India Topics

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2016年12月号
Contents
1. 物品サービス税(Goods & Service Tax)導入に関す
るアップデート
2. 2013年会社法の合併、減資等に関する条項が2016年
12月15日に発効
3. インドアメリカ間の相互協議における100件以上の
事案解決、及び二国間事前確認制度の諸条件に関す
る史上初の合意
4. 裁判事例
a. 過大計上された無形固定資産の減価償却は認め
られない
b. 越境税(Entry tax)の合憲性について
1. 物品サービス税(Goods & Service Tax)導
入に関するアップデート
物品サービス税協議会(GST Council;以下GST協議会)
は、2016年11月26日付でモデルGST改正法案を公表しま
した。従来の法案から変更された重要な項目は以下の通
りです。
 無償での提供(free of cost supplies)については、関
連当事者取引であるなど特定のケースを除き、GSTの
課税対象外である。
 不当利得を防止する条項が導入された。この点から中
央政府は、税額控除や税率の減免によりGST登録販売
業者に発生する利得が、消費者に移転されているか否
かについて、機関に任命して監視させることができる。
 現行のサービス税法上の仲介(intermediary)サービ
スの概念が引き継がれる。サービス税の課税対象か否
かは、サービス提供地が課税区域内であるか否かで判
断されるが、仲介サービスの概念とは、対象取引が仲
介とみなされる場合、サービス提供者の所在地がサー
ビス提供地とみなされるというものである。GSTに
おいて、この仲介の概念は国際取引に対してのみ適用
されることとなった。このため、インド国内業者が国
をまたいで仲介サービスを提供する場合には、現行の
サービス税と同様にGSTでも課税対象となる。
 中央政府から課されるGST(Central GST;以下CGST)
と、州政府から課されるGST(State GST;以下SGST)
の最高税率は、それぞれ14%とされた。したがって、
CGSTとSGSTの合計税率は28%が上限となる。ただし、
健康・環境によくない物品には追加税率が課される可
能性がある。
さらにGST協議会は4回の会合を通じて、以下のような
重要項目について検討しました。
 197の条項と5つのスケジュールから成るCGST、
SGST法案が州補償法(the State Compensation law)
とともに承認された。
 公海における課税について詳しく議論がなされたが、
合意に至らなかった。
 中央政府と州政府の税務行政における役割分担等、重
要であり賛否両論ある中央と州の二元管理(dual
control)の問題は、合意に至っていない。
このような未解決の問題は、2017年1月16日に開催され
る次回のGST協議会で検討される予定です。
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2016年11月から開催された冬季国会にはモデルGST改正
法案は提出できませんでしたので、次に審議が可能なの
は2017年1月下旬から開始予定の予算案国会となります。
このため、間接税制改革であるGSTの導入予定日は、当初
目標だった2017年4月1日から、2017年7月1日に延期され
る見通しです。
2. 2013年会社法の合併、減資等に関する条項
が2016年12月15日に発効
2016年12月7日、インド企業省(Ministry of Corporate
Affairs)は、2013年会社法の一部の条項が2016年12月15
日付で施行されるとの通達を発行しました。対象となる
条項とその主な規定は以下の通りです。
減資(2013年会社法第66条他)
 会社は、預り金(deposit)の払戻や利息の支払に遅
延がある場合は、減資することができない。
 減 資 は 会 社 法 審 判 所 ( National Company Law
Tribunal)の承認のもと、株主総会の特別決議を経た
上で行うことができる。会社法審判所は、中央政府、
会社登記局(Registrar of Companies)
、会社債権者、
上場会社の場合にはそれらに加えてインド証券取引
委員会に、減資について通知するよう義務付けられて
いる。減資の通知後3ヵ月以内に異議申立てがなけれ
ば、減資に反対しないものとみなされる。
 会社債権者の対する減資に関する通知は、資本の払戻
が発生するか否かにかかわらず、全てのケースにおい
て必須である。
 会社は、減資に関する会計処理が、所定の会計基準に
準拠しているとの監査人からの証明書を提出するよ
う義務付けられている。
なお、さらに細かい減資の手続については、施行規則
National Company Law Tribunal (Procedure for
reduction of share capital of Company) Rules, 2016が
12月15日に公表されており、今後官報に掲載される日を
以って施行されます。
株主権の多様性(2013年会社法第48条他)
 会社の発行する株式が複数の異なるクラスに分かれて
いる場合、1つのクラスの中で配当や議決権に関して
株主権に多様性をもたせるには、当該クラスの発行済
株式の4分の3以上の合意を得るか、当該クラスの株主
による会議での特別決議により承認されることが必要
である。
2
 1つのクラスの配当や議決権に関する株主権の多様性
が、他のクラスの株主権に何らかの影響を及ぼすよう
であれば、他のクラスの株主からも合意を得ることが
必要である。
 1つのクラスの発行済株式の10%以上を保有する株主
が、
株主権に多様性を持たせることに反対である場合、
会社法審判所に対して株主権の多様性の中止を申請す
ることができる。
和解、和議、合併(2013年会社法第15章第230条(11項
及び12項を除く)から第233条及び第235条から第240
条他)
 会社法審判所は、和解、和議、合併について、高等裁
判所の権限及び役割を担い認可を行う。
 和解、和議、合併の手続として、直前決算期の財政状
態、監査報告書、進行中の税務調査等などあらゆる重
要な情報を、会社法審判所への宣誓供述書という形で
開示することが義務付けられている。
 和議のスキームについては、金額ベースで合計4分の3
以上の債権を保有する会社債権者の承認が必要である。
承認方法は会議への出席や代理人の出席、または郵送
投票が認められている。
 債権価値ベースで合計90%以上の債権を保有する会社
債権者が合意していることが宣誓供述書で確認できる
場合には、会社法審判所は会議開催の義務を免除する
ことができる。
 会議の開催通知は広く回付され、法で定められた関係
機関全てと、その他当局宛に発行することが義務付け
られている。
 和議のスキームにおいて、期日は明確に表示されなけ
ればならない。
 和議のスキームの一環としての自社株の買取や株主権
の多様化は、2013年会社法の特定の条項に準拠してい
る場合にのみ認可される。
 10%以上の株式を保有する株主か、未払債務の5%以上
を保有する会社債権者だけが和解や和議のスキームに
対して異議申立てをすることができる。
 二社間、小規模会社間、親会社と100%子会社間の合併
については、会社法審判所の承認を必要としない迅速
な企業再編についての条項がある。
 合併、株式交換、有価証券の転換などを理由として、
会社の発行済株式の90%以上を保有する主要株主が少
数株主の保有株式を買収するための条項がある。
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なお、さらに細かい和解、和議、合併の手続については、会社
裁判所の判決の主な論拠は以下の通りです。
Amalgamations) Rules, 2016が12月14日に公表され、翌15
日に施行されています。
 BPLは納税者の50%出資会社であり、BPLという名前
3. インドアメリカ間の相互協議における100
件以上の事案解決、及び二国間事前確認制
度の諸条件に関する史上初の合意
ことで全く新しい流通ネットワークが構築されたわけ
法施行規則Companies (Compromises, Arrangements and
2016年10月最終週に、インドとアメリカの二国間所轄機
関(Bilateral Competent Authority)の相互協議(Mutual
Agreement Procedure;以下MAP)及び事前確認制度
(Advance Pricing Agreement;以下APA)に関する会議
がワシントンで開催されました。長らく懸案事項であっ
たMAP事案の解決に焦点があてられたとともに、両国間
のAPAプロセスに著しい進展がみられました。
この会議において、移転価格上の論点に関連する66の
MAP事案と、租税条約の解釈に関連する44のMAP事案
の解決について合意がなされました。さらに両国の所轄
機関は史上初めて、インドアメリカ二国間におけるAPA
の諸条件について合意に達しました。
こうしたアメリカとのMAP事案や二国間APAへの合意
における迅速な対応から、紛争解決の効果的な手段とし
てMAPとAPAの利用を促進していくというインド政府
の前向きな姿勢がうかがえます。
4. 裁判事例
a. 過大計上された無形固定資産の減価償却は認めら
れない
旧三洋電機株式会社とインドの電機メーカーであるBPL
グループのジョイントベンチャーであるSanyo BPL Pvt.
Ltd.(以下納税者)は、2005年に、売上の不振に伴いBPL
Ltd.(以下BPL)からカラーテレビの製造販売事業を取得
しました。この取得価額は、独立した登録評価人により
算定された評価額に基づいており、減価償却費明細に
よると無形固定資産には、440百万インドルピーの流通
ネットワークが含まれていました。
バンガロール租税裁判所(以下、裁判所)は、製造販売
がSanyoの名称とともに納税者の会社名に引き継がれ
ていることから、納税者はBPLに流通ネットワークの
対価を支払う必要はない。納税者に販売権が移転した
ではない。
 インド所得税法43条1項では、経費(cost)という単語
の前に実際(actual)という単語が置かれている。これ
は、減価償却費を過大計上する目的で固定資産の取得
価額を過大評価する傾向や違法行為に歯止めをかける
一方で、そうではない会社に対しては重大な納税義務
を負荷することを回避し、また、共謀して計上された
架空経費は排除する意図があることを示している。
インドにおいては2017年度から一般的租税回避行為防
止規定(General Anti Avoidance Rule;以下GAAR)の
導入が予定されていますので、特にGAAR導入後は、構
造改革に係る取引についても、租税回避行為とみなされ
ないよう留意する必要があります。
b. 越境税(Entry tax)の合憲性について
これまでさまざまな州の越境税の合憲性について、高等
裁判所に提訴がなされてきましたが、このたびJindal
Stainless Ltd. & Anr. vs. State of Haryana and Ors.事案
において、越境税の課税の合憲性について、画期的な判
断が下されました。
最高裁判所の9名の裁判官は、概ね本件における越境税
の合憲性を支持しました。また、最高裁判所は、それぞ
れの州の越境税法の妥当性を確認する基準を定め、こ
の基準に照らしてそれぞれの州において越境税法の合
憲性が検証される必要があり、それによって各州の越
境税の妥当性が判断されるべきであることを明確にし
ました。
つまり、インド最高裁判所は各高等裁判所に、定められ
た基準に則ってそれぞれの州の越境税法の合憲性につ
いて検証することを委ねました。
事業を移転したBPLも納税者も、代理店に対して販売権
の対価を支払っていなかったことから、流通ネットワー
クを利用する権利そのものは、なんら無形固定資産を
構成しないとの税務調査官の見解を支持しました。した
がって裁判所は、流通ネットワーク分過大評価された無
形固定資産の減価償却を行うことには、過大な償却費を
損金算入し税金の支払を回避するという巧妙な意図が
みられると判断しています。
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編集・発行
有限責任 あずさ監査法人
インド事業室
[email protected]
www.kpmg.com/jp/global-network-india
ここに記載されている情報はあくまで一般的なものであり、特定の個人や組織が置かれている状況に対応するものではありません。私たち
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