グローバル・インテリジェンス

グローバル・インテリジェンス
2017年1月号
ManulifeAM.com
本資料は、Manulife Asset Management (US) LLC が作成した ”Global Intelligence” (2016年12月発行) より、マニュライフ・
アセット・マネジメント株式会社が抜粋・翻訳したものです。
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
グローバル株式見通し
ポール・ボイン
グローバル株式運用部門リード・ポートフォリオ・マネージャー
市場概況
2016 年 11 月の米国大統領
選によって全般的にボラティリ
ティと不透明感が増大
金融市場が急速に落ち着きを取り戻したことから判断すると、投資家はドナルド・トランプ氏の第
45 代米国大統領就任が短期的にはプラス材料になるとの結論に達した模様です。
しかしながら、長期的には、11 月の選挙によって全般的にボラティリティと不透明感が高まったと
弊社では考えています。本稿執筆の時点では、次期大統領が就任後に何を実行するのかがまだ
明瞭になっていません。現実的に考えると、共和党が上下両院を制してはいても、実際に長期的
な政策が明確化されるまでに時間を要することから、不透明性が払拭されるまでにもう少し時間
がかかると思われます。
トランプ氏の勝利はインフレに結びつくと広く認識され、また、市場は 12 月の米国利上げを織り
込んでいました。この点は米国経済にとって好ましい兆候と解釈できますが、トランプ大統領の
就任は新興国経済にとって逆風となる恐れがあります。米ドル上昇が見込まれる中、新興国の企
業は債務が膨らんでおり、その大半が米ドル建てであることから、新興国企業のファイナンスに
は注意が必要です。また、トランプ氏が選挙期間中に主張した政策の遂行を決定した場合、貿易
取引に影響が及び、他の要因より大きな影響を与える可能性があります。
英国の EU 離脱(Brexit)を問う国民投票と同様、トランプ氏の選挙での勝利を受けて、ポピュ
リスト支持票が欧州の国民投票や選挙に反映される可能性を考慮せざるを得なくなっています。
この点は欧州の安定と通貨ユーロの将来にとって重大なリスクになりかねないと考えます。
投資機会
個別銘柄では、
企業の国籍
に関係なく、
流動性、
バリュ
エーション、質の面におい
て優れた企業に注目
個別銘柄では、企業の国籍に関係なく、流動性、バリュエーション、質の面において優れた企業(な
かでも、マーケット・リーダーであることが自他共に認められており、持続的に潤沢なキャッシュ
フローを創出することが可能な企業)に注目することが重要だと考えます。セクター別では、引
き続きヘルスケアや生活必需品といったセクター内の”サスティナブル”で質の高い企業につい
てポジティブに見ています。
2
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
リスク・シナリオ
弊社の推計では、米国と
欧州の企業のレバレッジ
水準は世界金融危機以前
の水準に回復し、債務調
整後のバリュエーションは
数年来の最高水準に達し
ている
弊社の推計では、米国と欧州の企業のレバレッジ水準は世界金融危機以前の水準に回復し、債務
調整後のバリュエーションは数年来の最高水準に達しています。バリュエーションが高水準である
理由は、事業からの収益が減少しているにも関わらず、数年にわたる量的緩和策により、資産価
格が上昇しているためです。多くの企業は低金利環境下で、自社株買いや企業買収の資金調達
を目的として社債を発行してきました。こうした状況は注視する必要があると思われます。コモディ
ティ・セクターと欧州の金融セクターへの慎重なスタンスを維持します。
注目ポイント
■トランプ次期大統領が就任後に実行する政策の明確化
各国の金融政策の方向性
の違いが与える影響を注視
■英国の EU 離脱を問う国民投票とトランプ氏の当選を受けて、欧州にポピュリズムの動きが
拡大するか否か、その兆候を注視
■各国の金融政策の方向性の違いが与える影響
■世界経済の成長鈍化
3
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
米国株式見通し
サンディ・サンダース
米国株式運用部門シニア・ポートフォリオ・マネージャー
市場概況
規 制 緩 和、2.4 兆 ~ 3 兆
米ドルの資本の回帰、減税
が見込まれるなか、この先
数年間にわたって投資が盛
り上がることによって、米
国の経済成長を大きく加
速させる可能性が高い
米国大統領選は、米国の大型株の形勢を一変させる結果となりました。現在は全面的な強気基
調で景気拡大を見込む環境にあります。これは米国株式にとって格好の材料です。
厳格な規制と低成長の下、最高財務責任者らの間に弱気ムードが広がる環境で弊社はこの数年
間、質の高い企業の発掘に努めてきました。
規制緩和、2.4 兆〜 3 兆ドルの資本の回帰 1、減税(法人税と所得税)が見込まれるなか、こ
の先数年間にわたって投資が盛り上がることによって、米国の経済成長を大きく加速させる可能
性が高くなっています。このことは、大型株にとって格段に有利な環境に好転しているといえます。
いくつかの景気回復の兆候は選挙前に見られました。10 月には賃金上昇率が前年比 2.8% と
2009 年以来最高となったほか 2、住宅着工件数が 130 万件(年率)に達したことも確認され
ました。後者の指標は長期平均の 150 万件をやや下回っているため、さらに大幅な増加余地
があると考えられます 3。
投資機会
一部の銀行にとって、金利
上昇は、収益力改善と魅
力的なリターンをもたらす
投資機会
新政権がヘルスケア・セクターに恩恵をもたらす可能性があることは明白です。数カ月前、同セ
クターは規制に縛られていた業種であり、
(市場に織り込まれ、世論調査が示していた選挙結果に
よれば)当面はこれまでと大きく変わらない状況が予想されていました。現在は、これまでとは
異なり、ファンダメンタルズが非常に良好なセクターとして見られるべきです。
足元で市場が上昇し、バリュエーションが相当高くなっていることが懸念される中においても、弊
社はボトムアップ型のファンダメンタルズに基づくリサーチ・プロセスによって、当資産クラスの
中で理論価格から大幅に割安となっている銘柄を見出しています。さらに弊社の見解では、前述
のように次期政権が提案する経済成長指向のいくつかの政策は、将来の収益予想が低すぎたとい
う結果を導く可能性もあります。特に弊社が選好する金融および資本財セクターではその可能性
が高いでしょう。
リスク・シナリオ
選挙が米国株式の状況を
劇的に変化させたことを考
慮し、株価上昇のペース、
株価変化のペース、過熱感
が出てくるペースに注視
マクロ経済状況と弊社が注目する企業のいずれにも強気の見方をしていますが、大型株への投
資は常にリスクを伴います。選挙が米国株式の状況を劇的に変化させたことを考慮し、株価上
昇のペース、株価変化のペース、過熱感が出てくるペースに注視していく方針です。
注目ポイント
株価上昇のペースや株価
水準に注視
1
2
3
予想に反する選挙結果が米国株式に対するセンチメントを劇的に変化させたことを考慮し、株価
上昇ペースや弊社の算出する理論価格と実際の株価水準の乖離について注視する方針です。
NYタイムズ: A Stranded $2 Trillion Overseas Stash Gets Closer to Coming Home、2016年11月4日
米国労働統計局、2016年11月4日
マニュライフ・アセット・マネジメント、ブルームバーグ、2016年11月25日時点
4
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
カナダ株式見通し
パトリック・ブライス
カナダ株式運用部門シニア・ポートフォリオ・マネージャー
市場概況
米 国 大 統 領 選 の 結 果は、
カナダ株式市場に多大な
影響を与え、今後も影響を
与え続ける可能性が高い
2016 年 10-12 月期のカナダ株式市場は、米国大統領選後に大きく変動しました。ドナルド・
トランプ氏が勝利した米国大統領選の結果は、カナダ株式市場に多大な影響を与え、今後も影
響を与え続ける可能性が高いと考えます。
市場がトランプ氏の「100 日計画」として掲げた財政刺激策を好感したことは明白です。米国
大統領選直後には戸惑いもありましたが、投資家が予想外の結果を消化するにつれて、インフ
ラ投資をはじめとする財政出動への期待感がカナダ株式指数を上昇させました。
カナダ株式市場全体のパフォーマンスとアクティブ運用上の投資機会はトランプ新政権の動向に
大きく左右されるものと思われます。弊社は、エネルギーと金融の 2 つのセクターに特に注目
します。
投資機会
2017 年に弊社が最も強
気に見ているセクターは、
エネルギー・セクター
2017 年に弊社が最も強気に見ているセクターは、エネルギー・セクターです。原油価格は安定
して推移する公算が高く、その場合には需給が再び均衡すると考えられるためです。カナダ企業
の多くはコスト削減と事業再編を押し進めてきており、原油価格が安定することの恩恵を受けやす
くなっていると思われます。市場は企業のこうした取り組みを認識していない可能性があり、この
ような過小評価されている株式には魅力的な投資機会があると考えます。
一方、カナダの銀行をはじめ、金融セクターは一般的に弱気に見られがちです。エネルギー価格
の下落、低金利による銀行収益の低下、低成長、という環境の中、金融セクターにリターンをも
たらす要因があるのか、投資家が疑うのも無理はありません。さらに、最近の住宅ローン規制の
強化によりこうした声はさらに高まっています。
しかしこうした市場の見方はやや極端であったと考えます。新しい住宅ローン規制により、銀行は
比較的投機的な融資から、より安全で利益率の高い事業への融資を増やすことが求められます。
銀行のビジネスモデルが転換し、市場の予想通り利上げが実施されれば、2017 年は金融セクター
にとって非常に良好な環境になる可能性があります。弊社は金融セクターを強気に見ていますが、
こうした見方は今後さらに強まると予想します。
5
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
リスク・シナリオ
エネルギー価格下落による
マイナス影響が他へも波及
投資家が注意すべきことは 3 つあります。1 つ目は金価格の動向です。金融制度への不安が和
らいだ 2016 年後半に、金はやや下落しました。現時点で、長期的に金を強気に見ることは難し
いと考えます。
2 つ目は、債券の代替資産と考えられる通信セクターなどの高配当株式です。低金利環境下で
相対的に高い利回りを提供してきましたが、金利が上昇する局面では魅力が低下する傾向にあり
ます。弊社は 2016 年を通じて高配当株式を弱気の見通しとしてきましたが、予想どおりに米国、
カナダの両国で金利が徐々に上昇する場合には、弱気の見通しを維持する方針です。
3 つ目は、エネルギー価格の下落によるマイナス影響です。アルバータ州などエネルギー産業に
依存する州へのエクスポージャーが高い企業は売上が低迷し、フリー・キャッシュ・フローが減少
しています。例えば、同州のレストラン事業者や塗料販売業者などが挙げられます。ただし、こ
うした状況でも長期的に上昇する余地のある銘柄を発掘することは可能でしょう。
注目ポイント
密接に結びついている
米国・カナダ経済
カナダは米国の状況に大きく左右されます。カナダは米国の最大貿易相手国で、金利、金融お
よびエネルギーにおいて、両国は密接な関係にあります。カナダは米国経済の重要な推進力で
あると同時に、米国はカナダ経済と株式市場のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。
6
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
日本株式見通し
エドワード・リッチー
欧州・EAFE株式運用部門シニア・インベストメント・アナリスト
市場概況
依然として大きな、そして
唯一の成長の足かせは、
日本の消費者マインドに
あると思われる
日本株式は 2016 年半ば以降、緩やかではありますが着実に上昇基調を辿っており、5 月以降、
MSCI ワールド・インデックスをアウトパフォームしています。弊社では、この先もアウトパフォー
マンスが続くと見ています。
日本株式の相対的な堅調さが下支えされてきた要因として、以下 3 つの要因が考えられます。
▪ 低水準ながらも継続している世界の経済成長(上昇傾向あるいは落ち着いた資源価格等が示し
ている)
▪ 中国経済の安定
▪ 円安ドル高
弊社は、
上記要因が 2017 年も引き続き企業収益を下支えすると予想します。財政政策に支えられ、
国内経済もプラス要因になると思われます。
依然として大きな、そして唯一の成長の足かせは、日本の消費者マインドにあると弊社では考えて
います。しかし、経済指標が好調さを維持すれば、持続的な賃金上昇が実現し、自律的な好循環
が実現する可能性があります。
BoJ
政策当局は、健全な金融
セクターが経済成長に重
要かつ必要不可欠な要件
であるとの判断に達した
模様
投資機会
日本株式市場は、2016年下期にMSCIワールド・インデックスをアウトパフォームしましたが、先
進国市場の中では依然として最も割安な水準にあります。投資家が一部の株式市場は若干割高
な水準にあるのではないかという疑問を抱き始めていることを考えると、この点は重要なポイント
です。
PER
2015年
PER 2015年
(赤字を除く)
PER
2016年
2016年
成長率
PBR
ROE
日本
16.9倍
14.4倍
13.6倍
6%
1.2倍
8.3%
欧州
27.3倍
18.0倍
16.1倍
12%
1.75倍
9.7%
米国
20.4倍
19.6倍
18.5倍
6%
2.85倍
14.5%
出所:マニュライフ・アセット・マネジメント、
2016年10月時点
7
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
セクター別では、引き続き日本の金融セクターをポジティブに見ています。政策当局は、経済成長
には金融セクターの健全性が不可欠との認識を強めたようです。日本銀行が、金融政策の重点を
10年物国債のイールドカーブ・コントロールへ移行したことに、
こうした考え方が反映されていると
弊社は考えています。
これは、
金融セクターにとってプラス材料です。
ボトムアップの観点からは、
ニッチ市場に確固とした地位を確立している企業は、特に海外市場での
シェア拡大が可能なポジションにある場合、
今後1年にわたり堅調な展開が続くと考えます。
リスク・シナリオ
安倍首相が国会での影響
力を高めるため、近々、解
散総選挙に踏み切るので
はないかとの憶測も
安倍首相が国会での影響力を高めるため、近々、解散総選挙に踏み切るのではないかとの見方
があります。観測筋は、これによって安倍首相が憲法改正への取り組みを再開する態勢が整うと
見ています 1。
トランプ氏が次期米国大統領に選出されたことから、安倍首相の計画は喫緊の課題になったと
見る向きもあります。トランプ氏は選挙期間中、アジア地域の安全保障への米国の軍事的関与
の縮小を検討することを示唆しました 2。その後の 11 月の両者の会合では建設的な話し合いが
もたれた模様ですが、詳細はほとんど明らかになっていません 3。
日本政府が憲法改正の取り組みを強化することを選択した場合、経済改革の遂行が二の次とな
る可能性があります。この点は、投資家にとってリスク要因になると思われます。
注目ポイント
弊社が注目する主要指標:
日本円の為替レート、
10年
物国債利回り、
賃金上昇率
弊社は、足元の景気改善が持続的なものであることを実証する主要指標を引き続き注視します。
弊社が注目する主な指標は、
日本円の為替レート、10年物国債利回り、賃金上昇率です。
また、日本の人口減少は、生産性や高齢者への
(政府の)
年金支払余力に影響を及ぼすことから、
日本経済にとって深刻な問題です。弊社は引き続き日本の移民政策に転換の動きがないかどうか
に注目します。
ジャパン・タイムズ:Diet Panel Resumes Talks on Amending Constitution、2016年11月17日
ジャパン・タイムズ:Trump urges Japan to pay more to maintain US military bases here、
2016年5月5日
3
CNN Politics: Trump and Japan’
s Abe Meet for‘Very Candid Discussion’in New York、
2016年11月18日
1
2
8
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
グローバル債券見通し
ダニエル・ジャニス グローバル債券運用部門ヘッド
トーマス・ゴギンズ グローバル債券運用部門シニア・ポートフォリオ・マネージャー
市場概況
トランプ氏が第45代米国
大統領に選出されたことに
より財政支出が拡大すると
の見方から、米国の景気拡
大と企業の景況感改善、イ
ンフレ率の上昇につながる
との期待が高まる
2017 年には欧州での選挙、英国の国民投票への対応(EU 離脱)
、引き続き予想される米国の
利上げなど、多数のイベントが控えていますが、これらはすべてボラティリティの上昇を示唆する
ものです。
米連邦準備制度理事会(FRB)は向こう 1 年に亘って金融政策の正常化プロセスを継続すると弊
社では見ています。トランプ氏が第 45 代米国大統領に選出されたことにより財政支出が拡大す
るとの見方から、米国の景気拡大と企業の景況感改善、インフレ率の上昇につながるとの期待が
高まっています。
しかし現段階では、市場の期待が先行している恐れがあると言わざるを得ません。というのも、
新政権が実施する経済政策など依然として不透明な要素が多いからです。
投資機会
より高い金利を選好する動
きが高まっている現在の環
境では、金利リスクを利回
りとのバランスをとりつつ、
適切に管理することが重要
弊社グローバル債券運用チームでは、債券投資に対してディフェンシブなスタンスを維持すること
が賢明であると考えています。より高い金利を選好する動きが高まっている現在の環境では、金
利リスクを利回りとのバランスをとりつつ、適切に管理することが重要であると考えます。加えて、
短期的にはボラティリティの上昇が予想されることから、長期的観点に基づくアロケーションの大
幅な変更ではなく、短期的に選別投資を行う機会が増えると考えているため、銘柄選択が極めて
重要なポイントになると考えます。
金利上昇局面の備えとなる変動金利商品であるバンク・ローンには、投資機会があると考えます。
またインドやインドネシアなど、健全な経済ファンダメンタルズに支えられた一部の新興国に強気
の見方を持っています。東南アジアではフィリピンについてポジティブに見ています。政治的背景
については様々な論議がありますが、同国の経済指標は良好で、海外からの資金回帰も堅調であ
る点に注目することが重要です。
9
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
リスク・シナリオ
3 月に開始が予定されてい
る英国の EU 離脱交渉も、
多くの投資家に懸念を抱
かせる重大なニュースとな
る可能性が高い
今後 1 年は政治環境が市場を動かす大きな要因の一つになるものと思われます。前述したよう
に、トランプ氏の政策方針はまだ不透明で、政策案の実施にはしばらく時間がかかる可能性が
あります。欧州では、政治状況と従来の国際貿易を大きく変化させかねない重要な選挙がオラ
ンダ(3 月)
、フランス(4 月)
、ドイツ(10 月)の少なくとも 3 ヶ国で予定されています。さ
らに、3 月に開始が予定されている英国の EU 離脱交渉も、多くの投資家に懸念を抱かせる重
大なニュースとなることは間違いありません。
前に触れたように、2017 年は世界的にインフレ率上昇が見込まれるとともに、各国中央銀行
が金融緩和政策を転換する可能性があることから、金利リスクが再び台頭しています。現時点
では、FRB が来年も利上げを継続すると想定することが妥当と考えます。金利リスクと流動性
リスクが債券市場の主要なリスク要因であると考えています。
注目ポイント
引き続き、
世界の中央銀行
の政策を注視
トランプ米次期大統領が打ち出す新政策の恩恵を受ける可能性のあるセクターに注目しており、
エネルギー・セクターはその一つと考えています。
弊社は引き続き、世界の中央銀行の政策を注視します。FRB は引き続き金融引き締めスタンス
が見込まれることから、各国の金融政策の方向性の違いに注目する必要があります。ただし、こ
うした政策の方向性の違いが以前ほど大きく市場を動かす要因になることはないと考えていま
す。それに関連して、欧州中央銀行(ECB)の次の動き、すなわち 3 月に量的金融緩和策延長
を決定するのか、テーパリング(量的緩和策の縮小)を開始するのかを注視します。
10
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
カナダ債券見通し
テリー・カー
カナダ債券運用部門ヘッド
市場概況
2016 年末にかけてカナダ
債券市場はドナルド・トラ
ンプ氏の選挙結果に大き
く左右され、こうした状況
は今後も続く見通し
2016 年末にかけてカナダ債券市場はドナルド・トランプ氏の選挙結果に大きく左右されました。
こうした状況は今後も続く見通しです。
金利、信用スプレッドやインフレ率に至るまで、債券市場のパフォーマンスとアクティブ運用上
の投資機会を決定づける要因の多くは、次期政権と次期政権が推進する政策等の影響を受ける
ものと思われます。
トランプ氏は実業界の経歴が長く、リスクテイクの実績で定評があります。その実績がホワイト・
ハウスで実を結ぶかどうかは誰にもわかりませんが、債券市場が予測不可能な経済的圧力やイ
ンフレ圧力を好まないことは周知のことです。
このことは、投資家が選挙結果を受け債券売却に動いたことで示されています。選挙までの数
週間、カナダ 10 年物国債利回りは 1% を下回り、過去最低水準となりました。選挙後 1 週間
で利回りは 1.2% 程度まで上昇し、11 月半ばには 1.6% 近くに達しました 1。
投資機会
弊社は社債に注視しています。
弊社は社債に注視 – 社債
は通常、経済成長の環境
下で良好な投資機会を提
供する資産クラス
社債は通常、経済成長の環境下で良好な投資機会を提供する資産クラスです。トランプ氏が目
指す米国の今後の経済成長率は 5% 〜 6% 程度ですが、我々はそれを下回るとする弊社チーフ・
エコノミストのミーガン・グリーンと同意見です。ただし、僅かな成長率でも社債スプレッドを縮
小させ、慎重な投資家に魅力的なリターンを提供するのに十分であると思われます。
エネルギー銘柄の多くは原油、具体的にはパイプラインが政策上再び重視されることによって恩
恵を受ける可能性があるものの、次期トランプ政権が一部の観測筋の言うような保護主義的政策
を追求した場合、その恩恵は消失する可能性があります。弊社はトランプ氏がキーストーン・パ
イプライン建設の再検討を選挙公約の 1 つに挙げていることに注目しています。これは環境上の
理由でオバマ政権に却下されたアルバータ州とテキサス州との間の原油輸送能力を増強する大
型案件です。
これはエネルギー依存度の高いアルバータ州とサスカチュワン州に恩恵をもたらすものと思われ
ます。
1
マニュライフ・アセット・マネジメント、ブルームバーグ、2016年11月22日時点
11
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
リスク・シナリオ
カナダの対米貿易依存度
は、米国の対カナダ貿易へ
の依存度を大幅に上回って
いる
結局のところ、様々なリスクがあります。カナダの対米貿易依存度は、米国の対カナダ貿易への
依存度を大幅に上回っています。北米自由貿易協定を犠牲にして雇用を米国のラスト・ベルト(さ
びついた工業地帯と呼ばれる米中西部・北東部地域)に取り戻すことが公約に挙がっています。
仮にこれが現実となれば、貿易依存度の高いオンタリオ州、ブリティッシュコロンビア州、ケベッ
ク州のリスクが高まり、カナダ経済は大きな影響を受けるものと思われます。
マクロ・レベルでは、カナダ銀行(BOC)は次のステップを慎重に検討することが予想されます。
米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ局面に入り、2017 年半ばまでに 2 度の利上げ実施が
合理的に予想される場合、BOC はどう動くべきでしょうか。危機に瀕した経済状態では、FRB に
追随することは難しく、利下げを検討すると思われます。
金融セクターでは、米国で銀行規制を緩和する動きがあれば、カナダでも同様の政策が検討され
る可能性があります。結局のところカナダの銀行は競争力を維持する必要があり、こうした状況
で銀行は劣後債を通じてよりリスクの高い債券を発行することがあります。銀行の全体的な資金
調達構成においてより優先順位の低いジュニア債が、比較的安全性の高いシニア債にプラスの影
響を与えることはないと思われます。特に、銀行が新たな資金を使ってリスクの高い事業機会を
追求する場合が該当します。
エネルギー・セクターでは、米国の選挙結果は探鉱およびパイプライン企業に概ね好ましい結果
をもたらすことが予想される一方で、他のセクターではマイナスの影響を受ける企業もあります。
例えば、パイプライン輸送能力の増強は、現在、原油を輸送している鉄道会社にとってマイナス
材料となります。しかし、これらについて確かではありません。
注目ポイント
資産クラスとしての債券に
は予測可能な成長とインフ
レ見通しが必要だが、当分
それが得られる見込みは極
めて低い
検討すべきことは数多くあります。理論上、強気の見方を裏づける根拠は十分にあります。銀行
の規制緩和により銀行収益は増大し、法人や個人向けの信用は拡大し、その資金が生産性の高
い事業に活かされる可能性があります。しかし資産クラスとしての債券には予測可能な成長とイ
ンフレ見通しが必要ですが、当分それが得られる見込みは低いと考えられます。
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グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
日本債券見通し
津本啓介
マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社 取締役 債券運用部長
BoJ
金融政策決定会合後、
10
年国債利回りは概ね-0.1%
から+0.1%の範囲で推移。
米国大統領 選以降、米国
10年物国債利回りが1%台
後半から2%台半ばに上昇
する等グローバルに金利
が大きく上昇する中でも、
日本国債の利回り上昇幅
は限定的
市場概況
2016年9月21日、日本銀行
(日銀)
は、
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」
を導入することを
決定しました。この新しい枠組みは、
「量的・質的金融緩和」
および
「マイナス金利付き量的・質的金
融緩和」
のもとでの経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証を踏まえ、従前の政策を
強化する形で導入されたものです。長短金利の操作
(イールドカーブ・コントロール、以下YCC)
で
は短期金利のみならず長期金利
(10年物国債金利)
にも操作目標を設定し、当面は、10年物国債
金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行います。
金融政策決定会合後、10年物国債利回りは概ね-0.1%から+0.1%の範囲で推移しています。米
国大統領選以降、米国10年物国債利回りが1%台後半から2%台半ばに上昇する等グローバルに
金利が大きく上昇する中でも、
日本国債の利回り上昇幅は限定的となっています1。
投資機会
イールドカーブ・コントロー
ル(YCC)導入によって日
銀がイールドカーブ上の二
点をコントロールすること
から、ロールダウン効果が
より安定的な収益源とな
ることが期待できる
1
YCCの下では、
クレジット投資によって安定的にキャリー収益およびロールダウン収益を上げる
ことが期待できます。YCC以前は、
クレジット・スプレッド
(社債利回りと国債利回りの差、同年限
の債券で比較)
の動向がベース金利となる国債利回りのマイナス度合に左右され、信用リスクや
流動性リスクを適切に反映しているとは言い難い状況でした。もし国債利回りのマイナス幅が大
きくなれば、社債利回りの低下幅は国債利回りの低下幅に追いつかず、社債のリターンが国債の
リターンよりも低くなる可能性がありました。
しかしYCCでは日銀が長短金利を操作するため、
特に10年までの年限で国債利回りが大きなマイナスとなる可能性は低下し、社債に投資するこ
とで安定的にキャリー収益とロールダウン収益を享受できる可能性が高まったと考えられます。
また、マイナス金利政策下では国債投資のリターンの源泉の一つであるロールダウン効果の不
確実性が高まりました。イールドカーブの起点が可変な状態でマイナス政策金利の深堀の可能
性などを債券市場が織り込むため、国債に投資した場合のロールダウン効果が不確実な状況
でした。
しかし、YCC導入によって日銀がイールドカーブ上の二点をコントロールすることから、
ロールダウン効果がより安定的な収益源となることが期待できます。
市場データ出所はすべてブルームバーグ、2016 年 12 月 21 日時点(別途記載がある場合を除く)
13
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
リスク・シナリオ
YCCの導入により、ロール
ダウン効果やクレジット・
スプレッド水準の不確実
性はある程度低下
前回の
「日本債券見通し」
(グローバル・インテリジェンス2016年6月号)
では、ロールダウン収益
の低下および不安定化とクレジット・スプレッド水準の不確実性をリスク要因として指摘しました。
しかし、上述の通り、YCCの導入によってロールダウン効果やクレジット・スプレッド水準の不確実
性はある程度低下したと言えます。
一方で、市場の流動性の低下については引き続き留意が必要と考えます。中央銀行と外国人投
資家が市場での存在感を大きく高める一方で、国内銀行や生命保険会社の国債への投資姿勢は
積極的ではありません。市場参加者が限られる中でリスク・イベント等が発生した場合は一時的
に価格変動が大きくなる可能性があります。
注目ポイント
弊社では、日銀が国債利回
りを相当程度コントロール
で きると考えており、グ
ローバル金利と国内金利
の相関は比較的低い水準
に留まる見通し
主要国の金融政策の方向性に大きな違いがあります。FRB
(米連邦準備制度理事会)
は2017年
に複数回の利上げをすると見込まれる一方、日本は金融緩和政策を継続すると思われます。弊社
では、日銀が国債利回りを相当程度コントロールできると考えており、グローバル金利と国内金
利の相関は比較的低い水準に留まると見ています。
マイナス金利政策導入以降、投資家はマイナス金利の債券からプラス金利が残る超長期国債や
社債、
または株、REIT、
さらに外債等への資金シフトを進めています。投資家の日本国債離れがど
の程度の規模とスピードで起こるのかは、国債市場の将来を占う上で重要なポイントです。
14
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
アジア債券見通し
アンドレ・ペダーセン
アジア債券運用部門
(除く日本債券)
チーフ・インベストメント・オフィサー
市場概況
相対的に安定したファンダ
メンタルズや高い利回りか
ら、選択的にではあるが、
アジア域外の投資家から
安定的にアジア国債への
資金流入が続いている
2016年初からの3四半期は、ハト派の主要中央銀行のサポートや先進国での超低金利あるいは
マイナス金利に支えられ、新興国への投資資金流入が回復しました。相対的に安定したファンダメ
ンタルズや高い利回りから、選択的にではありますが、
アジア域外の投資家から安定的にアジア国
債への資金流入が続いています。第3四半期
(7月〜9月)
末にかけて、
こうした域外投資家はイン
ドネシアやマレーシアの国債保有残高を増加させました。
図1:アジア主要国における、国債(現地通貨建て)の外国人投資家保有比率
(全体に占める%)
45
39.2
40
35.7
35
30
25
20
14.8
15
10.0
9.7
10
5
0
2010年6月
2011年9月
2012年12月
2014年3月
インドネシア
日本
マレーシア
タイ
2015年6月
2016年9月
韓国
出所: アジア開発銀行、Asian Bonds Online、
2016年11月時点
11月の米大統領選の結果を受けて、市場は大きく振らされる結果となりました。即ち、選挙後にリ
スク回避に傾いた直後に、市場はすぐさまトランプ次期大統領の経済政策への期待感から米国の
リスク資産に対する楽観論に転じました。
その結果、グローバルの利回りが1%未満の国債の割合は、70%から60%程度にまで低下しまし
た1。米国の金利上昇やアジア諸国での株価下落を主因にアジア各国の通貨は下落しました。特
に下落が大きかったのはマレーシア・リンギットや韓国ウォンでした1。第4四半期
(10月〜12月)
に入っても市場は落ち着いてはいないこと、あるいは今後打つべき施策に柔軟性を持たせるため
に、多くのアジア諸国の中央銀行は当面は
「静観」
する態度をとっています。
1
マニュライフ・アセット・マネジメント、ブルームバーグ、2016年11月25日時点
15
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
グローバル国債の利回り(期間:2016年7月14日∼11月16日)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
2016年 月
2016年9月
0-1%
2016年7月
2016年5月
1-2%
2016年3月
11
2016年1月
2015年 月
2-3%
2015年9月
3-4%
2015年7月
2015年5月
11
2015年3月
2015年1月
4%未満
2014年 月
2014年9月
0%
2014年7月
% of BofA Merrill Lynch Global Govt. index
図2:グローバル国債のうち85%は、依然として2%以下の利回り
11
マイナス利回り
出所:マニュライフ・アセット・マネジメント、
ブルームバーグ、2016年11月25日現在
英国によるEU離脱
(Brexit)
や米大統領選に加え、
アジア諸国では政治リスクが高まっています。例
えば、
フィリピンでは政権交代があり、
また人心を纏めてきたタイ国王が亡くなり、韓国では朴大統
領への多くの抗議集会が弾劾訴追に発展するなど、今後各国の政策が動く可能性を示すシグナル
が発せられています。また、政治リスクに加え、
アジア債券市場では、中国経済の安定により投資家
センチメントが改善してきたにも拘らず、
資金流出リスクが大きなテーマとなりつつあります。
投資機会
多くのアジア諸国は外貨
準備に余裕があり、外的シ
ョックへの抵抗力が更に
高まっている
2017年のアジア債券市場は、一時的な下落や資金流出はあっても、全体としてはこれまで同様に
魅力的な資産クラスであることに変わりはないと考えます。
米大統領選後、市場は2017年にならないと中身がはっきりしない経済政策や財政政策に対し強
気な見方を示しました。こうした政策が明らかとなり、市場に織り込まれる段階で、通貨市場及び債
券市場で見られた極端な動きは見直される可能性があります。アジアの現地通貨や債券は米大統
領選後に売り一辺倒となりましたが、逆の見方をすると2017年には現地通貨建て債券に絶好の
買い場が来ると見ています。それにはまずグローバルに金利や通貨市場が安定することが前提と
なりますが、そうすればアジア各国の堅調なファンダメンタルズがアジア債券市場を後押しするこ
とになるでしょう。
図3:先進国債券と比較して魅力的な利回りのアジア債券
インドネシア
8.14%
ベトナム
6.25%
インド
6.25%
フィリピン
4.52%
マレーシア
4.35%
中国
(オフショア)
3.52%
ニュージーランド
3.13%
中国
(本土)
2.95%
オーストラリア
2.72%
タイ
2.69%
米国
2.38%
シンガポール
2.30%
韓国
2.15%
香港
1.40%
台湾
ドイツ
日本
1.12%
0.28%
0.03%
出所:ブルームバーグ、BofAメリルリンチ、JPモルガンインデックス、2016年11月30日時点。
使用したインデックス:JPMorgan Asian investment grade corporate index (JACIICTR Index)、BofA Merrill
Lynch US investment grade corporate index (C0A0 Index)
16
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
確かに利回りは相対的には魅力的ではありますが、投資家のアジア債券投資を確たるものにする
には、米連邦準備制度理事会
(FRB)
による金融政策および米国金利の動向が明確になることが
条件となります。アジア債券市場の長期的なファンダメンタルズは良好です。即ち、
( 先進国と比
較して)
力強い経済成長、国や企業の健全なバランスシート、相対的に良好なマクロ経済環境な
どが挙げられます。中でも、
インド国債やインドネシア国債は過去の経済サイクルと比較しても高
い利回り水準にあり、利下げを行う余地があるので、債券市場にとってはプラス材料です。インド
ネシア債券は2016年末に大きく売られましたが、
こうした財政面の強固さが市場に明確に認識
されれば再び大きく買い戻される可能性があります。
クレジット・スプレッドは過去の平均と比較するとタイトな水準にありますが、旺盛な需要に支えら
れており、
レバレッジ水準もコントロール可能な範囲内にあります。今後、スプレッドの拡大が生じ
れば、絶好の買い場になると考えます。
米利上げのペースに係らず、米利上げに伴う流動性の低下は、現在のグローバルな金融緩和環
境がある程度相殺すると考えています。多くのアジア諸国は外貨準備に余裕があり、外的ショック
への抵抗力が更に高まっています
(図4参照)
。アジア債券市場は、世界中の投資家に対し、
ポート
フォリオの分散および世界で最も成長率の高い経済圏へのアクセスを提供する機会を提供し続
けています。
図4:アジアエマージング諸国における、マネーサプライ
(M2)対する外貨準備高比率
%
100
80
60
40
20
中国
韓国
香港
マレーシア
インドネシア
タイ
台湾
フィリピン
シンガポール
インド
0
出所:アジア開発銀行。Wind Info及び世界銀行”
Quarterly External Debt Statistics”
算出データに基づく。2016年
11月時点。多くのアジア諸国において、M2に対する外貨準備高比率は、IMFにより指摘されている通り、望ましいと思わ
れる水準である5-10%を上回っている。
17
グローバル・インテリジェンス 2017年 1月号
リスク・シナリオ
米国の次期政権による新
たな貿易政策は、海外貿易
に依拠する国々(台湾、韓
国、シンガポールなど)に
とって脅威となり得る一方
で、相対的に海外貿易比率
の少ない国々(インド、イン
ドネシア、フィリピンなど)
にとっては影響は軽微に留
まると予想される
FRBの政策スタンスがよりタカ派に傾注していくリスクが挙げられます。期待を上回るスピード
で経済が成長する、あるいはインフレ圧力の高まりから、FRBは現在の市場予想を上回るサイク
ルで利上げを敢行する可能性があります。こうした利上げサイクルの短期化は、アジア諸国から
先進国への資金流出の脅威となります。
債券市場にとって、前述の政治リスクが鍵となる状況が続きます。英国のEU離脱や米大統領選
の後、アジア債券市場に影響を与える政治リスクは大きく分けて3つあります。1つ目は、米国の
次期政権による新たな貿易政策は、海外貿易に依拠する国々
(台湾、韓国、
シンガポールなど)
に
とって脅威となり得ます。一方で、相対的に海外貿易比率の少ない国々
(インド、インドネシア、
フィリピンなど)
にとって影響は軽微に留まると予想されます。2つ目は欧州で選挙が続くこと
(フ
ランスやドイツなど)
で、その結果がEUの継続的安定性にどう影響するかです。3つ目は、欧州同
様にアジアでも2017年は選挙の年となる
(インドや韓国など)
ことで、政策転換の有無にも注意
が必要です。中国でも2017年11月に人民議会選挙があり、中国共産党執行部がどのような布
陣となるかが注目されます。党大会ではその後5年間の経済政策が決定されます。
アジア通貨に対する米ドル高の継続もリスクと言えます。中国は経済安定化に向けた財政および
金融刺激策を断行しましたが、人民元は米ドルや他の主要通貨に対して下落を続けています。同
時に、アジア各国経済にとっても資金流出を回避できるかが懸念材料であり、仮に資金移動に国
が規制をかけるようなことにでもなれば外国人投資家を遠ざける結果に繋がりかねません。
注目ポイント
2017年を見通す上で重要なポイントは以下2点です。
1月20日に就任するトラン
プ新大統領とその新政権
の施策を慎重に見極める
必 要が あり、就任 当初の
100日間はとりわけ重要
第1に、グローバルでの政策および金利見通しです。米大統領選後に、市場は世界金融危機後に
主柱となっていた多くの政策、例えば経済成長刺激策や金融緩和政策について疑問を投げかけ
ました。米大統領選後の市場の動きは、その後の米国における総需要を喚起させる経済政策及
びタカ派のFRBを予期させました。1月20日に就任するトランプ新大統領とその新政権の施策を
慎重に見極める必要があり、就任当初の100日間はとりわけ重要です。同時にトランプ政権の政
策に世界各国がどう反応するかも重要なポイントです。
第2に、中国の政策転換の継続性です。中国の経済成長見通しについては、正しい市場コンセン
サスが形成されつつあり、通貨、資金フロー、金融政策をバランスをとりながら上手く実施してい
けるかどうかに注目が集まっています。この変革は2017年も続きます。人民元は米ドルや貿易
額加重での各国通貨バスケットに対して引き続き弱含む展開が予想されます。また、中国人民銀
行は最重要テーマである資金フロー管理に対し、厳格な金融政策を実施することが期待されま
す。自国債券への需要
(特に米ドル建て債券の購入意欲)
に影響を与えるこの資金フロー管理政
策は、2017年の最注目事項と言えます。
18
ディスクレーマー
・当資料は、マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」といいます)が、投資判断の参考となる情報提供を目的として
作成したものであり、特定の投資商品の推奨を目的としたものではありません。
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る場合があり、将来の経済・市場環境の変動等を保証するものではありません。
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るものではありません。
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