市場拡大に向けてのチャレンジと そこに向けての技術革新について

新 春
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「推進工事の新たな挑戦にむけて」
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~市場拡大に向けてのチャレンジとそこに向けての技術革新について~
座談会
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あ
べ
阿部
か
つ
お
し
勝男
お
み
塩見
わ
だ
和田
こ
う
ま さ の り
や
昌紀
じ
浩治
す
だ
安田
す
ず
き
鈴木
て
る
お
輝男
か ず な り
み や た け
一成
ま
宮武
も
り
た
森田
さ
し
昌志
と も
な か じ ま
智
ひ で い ち ろ う
中島 英一郎
【進行役】
─新年あけましておめでとうございます。(公社)日本推
ら東京を守るための方策として推進工法がますます必要
進技術協会の中島です。さて、昨年リオデジャネイロオ
になってきています。また、下水管の改築更新が増え
リンピック・パラリンピックも終わり、いよいよ次は2020
ていく中で「どのような役割を担っていくのか」推進工
年東京オリンピック・パラリンピックということでそれらに
事関係者だけでなく下水道を管理する地方公共団体の
関連する事業が動いています。
方々も注目しているところです。
小池知事が掲げるセーフシティでは、地震や水害か
さらに、海外でのニーズとして下水道の普及拡大や
浸水対策のために管きょの整備が必要不可欠であり、
出席者(敬称略)
あ
べ
阿部
し お み
塩見
や す だ
安田
みやたけ
宮武
わ
だ
和田
す ず き
鈴木
か つ お
勝男 :㈱熊谷組首都圏支店顧問(本誌編集副委員長)
まさのり
昌紀 :ゼニス羽田㈱代表取締役社長(本誌編集参与)
かずなり
一成 :ヤスダエンジニアリング㈱専務取締役
ま さ し
昌志 :アイレック技建㈱取締役
こ う じ
浩治 :機動建設工業㈱土木本部副本部長(営業統括)
て る お
輝男 :中川ヒューム管工業㈱技術営業部技術営業課課長
も り た
森田
とも
智 :㈱アルファシビルエンジニアリング施工本部技術部技術部長
[進行役]
なかじまひでいちろう
中島英一郎 :(公社)日本推進技術協会専務理事(本誌編集委員長)
その解決方策として推進工事を活用したいとの要望が
でています。こうしたニーズに応えていくため推進工法
にどのような技術革新が求められるのか、また、どのよ
うに問題を克服していくべきなのかをお伺い致します。
新年特集ということで、今後の望ましい方向性、技
術革新のニーズ・方向性についてご自由に語っていた
だきたいと思います。
それでは、まず、推進工事の活用が期待される新た
な分野は何か。また、そのためにはどのような技術開発
等が求められているのでしょうか。
月刊推進技術 Vol. 31 No. 1 2017
9
特
集
座談会
浸水対策、老朽管対策、
都市の地下空間利用、海外でのニーズ
ますます推進技術への期待が高まっている
なかじま
ひでいちろう
中島 英一郎
(公社)日本推進技術協会専務理事
(本誌編集委員長)
《市場開拓に向けたチャレンジ》
長距離・曲線推進の新たな可能性、
そのための技術開発は?
しかし、これまでのところ、掘削方式によって多少の
差はあるものの、大中口径管の施工では推進距離の如
何にかかわらず、狭い管内空間での常態的な作業が伴
阿部:㈱熊谷組の阿部です。私は横浜市で主に下水
い、完全な無人化に至っていません。したがって、長
道行政に長く携わり、現在、当月刊誌の編集副委員長
距離・曲線施工には、安全性の確保と作業環境の保全
を務めております。
が求められ、作業従事者にとって魅力ある環境を創出
推進工事 70 年近い歴史のなかで、ここ十数年の技
術革新には隔世の感があります。
するため、今後も一層の省力化を促進する技術開発が
不可欠と考えています。
かつて、呼び径 3000を超える非開削工事は、道交
安田:ヤスダエンジニアリング㈱の安田です。長距離推
法の制約やニーズから推進管の製品化(規格化)には
進、曲線推進を施工するにあたり最も重要になるが安全
至らなかったこと、また、長距離・曲線施工が伴うケー
性です。今後、安全性の確保無くして推進工法の発展
スでは、周面摩擦抵抗や測量などの技術的な隘路から、
は望めないでしょう。現在、掘進機の遠隔操作、自動
シールド工法が担ってきた経緯があります。しかし、現
測量システム、自動滑材注入システム等自動化が進ん
在では2 分割した半円形管の接合によって呼び径 5000
でいますが、やはり最終は人的なところに頼る部分が非
までの推進管が規格化され、また、管材をはじめとし、
常に大きくなっています。シールド工法と違い、推進工
推進技術とその周辺技術、計測技術などの開発と改良
法は管径が小さいので長距離推進を行う際に非常に危
を重ね、1スパンが 1,500m の超長距離推進や半径 20
険が伴います。危険性が高いことにより安全性を求める
〜30mのS字や複合急曲線施工も可能となったことから、
と結果、施工コストが上がります。もちろん施工条件等
シールド工法とのボーダレス時代に入っています。また、
ありますが、1kmを1スパンの推進工事より500mを2ス
小口径管においても同様に可能推進距離の延伸が図ら
パン施工の方が工期も短くコストも安いということがありま
れ、高耐荷力管方式では300m、低耐荷力管方式にお
す。今後の推進工事の発展を求めるのであれば、まず
いても100mを超える施工実績があります。
は、法的な改定が必要でしょう。特に長距離推進、曲
反面、長距離推進施工は、地層の変化のほかに、
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りつつあります。
線推進においては遠隔操作方式義務化無人化が必要
事前調査では把握できない事項も多く介在します。確か
と思います。完全な無人化は難しいと思いますが、今
に以前と比べて推進技術が進歩し、管内作業のシステ
よりも遠隔操作方式および無人化を義務化することで推
ム化が図られ、また、計測技術の進化に伴い、地盤や
進工事のオートメーション化が進んで行くと思います。現
線形に対する適応範囲が拡大・向上し、信頼度も高ま
在では、電子技術の発展で推進工事をオートメーション
月刊推進技術 Vol. 31 No. 1 2017