相場展望レポート (2017 年 2 月) 2017.1.27 志摩 力男

相場展望レポート (2017 年 2 月)
2017.1.27
志摩 力男 氏
2017 年 2 月相場展望
ドル円
111.00 - 116.00
ユーロドル
1.0300 - 1.0900
ユーロ円
119.00 - 124.00
豪ドル円
83.50 -
87.50
トランプ政権スタート
1 月相場は、トランプラリー継続から始まりました。ドル円は 1 月 3 日に 118.60 円前後と昨年 12 月の高
値を試しに⾏き、誰しもラリーの継続、120 円挑戦を考えました。ところが、その流れを⽌めたのは、トラ
ンプ⽒のツィッターでした。トランプ⽒は、メキシコから⾞を輸出する GM を攻撃するばかりか、トヨタの
メキシコ工場建設計画までも批判しました。
これまでマーケットはトランプ⽒の政策のうち、積極的な財政政策の⾯ばかり⾒てきました。ある意味、マ
ーケットは多岐にわたる政策のうち、都合の良いところだけをつまみ⾷いし、都合よく解釈してきたのです。
しかし、超保護主義というのもトランプ政権の真実です。
1 月 11 日のトランプ⽒初の記者会⾒は酷い内容でした。メディアを攻撃し、具体的な政策⾯についてはほと
んど触れませんでした。結局、トランプ⽒はトランプ⽒であり、⼤統領になっても変わらないのだという認
識が広がり、
1 月 20 日の⼤統領就任式を前に、ドル円は結局 112.50 円近辺まで調整を余儀なくされました。
しかしながら、ムニューチン次期財務⻑官は「⻑期的なドルの強さが重要」と、従来からの⽶財務省の⽴場
を継続(強いドル政策)
、市場は安堵しました。トランプ⽒の WSJ 紙インタビュー記事「ドルは強すぎて、
中国企業と戦えない」という発言を「短期的なもの」と説明しました。
また、イエレン議⻑が、今年 2-3 回利上げし 2019 年までに政策⾦利が 3%近くまで上昇すると明言したこ
とも⼤きなニュースでした。2016 年中は、とてもハト派的な言い回しに終始していたのですが、トランプ
⽒の経済政策に煽られたのでしょうが、今度は「ビハインド・ザ・カーブ」と言われないようにしようとす
る意識が⾒え⾒えでした。
「積極財政」or「保護主義」?
トランプ⽒の政策は、超拡張的な財政政策と、超保護主義的な⾯の両方があり、どちらに重きが置かれてい
るのかで、ドルの方向性が 180 度違ってきます。
「積極財政」が「保護主義」を上回ればドル高円安で、そ
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相場展望レポート (2017 年 2 月)
2017.1.27
のインパクトはドル円 130 円もあり得る程ですが、「保護主義」が「積極財政」を上回るとドル安円高とな
り、その時はドル円 100 円割れも覚悟しなければなりません。
この 2 つの側⾯が同居していることこそが、2017 年相場の読みを難しくしており、その時その時のトラン
プ政権の動きをしっかりと監視していかなければなりません。
トランプ政権、鍵を握るのは誰か
トランプ政権は、我々をどんな世界に連れて⾏こうとしているのか。
それは、これまで内定している政権の布陣を細かく⾒てみる必要があるでしょう。
最も象徴的なのが、新設の「国家通商会議」であり、初代委員⻑にはピーター・ナヴァロ、カリフォルニア
⼤学教授が内定しています。彼は、
「⽶中かく戦えり」という、⽶中戦争をシミュレーションした本の著者で
もあります。また、商務⼤臣にはロス・ペロー⽒が内定しています。
両者ともに対中国強硬派であり、共同で”Scoring the Trump Economic Plan”という、トランプ政権の経済
政策の概要を説明した重要なペーパーを書いています。その内容は「貿易収⽀の⾚字」こそが低成⻑の⼤き
な理由であり、⼈⼝構成などではない、⽶国は今こそ不利な貿易協定を改正して、高成⻑を目指すべきだと
いう提言の書です。
ただ、為替相場に関しては、財務⻑官こそが責任者。その責任者であるムニューチン⽒は「⻑期的なドルの
強さが重要」と建前を述べながらも「ドルは非常に強い」
「強すぎるドルは短期的に悪影響」とドル高牽制と
解釈しうる発言を 2 回も⾏っています。要は、2 つのスタンスを都合よく同居させています。
政権の一部で、ドル高に対し強い警戒がある以上、ドルが野放図に上昇するという構図は望みにくいのかも
しれません。
今後どうなる?
ムニューチン⽒が「強すぎるドルは短期的には悪影響」と発言する前までは、私自身、ドル円が 120 円を超
えて上昇し、場合によっては 2015 年の高値 125.84 円を突破して 130 円前後まで上昇することもあり得る
のではないかと考えていましたが、そこまで上昇することは難しいかなと考え始めています。
今後のスケジュールで重要なのは、まず 2 月初めと考えられている「一般教書演説」です。経済政策を発表
する場になるので、当然、彼自身が考えている経済政策を説明するでしょう。法⼈税減税、所得税減税、HIA、
インフラ投資等々についてであります。ポジティブな内容になる可能性が高いと感じます。
しかし一般教書演説以外は、さして予定はありません。今年は難しい年になるでしょう。
「経済政策」と「保
護主義」がバランスを持って現れてきています。どちらかへ一方的に傾くことは、まだ難しいのではないで
しょうか。夏頃、法⼈税減税等が成⽴する⾒込みが出てくれば、ドル高円安トレンドが継続する可能性が少
しあるように感じます。
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ドル円
トランプ政権の意向次第で、100 円割れも 120 円超への上昇も、双方ありうるのが今年のマーケットの難し
いところ。そこをエンジョイしないといけない。2 月はトランプ⼤統領がまだ就任したばかりなので、いき
なり⼤きく、円高方向にマーケットを突き落とすということはしないでしょう。だが、上値も厳しそうで、
結局狭いレンジ内での動きになりそうです。
111.00-116.00
ユーロドル
⼤きな目で⾒ると、2015 年 3 月以来⼤きな三角持ち合いを形成し、その三角持ち合いを下抜けしたように
も⾒えます。しかし、このところはショートカバーでジリジリ上がってきています。ピーター・ナヴァロ⽒
とロス・ペロー⽒が共同で書いたペーパーには、ドイツの貿易⿊字の問題も書いてあり、ドイツはユーロに
属することによって、マルクが被っていた通貨高を巧みに回避していると書いてあります。もしかすると、
ユーロが次のターゲットになる可能性はあります。
1.0300-1.0900
ユーロ円
円とユーロは同じような動き。両者とも、限界まで⾦融緩和し、経常収⽀の⿊字国。
119.00-124.00
豪ドル円
豪ドルの予想は難しくなってきています。対ドルの豪ドルはほとんど動かなくなってきました。
しかし、散発的に中国⼈から⼤規模な不動産購⼊の話が聞こえてきます(オーストラリアから)
。⽶⾦利の上
昇は豪ドルにはマイナス材料。ドル円も少し調整することを前提に、豪ドル円の調整を予想したい。
83.50-87.50
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相場展望レポート (2017 年 2 月)
2017.1.27
■ 志摩 力男 氏 氏プロフィール
慶應義塾大学経済学部卒
1988 年~1995 年 ゴールドマン・サックス証券会社
2006 年~2008 年 ドイツ証券等
大手金融機関にてプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任、
その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。
世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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