16 号では、変動リース料の借手の会計処理について以下の設例が 示されている。 IFRS 第 16 号の設例の抜粋 設例 14 — 指数に応じて決まる変動リース料及び売上高に連動する変動リー ス料 設例 14A—借手が、不動産の 10 年のリースを各年度の期首に支払う年間リー ス料 CU50,000 で締結する。契約では、リース料は 2 年ごとに直前 24 か月の 消費者物価指数の上昇に基づいて増額されると定めている。開始日現在の消 費者物価指数は 125 である。この設例では、当初直接コストを無視する。リース の計算利子率は、容易に算定可能ではない。借手の追加借入利子率は年 5%で あり、これは借手が使用権資産の価値と同様の金額を、同一の通貨で 10 年の 期間にわたり同様の担保で借り入れることのできる固定利率を反映している。 開始日に、借手は第 1 年度に係るリース料支払いを行い、リース負債を残りの 9 回 の CU50,000 の 支 払 を 年 5% の 金 利 で 割 り 引 い た 現 在 価 値 で あ る CU335,391 で測定する。 借手は、リースに係る資産及び負債を次のように当初認識する。 使用権資産 CU405,391 リース負債 CU355,391 現金(第 1 年度に係るリース料) CU50,000 借手は、使用権資産の将来の経済的便益をリース期間にわたり均等に費消す ると見込んでおり、したがって、使用権資産を定額法で減価償却する。 リースの最初の 2 年間に、借手はリースに関して合計で下記を認識する。 CU33,928 利息費用 CU33,928 リース負債 減価償却費 CU81,078(CU405,391÷10×2 年) CU81,078 使用権資産 第 2 年度の期首に、借手は第 2 年度に係るリース料を支払い、下記を認識する。 リース負債 現金 2016 年 6 月 CU50,000 CU50,000 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 16 IFRS 第 16 号の設例の抜粋 (続き) 第 3 年度の期首に、消費者物価指数の変動により生じる将来のリース料の変動 の会計処理と第 3 年度に係るリース料の支払を行う前では、リース負債は CU339,319(CU50,000 の 8 回の支払を年 5%の金利で割り引いた現在価値= CU355,391+CU33,928-CU50,000)である。 リースの第 3 年度の期首現在で、消費者物価指数は 135 である。 第 3 年 度 に 係 る 支 払 ( 消 費 者 物 価 指 数 に つ い て 調 整 後 ) は 、 CU54,000 (CU50,000×135÷125)である。リース料の算定に使用される消費者物価指数 の変動から生じる将来のリース料の変動があるため、借手は、リース負債を当 該改訂後のリース料を反映するように再測定する。すなわち、リース負債は 8 回 の CU54,000 の年間リース料の支払を反映することになる。 第 3 年度の期首に、借手はリース負債を 8 回の CU54,000 の支払を以前のま まの年 5%の割引率で割り引いた現在価値である CU366,464 で再測定する。 借 手 は リ ー ス 負 債 を CU27,145 だ け 増 額 す る 。 こ れ は 再 測 定 後 の 負 債 CU366,464 と従前の帳簿価額 CU339,319 との差額を表している。対応する修 正が使用権資産に対して行われ、次のように認識される。 使用権資産 CU27,145 CU27,145 リース負債 第3 年度の期首に、借手は第3 年度に係るリース料支払を行い、下記を認識する。 リース負債 CU54,000 CU54,000 現金 設例 14B - 設例 14A と同じ事実関係を仮定するが、借手がリースの各年度に 変動リース料の支払い(リースしている不動産から創出される借手の売上高の 1%として算定される)も要求される点が異なる。 開始日に、借手は、認識する使用権資産とリース負債を設例 14A と同じ金額で 測定する。これは、追加の変動リース料が将来の売上高に連動しているので、 リース料の定義を満たさないからである。したがって、それらの支払は、資産及 び負債の測定に含まれない。 使用権資産 CU405,391 リース負債 CU355,391 現金(第 1 年度に係るリース料) CU50,000 借手は、年次ベースで財務諸表を作成する。リースの第 1 年度中に、借手は リースしている不動産から CU800,000 の売上を生み出す。 借手にリースに係る追加の費用 CU8,000(CU800,000×1%)が発生し、これを 借手はリースの第 1 年度に純損益に認識する。 17 2016 年 6 月 Applying IFRS - IASB が新たなリース基準を公表 – 消費財産業及び小売業 EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory EY について EY は、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの 分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービ スは、世界中の資本市場や経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざ まなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出して いきます。そうすることで、構成員、クライアント、そして地域社会のために、 より良い社会の構築に貢献します。 EY とは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークで あり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独 立した組 織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証 有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.com をご覧く ださい。 新日本有限責任監査法人について 新日本有限責任監査法人は、EY の日本におけるメンバーファームであり、 監査および保証業務を中心に、アドバイザリーサービスなどを提供していま す。詳しくは、www.shinnihon.or.jp をご覧ください。 © 2017 Ernst & Young ShinNihon LLC. All Rights Reserved. 本書は EYG No. 01344-163Gbl の翻訳版です。 ED None 本書は一般的な参考情報の提供のみを目的に作成されており、会計、税務およびその他の専門的な アドバイスを行うものではありません。新日本有限責任監査法人および他の EY メンバーファームは、 皆様が本書を利用したことにより被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いません。具体的 なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家にご相談ください。
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