国 語 - 須磨学園

2017年度 須磨学園中学校入学試験
国 語
第 3 回
(注 意)
解答用紙は、この問題冊子の中央にはさんであります。まず、解答用紙を取り出して、
受験番号と氏名を記入しなさい。
1.すべての問題を解答しなさい。
2.解答はすべて解答用紙に記入しなさい。
3.字数制限のある問題については、記号、句読点も1字と数えること。
4.試験終了後、解答用紙のみ提出し、問題冊子は持ち帰りなさい。
※この紙は再生紙・大豆インクを使用しています。
一
次の各問いに答えなさい。
問一 次の語句を国語辞典に登場する語順に並び替えて番号で
答えなさい。
1 チェーン 2 チーク
3 チーター 4 小さい
いだ
問二 次の「見る」様子を表す語句のうち、最も相手に興味を
抱いているものを一つ選び、番号で答えなさい。
1 きょろきょろと
2 きょとんと
3 まじまじと 4 きっと
問三 次のア~ウの各文は、
「はかる」場面をあらわしたもので
す。その場面に最もふさわしい語句を、次の1~4の選
択肢の中からそれぞれ一つずつ選び、番号で答えなさい。
ア 会議で後輩に意見を求めて相談する。
イ 悪事をなそうと話し合う。
はか
ウ 友達の気持ちをあれこれ考える。
はか
はか
1 測る 2 図る
3 謀る
4 諮る
問四 次の①~③の意味に共通して推測される漢字一字を答え
なさい。
① けがれない ② あきらか ③ 申し上げる
問五 次のア~ウの各文で、敬語の使い方として、適切な文は
「○」
、不適切なところがある文は「×」と答えなさい。
ア 先生が教室に参った。
イ 先輩。部活でのご指導、ご苦労様です。
ウ 問題があったことを上司に申し伝える。
問六 次の文章に過不足なく句読点を付けなさい。
わが祖父母は生前公衆電話をかけられずに四苦八苦して
いた
(朝日新聞「天声人語」十一月一日)
─1─
─2─
二
次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
はら
にじ
ひらがなには動きがあり、まるで文字が踊っているようです。
は
筆の強弱や、スピードとリズム。止めや跳ね、払い、滲み、か
すれ。これらは踊りにおいても、非常に重要な要素です。文字
おど
りは、身体の動きですべてを表現する、言葉を発しない世
踊
の流れを体で追うと、美しい
Y が生まれます。湧いてき
界です。私は言葉の表現がとても苦手です。もっと上手に喋る
た言葉を、思い切り全身を使い踊るのです。
しゃべ
ことができたら。心のままを自然に伝えることができたらどん
き
私が講師を務めるダンスワークショップでは、参加者に「文
とぼ
なによいか。言葉に乏しく、とっさに気の利いた言葉を使うこ
なげ
字ダンス」を体験してもらいます。紙の上ではなく空中に書道
a
とができない自分を、よく嘆き、日々反省してばかりいます。
d
b
をする踊りです。大人も子どもも、たとえ踊りをやったことが
ひ かく
ナイコウ的で口数の少なかった少年時代。人前で言葉を発す
なくても、空中に文字を書くことは比較的テイコウなくできる
は がゆ
おも
ると極度の緊張状態になり、赤面し、想いを伝えることができ
からです。「あいうえお」から始め、自分の名前や好きな言葉
きんちょう
ませんでした。言葉により人間不信になってしまったこともあ
を 空 中 に 自 由 な 発 想 で 書 い て い き ま す。 手 だ け で な く、 頭 や
しぼ
ります。私がふり絞った言葉が誤解を招き、人を傷つけ、傷つ
足、お尻も使います。筆、マジック、シャープペン……。異な
みりょく
しり
けられたりし、自信を失う体験を多くしたからでしょう。長い
る筆記具になったつもりで体を動かしてみることもあります。
きゅうくつ
間、言葉の魅力よりも、その窮屈さ歯痒さをより強く感じてい
次に一つの言葉からレンソウし、振付をハッテンさせ、短い
c
ました。特に言葉での自己表現にコンプレックスを持っていた
ちが
みりょくてき
滲むイメージで動いたり、水滴が跳ねるイメージで踊ったり。
すいてき
踊りをつくっていきます。
「あめ(雨)
」だったら、文字が水で
そんな少年時代があったからこそ、踊りと出会ったとき、
ア
のです。
ひ
同じ言葉を踊っても、それぞれ違う魅力的な踊りが生まれます。
もうれつ
ぼんおど
言葉のない身体表現に猛烈に惹かれたのかもしれません。人の
ころ
小さい頃、盆踊りの輪に入ることすらできなかった私は、子
どもたちや保護者の方に声をかけます。「うまく踊れなくても
き れい
姿や体の動きが語るものが、どんなに綺麗な言葉より信じられ
たのです。
だれ
ものが、その人の、人となりや心を表現します。そこにいるだ
エ
Z です。うまく踊れようが踊
いいんだよ」。体はとても
さい
私が踊りを始めたのは二十一歳ですが、すぐ X に自己
れまいが、踊りはその人のすべてを物語ります。体の存在その
しょうげきてき
表現ができたわけではありません。出会いは衝撃的でした。体
おどろ
操やサッカーなどスポーツをやってきた自分でも、驚くほど思
もど
けですでに誰もが踊っている。そして踊るとなお一層、その人
イ
うように体を動かせず、まるで赤子に戻ってしまったかのよう
の心が伝わってきます。踊りは言葉にならない想いを表現する
ふ
だったからです。立っていること、たった一歩ステップを踏む
ことができる。
ぶ ざま
ことすらままならない。足はもつれ、無様な姿をたくさんさら
小さな一言からたくさんの想いを受け取ることがあるよう
くや
しました。悔しさから、はじめはただひたすら練習に明け暮れ
に、大切なのは、踊りにしても言葉にしても、想いを込めるこ
こ
ましたが、一つ一つの動きを習得するうち、いつしか踊りの無
とではないでしょうか。言葉についてはハンセイしきりの毎日
たいと願っています。
(森山開次「言葉とともに踊る」による)
e
限の魅力に夢中になっていったのです。それはまるで赤子の成
で、いまでも時に黙りこみ、無口な男になりますが、それでも
ば
だま
長過程を再び体験しているかのようでもありました。体で気持
やっぱり、この体も、言葉も、想いを込め美しく踊らせて生き
つむ
踊りと出会って二十年ほどが経ちました。言葉のない世界に
た
ちを紡ぐことの喜びを全身で感じたのです。
のが
ウ
逃れたはずの私が、踊りの豊かさ深さを知れば知るほど、不思
議なことに、いつしか言葉に少しずつ惹かれるようになってい
わ
さけ
きました。体の中から湧いてくる想いを言葉でも伝えたい、時
たく
には大きな声で言葉を叫びたいと思うようになっていました。
ひび
言葉の響きや文字の流れの美しさ。言葉と言葉の間に想いを託
し、その心を読み取る日本語。その美学は、私の目指す踊りに
す
非常に共通していると感じるようになりました。想いを言葉に
託し伝えることの難しさと素晴らしさ。踊りが言葉の魅力と大
ふりつけ
切さを教えてくれたように感じます。
振付を考える際、私は少年時代に習っていた書道からヒント
を得ることがあります。書道の表現は、踊りそのもの。漢字や
─3─
─4─
二
の設問
問一 線部a~eのカタカナを漢字で答えなさい。
問二 X ~ Z にあてはまる語句として最も適切な
ものを一つずつ選び、番号で答えなさい。
X りゅうちょう
とうとつ
1 流暢 2 唐突 3 強行 4 実際
Y こ どう
ひっせき
ぶ よう
き せき
1 鼓動 2 筆跡 3 舞踊 4 軌跡
Z どんかん
ゆうべん
かんよう
1 鈍感 2 雄弁 3 寛容 4 有能
線部ア「そんな少年時代」とありますが、それに
問三
ついての説明として、最も適切なものを一つ選び、番号
で答えなさい。
1 言葉によって人間不信におちいって、踊りでしか自己
を表現できなかった少年時代。
2 人前で言葉を発することが苦手で、言葉を用いた自己
れっとうかん
いだ
表現に劣等感を抱いていた少年時代。
きゅうくつ
3 心のままに表現する方法が見つからず、自己を表現す
る言葉を探し求めていた少年時代。
みりょく
4 言葉の魅力に気づいていながら、言葉の窮屈さにばか
り目を向けて自己表現に苦しんでいた少年時代。
5 言葉によって誤解される経験が多く、踊り以外の面で
は自信を失うばかりだった少年時代。
問 四 線 部 イ「 ま る で 赤 子 に 戻 っ て し ま っ た か の よ う
だった」とありますが、これはどういうことを言おうと
していますか。その説明として最も適切なものを一つ選
び、番号で答えなさい。
1 体操やスポーツを経験してきた筆者にとって踊りも簡
単にできるだろうと軽く考えていたのに、その予想は
見事に外れたということ。
2 体を思うように動かすことができず、立っていること
ふ
やステップを踏むことさえままならないいらだちか
ら、無様な姿をたくさん見せてきたということ。
3 ダンスと出会った頃は、ダンスが自己表現の方法にな
るなどということは夢にも思っておらず、ただただひ
だれ
たすらに練習をくり返していたということ。
あか
ぼう
む じゃ き
4 ダンスを始めたばかりの頃の筆者は、誰でもできるよ
うな何気ない動作でさえ、思うように体を動かすこと
ができなかったということ。
5 ダンスを始めた頃は、まるで赤ん坊のように無邪気に
ちょうせん
ダンスをしており、失敗をくり返しても何度も挑戦す
る心意気があったということ。
問五 線部ウ「いつしか言葉に少しずつ惹かれるように
なっていきました」とありますが、それはなぜですか。
その理由の説明として、最も適切なものを一つ選び、番
号で答えなさい。
す
ば
1 言葉で思いを伝えることに限界を感じていた筆者は、
身体表現によって言語をはるかに上回る内容を伝えら
れるということに気づいたから。
2 踊りを教わるうちに、日本語のもつ美しさや素晴らし
さ に 気 づ き、 言 語 こ そ が 自 己 を 表 現 す る 一 番 の 方 法
だったのだとようやく気づいたから。
3 言語も踊りも受け手に美しいと感じさせるという共通
点があることを発見し、踊りだけでなく言語の美しさ
も表現したいという思いが急速に大きくなったから。
4 踊りの魅力を知っていくうちに、その魅力を人々に広
めたいと思うようになり、広める手段としては言語が
最適だという考えにいたったから。
5 筆者は言語表現に苦手意識を抱いていたが、身体表現
おくぶか
の喜びや奥深さを感じたことで、言葉を用いた表現欲
求も次第に呼び起こされたから。
線部エ「そこにいるだけですでに誰もが踊ってい
問六
る」とありますが、なぜそう言えるのですか。その理由
の説明として、最も適切なものを一つ選び、番号で答え
なさい。
人間が身体的な存在である以上、意識的に踊りを踊っ
や心情が表れてしまうから。
1 人間は身体的な存在である以上、どんな所作にも性格
2
ていない人物などいないから。
3 人間が身体的な存在である以上、言葉にならない思い
は踊りを通じて表現するしかないから。
4 人間が身体的な存在である以上、踊りで思いを表現し
なければならないから。
5 人 間 が 身 体 的 な 存 在 で あ る 以 上、 動 い て い な く て も
踊っているように見えてしまうのはやむをえないから。
問七 「言葉とともに踊る」というタイトルを参考に、本文の
とくちょう
文章の特徴について、八〇字以内で説明しなさい。
─5─
─6─
三
かんたん
じゅっかい
る。」というのが、老名人晩年の述懐である。
あつし
次の文章は、中島敦の小説「名人伝」の一節です。邯鄲に
かんよう
甘蠅師のもとを辞してから四十年の後、紀昌は静かに、誠に
きしょう
住む紀昌は弓の名人になるために、甘蠅老師(老名人)の
煙のごとく静かに世を去った。その四十年の間、彼はたえて射
ぐう
しゃ
元での修行を終え、再び邯鄲に帰ってきました。読んで、
を 口 に す る こ と が な か っ た。 口 に さ え し な か っ た く ら い だ か
とう び
だいかつやく
ら、弓矢を取っての活動などあろうはずがない。もちろん、寓
注
話作者としてはここで老名人に掉尾の大活躍をさせて、名人の
わ
まった。その間いか
九年の間、紀昌はこの老名人のもとに留
だれ
よう と
い
真に名人たるゆえんを明らかにしたいのは山々ながら、一方、
しゅぎょう
む
なる修行を積んだものやらそれは誰にも分からぬ。
ぎら 注1 せいかん
かげ
また、何としても古書に記された事実を曲げる訳にはいかぬ。
おどろ
ぐ しゃ
つらだましい
九年たって山を降りてきた時、人々は紀昌の顔つきの変わっ
実際、老後の彼についてはただ無為にして化したとばかりで、
ひ えい
さけ
およ
みょう
たのに驚いた。以前の負けず嫌いな精悍な面魂はどこかに影を
次のような妙な話のほかには何一つ伝わっていないのだから。
く
注3
かんたん
あしもと
ようぼう
ひそめ、何の表情もない、木偶のごとく愚者のごとき容貌に変
その話というのは、彼の死ぬ一、二年前のことらしい。ある
で
わっている。久しぶりに旧師の飛衛を訪ねた時、しかし、飛衛
日老いたる紀昌が知人のもとに招かれて行ったところ、その家
注2
はこの顔つきを一見すると感嘆して叫んだ。これでこそ初めて
で一つの器具を見た。確かに見覚えのある道具だが、どうして
もその名前が思い出せぬし、その用途も思い当らない。老人は
むか
ってきた紀昌を迎え
もど
邯 鄲 の 都 は、 天 下 一 の 名 人 と な っ て 戻
ちが
じょうだん
その家の主人に尋ねた。それは何と呼ぶ品物で、また何に用い
がんぜん
0
0
0
え
うか
しんけん
く
かえ
るのかと。主人は、客が冗談を言っているとのみ思って、ニヤ
あいまい
ま じ
きょうがく
め
わき返った。
たず
リ と と ぼ け た 笑 い 方 を し た。 老 紀 昌 は 真 剣 に な っ て 再 び 尋 ね
0
ところが紀昌は一向にその要望に応えようとしない。いや、
たずさ
0
る。それでも相手は曖昧な笑みを浮べて、客の心をはかりかね
す
弓さえたえて手に取ろうとしない。山に入る時に携えて行った
ようかん ま きん
エ
た様子である。三度紀昌が真面目な顔をして同じ問いを繰り返
い
な
楊幹麻筋の弓もどこかへ棄ててきた様子である。そのわけを尋
し
し た 時、 始 め て 主 人 の 顔 に 驚 愕 の 色 が 現 れ た。 彼 は 客 の 眼 を
もの う
a
ふう し
きょうふ
ちが
じ っ と 見 つ め る。 相 手 が 冗 談 を 言 っ て い る の で も な く、 気 が
くる
至言は言を去り、至射は射ることなしと。なるほどと、しごく
狂っているのでもなく、また自分が聞き違えをしているのでも
と
注
注
注
注
注
し、楽人は
かく
精悍 …
…… 勇 ましく鋭い気性が現れているさま。
木偶 …
…… 役 に立たない人のたとえ。
飛衛 …
…… 弓 の名手で紀昌が入門した最初の師匠。
喧伝 …
…… 盛 んに言いふらすこと。
… わ だかまりなく、落ち着いているさま。
…
…… 最 後になって勢いが盛んになること。
掉尾
…
…… あ なた。
瑟
規矩
……… コンパスと差し金。
… ……… 古 代の弦楽器。
夫子
枯淡虚静
注9 爾来 …
…… そ れからのち。
注8 天狼星 … … お おいぬ座の星。
注7 参宿 …
…… オ リオン座の星。
注6 徹宵 …
…… 夜 通し起きていること。
注5 三更 …
…… 午 後十一時から午前一時の間。
注4
注3
注2
注1
瑟の絃を断ち、工匠は規矩を手にするのを恥じたということで
く
Z を示
物分りのいい邯鄲の都人士はすぐに Y した。弓を執らざ
ふ
げん
こ こん む そう
ないことを確かめると、彼はほとんど恐怖に近い
ほこ
しつ
注
る弓の名人は彼らの誇りとなった。紀昌が弓に触れなければ触
けんでん
しの
しんかん
は
して、どもりながら叫んだ。
注4
注5
さんこう
b
き
れないほど、彼の無敵の評判はいよいよ喧伝された。
うわさ
ねむ
いだ
こうしょう注
夫子が、── 古今無双の射の名人たる夫子が、弓を
「ああ、
ア
ねた一人に答えて、紀昌は物憂げに言った。至為は為すなく、
こた
て、やがて眼前に示されるに違いないその X への期待に
われ ら
天下の名人だ。我等のごとき、足下にも及ぶものでないと。
とど
けむり
後の問いに答えなさい。
注
さまざまな噂が人々の口から口へと伝わる。毎夜三更を過ぎ
てっしょう
忘れ果てられたとや? ああ、弓という名も、その使い道も!」
ころ
注6
る頃、紀昌の家の屋上で何者の立てるとも知れぬ弓弦の音がす
はら
ひたい
じゃしん
注1
─7─
注1
その後当分の間、邯鄲の都では、画家は絵筆を隠
よう ま
てんろうせい
0
じ らい
こ たんきょせい
注1
る。名人の内に宿る射道の神が主人公の眠っている間に体内を
ぬ
ようゆう き
脱け出し、妖魔を払うべく徹宵守護に当っているのだという。
げい
ある。
いにしえ
彼の家の近くに住む一商人は、ある夜、紀昌の家の上空で、雲
めずら
に乗った紀昌が珍しくも弓を手にして、古の名人・羿と養由基
うでくら
こうぼう
の二人を相手に腕比べをしているのを確かに見たと言い出し
注8
しんしゅく
た。その時三名人の放った矢はそれぞれ夜空に青白い光芒をひ
注7
か
きつつ参宿と天狼星との間に消え去ったと。紀昌の家に忍び入
へい
0
ろうとしたところ、塀に足を掛けたとたんに一道の殺気が森閑
0
注9
とした家の中からはしり出てまともに額を打ったので、覚えず
とうぞく
イ かしこ
外に転落したと白状した盗賊もある。爾来、邪心を抱く者ども
さ
は彼の住居の十町四方は避けて回り道をし、賢い渡り鳥どもは
彼の家の上空を通らなくなった。
雲と立ちこめる名声のただ中に、名人紀昌はしだいに老いて
注
ゆく。すでに早く射を離れた彼の心は、ますます枯淡虚静の域
む
にはいって行ったようである。木偶のごとき顔はさらに表情を
う
ひ
失い、語ることもまれとなり、ついには呼吸の有無さえ疑われ
ぜ
る に 至 っ た。
「 す で に、 我 と 彼 と の 別、 是 と 非 と の 分 を 知 ら
ウ
ぬ。眼は耳のごとく、耳は鼻のごとく、鼻は口のごとく思われ
10
11
12
13
14
─8─
注1
注1
三
の設問
いくさ
問一 線部a・bの語句を使用した例文として、最も適
切なものを一つずつ選び、番号で答えなさい。
やり
a「しごく」
問四 線部イ「賢い渡り鳥どもは彼の家の上空を通らな
くなった」とありますが、これはどういう理由からだと
たんれん
解釈できますか。その説明として最も適切なものを一つ
選び、番号で答えなさい。
うわさ
1 名人紀昌が夜な夜な弓矢の鍛錬をしているので、うっ
え もの
かり獲物の的になることを鳥たちも不安に思ったから。
2 名人紀昌が死人たちと弓矢対決をしている噂が立ち、
こわ
ついに気が触れてしまったのかと怖くなったから。
1 槍をしごいて次の戦にそなえる。
2 彼は、しごく優しい人間だ。
かめ
3 亀はしごく早く動くことがない。
3 名人紀昌の放つあまりの殺気に、家の上空を飛ぶ鳥た
おそ
ちも地に落とされるのではないかと畏れたから。
ふ だん
4 私は、普段しごく寝ることはない。
b「覚えず」
問五
線部ウ「眼は耳のごとく、耳は鼻のごとく、鼻は
口のごとく」とありますが、これは「紀昌」のどのよう
5 名人紀昌の弓矢は遠い星を射抜く正確さなので、うか
うか飛んでいた鳥はすべて射落とされてしまったから。
るので、上空を飛ぶと射落とされてしまうから。
4 名人紀昌の家の上空では、射道の神が見張りをしてい
さけ
1 行き道を覚えず、迷子になった。
2 覚えず、犬の散歩をかかさない。
3 みんな、覚えず大きな声で叫びたい。
なみだ
4 彼は、覚えずつっと涙をこぼした。
問二
X ~ Z にあてはまる語句として最も適切な
ものを一つずつ選び、番号で答えなさい。
な状態を指した表現だと考えられますか。その説明とし
1 専門分野を極めきった、極限の状態。
む が
2 自意識から解放された、無我の状態。
て最も適切なものを一つ選び、番号で答えなさい。
Y が てん
しゅこう
しょうだく
1 合点
肯
3 同意 4 承諾
2 首 X みょうぎ
ぎ こう
1 妙技
巧
2 技術 3 技 4 技能
Z どうよう
ろうばい
こんわく
こんとん
1 動揺 2 狼狽 3 困惑 4 混沌
ふうぼう
つらぬ
4
めいしょう
あつか
かた
しろうと
たず
がくぜん
姿に、家の主人は、弓矢の名手とうたわれた紀昌が、
よう と
しんけん
実は無知で射道の素人だったことに愕然としたから。
子に、家の主人は、弓の名人と喧伝された紀昌が、弓
けんでん
弓の名前と用途について何度も真剣に尋ねる紀昌の様
3 道具の名称や扱い方を必死に聞き出そうとする紀昌の
から。
が悪化していると気づき、紀昌の死期が近いと悟った
さと
2 家にある道具について執拗に尋ねる紀昌の様子に、家
な じ
の主人は、馴染みのものでさえ思い出せないほど病状
しつよう
ついに記憶喪失になったことに驚き、怖くなったから。
おどろ
1 道具や腕前について聞いてもうやむやにする紀昌の姿
に、家の主人は、優秀な使い手だと噂される紀昌が、
うでまえ
を一つ選び、番号で答えなさい。
問六
線部エ「驚愕の色が現れた」とありますが、それ
はなぜですか。その理由の説明として、最も適切なもの
3 自己から欲を切り捨てた、無の状態。
きょ む
4 自分の感覚を手放した、虚無の状態。
と
す
5 五感が研ぎ澄まされた、最善の状態。
問三
線部ア「至射は射ることなし」とありますが、こ
れはどういうことを言おうとしているのですか。その説
明として最も適切なものを一つ選び、番号で答えなさい。
1 究極の射道を身につけた自分にふさわしい弓を棄てて
しまった以上、もう今後は弓を射ることはないという
こと。
ゆうしゅう
2 最も素晴らしい射道は弓自体を引かないことなのだか
ら、道を極めた自分にはもう弓は必要ないということ。
3 優秀な射道の達人は何も言わず、何もしないから、達
たお
人の自分は弓矢を捨てて当然であるということ。
ぐ しゃ
4 最上の射道は弓矢を使わずに相手を倒すことだから、
ふ
自分は弓矢に触れずに相手を倒すことができるという
うで
こと。
か もく
5 腕 の 立 つ 射 道 の 名 人 は 愚 者 の よ う な 風 貌 に な る の だ
から、優秀な自分も寡黙で無表情を貫いていくという
こと。
あいまい
え
う
について何もかも忘れている事実に驚いたから。
5 道具の名前や使い方を質問しても曖昧な笑みを浮かべ
る紀昌の様子に、家の主人は、やはり名人は知識をひ
けらかさないものだと、ひどく感心したから。
問七 本文内容を踏まえた上で、「名人」とは、どのような人
間だと考えられますか。「競争心」「専門」「精通」とい
う言葉を必ず用いて、五〇字以内で、わかりやすく説明
しなさい。
─9─
─ 10 ─
二〇一七年度 須磨学園中学校 第三回入学試験解答用紙 国語
ハンセイ
※
※枠内には記入しないこと。
ハッテン
e
問一
レンソウ
受 験 番 号
問二
テイコウ
d
い た
ナイコウ
50
問三
↓
わ が 祖 父 母 は 生 前 公 衆 電 話 を か け ら れ ず に 四 苦 八 苦 し て
↓
c
問四
問三
問三
b
問五
問四
問四
Y
問六
問一
問五
問二
問六
問七
問一
問五
問二
問六
問七
氏名
a
X
※
※
20
40
60
80
20
40
↓
イ
イ
ア
ア
ウ
ウ
Z
Z
※
※
b
Y
※
※
a
X
※
※
※
※
※
※
※
※
※
※
※
※
※
※
※
※
一
二
三
※