論 博 士論文題 目 氏 名 実 験 室 用 硬X線 小畠 文 内 容 の 要 旨 光電子分光装置の開発 雅明 (論 文 内 容 の 要 旨 ) X線 光 電 子 分 光 法 (X−rayPhotoelectronSpectroscopy:XPS) は 、 各 種 材 料 の 表 面 分 析 ・評 価 に 広 く 用 い ら れ て い る 重 要 な 分 析 法 で あ る。 し か し な が ら 、従 来 のXPSで ギ ー が 低 い だ め 平 均 自 由 行 程 が 短 く 、試 料 表 面 か ら2nm程 限 界 で あ る 。 硬X線 Spectroscopy:HAXPES) を プ ロ ー ブ に 用 い る 硬X線 は 光 電 子 運 動 エネ ル 度 の深 さま で の 化 学 結 合 状 態 の 検 出 が 光電子分光 (HardX−rayPhotoelectron に お い て は 、光 電 子 が 大 き な 運 動 エ ネ ル ギ ー を 持 つ の で 平 均 自 由 行 程 が 長 く 、ゲ ー ト絶 縁 膜 等 の よ うに 膜 厚 の 大 き い 多 層 薄 膜 に も応 用 で き る とい う メ リ ッ トが あ る。 し か し な が ら 、励 起 エ ネ ル ギ ー が 高 く な る と 光 イ オ ン 化 断 面 積 が 急 激 に 減 少 す る と い う問 題 が あ る た め 、実 用 化 に 限 界 が あ っ た 。 そ こ で 本 論 文 で は 、実 験 室 に お い て も 実 用 的 な ス ル ー プ ッ ト ( 信 号 強 度 ま た は 感 度 ) と エ ネ ル ギ ー 分 解 能 で 測 定 可 能 な ラ ボ 用HAXPES装 (1) 高 輝 度 で か つ 微 小 ス ポ ッ トが 得 られ る 単 色X線 ア ル バ ッ ク フ ァ イ 社 のVersaProveのAlKα さ れ たCrタ 置 開発 を行 っ た 。 源 の 開発 線 源 を べ 一 ス に 新 た にX線 源 を 設 計 した 。 水 冷 ー ゲ ッ トに 集 束 電 子 ビー ム を 照 射 し た 。 分 光 結 晶 に はGe(422) を 用 い 、 直 径300㎜ ロ ー ラ ン ド円 上 に お か れ た 楕 円 湾 曲 形 状 に 磨 い た ガ ラ ス ブ ロ ッ ク 表 面 に 貼 り つ け た 。タ ー ゲ ッ ト 上 のCrKαX線 (5414.7eV) の 発 生 点 を ロ ー ラ ン ド円 の 上 の 湾 曲 分 光 結 晶 の 焦 点 に 配 し 、 も う 一 方 の 焦 点 に 回 折 され たCrKαX線 が 集 束 す る よ う に した 。 タ ー ゲ ッ トに 照 射 す る 電 子 ビー ム を 走 査 す る こ と で 、 集 束X線 ら200μm(50W) は 試 料 上 で 走 査 可 能 で あ る 。X線 の ビー ム 径 は 、10μm(1.25W) か の 間 で可 変 で あ る。 2) 高 い 角 度 分 解 能 で 広 取 込 立 体 角 を 持 つ 対 物 レ ン ズ の 開 発 広 取 込 立 体 角 対 物 レ ン ズ は 、松 田 ら に よ っ て 開 発 され た 回 転 楕 円 体 メ ッ シ ュ を 用 い る 広 角 対 物 レ ン ズ の 基 本 設 計 を 採 用 し、こ れ を 高 エ ネ ル ギ ー 用 に 改 良 し た 。高 精 度 に 加 工 され た 回 転 楕 円 体 形 状 の 金 属 メ ッ シ ュ を レ ン ズ の 初 段 に 設 置 した 対 物 レ ン ズ を 製 作 し、最 大 取 込 立 体 角90° を 実 現 べした 。こ の 対 物 レ ン ズ の 性 能 評 価 装 置 を 作 成 し 、透 過 率 の 入 射 角 度 依 存 性 、集 束 ス ポ ッ トの 形 状 、 エ ネ ル ギー 収 差 な どの 特性 評 価 を行 った 。 広 取 込 立 体 角 対 物 レ ン ズ と ア ナ ラ イ ザ ー を 組 み 合 せ 、 ±35°の 角 度 範 囲 で 測 定 で き る こ と を 確 認 した 。 角 度 分 解 能 は0.54° が 得 られ た 。 分 光 器 の 入 射 ス リ ッ ト幅 が0.8mmの 子 帯 ス ペ ク トル の 測 定 時 間 は 約12時 間 で あ っ た 。 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は0.56eVと と き、 金 の 価 電 見積 も った 。 本 結 果 か ら実 用 的 な 感 度 と エ ネ ル ギ ー 分 解 能 で あ る こ と が 確 認 で き た 。 SiO2( 厚 さ25nm) /Si(001)試 料 基 板 か ら のSilsピ され て い る こ と か ら 、従 来 のXPSよ ー ク が 膜 厚25nmのSiO2を 通 して も 観 測 り も深 い 領 域 か らの 信 号 の 検 出 が 可 能 で あ り、バ ル ク 敏 感 な 測 定 が 可 能 で あ る こ とが確 認 で きた 。 上 記 の よ う に 、 今 回 開 発 を 行 っ た 単 色 化CrKα ネ ル ギ ー 分 光 器 の 構 成 の 実 験 室HAXPES装 た 。 ま た 、20nm以 sio2/si(oo1)に お け るsio2膜 置 は 、 実 用 上 十 分 な 感 度 と分 解 能 で あ る こ と が 分 か っ 定 が 可 能 で あ る こ と を 示 せ た 。 応 用 例 と し て 、4nm−25nmの 厚 測 定 、多 層 膜 試 料 評 価 ・高 エ ネ ル ギ ー 光 電 子 回 折 ・バ イ ア ス 印 加 ア ン ビエ ン トプ レ ッ シ ャ ーHAXPES用 験 室 で のHAXPES解 源 、 広 取 込 立 体 角 対 物 レ ンズ 、 高 エ 上 の 薄膜 物 質 の 深 さ情 報 が検 出 可 能 で あ る こ とが確 認 で き た。 これ に よ り 、 実 験 室 規 模 で バ ル ク 敏 感XPS測 HAXPES・ 集 束X線 析 を 可 能 と し、 数 十nmの セ ル の 開 発 に 成 功 した 。 こ の よ うに 、 本 研 究 は 実 深 さま で の表 面分 析 に 大 き な道 を拓 い た。 氏 名 小畠 雅明 ( 論 文 審 査結 果 の 要 旨) X線 光 電 子 分 光 法 (X−rayPhotoelectronSpectroscopy:XPS) は 、各 種 材 料 の 表 面 分 析 ・ 評 価 に 広 く 用 い られ て い る重 要 な 分 析 法 で あ る。 しか しな が ら 、 従 来 のXPSで は光 電 子 運 動 エ ネ ル ギ ー が 低 い た め 平 均 自 由 行 程 が 短 く 、 試 料 表 面 か ら2nm程 度 の 深 さまで の化 学 結 合 状 態 の 検 出 が 限 界 で あ る 。 硬X線 PhotoelectronSpectroscopy:HAXPES) を プ ロ ー ブ に 用 い る 硬X線 光 電 子 分 光 (HardX−ray に お い て は 、 光 電 子 が 大 き な運 動 エ ネ ル ギ ー を持 つ の で 平 均 自 由 行 程 が 長 く、 ゲ ー ト絶 縁 膜 等 の よ うに 膜 厚 の 大 き い 多 層 薄 膜 に も 応 用 で き る と い う メ リ ッ トが あ る 。 しか し な が ら 、 励 起 エ ネ ル ギ ー が 高 く な る と 光 イ オ ン 化 断 面 積 が 急 激 に 減 少 す る と い う問 題 が あ る た め 、 実 用 化 に 限 界 が あ っ た 。 そ こ で 本 論 文 で は 、 実 験 室 に お い て も実 用 的 な ス ル ー プ ッ ト ( 信 号 強度 また は感 度 ) とエ ネ ル ギ ー分 解 能 で 測 定 可能 な ラ ボ 用HAXPES装 置 開 発 を行 っ た 。 (1) 高 輝 度 で か つ 微 小 ス ポ ッ トが 得 られ る 単 色X線 源 の 開 発 ア ル バ ッ ク フ ァ イ 社 のVersaProveのAIKα 線 源 を ベ ー ス に 新 た にX線 源 を設 計 した 。 水 冷 され たCrタ ー ゲ ッ トに集 束 電 子 ビー ム を 照 射 した 。 分 光 結 晶 に はGe(422) を 用 い 、 直 径 300㎜ ロー ラ ン ド円 上 に お か れ た 楕 円 湾 曲 形 状 に 磨 い た ガ ラ ス ブ ロ ッ ク表 面 に 貼 りつ け た 。 タ ー ゲ ッ ト上 のCrKαX線 (5414.7eV) の 発 生 点 を ロ ー ラ ン ド円 の 上 の 湾 曲 分 光 結 晶 の 焦 点 ’に 配 し 、 も う一 方 の 焦 点 に 回 折 され たCrKαX線 が 集 束 す る よ うに した 。 タ ー ゲ ッ トに 照 射 す る 電 子 ビー ム を 走 査 す る こ とで 、 集 束X線 10μm(1.25W) か ら200μm(50W) は 試 料 上 で 走 査 可 能 で あ る 。X線 の ビー ム 径 は 、 の 間 で 可変 で あ る。 (2)高 い角度分解能 で広取込立体角 を持つ対物 レンズの開発 広 取 込 立 体 角 対 物 レ ン ズ は 、 松 田 ら に よ っ て 開 発 され た 回 転 楕 円 体 メ ッ シ ュ を 用 い る広 角 対 物 レ ン ズ の 基 本 設 計 を 採 用 し、 こ れ を 高 エ ネ ル ギ ー 用 に 改 良 した 。 高 精 度 に加 工 され た 回 転 楕 円 体 形 状 の 金 属 メ ッ シ ュ を レ ン ズ の 初 段 に 設 置 した 対 物 レ ン ズ を 製 作 し、 最 大 取 込 立 体 角90° を 実 現 し た 。 こ の 対 物 レ ン ズ の 性 能 評 価 装 置 を 作 成 し 、透 過 率 の 入 射 角 度 依 存 性 、集 束 ス ポ ッ トの 形 状 、 エ ネ ル ギ ー 収 差 な どの 特 性 評 価 を行 っ た 。 広 取 込 立 体 角 対 物 レ ン ズ とア ナ ラ イ ザ ー を 組 み 合 せ 、 ±35° の 角 度 範 囲 で 測 定 で き る こ と を 確 認 した 。 角 度 分 解 能 は0.54°が 得 られ た 。 分 光 器 の 入 射 ス リ ッ ト幅 が0.8㎜ の とき 、金 の 価 電 子 帯 ス ペ ク トル の 測 定 時 間 は 約12時 間 で あ っ た 。一 エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は0.56eVと っ た 。 本 結 果 か ら実 用 的 な感 度 とエ ネ ル ギ ー 分 解 能 で あ る こ とが 確 認 で き た 。 SiO2( 厚 さ25nm) /Si(001) 試 料 基 板 か らのSilsピ 測 され て い る こ とか ら、 従 来 のXPSよ ー ク が 膜 厚25nmのSiO2を 見積 も 通 し て も観 りも 深 い 領 域 か ら の 信 号 の 検 出 が 可 能 で あ り、 バ ル ク 敏 感 な測 定 が 可 能 で あ る こ とが確 認 で きた。 上 記 の よ うに 、 今 回 開 発 を 行 っ た 単 色 化CrKα 集 束X線 源 、 広 取 込 立 体 角 対 物 レ ン ズ 、 高 エ ネ ル ギ ー 分 光 器 の 構 成 の 実 験 室HAXPES装 置 は 、 実 用 上 十 分 な 感 度 と分 解 能 で あ る こ と が 分 か っ た 。 ま た 、20nm以 上 の 薄 膜 物 質 の 深 さ情 報 が 検 出 可 能 で あ る こ と が 確 認 で き た 。 応 用 例 と して 、4nm−25nmのSiO2/Si(001) に お け るSiO2膜 厚 測 定 、 多 層 膜 試 料 評 価 ・高 エ ネ ル ギ ー 光 電子回折 ・ バ イ ア ス 印 加HAXPES・ ア ン ビエ ン トプ レ ッ シ ャ ーHAXPES用 セ ル の 開 発 に 成 功 し た 。 こ の よ う に 、 本 研 究 は 実 験 室 で のHAXPES解 析 を 可 能 と し、 数 十nmの 深 さま で の表 面 分 析 に 大 き な 道 を 拓 い た も の で あ り、 学 術 的 に 大 き な 意 義 を 有 す る 。 よ っ て 、 審 査 員 一 同 、 本 論 文 が博士 ( 理 学 ) の 学 位 論 文 と して 価 値 が あ る も の と認 め た 。
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