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第6章
事
中小企業の稼ぐ力を決定づける経営力
例
2-6-4
株式会社あいや
食品用抹茶市場を切り開いてきた長寿企業
愛知県西尾市に本社を構える株式会社あいや(従業員
といった新マーケットに積極的に展開していきたい。
」と
茶の製造販売会社である。同社は、抹茶を食品加工用に
それは、誰もやったことがないからだと杉田社長は語る。
代表取締役社長の杉田芳男氏は、企業が継続的に成長
がなかった取組であり、新しい市場を開拓するのも、過
数 100 名、資本金 3,000 万円)は、1888 年に創業した抹
転換することで、新たな抹茶市場を築き上げてきた。
していくために重要なのは、変えてはいけないことと、変
語った。同社が開拓する新しい市場が、なぜ海外なのか。
食品加工用の抹茶を製造し始めたのも、誰もやったこと
去に誰もやったことがない取組である。こうした過去に誰
えなければいけないことを見極めることだという。同社に
も取り組んだことがない市場を開拓していくことは、杉田
茶であり、変えなければならないこととは、同社が参入す
戦ではなく、お茶の強みは健康に良いということが、必
とって、変えてはいけないこととは茶臼で挽く高品質な抹
る市場である。同社が食品加工用としての抹茶市場を開
拓していった背景には、他社に比べて、同社が扱う西尾
産の抹茶は無名の抹茶ということがあった。そこで、競合
他社と比較しても高品質な抹茶を付加価値として、他社
がやったことがない食品加工用の抹茶の製造を始めたこ
社長にとっての挑戦でもある。ただし、それは無謀な挑
ず、市場に受入れられるという自信があるからこそである。
変えてはいけないものを見極めながら、変えていかな
ければいけないことには積極的に挑戦していく、そのよう
な社長の姿勢が、同社の強みでもあるといえよう。
とが、同社が市場を切り開いてきたきっかけであった。
また、同社が大事にしているのは、顧客のニーズに合
わせる、ということである。例えば、同社は海外展開を積
極的に行っているが、海外の市場では、それぞれの市場
の嗜好に合ったものを販売するようにしている。例えば、
欧州では、ハーブティーが好まれており健康志向の高い
市場であることから、抹茶をハーブティーと同じく健康効
果の高い製品であることをアピールし、彼らの生活の中
に自然と抹茶が溶け込むようにした。ここにも、杉田社長
の考えである、変えてはいけないことと変えなければいけ
ないことの精神が表れているといえる。
杉田社長に今後の展望を伺うと、「国内では抹茶メー
カーのリーディングカンパニーというポジションを堅持し
つつ、海外ではフロンティア企業として、特に東南アジア
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2016 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan
あいや本店