透水機能を有する型枠工 排水・湿潤連続養生による コンクリートの耐久性向上技術の開発 大成建設株式会社 東京大学 生産技術研究所 開発背景 新規構造物:品質の良いコンクリートの施工 → 長期耐久性を有し,信頼性を向上 → 将来のメンテナンスコストの抑制 緻密化、欠陥排除 耐久性の確保 コンクリート表層の 空気泡 品質向上 中性化 緻密性確保 鉄筋 塩分浸透 欠陥の排除 表層品質→材齢初期の養生の影響 乾燥ひび割れ 既往の養生技術と新技術の開発 打込み~硬化前 余剰水の排出 透水シート (表層のW/Cの低減) 余剰水 ト 空気 ー コ ン ク リ 型 枠 余剰水 の排出 空気泡 (十分な水和反応) 硬化後 ト ー ー コ ン ク リ 気 泡 緩 衝 シ + 湿潤養生 排水・湿潤連続養生 型 枠 通ト 水 型枠の存置 両者を一度に連続 → 相乗効果 初期排水と湿潤養生を組合せた養生方法の概要 透水性 シート 透水板 兼せき板 水抜き ①:型枠組立 コンクリート 打込み 給水 × ②:余剰水排出 ③湿潤養生 (表層のW/Cの低減)(水和反応の進行) 養生技術の適用効果 [機構面からの考察] コンクリート 打込み ②余剰水排出 給水 × ③湿潤養生 コンクリート表層の水セメント比を低減 セメント粒子間の間隙が減少 → 組織構造の緻密化 養生技術の適用効果 [機構面からの考察] コンクリート 打込み ②余剰水排出 給水 × ③湿潤養生 凝結終了後速やかに養生水の供給を実施 ・活発な水和反応,自己乾燥現象を利用 → 効率的に吸水可能 ・脱型せず連続して養生を実施 → 表層が乾燥を受けない コンクリート表層を効率的に緻密化 排水湿潤連続養生の型枠構造 透水性シート 透水板兼せき板 通水性 内部中空構造 桟木 補強 コンクリート打込み面側 に1cm間隔で小孔設置 幅300 長さ:3600 高さ1200 Ⅰ.壁高欄を模擬した部材による適用性検証試験 排水・湿潤連続養生 余剰水排出:1日 湿潤養生 :2日 コンクリート:W/C 51.8% 通常の木枠同様 桟木で補強 比較 木製型枠存置:5日 底版 透水板兼せき板 コンクリート標準示方書に準拠 脱型後の外観状況 排水・湿潤連続養生 木製型枠 脱型後状況 表面状況 空気泡なく,仕上がり良好 表層の緻密化・耐久性向上効果の確認 排水・湿潤連続養生 上部:天端から200㎜ 下部:下端から200㎜ 脱型後状況 表層の緻密化・耐久性向上効果の確認 ①空隙率 :水銀圧入法 (材齢28日コア使用) ②透気係数 :Torrent式透気試験 材齢7ヶ月 ③促進中性化深さ:曝露期間13週間 材齢28日コア使用 ④塩分浸透 :浸漬期間13週間 水銀圧入法による空隙率の測定 型枠面から0-10,10-20,20-30mmの3深度 D-dry乾燥:7日間 排水・湿潤養生上部コア20-30mm 排水・湿潤養生下部コア20-30mm 木製型枠存置上部コア20-30mm 木製型枠存置下部コア20-30mm 排水・湿潤養生上部コア0-10mm 排水・湿潤養生下部コア0-10mm 木製型枠存置上部コア0-10mm 木製型枠存置下部コア0-10mm 0.008 0.008 0.006 空隙量(ml/g) 空隙量(ml/g) 0~10㎜ 0.004 0.002 0 0.001 0.01 0.1 1 10 空隙径(μm) 100 1000 1μm以下の空隙が大幅に減少 20~30㎜ 0.006 0.004 0.002 0 0.001 0.01 0.1 1 10 空隙径(μm) 100 1000 0.01μm以下の空隙量は減少 空隙構造の緻密化を確認 表層の緻密化 (空隙率) 型枠面から3深度を測定 空隙率(%) 25 (水銀圧入法) 表層の空隙率 木製型枠 20 木製型枠 15 3割減 排水・湿潤連続養生 10 30mm程度まで減少 5 0 0 10 20 30 20% 排水・湿潤連続養生 14% 表面からの深さ(mm) コンクリート表層の緻密化 透気係数の測定結果 (材齢7ヶ月) 電気抵抗 電気抵抗 ρ (kΩ・cm) 1000 100 非常に 良い 普通 良い 悪い 非常に 悪い 排水・湿潤連続養生 排水湿潤連続養生 木枠残置 木製型枠 木製型枠 平均:0.031×10-16m2 塗潰し:部材上部 白抜き:部材下部 10 1 0.001 0.01 0.1 1 10 100 透気係数 透気係数 KT (10-16m2) 1/5 排水湿潤養生: 平均:0.006×10-16m2 コンクリート表面の緻密化 促進中性化試験結果 促進試験:温度20℃,RH60%,5%CO2濃度,13週間曝露 養生 上部 下部 排水・湿潤 連続養生 中性化深さ0mm 中性化深さ0mm 木製型枠 存置 中性化深さ16mm 中性化深さ13mm 顕著な中性化抑制効果 塩分浸透試験 全塩化物イオン濃度(kg/m3) 浸漬試験:3%NaCl水溶液,13週浸漬 12 排水湿潤連続養生 上部 10 排水湿潤連続養生 下部 木枠型枠存置 上部 8 木枠型枠存置 下部 6 養生 コア採取 位置 排水・湿潤 連続養生 上部 下部 表面塩化物 イオン濃度 (kg/㎥) 10.2 9.8 木枠型枠 存置 上部 下部 9.6 7.2 4 見掛けの 拡散係数 2 (cm /年) 1.57 1.40 2.99 5.25 見掛けの拡散係数 2 [上部・下部平均] 木枠存置:4.12 cm2/年 0 0 10 20 30 40 50 表面からの深さ(mm) 60 1/3に 排水湿潤養生:1.48 cm2/年 塩分浸透の抑制効果 Ⅱ.橋梁の壁高欄への試験適用 適用面 250 高さ1.12m×9m 1121 壁高欄 1127 9000 515 近畿地方整備局 紀北東道路 中谷川第一高架橋上部工事 所在地:和歌山県伊都郡 実施時期:2012年1月 型枠の組立 型枠組立状況 型枠組立完了 ・シート設置以外は通常の木製型枠と同様に組立可能 施工状況 コンクリート打設状況 (27-8-20N、W/B53%) 余剰水排出 排水量:1kg/m2 コンクリート 打込み ②:余剰水排出 (表層のW/Cの低減) 表面から3cmの排水と仮定 水セメント比 53% ⇒ 42% 養生方法 養生条件 排水・湿潤 連続養生 脱型 材齢1日から打込み面に給水 ⇒材齢4日で給水停止・透水板から排出 冬季施工のため保温シートによる養生7日間 ・脱型まで型枠を存置 木製型枠 材齢7日 冬季施工のため保温シートによる養生7日間 ホースで給水 保温養生シート 養生状況 脱型後の状況 排水湿潤 連続養生 空気あばたなし 緻密なためやや濃色 ⇒良好な仕上り 木製型枠 非破壊試験 概要 材齢6週、15ヶ月にて ・シュミットハンマ反発度 養生の効果を検証 ・透気係数(Torrent式透気試験) 9000 150 ① + +③ ⑤ ⑦ + +⑨ ② ④ ⑥ ⑧ + + 上部 壁 830 + 150 + + + ⑩ ハンチ + 排水湿潤連続養生 木製型枠存置 測定実施位置 下部 養生効果の確認 (材齢15ヵ月) ・シュミットハンマ反発度 ・透気係数(Torrent式透気試験) 測定 位置 高欄壁 上部 高欄壁 下部 排水・湿潤連続養生 木製型枠 透気係数 1.1倍 透気係数 反発度 反発度 ×10-16m2 ×10-16m2 平均:46.1 平均:0.010 平均:42.6 平均:0.054 平均:49.1 平均:0.003 平均:43.1 平均:0.064 1/5 実構造物においても表層の品質向上を確認 まとめ 透水板をせき板として使用し,表面に透水性シートを設置 する型枠構造により,初期の余剰水の排出と湿潤養生の連 続養生が可能で,コンクリート表面の仕上がりも良好であ った。 排水湿潤連続養生の効果により,透気係数の減少,空隙構 造の緻密化,中性化の抑制,塩化物イオンの浸透抑制など の優れた耐久性の向上効果が実証された。排水湿潤連続養 生では,3日間の養生期間でも一般的な5日間の木製型枠存 置を大きく上回る品質が得られた. 実工事への適用により,本養生システムの施工性,および 表層品質の向上効果が確認できた。 18 ご清聴ありがとうございました.
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