佐賀の果樹 1月号 昨年の病害虫の防除はどうだったでしょうか。 うまく防除できた方は今年も油断せず、そうでなかった方は、今一度振り返り、今年の病 害虫防除に取り組みましょう。 果樹全般 今月は病害虫による被害枝・葉の除去,せん定くず・落葉の処分,粗皮削りなどを確実に 行い,病害虫の伝染源を除去しましょう。 ○伝染源の除去 カンキツの黒点病は枯れ枝,カンキツかいよう病は枝・葉の病斑,カキの炭疽病・ナシの 輪紋病は罹病枝の病斑,ナシの炭疽病や黒星病,ブドウのべと病などは落葉等が伝染源とな ります。園内には昨年発生した病害の病原菌が残っており,そのままにしておくと春先から ふたたび病気が広がり,大きな被害を引き起こす可能性があります。 生育期間中の防除をしっかり行っても,伝染源の除去をおこたると,十分な防除効果が得 られません。今年の病害の発生を抑えるためには,今のうちに伝染源を除去することが最も 重要です。そのためには常緑果樹,落葉果樹ともに被害枝・葉の除去,せん定くずの処分, 落葉果樹では落葉処理や粗皮削りも行い園内にある伝染源を減らしましょう。 特にカンキツ黒点病が問題となった園では枯れ枝の除去を,ナシ黒星病が問題となった園 では落葉の処分を徹底してください。 ○防風樹の手入れ 防風樹は,果樹園を強風から守るものですが,手入れを怠り通風が悪くなると,園内の湿 度が高くなり病気が発生しやすくなります。防風樹は適切な刈り込みや枝の整理を行い,園 内の風通しを改善しましょう。 また,ヒノキ・スギの防風樹に毬果が結実すると,カメムシ類の餌となりカメムシ類の増 殖の原因となります。毬果が結実しないように刈り込みましょう。作物の管理が忙しくなる と防風樹まで手が回らなくなるので,今のうちに必ず行ってください。 露地カンキツ ○貯蔵中の果実腐敗対策 貯蔵中は,こまめに果実の状態を点検し,腐敗果を見つけたらすぐに取り除きます。また, 取り除いた果実は貯蔵庫の隅などに置かずに必ず持ち出し,土中に埋めるなどして処分しま しょう。今年度産は雨等の影響で腐敗が発生しやすい条件がそろっています。しっかりチェ ックし,腐敗果の発生を少なくしましょう。 今月は中晩柑の収穫時期です。収穫の際は果実を丁寧に取り扱い,果実に傷がつかないよ うにして,腐敗果の発生を防止しましょう。 ○カイガラムシ類・ミカンハダニ対策 近年,ヤノネカイガラムシやフジコナカイガラムシなどの発生が目立つ圃場があります。 冬期のマシン油乳剤散布は,これらのカイガラムシ類に対し効果が高く,さらにミカンハダ ニも防除できます。 1 月上旬までにマシン油乳剤 97%60 倍を散布してください。その際,枝と枝のすき間や 葉裏などの薬液のかかりにくい所まで十分かかるよう,ノズルを樹冠内部に入れるなどして 丁寧に散布することが大切です。 ただし,厳寒期は落葉が懸念されますので,1 月上旬までに散布できなかった場合は 3 月 上旬にマシン油乳剤 97%80 倍を散布しましょう。また,樹勢が低下している樹への散布は 控え,生育期の殺虫剤の散布で対応してください。 ハウスミカン ○ミカンハダニ対策 ハウスは加温・無降雨のためミカンハダニが増えやすく,一度増殖してしまうと抑えるこ とは困難なので,防除が遅れないようにします。 ビニル被覆以降は,毎年発生しやすい場所を中心に日ごろからよく観察し,発生が認めら れたら直ちに防除を行いましょう。防除は開花期から幼果期(果径 25 ㎜まで)まではマシ ン油乳剤 97%200 倍の単用散布で対応します。この時期にミカンハダニに効果のある他の殺 ダニ剤を使用すると,生育後半の防除に使用できる殺ダニ剤がなくなってしまいます。ただ し,樹勢が低下している樹にはマシン油乳剤の散布は控えてください。 ○灰色かび病対策 落弁期にナリアWDG2,000 倍等の殺菌剤にトルキャップ 1,000 倍を加用して散布します。 灰色かび病は落弁期の花弁に発生するため,こまめに枝を揺するなどして花弁を除去し,本 病の発生を減らしましょう。湿度が高いと灰色かび病が多発するため,循環扇等を利用して 湿度を下げてください。 ナシ ○白紋羽病対策 生育期に発病がみられた樹とその周辺の樹に対し,フロンサイドSC500 倍(発病樹), 1,000 倍(未発病樹)のかん注処理を行います。フロンサイドSCの一樹あたりの処理量は, 500 倍の場合は 50 ㍑~100 ㍑,1,000 倍の場合は 100 ㍑~200 ㍑で,ムラなくたっぷり処理 を行いましょう。 本処理の効果は2年程度持続しますが,2 年以降は再発する場合もあるため,根部を掘っ て発病が進んでいないかチェックし,発病が進んでいるようであれば再びフロンサイド SC を処理してください。 ○粗皮削り 粗皮削りは,カイガラムシ類やシンクイムシ類などの粗皮下で越冬する虫に対して有効で す。ただし,ナシでフタモンマダラメイガが発生している園では,形成層近くまで削ってし まうと後々本種が寄生しやすくなりかえって被害が大きくなってしまうため,削りすぎは厳 禁です。 キウイフルーツ ○かいよう病対策 かいよう病は,収穫以降の防除が非常に重要です。かいよう病の病原菌は,傷口等から侵 入しますので,落葉後や剪定の前後には IC ボルドー66D 50 倍等を必ず散布してください。 剪定等の管理作業を行う際は,必ず健全樹から開始してください。使用する器具は樹ごとに 消毒(エタノール 70%,次亜塩素酸ナトリウム等)する,剪定切り口にはトップジン M ペース トを塗布する,といったことを徹底しましょう。剪定は樹液流動前の今月中に終えるように してください。 ○クワシロカイガラムシ対策 近年,クワシロカイガラムシの発生が問題となっています。12 月に散布していない場合 は,今月中にマシン油乳剤 95%14 倍を散布してください。ただし,かいよう病対策で散布 する IC ボルドー66D との間隔は 2 週間以上空けてください。 カキ ○フジコナカイガラムシ対策 昨年フジコナカイガラムシの発生が多かった園は,越冬量も多いと考えられますので,今 のうちに密度を下げておきましょう。 本虫は粗皮下などのすきまで越冬するため,粗皮削りを行い越冬量を減らします。また, 地際部の粗皮下でも越冬しているので,この部分まで丁寧に粗皮削りをしてください。
© Copyright 2024 ExpyDoc