背 景 法律案の概要

参考3
原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の
規制に関する法律等の一部を改正する法律案の概要 (予算関連法案・一括法案)
原子力利用における安全対策を強化するため、原子力事業者等に対する検査制度の見直
し、放射性同位元素の防護措置の義務化、放射線審議会の機能強化等の措置を講ずる。
背 景
福島第一原子力発電所事故後、新規制基準が整備され、再稼動の前提となる審査
が行われている一方、運転段階の検査制度や放射性同位元素に係る規制の改革は
今後の課題とされ、平成28年の国際原子力機関(IAEA)の総合規制評価サービス
(IRRS)報告書の中でも改善すべき旨の勧告。
より高い安全性の確保を目指して、事業者、規制機関双方の取組の強化が必要。
法律案の概要
1.原子炉等に係る規制関係
(1)原子力事業者等に対する検査制度を見直し、施設の基準適合性については、事業
者が自ら検査する仕組みを導入し、その安全確保に係る一義的責任をより明確化す
る。 また、事業者が行う検査その他保安活動全般を原子力規制委員会が検査し、そ
の結果に基づき総合的な評定を行い、次の検査に評定結果を反映させることとする。
(2)事業者に、より早い段階において施設の廃止措置についての方針を作成させる。
(3)炉内等廃棄物の埋設地について坑道埋め戻しに関する規制を整備し、炉内等廃
棄物及び高レベル廃棄物の埋設地について掘削等の行為を制限する。
※その他、原子力検査官の設置等の改正を行う。
事業者が安全確保の水準の維持・向上に主体的に取り組む意識・意欲を高め、
単に基準を満たすのみならず、施設の一層の安全性向上に繋がる仕組みの構築
2.放射性同位元素等に係る規制関係
危険性の高い放射性同位元素を取り扱う事業者に対し、テロ対策を義務付ける。
(例えば監視カメラの設置、管理者の選任等の防護措置の実施を義務づけ。)
※その他、事業者責務の明確化、放射性同位元素等の廃棄を円滑化するための特例の追加等の
改正を行う。
放射性同位元素等を取り扱う事業者の安全確保の水準を維持・向上
3.放射線審議会関係
放射線審議会の所掌として、放射線障害の防止に関する調査審議・提言機能を追加。
放射線障害防止に係る新知見の国内法令への取り入れを円滑化
※改正法の施行期日: 1.2.公布の日から3年後までに段階的に施行、3.即日施行(予定)
原子力規制庁
原子力利用における安全対策の強化のための
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に
関する法律等の一部を改正する法律案
参考資料
平成29年1月18日
1-1.原子炉等規制法 原子力施設に係る規制の現状と見直しの考え方
<現状・背景>
○福島第一原子力発電所事故後、運転段階の検査制度の改革は今後の課題。
○また、原子力施設の廃止措置段階への移行や廃棄物の埋設等に関する制度の見直し等、原子力施設の高
経年化に対応した措置が必要。
○さらに、少量核燃料物質の利用の多様化が進んでおり、これに対応して核燃料物質の使用等に係る規制の
適正化が必要。
○平成28年4月 IRRSミッション報告書を受け、主として以下の課題への対応が必要。
・検査の実効性を向上させるため、関係法令を改正すること。
・より早い段階から施設の廃止措置について考慮する規制を整備すること。
・廃炉等廃棄物に関する規制を整備すること。
<見直し内容>
①原子力事業者等に対する検査制度の見直し、原子力施設の設計及び工事から使用までの一貫した品質管
理の要求
②より早い段階における廃止措置への考慮の要求、炉内等廃棄物の埋設等に関する規制制度の見直し
③その他、核燃料物質の使用者及び国際規制物資使用者に係る規制の適正化、原子力検査官の設置等。
3
1-2.原子炉等規制法 検査制度の現状と見直しの考え方
<現行>
<見直し案>
●国が行う検査と事業者が行う検査が
混在(①)
●原子力事業者以外(下請メーカー)
を対象とする検査も混在(②)
●国の検査は、内容・実施時期が限定的、
ハード/ソフト面を細切れで検査(③)
●原子力事業者が自ら検査する仕組みを
導入し、安全確保の主体を明確化
●国は事業者の全ての保安活動・検査の
状況を総合的に監視・評価
事業者・国の双方の対応を強化
《現行の検査制度(発電用原子炉施設)》
設計段階
詳細設計
建設中
試運転中
①
国
供用運転中
停止中
廃止段階
廃止措置中
保安規定に規定する事業者の保安活動
溶接事業者検査
定期事業者検査(13か月ごと)
溶接安全管理審査
定期安全管理審査(13か月ごと)
保安規定
認可
設置
許可
運転段階
工事計
画認可
使用前検査
保安検査/保安調査(四半期ごと)
施設定期検査(13か月ごと)
①、③
燃料体設
計認可
事業者/国の検査の組合せ
事業者
基本設計
建設段階
燃料体検査
②
↑燃料体製造事業者が対象
4
1-3.原子炉等規制法 新たな検査制度のポイント
設計段階
基本設計
詳細設計
建設中
運転段階
試運転中
供用運転中
停止中
廃止段階
廃止措置中
事業者
保安規定に規定する事業者の保安活動等
使用前事業者検査
※溶接事業者検査・燃料体検査を含む
※認可時期
を前倒し
国
建設段階
設置
許可
保安規定
認可
工事計画
認可
※燃料体設
計を含む
定期事業者検査
総合的な監視・評価
検査→評定→(結果の通知・公表)→次の検査に反映
↓
評定を踏まえた措置(指導等)
・事業者の全ての保安活動(検査の実施状況を含む)を
常時監視(許可後から切れ目なく監視)
・国が検査結果を評定し、これを次の検査に反映
供用前の節目では、基準適合性など
を国が確認し、供用可能とする(現
行の使用前検査と同様)
(評価が良好な事業者の検査負担は軽減するなど、実績主義の徹底)
○事業者が安全確保の水準の維持・向上に主体的に取り組む意識・意欲を高め、単に
基準を満たすのみならず、施設の一層の安全性向上に繋がる仕組みの構築
5
2-1.放射線障害防止法 放射線源規制の現状と見直しの考え方
<現状・背景>
○福島第一原子力発電所事故後の法改正では、放射線障害防止法に基づく規制については手がつけられ
ていない。
○現行の放射線障害防止法では、放射線源による緊急事態を想定した準備と対応の義務付けは非常に限
定的であり、放射線源に対するセキュリティ対策は、平成23年のIAEAセキュリティ勧告を十分に満
たしていない。
○近年の放射線源によるテロ行為の脅威の高まりや、IAEAセキュリティ勧告に十分対応するため、規制
を整備する必要がある。
○平成28年4月 IRRSミッション報告書を受け、主として以下の課題への対応が必要。
・放射線源による緊急事態が発生した場合の対応についての取り決めがないため、整備すべき。
・研究所等廃棄物に関する規制を整備すること。
・原発の審査を最優先事項としていることは理解できるが、被規制者による放射線防護対策の
実施を監視することなどへの優先度を高くし、一層の資源を配分すべき。
<見直し内容>
①放射線障害防止法令を改正し、放射線源に対する規制を整備する。
⑴セキュリティ対策の追加。放射性同位元素を危険性に応じて区分分けし、IAEAセキュリティ勧告
にのっとり、盗取を検知し、遅延させ、対応する等の一連の体系的な措置を義務付け。
⑵放射線源による緊急事態が発生した場合の対応についての取り決めを整備(施行規則で対応)。
※⑴、⑵については、使用する放射線源の量・特性(リスク)に応じて適用する。
②安全水準向上に向けた共通的な取組として、RI事業者の一義的責任の明確化、放射線取扱主任者
試験等の科目について施行規則への委任による内容の柔軟な見直し等。
6
2-2.放射線障害防止法 防護措置の要求を追加
放射線障害防止法では、放射性同位元素等の取扱いに伴う作業従事者及び事業所外の一般公衆の放射線
障害を防止するため、許可届出使用者、許可廃棄業者等、下表の事業者区分に応じて、事前の申請、技
術上の基準の遵守等について規定。
事業者区分
許
可
届
出
使
用
者
事業内容の例
特定許可使用者
(1,208)
・非密封RIの使用 (貯蔵施設の貯蔵能力が一定量以上)
・密封RIの使用 (貯蔵施設の貯蔵能力が一定量以上)
・放射線発生装置の使用
・滅菌照射事業者 (コバルト60)
・放射性医薬品製造会社 (ヨウ素131、モリブテン99)
・大規模な研究所 (コバルト60、放射線発生装置)
・ガンマナイフを使用する病院 (コバルト60)
・放射線発生装置を使用する病院
・非破壊検査事業者 (イリジウム192)
・アフターローディング装置を使用する病院 (イリジウム192)
・試薬として非密封線源を使用する大学
許可使用者
(2,320)
・非密封RIの使用
・密封RIの使用 (取扱数量が一定量以上)
届出使用者 (521)
・前立腺がん治療線源を使用する病院 (ヨウ素125)
・校正用線源の使用者
・密封RIの使用(取扱数量が一定量以下)
※
・表示付認証機器 の使用
表示付認証機器
※国又は登録機関による認証
を受けた設計に合致することが、
届出使用者(4,723) あらかじめ認証された機器
許可廃棄業者 (7)
・放射性同位元素等の業としての廃棄
届出販売・賃貸業者(468)
・放射性同位元素の業としての販売・賃貸
・ガスクロマトグラフ用ECDの使用者
・日本原子力研究開発機構
・日本アイソトープ協会
・表示付認証機器の販売・賃貸事業者
※新たに防護措置を義務付ける対象(いずれも一部の事業者のみ。約500事業者)
7
3.放射線障害防止の技術基準法 放射線審議会の機能強化
<現行>
放射線審議会は、放射線障害の防止に関する技術的基準について関係行政機関からの諮問を受け、
答申を行うことで、基準の斉一化を図ることを所掌。
【過去の答申例(諮問省庁)】
平成27年 7月
緊急作業従事者の実効線量限度引上げ
⇒炉規法規則(規制委)、電離則(厚労省)、人事院規則(人事院)
平成16年11月
IAEA放射性物質安全輸送規則の国内制度への取り入れ
⇒RI法(文科省)、航空法・船舶安全法(国交省)、炉規法(経産省)
平成12年 3月
国際放射線防護委員会の新勧告(Pub.60)の取り入れ
⇒炉規法規則・鉱山保安法規則(通産省)、獣医療法規則(農水省)、RI法規則(科技庁)、医療法規則
(厚生省)、電離則(労働省)、人事院規則(人事院)、船員電離則(運輸省)等
〈課題〉
最新知見を踏まえ放射線防護に関する抜本的な見直しがあった場合、その取り入れ検討には今ま
で以上に高い水準の専門的知識が必要とされ、関係行政機関が個別に検討することが困難。例えば
国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告は、我が国法令にいまだ取り入れられず。
<見直し案>
○従来の放射線審議会の所掌事務を変更し、自ら調査審議を行うとともに、必要に応じて
関係行政機関の長に意見を述べることができる機能の追加を検討。
○高度な専門性を持った放射線審議会においてICRP勧告等を調査審議し、関係行政機関に
提言を行うことにより、放射線障害の防止に関する国内法令の整備を進める。
8