Market Letter カナダの金利・為替の見通しと債券運用の

Market Letter
ファンドマネージャーの運⽤ノート※
カナダの金利・為替の見通しと債券運用のポイント
2017年1月20日
※当資料は、⼤和投資信託の運⽤チームの相場の⾒⽅をお伝えするレポートです。
⼤和投資信託が設定・運⽤するファンドにおける投資判断と必ずしも⼀致するものではありません。
お伝えしたいポイント
●カナダの政策⾦利は当⾯据え置きを⾒込むも、⻑期⾦利は上昇へ
●カナダ・ドル=「資源」×「北⽶」の理想的な組み合わせ
●カナダ経済の回復に伴い、カナダ債券投資の収益機会は増えている
カナダの政策⾦利は0.5%で据え置き
1月18日(現地、以下同様)、カナダ銀行(中央銀
図表1 カナダの政策金利は据え置きが続く
(%)
1.5
(2014年初〜2017年1⽉19⽇)
行)は政策金利(翌日物金利の誘導目標)を市場
予想通り0.5%に据え置くことを発表しました(図表
政策⾦利
1.0
1)。
0.5
政策金利の発表にあわせて、四半期に一度の
金融政策報告書が公表されました。
報告書ではカナダの景気と物価について、ほぼ
0.0
14/1
15/1
16/1
17/1
(出所)ブルームバーグ
前回の見通しが維持されました(図表2)。原油価
格の安定に伴いエネルギー関連産業の活動が活
図表2 カナダ銀行の経済見通しにも大きな変化はなかった
2017年1⽉「⾦融政策報告書」の⾒通し
発化した一方で、国内の住宅投資は調整局面入
りしており、全体の景気判断も据え置かれました。
カナダ銀行は、実質GDP(国内総生産)成長率
が2017年に前年同期比で2%台に復帰し、2018年
中盤には経済の稼働率が上がり、利上げが必要
になるとの見通しを維持しました。
実質GDP
成⻑率
(%)
(前年同期⽐)
(前期⽐年率)
Q2
2016
Q3
Q4
2017
Q1
Q4
1.1
1.3
1.6
1.5
(0.9)
(1.1)
(1.4)
▲ 1.3
3.5
1.5
(▲1.6) (3.2)
消費者物価
(前年同期⽐)
指数(%)
2018
Q4
2.3
2.2
(2.2)
(2.2)
2.1
2.0
(1.9)
(2.0)
2.5
(1.5)
1.5
1.3
1.4
(1.5)
(1.3)
(1.7)
1.8
※下段括弧内の数値は2016年10月「金融政策報告書」の見通し
(出所)カナダ銀行
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ファンドマネージャーの運⽤ノート
カナダ利下げは「抜かずの宝⼑」で、
考慮する必要はない
記者会見でカナダ銀行のポロズ総裁は利下げも
図表3 エネルギー関連の輸出の回復がめざましい
カナダの品⽬別輸出の推移(前年同⽉⽐)
(%)
30
選択肢に残っていると発言しました。今回の見通
20
しには米国のトランプ新政権の公約などは考慮さ
10
れておらず、「利下げ」のカードは、あくまで米国と
0
カナダの間の通商政策への対応が必要になる場
-10
合への備えだとみています。したがって、米国の
-20
一般教書演説や予算教書発表後の4月12日に発
-30
12/1
表される予定の次回の金融政策報告書の重要性
は高いと考えています。
足元のカナダ経済は好調であり、当面は政策金
(2012年1⽉〜2016年11⽉)
13/1
輸出
14/1
15/1
エネルギー・鉱物関連
16/1
製造業関連製品
※エネルギー・鉱物関連は、エネルギー製品・鉱物・鉱物製品の合計、
製造業関連製品は、一般機器・電気機器・自動車・同部品・航空機・
同部品の合計です。
(出所)カナダ統計局
利を据え置くと見通します。次回の政策金利の発
表は3月1日に予定されています。
カナダ経済〜景況感の好転がエネルギー
関連産業以外にも広がりをみせる
カナダ経済にはプラスの点が増えてきています。
図表4 カナダ企業の設備投資意欲は高まっている
(%)
30
25
長らく景気の下押し材料であったエネルギー関連
20
産業が底打ちし、引き続き景気を下支えするとみ
15
ています(図表3)。2016年11月にはカナダ政府が
原油輸送パイプラインの敷設を承認するなど、今
後は関連産業の設備投資面にも回復の動きが広
がるとみています。また、直近の経済指標にも、貿
易収支の黒字転換(2016年11月分)や、カナダ銀
行の景況感調査における企業マインドの改善など、
(2015年第1四半期〜2016年第4四半期)
⺠間製造業企業の設備投資意欲
10
5
0
-5
Q1
15
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
16
※数字は、「設備投資を増やす予定」と回答した企業の割合から、「設
備投資を削減する予定」と回答した企業の割合を引いたものです。
(出所)カナダ銀行
景気にプラスの材料が増えています(図表4)。
カナダの⾦利もグローバルな⾦利上昇の
流れに連れやすい
足元はカナダの物価上昇率が下落傾向にありま
す。しかし、景況感調査からはカナダ国内での物
価上昇を予想する内容もあります。グローバルにも
商品価格が上昇していることを考慮すると、物価
低迷による金融緩和が必要とは想定しにくい環境
です。
世界的には野放図な金融緩和拡大を修正する
流れとなっており、カナダにあっても金利上昇圧力
が優勢とみています。
※1ページ目の「当資料のお取り扱いにおけるご注意」をよくお読みください。
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ファンドマネージャーの運⽤ノート
ここもとのカナダ・ドルは値上がり基調
2016年8月以降はNAFTA(北米自由貿易協定)
見直しに言及するトランプ氏に対する警戒がカナ
ダ・ドルの頭を抑えてきました。しかし、トランプ氏
が大統領に当選してからは、カナダ・ドルを含む資
源国通貨が堅調な値動きとなっています(図表5)。
「資源」×「北⽶」の理想的な組み合わせ
図表5 米国大統領選挙後のカナダ・ドルは好調
⽶国⼤統領選挙後の通貨別対円騰落率
(2016年11⽉8⽇〜2017年1⽉18⽇)
カナダ・ドル
⽶ドル
英ポンド
ブラジル・レアル
中国⼈⺠元
インド・ルピー
豪ドル
ユーロ
メキシコ・ペソ
トルコ・リラ
-15
IEA(国際エネルギー機関)が集計する世界の原
油需給統計からは、既に原油余りの状態が解消に
近づいていることがわかります(図表6)。現在の原
油市場は需給が均衡した状態にあり、今後も原油
-10
-5
0
5
10
15(%)
(出所)ブルームバーグ
図表6 「原油余り」は解消されつつある
原油需給動向:2013年1-3⽉期〜2016年7-9⽉期
WTI原油価格:2013年3⽉末〜2016年9⽉末
(百万バレル/⽇)
(⽶ドル/バレル)
3
120
2
100
また、カナダに続いて米国でも財政政策が実行
1
80
に移された場合には、米国への輸出増加を通じて
0
60
-1
40
価格の安定が見込まれます。資源国通貨が買い
戻されやすい環境とみています。
カナダ経済にもプラスの影響が出る可能性がある
とカナダ銀行は指摘しています。
「北米経済の優位性」を背景に、安定した経済
ファンダメンタルズと資源価格への関連性を兼ね
備えるカナダ・ドルは選好されやすいと考えていま
す。
債券投資のポイント〜⾦利上昇は警戒す
るが、収益性の⾼い投資対象も多い
今後はカナダ経済にプラスの材料が増えるとみ
-2
2013
2014
原油需給動向(左軸)
2015
20
2016
WTI原油価格(右軸)
※原油需給動向はIEAが集計する世界の原油供給額から、原油需要額を
差し引いたものです。プラスの数値は、世界全体で見て原油の供給が需要を
上回り、原油が余りやすい状態を示します。
※WTI原油価格は、WTI原油先物(第1限月)の四半期末時点の価格を使
用しています。
(出所)IEA、ブルームバーグ
また、金利上昇が銀行セクターの収益に追い風
になると想定し、カナダの銀行が発行する債券は
強気にみています。
ており、カナダの債券の利回りは緩やかに上昇す
最近は、カナダの年金機関が資金を調達する動
るとみています。弊社が考える具体的なカナダ債
きが増えています。年金機関が発行する債券は格
券の投資テーマをいくつかご紹介します。
付けが高く、かつ利回りも高いことから、割安と考
原油価格の底打ちや、米国とカナダ双方におい
えています。
て原油パイプライン敷設に前向きな姿勢がみられ
ることから、産油地域の州債を強気にみています。
結論として、カナダ債券の運用にあたっては、組入
一方で、米国とカナダの通商関係の見直しの可能
債券の金利上昇に対する値動きを抑止しつつ、カナ
性があり、製造業中心のカナダ東部州の州債のリ
ダ特有の投資テーマに注目し、ポートフォリオ全体
スクはやや警戒しています。
の利回りを高めることが重要と考えています。
◆
※1ページ目の「当資料のお取り扱いにおけるご注意」をよくお読みください。
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