「踊り場」局面と予想する企業が 4 年連続増加

2017/1/18
松本・長野・飯田支店
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特別企画:2017 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査
「踊り場」局面と予想する企業が 4 年連続増加
景気の懸念材料としては「米国経済」が急上昇
はじめに
昨年 12 月8日に発表された7~9月期の実質GDP成長率2次速報は、前期(4~6月期)比
0.3%増、年率換算で 1.3%増と、3四半期連続のプラス成長となった。TDB景気動向調査にお
ける長野県の景気DIも9月以降上昇を続けており、12 月は「45.4」と1年4カ月ぶりに 45 を上
回り、2016 年の最高値を更新している。
しかし、個人消費は依然として足踏み状態が続く一方、人手不足を訴える企業が徐々に拡大す
るなど懸念材料も増加。特にトランプ新政権がスタートする米国の動向は、世界経済、日本経済、
さらに海外依存度の高い企業が多い長野県経済にも大きな影響を及ぼす可能性があり、注目が集
まっている。
帝国データバンクではこのほど、2016 年の景気動向及び 2017 年の景気見通しに対する企業の見
解について調査を行った。調査期間は 2016 年 11 月 16 日~30 日で、調査対象は全国2万 3850 社、
長野県 504 社。有効回答企業数は全国1万 110 社(回答率 42.4%)
、長野県 224 社(同 44.4%)
。
なお、本調査はTDB景気動向調査 2016 年 11 月調査とともに行っている。
調査結果(要旨)
■昨年の景気動向、
「踊り場」局面とする企業が 56.7%と半数を超える
2016 年の景気動向について、
「踊り場」局面とする県内企業の構成比は 56.7%と半数を
超えた。
「回復」局面は 4.5%、
「悪化」局面は 21.0%、
「分からない」は 17.9%だった。
■今年の景気見通し、
「踊り場」が 40.6%、
「改善」は 11.6%
2017 年の景気見通しについて、最も多かったのは「踊り場」局面の 40.6%。
「回復」局
面は 11.6%、
「悪化」局面は 19.6%、
「分からない」は 28.1%だった。
■懸念材料としては「米国経済」が 46.4%で最多
2017 年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料としては、
「米国経済」が 46.4%で最多となっ
た。前回調査時の 15.3%から急上昇している。また、景気回復に必要な政策としては「個
人消費拡大策」が 47.3%で最も多かった。
■トランプノミクスの影響、
「分からない」が 41.1%、
「マイナス」は 36.2%
アメリカのトランプ新大統領による経済政策(トランプノミクス)による影響としては、
「分からない」が 41.1%で最も多く、次いで「マイナスの影響」の 36.2%だった。
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特別企画:2017 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査
1.昨年の景気動向、
「踊り場」が4年連続増加「回復」
「悪化」はともに減少
県内企業は 2016 年の景気動向をどうとらえているのだろうか。最も多かったのは「踊り場」局
面で 56.7%(127 社)
。構成比は4年連続で増加し、2006 年の調査開始以来の最大を更新した。
「回
復」局面は 4.5%(10 社)
、
「悪化」局面は 21.0%(47 社)となり、いずれも前年を下回っている。
「回復」は3年連続、
「悪化」は2年連続の減少である。
「分からない」は2年連続増加して 17.9%
(40 社)
。
「踊り場」が半数を超え、
「分からない」も増加する一方、
「回復」と「悪化」がそれぞ
れ減少するなど、判断を下しづらい、不透明感が漂う一年だったと言えよう。
規模別、主要業界別いずれも「踊り場」が最も
多いが、「悪化」と回答した企業が「回復」の何
倍あるかを算出してみた(全体は 4.7 倍)
。規模
別では、
「大企業」3.0 倍、
「中小企業」4.9 倍、
「(中小企業のうち)小規模企業」7.0 倍と、規
模が小さくなるほど高くなっている。また、主要
業界別では、
「製造」3.2 倍、
「建設」4.0 倍、
「サ
ービス」1.0 倍、
「卸売」16.0 倍と「卸売」が突
出して高くなっている。
全国の調査結果は、
「踊り場」53.9%、
「分から
ない」21.0%、「悪化」19.3%、「回復」5.7%。
長野県の方が高かったのは、
「踊り場」
(2.8 ポイ
ント)と「悪化」
(1.7 ポイント)
。
2.今年の景気見通し、
「踊り場」が 40.6%で最多、
「回復」は増加、
「悪化」は減少
2017 年の景気見通しを尋ねたところ、最も多かったのは「踊り場」局面で 40.6%(91 社)
。2016
年の景気動向と同じく、4年連続増加し、調査開始以来の最大を更新している。
「回復」局面は前
年から増加して 11.6%(26 社)
、
「悪化」局面は減少して 19.6%(44 社)
。
「分からない」は増加
して 28.1%(63 社)
。
「回復」が増加し、
「悪化」
が減少する一方、「踊り場」と「分からない」が
増加し、両者を合わせると構成比は7割近くに達
するなど先行きを見通すことが一段と難しくな
っている様子も窺える。
2016 年の景気動向と同じく、各規模・主要業
界別いずれも「踊り場」が最も多いが、「悪化」
と回答した企業が「回復」の何倍あるかを算出す
ると、規模別では「大企業」3.0 倍、
「中小企業」
が 1.6 倍、
「小規模企業」が 2.0 倍。主要業界別
では、
「建設」が 5.0 倍と高く、
「卸売」1.9 倍、
「製造」1.2 倍、
「サービス」1.0 倍などの順とな
っている(全体は 1.7 倍)
。
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特別企画:2017 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査
全国の調査結果は、
「踊り場」37.9%、
「分からない」31.1%、
「悪化」20.0%、
「回復」11.0%。
長野県の方が高かったのは、
「踊り場」
(2.7 ポイント)と「回復」
(0.6 ポイント)
。
3.
「米国経済」を懸念する企業が 46.4%、全国8番目の高さ
2017 年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料
(3つまでの複数回答)
としては、
「米国経済」
が 46.4%
(104 社)で最多となった。前回調査時の 15.3%を 31.1 ポイント上回る急上昇(約3倍増)で、
トランプ新大統領が打ち出す政策に基づく米国経済の動向を懸念する企業が多いことが浮き彫り
となった。
「米国経済」と回答した企業の構成比を規模別にみると、
「大企業」48.6%、
「中小企業」
46.0%、
「小規模企業」45.5%。主要業界別では、
「製造」50.0%、
「卸売」48.2%、
「建設」42.3%、
「サービス」31.6%。なお、都道府県別に「米国経済」の構成比をみると、長野県の 46.4%は8
番目に高い。
以下、
「原油・素材価格
(上昇)
」
(31.7%、
71 社)
、
「為替(円高)」(30.8%、69 社)、「中国経済」
(25.4%、57 社)と続き、海外取引に関係する項目
が上位を占めた。前回 55.0%で最多だった「中国経
済」は大きく後退したが、都道府県別では3番目に
高い。また、全国的に拡大している「人手不足」も
徐々に上昇しており、今回は 25.0%(56 社)と4
社に1社が選択した。
なお、全国の調査結果は、
「米国経済」
(41.8%)
、
「原油・素材価格(上昇)
」
(28.5%)、
「人手不足」
(28.4%)
、
「為替(円高)
」
(26.5%)、
「中国経済」
(21.0%)の順。
4.景気回復に必要な政策、
「個人消費拡大策」が 47.3%でトップ
今後、景気が回復するために必要な政策をあげ
てもらったところ(複数回答)、「個人消費拡大
策」
(47.3%、106 社)が最も多く、
「所得の増加」
(37.1%、83 社)、「年金問題の解決(将来不安
の解消)」(34.4%、77 社)が続いた。全国調査
でも、上から「個人消費拡大策」(42.9%)、「所
得の増加」(38.5%)、「年金問題の解決(将来不
安の解消)
」
(32.7%)と、トップ3は同じである。
密接に関係するこの3項目。所得の増加や将来
不安の解消を通じた個人消費の拡大が重要だと
する企業は依然として多い。
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特別企画:2017 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査
5.トランプノミクスの日本経済への影響、
「分からない」が「マイナス」を上回る
関心が高まるトランプ新大統領による経済政策(トランプ
ノミクス)の日本経済への影響。調査時点で「プラスの影響」
と回答した企業は 14.3%(32 社)だったのに対し、
「マイナ
スの影響」としたのは 36.2%(81 社)と、
「マイナス」が「プ
ラス」の 2.5 倍を超えた。一方、
「分からない」が 41.1%(92
社)と最も多く、トランプノミクスの影響を測りかねている
企業が少なくないことを示している。
「影響はない」は 8.5%
(19 社)
。
全国の調査結果は、
「プラスの影響」9.9%、
「マイナスの影
響」37.8%、
「分からない」42.0%、
「影響はない」10.3%。
まとめ
2016 年の景気動向及び 2017 年の景気見通しは、
「踊り場」局面とする企業が他を大きく引き離
した。景気動向、景気見通しともに「踊り場」は4年連続増加し、両者の構成比は調査開始以降
の最高値を記録。「分からない」と回答した企業も増加しており、「回復」か「悪化」かの見極め
が難しい、不透明感が強く漂う景気が続いていることを物語っている。
その不透明な景気見通しを大きく左右すると考えられているのが「米国経済」
。懸念材料として
あげた企業が急激に増加したのは、予想外の選挙結果とも評されたトランプ新大統領誕生に起因
していることは間違いない。トランプ氏が選挙期間中から口にしてきた保護主義的な政策が現実
のものとなれば、日本経済へのマイナス影響は避けられない。他方、従来とは異なる新たな経済
政策への期待感もあり、多くの企業がその影響を測りかねていることは、トランプノミクスによ
る日本経済への影響を「分からない」とする企業が最も多かったことにも示されている。
懸念材料は「米国経済」だけではない。
「原油・素材価格(上昇)
」
「為替(円高)
」
「中国経済」
など海外取引に絡むものに加え、県内でも「人手不足」が徐々に拡大。また、所得の伸び悩みや
将来不安といった従来からの課題も残されており、消費活性化や雇用のミスマッチ解消策も含め、
企業業績の改善に向けた政策を一段と推し進める必要性が高まっている。
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