きゅうりの年間収量30tをめざして

グリーンレポートNo.571(2017年1月号)
視 点 JAグループ地域生産振興:JA全農ぐんま
きゅうりの年間収量30tをめざして
∼園芸作物生産実証農場を活用した地域生産振興∼
群馬県は、標高差のある耕地と首都圏に近い立地条件
このような状況のなか、JA全農ぐんまは、①県内主
のもと、高冷地のキャベツ、レタスなどの高原野菜や、
力園芸作物であるきゅうりの産地基盤の再構築②産地で
平坦地のきゅうり、なすなどの施設野菜の産地が県内全
の普及に向けた新技術・新資材などの栽培実証③加工・
域に形成され、年間を通じて多彩な野菜を生産・出荷し
業務用野菜の機械化一貫体系の実証と担い手への普及④
ている。
農場での実践研修による担い手育成支援やJA担当者の
生産基盤は、販売農家の減少・高齢化、耕地面積の減
人材育成などを目的として、平成28年11月に園芸作物
少などが進むなか、平成26年2月の豪雪災害なども重な
生産実証農場を設置した(表−1、図−1)
。
り年々弱体化しており、産地維持に向け、収量向上技術
の確立や人材育成が必要となっている。
取り組み内容
表−1 園芸作物生産実証農場の施設概要
施設園芸の高品質・高収量化技術の実証
所在地:群馬県前橋市江木町1085−1
【硬質フィルム温室】
栽培面積:2,016㎡
(間口:8m×6連棟、奥行き:42m)
、
予備室:144㎡
栽培品目:きゅうり
被 覆 材:エフクリーン80μGR80
(予備室:エフクリーン100μ
ソフトシャイン)
設 備:複合環境制御装置
(アグリネット+環境制御盤MC−6000)
細霧装置
(冷房/加湿システムCooIBIM、最大噴霧量
1,208L/hr)
二酸化炭素発生機
(グロウエアCG−554T2)
2機
暖房設備
(ハウスカオンキHK−4027TCV)
2機
深層地中暖房装置
(ボイラーHB−807TGA)
2機および
地中配管
【パイプハウス】
栽培面積:1,215㎡
(間口5.4m、奥行き45m、5棟)
栽培品目:なす、ミニトマト、他試験品目など
設 備:換気扇、循環扇
トロ箱養液栽培システム「うぃずOne」
硬質フィルム温室(20a:写真−1)
を活用して、複合環
境制御システム
(ハウス警報モニタリングサービス「ア
グリネット」+複合環境制御盤「MC−6000」
:写真−2)
写真−1 硬質フィルム温室
出入口
事務所
JAぐんま研修センター
作業所
階段
フェンス
(段差あり)
予備室
8m
硬質フィルム温室
(20a)
6m
井戸
重油
タンク
貯水槽
パイプハウス
(各2.4a)
試験品目
試験品目
ミニトマト
パプリカ
なす
なす
きゅうり
農機具・
資材置場
m
フェンス
道路
42
5.4m
24m
生垣
出入口
写真−2 複合環境制御装置
45m
48m
図−1 園芸作物生産実証農場の施設概要図
写真−3 細霧装置
4
グリーンレポートNo.571(2017年1月号)
写真−4 深層地中暖房装置(ボイラー)
写真−6 暖房装置
に向けたトロ箱養液栽培システム
「うぃずOne」によるミニトマト・
写真−5 深層地中暖房装置(地中配管)
パプリカ栽培実証③新たな品目や品
種、栽培方法(作型、整枝法)など
栽培技術および品種の適応実証、などを行う。
により①炭酸ガ
スの施用、最大
農場での実践研修による人材育成
光量を得るため
の硬質フィルム
新規就農者などの研修生を受け入れ、農場で実践研修
(エフクリーン)
を行うほか、既存生産者向け施設見学会・研修会やJA
による光合成促
営農担当者・TACの育成研修、新技術・資材研修会な
進②細霧装置
どを開催する。
(写真−3)に
写真−7 二酸化炭素発生機
今後の進めかた
よる適湿管理③
深層地中加温装
12月下旬にきゅうりを定植し、農場を設置してから初
置(写真−4、5)による地温確保④窓・カーテン・暖
めての栽培が始まった。
房設備の温度管理(写真−6)などを複合的に制御して
当農場でのさまざまな栽培実証を通じて新たな技術な
群馬の気候に適した施設環境制御技術を確立し、きゅう
どを生産者へ普及するとともに、JA営農担当者・TA
りの年間(促成・抑制)収量30tの実現をめざす。
Cの育成を図って本県の生産振興の一助としたい。
【全農群馬県本部 JA群馬担い手サポートセンター 生産対策課】
パイプハウスでのさまざまな栽培実証
5棟(12a)のパイプハウス(写真−8)を活用して、
①天敵などを活用したIPM総合防除や屋根散水技術に
よる高温対策などを行うハウスなす無加温長期どりの栽
写真−9 パイプハウス
換気扇
培実証②土壌病害対策や水稲育苗ハウスなどの年間活用
写真−10 パイプハウス
循環扇
次号のJAグループ地域生産振興は、JA全農大阪の「大阪におけ
る特長野菜栽培による生産振興」を紹介する。
写真−8 パイプハウス5棟
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