心 理 学 研 究2005年 第76巻 資料 第5号pp.461上467 日 本 版 生 き 方 の 原 則 調 査 票(VIA-IS:Values Inventory of Strengths)作 大 竹 恵 子2東 北学院大 学 宇 津 木 成 介 神戸 大学 島井哲志 ク リ ス トフ ァ ー マ 上 テ ィ ンE.P.セ in Action 成 の 試 み1 池 見 陽 神戸 女学院大 学 ピ-タ 上 ソ ン ミシガ ン大学 リ グ マ ン ペ ンシルバ ニア大学 Development of the Japanese version of the Values in Action Inventory of Strengths (VIA-IS) Keiko Otake (Tohoku Gakuin University),Satoshi Shimai, Akira Ikemi (Kobe College), Narisuke Utsuki (Kobe University),Christopher Peterson (Universityof Michigan), and Martin E. P. Seligman (Universityof Pennsylvania) Purposeof this study was to developthe Japaneseversionof the ValuesIn ActionInventoryof Strengths (VIA-IS). JapaneseVIA-IS was back-translated,and their items were checkedby the developersof the originalVIA-IS. Participantsin our standardizationstudy were778undergraduatestudentswho answered a batteryof self reportquestionnaires.The batteryconsistedof the Japaneseversionsof VIA-IS,Subjective Happiness Scale,General Health Questionnaire,and NEO Five Factor Inventory (NEO-FFI). It was found that VIA-IShas high internal consistencyand test-retestreliability. Happier people showedhigher overallscoreson VIA-ISand on almost all subscalesboth in men and women. Scoreson VIA-ISwere higher in the healthier group than in the unhealthy group, especiallyon the subscalesof depressionand impedimentof social activities. Subscalesof NEO-FFI wererelatedto subscalesof VIA-ISin a consistent way. High nomination groups showed significantlyhigher scoreson eight subscalesof VIA-ISthan low nomination groups. Key words: Japanese version of the values in action inventory of strengths (VIA-IS),strengths,positive psychology,validity, reliability. The Japanese Journal of Psychology 2005,Vol. 76, No. 5, pp. 461-467 21世 紀 の 心 理 学 と し て,ポ さ れ,喜 び や 幸 せ,幸 が 持 っ て い る 長 所,強 ジテ ィブ心 理 学 が注 目 福 感 等 の 肯 定 的 な 感 情 や,人 間 さ を 育 成 す る こ とが 心 理 学 の 一 つ の 指 針 と さ れ て い る(Seligman&Csikszentmihalyi, 2000)。 ポ ジ テ ィ ブ 心 理 学 は,従 つ つ,精 来 の心 理 学 に立脚 し 神 的 な 問 題 の 予 防 や 質 の 高 い 健 康 を 目指 し, 肯 定 的 な感 情 や 特性 へ の注 目 を強 調 して い る。 そ れ は,こ の よ うな 立 場 こ そ心 理 学 の 新 し い貢 献 を もた ら す か ら で あ り(Sheldon&King,2001),こ わ が 国 の 健 康 日 本21の (厚 生 省,2000)。 人 間 の 精 神 機 能 の 肯 定 的 側 面 の 研 究 は,従 り,ウ Otake, concerning Department Tenjinzaka, of Izumi-ku, this article should Psychology, Sendai Tohoku 981-3193, be sent to:Keiko Gakuin University, Withey,1978;Diener,2000;Strack, Japan(e-mail:otakek Cizcc.tohoku-gakuin.ac.jp) 1本 研 究 は2003年 度 神 戸 女 学 院 大 学 研 究 助 成 金 に よ っ て部 分 的 に 援 助 され た。 2筆 者 ら は Mayerson財 ,日 開 発 を 承 諾 し て い た だ い た Tucker,&Kasri, 研 究 は 歴 史 が あ る 。 ま た,肯 定 的 な感情 の機 能 や 認 知 へ の 影 響(Fredrickson,2001;Fredrickson& Joiner,2002)は 近 年 注 目 さ れ て い る 。 し か し,パ ソ ナ リ テ ィ 心 理 学 で は,科 本 版VIA-ISの Argyle,& せ や 幸 福 感(Argyle,2001; Lyubomirsky,2001;Lyubomirsky, 2001)の 来 もあ ェ ル ビ ー イ ン グ や 人 生 満 足 度(Andrews& Schwarts,1991),幸 Correspondence の考 え方 は 心 の 健 康 の 目 標 と一 致 す る ー 学 研 究 に 社 会 的 な価 値 を入 れ る こ と を 避 け る と い う 立 場 か ら,肯 定 的 な 特 性 に注 団 に 深 く感 謝 い た し ま す 。 本 研 究 の 実 施 に 関 し て ご 協 力 い た だ き ま し た 関 西 学 院 大 学 の 松 見 淳 子 先 生,早 の 山 崎 久 美 子 先 生,嶋 田 洋 徳 先 生,武 先 生 に感 謝 い た し ま す。 稲 田 大 学 庫 川 女 子 大 学 の 安 藤 明 人 目 し た 研 究 は 少 な く,特 性 不安 や神 経症傾 向等 の否定 的側 面 の研究 が主 流 で あった。 そ こ でSeligman(2002)は,ア メ リカ精 神 医 学 会 462 心理 学 研 究2005年 第76巻 第5号 に よ っ て ま とめ られ た 精 神 機 能 の 否 定 的 側 面 の 分 類 で を提 供 す る とい う介 入 を 目指 し て 開 発 さ れ,こ あ る 精 神 疾 患 の 診 断 ・統 計 マ ニ ュ ア ル(Diagnostic が ポ ジ テ ィ ブ 心 理 学 の 目標 と さ れ て い る。 こ の よ う and Statistical Manual DSMと of Mental Disorders:以 す る)に 対 応 す る もの と し て,精 下 神 機 能 の肯 れ こそ に,VIA-ISは 現 時 点 に お い て 検 討 す べ き課 題 を 残 し て い る が,異 な る 文 化 背 景 を持 つ わ が 国 に お い て 定 的 な 側 面 の 分 類 が 必 要 だ と提 案 し て い る 。 そ し て 人 VIA-ISを 間 の 特 性 と し て の 長 所(strength)に あ る と考 え られ る。 そ こ で 本 研 究 で は,VIA-ISの てValues In Action 関 す る尺 度 と し lnventory of Strengths(VIA-IS) 検 討 す る こ と は,国 際 研 究 と し て も意 義 が 日 本 版 の 作 成 を試 み る 。 と い う 質 問 紙 を 開 発 し た(Peterson&Seligman, 2004)。 開 発 に あ た っ て は,ア リス トテ レ ス,プ ン,旧 約 聖 書,孔 士 道,コ 子,老 子,武 ジ ャ ミ ン ・フ ラ ン ク リ ン等 の200以 を基 に長 所 を整 理 した が,そ て い る,知 恵 ・知 識,勇 ー ラ ン,ベ ン 上 の哲 学書 や教 典 れ ら に共 通 して 主 張 され 気,人 間 性,正 義,節 度,超 越 性 と い う六 つ の 普 遍 的 側 面 を 中 核 的 な長 所 領 域 と し て,初 め に 選 出 し た 。 次 に,以 下 の 基 準 に し た が っ て 数 多 くあ る個 々 の 長 所 を 選 別 し,こ れ を中核 的長所 領 域 に 割 り付 け た 。 こ の よ う に し て 選 別 さ れ た24の 所 は以 下 の10の 事 項,(a)よ も た ら す,(b)そ れ 自 体 が 精 神 的,道 つ,(c)発 長 い人 生 に つ な が る充 実 を 徳 的 に価 値 を持 揮 す る こ とが 他 の 人 を傷 つ け な い,(d)反 語 に 望 ま し い性 質 が な い,(e)実 され る,(f)他 る,(i)欠 の 特 性 と明 確 に 区 別 され る,(g)規 如 した 人 物 が い る,(j)そ の 制 度 や 伝 統 が あ る,を 範的 才 的 な人 物 が い れ を育 成 す るた め 満 た す も の で あ っ た 。VIA は わ が 国 の 言 葉 で 表 す と,ま き方 の 原 則 に相 当 し,VIA-ISは と い え る。VIA-ISは,各 対 際 の行動 と して表 現 な 人 物 や 物 語 に 具 現 化 さ れ る,(h)天 さ に 日野 原(2001)の 生 生 き方 の原 則 調 査 票 長 所 に10項 目,全 方 ラ ト 体 で240 翻訳 と予備 調 査 びMayerson財 法 VIA-ISの 翻 訳 許 可 を原著 者 お よ 団 か ら取 得 し,日 本 人 研 究 者 が240項 目 を 日本 語 に した 。 こ の 項 目 を英 語 を 見 て い な い 研 究 者 が 検 討 し,日 本 版 の 原 案 を 作 成 し た 。 この 原 案 を 英 語 を見 て い な い 別 の 研 究 者 が 英 文 に訳 し直 し,原 著 者 が 検 討 し た 。 上 記 の 翻 訳 過 程 を,原 著 者 が 日本 語 か ら 翻 訳 し直 さ れ た 英 文 項 目 と原 版 の 項 目 が 一 致 した 概 念 で あ る と判 断 す る まで 行 っ た 。 次 に予 備 調 査 と し て, こ のVIA-ISを 名)に 大 学 生315名(男 性137名,女 性178 実 施 し た 。 各 項 目 の 回 答 偏 向 と内 的 整 合 性 を検 討 し,11項 目 の 日本 語 表 現 を 一 部 修 正 し た 。 こ の11 項 目 は 上 記 の 翻 訳 過 程 に 従 っ て 再 検 討 し,原 著 者 の 確 認 を 得 た 。VIA-ISの い,あ 回 答 方 法 は,全 て は ま ら な い,ど くあ て は ま ら な ち らで もな い,あ とて も よ くあ て は ま る の5件 て は ま る, 法 で あ り,逆 転 項 目 は な く,得 点 の 高 さ が 各 長 所 の 強 さ を 示 し て い た 。 調査 時 期 と手 続 き 2002年12月 調 査 は 自 己 記 入 無 記 名 式 で, か ら2003年5月 に,8大 学 の一般 教養 の 心 理 学 の 授 業 内 に実 施 した 。 調 査 を行 う際 に は研 究 の 項 目 の 尺 度 で あ り,領 域 と長 所 の 二 重 の 構 成 と な っ て 趣 旨 や 調 査 参 加 に対 す る 選 択 の 自 由 お よ び倫 理 面 へ の い る(付 録 参 照)。 配 慮 に つ い て 説 明 し,同 意 が 得 られ た人 の み を本 研 究 VIA-ISの 編 成 は,実 証 的 な知 見 か らの検 証 の一 つ で あ る 因 子 的 妥 当 性 の 手 続 き を 経 て い な い が,そ は,全 れ 人 類 に共 通 す る遍 在 的 な長 所 を 網 羅 的 に 検 討 す の対 象 者 と し た 。 信 頼 性の検 討 内 的 一 貫 信 頼 性 の 検 討 に は,大 学 生 778名(男 性308名,女 る こ と 自 体 が 進 行 中 の 課 題 だ か ら で あ る。 ま た, 3.64歳)を 対 象 と した 。 再 テ ス ト信 頼 性 の検 討 に は, VIA-ISは 上 記 の 対 象 者 に 含 ま れ る2集 現 時 点 で は6領 域 に 分 類 さ れ,こ の概 念 は 先 述 の よ う に宗 教 や 哲 学 的 な 背 景 か ら導 き出 さ れ た も 名,女 の で あ る が,長 週 間 隔 で 実 施 した 。 所 の類 似 性 や 質 問 紙 全 体 を考 え る と 24と い う 数 は 多 い か も し れ な い 。 しか し,各 長所の 性45名)を 妥 当性の検 討 性470名,平 均 年 齢20.47± 団 の 計77名(男 性32 対 象 と し た 。 な お 再 テ ス ト法 は,5 対 象 者 は,上 記 の 信 頼 性 と同 一群 の 相 互 関係 や構成 等 は文化 比較 等 の今後 の研 究 に基 づい 大 学 生778名 て 検 討 す べ き課 題 と さ れ て い る。 人 生 全 般 に 関 す る主 観 的 な 幸 福 感 が 測 定 で き る 計4項 VIA-ISの 中 に は,当 然,従 来 の研 究 に お い て個 別 で あ っ た 。 日本 版 主 観 的 幸 福 感 尺 度 は, 目 の 質 問 紙 で あ っ た(島 井 ・大 竹 ・宇 津 木 ・池 見 ・ に検 討 さ れ た り,質 問 紙 と して 開 発 さ れ て き た 長 所 も Lyubomirsky,2004)。 あ る 。 例 え ば パ ー ソ ナ リ テ ィ特 性5因 得 点 の 高 さ が 幸 福 感 の 高 さ を 示 して い た 。 日本 版 精 神 子 の 概 念 を考 え る と,部 分 的 と は い え5因 子 の 中 の 開 放 性 や 調 和 性 な 健 康 調 査 票(General どVIA-ISに GHQ28と VIA-ISが も類 似 し た 概 念 が 存 在 す る。 そ れ は 哲 学 や 宗 教 的 な 観 点 か ら整 理 さ れ た 人 間 の 的 症 状,不 回 答 方 法 は7件 Health す る)は,最 眠 と不 安,社 法 で あ り,合 計 Questionnaire 28=以 下 近 の 健 康 状 態 に つ い て,身 会 的 活 動 障 害,う 美 徳 や 長 所 に 焦 点 を あ て て い る か ら で あ る。VIA-IS 下 位 尺 度 か ら測 定 す る計28項 は,全 人 類 に 共 通 す る 遍 在 的 な 長 所 を網 羅 的 に測 定 す 答 方 法 は4件 る こ と に よ っ て 多 面 的 に個 人 の 強 さ を把 握 し,各 人 の 版NEO人 格 イ ン ベ ン ト リ ー(NEO 特 徴 に応 じ た 肯 定 的 で 良 い 部 分 を生 か す た め の 選 択 肢 Inventory: 以 下NEO-FFIと 法 で あ っ た(中 体 つ 傾 向 の4 目 の 質 問 紙 で あ り,回 川 ・大 坊,1985)。 Five 日本 Factor す る)は 性 格 特 性 を,神 大 竹 ・島 井 ・池 見 他:日 Table vlA-lsとGHQ28と 本 版VIA-ISの 463 作成 1 の相 関 お よび ノ ミネ ー ト法 に よっ て評 定 され たvlA-Isの 各 長 所 の高 評 価群 と低 評 価群 に お け る平 均 得 点 と標 準 偏 差 ***p< .001,**p<.01,*p<.05, 経 症 傾 向,外 向 性,開 か ら測 定 す る計60項 5件 法 で あ っ た(下 ノ ミ ネ ー ト法 名,女 性54名),平 放 性,調 和 性,誠 実 性 の5次 元 目 の 質 問 紙 で あ り,回 答 方 法 は 仲 ・中 里 ・権 藤 ・高 山,1999)。 対 象 者 は,大 学 生69名(男 均 年 齢 は22.21±3。56歳 ノ ミネ ー ト調 査 で は,他 い て 検 討 す る た め,各 性15 で あ った。 者評 定 と自己評定 の一 致 につ 長 所 の 概 念 定 義 を 示 す24の 短 て 熟 知 し て い る 人 を1名 評 定 者 と し,評 定 者 は評 定 用 の 各24の 文 章 を読 み,"最 "最 も あ て は ま ら な い 人"を も よ くあ て は ま る 人"と 選んだ 。 本 調 査 で は構 成 員 の 実 際 の 名 前 の 記 入 を 避 け,各 自が ニ ッ ク ネ ー ム を つ け,実 際 の 名 前 との 対 照 表 を用 い る こ とで 匿 名 性 を 保 証 した 。 ノ ミネ ー トの対 象 者 とな っ た 構 成 員 の 回 答 は,評 定 者 が 見 な い よ う に個 別 に封 を し て 回 収 した 。 い 文 章 を評 定 の た め に作 成 した 。 こ の 文 章 は,原 版 の ノ ミ ネ ー ト調 査 で 用 い ら れ た 英 文 を翻 訳 し,日 VIA-IS作 成 と 同 様 の 手 続 き を と っ た 。1集 団 が8名 か ら16名 の 計 七 つ の 大 学 生 集 団(女 混 合 集 団3)を 対 象 と し た 。 対 象 集 団 は,構 定 し,そ の 人 数 が8名 ク ラ ブ)で 性 集 団4,男 以 上20名 あ っ た 。 そ して,そ 以 上 の 付 き合 い が あ り,彼 女 成 員が 固 以 下 の 集 団(ゼ 結 本版 ミと の 集 団 の 構 成 員 と1年 らの 性 格 特 性 や 行 動 に つ い VIA-IS得 点の性差 果 VIA-ISの24の 長 所 の 得点 に つ い て 性 差 を検 討 した 。 男 女 と も に平 均 値 は 感 謝 が 最 も高 く,精 神 性 が 最 も低 か っ た 。 性 差 が 見 られ た 長 所 は 計11あ 創 性,見 謝,親 り,男 性 で は 自 己 コ ン トロ ー ル,判 通 し,勇 切,愛 敢,思 慮 深 さ ・慎 重,女 す る力 ・愛 され る力,平 断,独 性 で は感 等 ・公 平,審 美 464 心理 学 研 究2005年 Table VIA-ISの 第76巻 第5号 2 各 長 所 とNEO-FFIの5因 子 と の 相 関(n=778) ***p< .001,**p<.01,*p<.05, た 人 を低 評 価 群 と し,VIA-ISの 心 が 高 い 得 点 を示 し て い た 。 主観 的 幸福 感 との関 係 幸 福 感 とVIA-ISの 点 に つ い て 相 関 分 析 を行 っ た 結 果,思 除 く,計22の 長所 得 慮 深 さ と謙 虚 を 長 所 に つい て有 意 な正 の 相 関 が み とめ ら れ た 。 特 に 相 関 が 高 か っ た 長 所 は,熱 意(.481), 希 望 ・楽 観 性(.468),感 奇 心 ・興 味 (.407)で 謝(.454),好 GHQ28と あ った。 VIA-ISの 位 尺 度 得 点 と 長 所 と の 相 関 分 析 を 行 っ た 結 果,社 動 障 害 と う つ 傾 向 に つ い て 多 くのVIA上ISの 関 係 が 有 意 で あ っ た(Table (-.133),寛 1)。 GHQの 熱 意(-.155),身 大(-.125),好 会的活 長 所 との 不 安 と不 眠 体 的症状 は熱意 奇 心 ・興 味(-.121)と の 文 章 を読 ん で,"最 れ た 人 を 高 評 価 群,"最 も よ くあ て は ま る人"と NEO-FFIと の 関 係NEO-FFIの 計 得 点 とVIA-ISの24の 五つ の次元の合 長 所 との 相 関 分 析 を行 った 2)。 神 経 症 傾 向 と の 関 係 で は,す 関 関 係 に あ り,多 く のVIA-ISの べ て負 の 相 長 所 得 点が 高 い こ と と神 経 症 傾 向 の 低 さが 関 連 し て い た 。 一 方,外 は,超 越 性,人 間 性,正 の 長 所 と関 係 が 強 く,開 放 性 との 関 係 で は,知 識,超 向性 で 義 の 領 域 に 含 ま れ るVIA-IS 恵 と知 越 性 の領 域 と の 関 係 が 特 に 顕 著 で あ っ た 。 調 和 誠 実 性 で は,勇 気 や 節 度,知 長所 ごと 選 出さ も あ て は ま ら な い 人"と 計的 に は八 つ が 有 意 で あ っ た 。 性 で は,人 間 性 や 正 義 に 含 まれ る領 域 と関 連 が 強 く, 有 意 な 弱 い 相 関 が み とめ られ た 。 ノ ミ ネ ー ト法 に よ る検 討VIA-ISの24の 各 長 所 得点 に差 が 見 1)。 高 評 価 群 の 方 が 低 評 価 群 よ り高 い 得 点 を示 した 長 所 は 多 か っ た が,統 (Table の 関 係GHQ28の4下 は寛 大(-.184)と られ るか を 検 討 し た(Table され 恵 と知 識 の 領 域 に 含 まれ る長 所 と強 い 関 係 が 示 され た 。 信 頼 性の検 討 Cronbachの α係 数 と再 テ ス ト法 の 信 頼 性 を検 討 し た 。 テ ス ト再 テ ス ト間 の 相 関 は,自 己 大 竹 ・島 井 ・池 見 他:日 Table VIA上ISの 各6領 本 版VIA-ISの 465 作成 3 域 間 の 相 関(n=778) す べ てP<.001. コ ン トロ ー ル,親 ら.682と 切,チ ー ム ワ ー ク の 数 値 が.658か 若 干 低 か っ た が,そ れ 以 外 は.721か 独 創 性 と,調 和 性 は親 切,感 ら.869 謝 と,誠 実 性 は見 通 し, 自 己 コ ン トロ ー ル と関 連 が 強 い こ とが 予 測 さ れ て い る と全 体 的 に 安 定 性 が あ る と考 え ら れ た 。 一 方,α 係 数 (Peterson & Seligman,2004)。 は,謙 虚 と 自 己 コ ン トロ ー ル が や や 低 い 値 で あ っ た 彼 ら の 予 測 を支 持 す る結 果 が 示 さ れ た 。 し か し,こ れ が,他 の α係 数 は.740か ら.880で,内 ぼ 満 た さ れ て い た(Table VIA-ISの 各領域 間の関係 相 関 分 析 を行 っ た(Table また,正 義 と節 度,勇 本 研 究 で は,日 VIA-ISの6領 域 間で 気, 気 との 相 関 が 特 に高 か っ た 。 パ ー ソ ナ リ テ ィ特 性 の 各 概 念 間 の 位 置 ず,む し ろVIA-ISの 概 念 を,パ ー ソナ リテ ィ特性 の 概 念 を 含 め て 今 後 検 討 し て い く こ とが 課 題 と され て い る 。 そ れ は,Peterson&Seligman(2004)が,ポ ジテ ィ ブ 心 理 学 を 進 め る に あ た っ て,DSMの 察 ム に 対 応 す る も の と し て,VIAの VIA-ISを 本 版 生 き 方 の 原 則 調 査 票(VIA- 作 成 を 試 み,十 らのVIA-ISと 研 究 で は, づ けや 関 係 性 に つ い て は現 時 点 で は 明 確 に な っ て お ら 3)。 人 間 性 と正 義,勇 考 IS)の 的整 合 性 はほ 2)。 そ して,本 分 な 翻 訳 過 程 を経 て,原 版 と同 分類 シ ス テ 分 類 を 考 案 し, 作 成 す る こ と を め ざ し て い る か らで あ る。 こ の よ う な 意 味 で,VIA-ISと 等 の 内 容 を 持 つ 日本 語 の 質 問 紙 を 開 発 し た 。VIA-IS の 信 頼 性 に つ い て は,内 と も に 今 後 明 ら か に され る こ とが 期 待 さ れ る 。 的 一 貫 性 お よび5週 再 現 性 を 確 認 し た が,VIA-ISで 間隔 での 測 定 して い る長 所 の 版 のVIA-ISの 性 格 特 性 との 関 係 に つ い て は,原 ノ ミネ ー ト法 に よ る検 討 で は,好 安 定 性 が どの くら い の 時 間 に お い て 示 さ れ る の か とい 性,社 う こ と に つ い て,今 ア ・遊 戯 心,熱 後,再 テ ス トの 間 隔 を あ け て 実 施 会 的 知 能,見 通 し,勤 勉,平 奇 心 ・興 味 や 独 創 等 ・公 平,ユ 妥 当 性 に つ い て,本 研 究 で は,主 ーモ 意 の 長 所 に つ い て 予 測 通 り の群 間 差 が み と め られ た 。 これ ら八 つ の 長 所 は,他 す る必 要 が あ る。 日 本 版VIA-ISの さ ら な る検 討 お よ び 確 立 と 断 しや す い と考 え ら れ,他 者 か ら見 て 判 者 評 定 と 自己 評 定 と の 一 致 ノ ミネ ー ト法 に よ る 調 査 を と り あ げ て 検 討 し た 。 は 理 解 で き る。 しか し,こ の よ う な 意 味 で は,リ ー ダ ー シ ップ の よ う な 行 動 的 な 特 徴 を示 す 長 所 に つ い て 他 VIA-ISの 者 評 定 と 自 己 評 定 が 一 致 す る こ とが 予 測 で き るが,本 観 的 幸 福 感,健 康 状 態,5因 子 パ ー ソナ リ テ ィ 特 性, 多 くの 長 所 を持 つ 人 ほ ど主 観 的 に 幸 福 状 態 に あ り,特 に社 会 的 活 動 障 害 や うつ 傾 向 が 低 い,つ ま 研 究 で は 示 され な か っ た 。 本 研 究 で は ノ ミネ ー ト評 定 り健 康 な状 態 に あ る こ と は,一 般 的 予 測 に 一 致 す る も 者 を1集 団 に1名 の で あ り,妥 当 な結 果 と判 断 で き る。 幸 福 感 の 高 い人 や し,構 成 員 同 士 が 評 定 し あ っ た り,家 族 や 親 友 な ど は,ウ ェル ビー イ ングや 人 生 満足 感 が 高 い こ とか ら (Buss,2000;Myers,2000), 所 が,健 VIA-ISで 測定 してい る長 康 や 肯 定 的 な状 態 を 規 定 す る 一 つ の 要 因 と し と した が,今 後 は集 団の構成 員 を増 の親 密 な 集 団 で 実 施 す る な ど,多 側 面 か ら の検 討 が 必 要 で あ る と考 え られ る。 本 研 究 で は 日本 版VIA-ISの 作 成 を 試 み,他 の標 準 て 影 響 力 を持 つ 可 能 性 が あ り,そ の 因 果 関 係 に つ い て 化 さ れ た 質 問 紙 との 関 連 か ら妥 当 性 に つ い て 検 討 し 今 後 検 討 す る必 要 が あ る。 パ ー ソ ナ リテ ィ特 性 との 関 係 で は,パ た 。 し か し 原 版 と同 様 に,因 子 的 妥 当 性 は示 され て お の5次 元 ご と に,VIA-ISの ー ソナ リテ ィ 各 長 所 との 関連 の強 さが ら ず,こ の 意 味 で,VIA-ISは,研 異 な る とい う結 果 が 示 さ れ た 。 先 に も述 べ た よ う に, が 設 定 され,こ VIA-ISは に お い て 検 討 し た が,VIA-ISの24の 哲 学 や 宗 教 ・倫 理 の 資 料 を 基 に 人 間 の 美 徳 究 途 上 に あ る質 問 紙 だ と い え る 。 ま た 現 時 点 で は,VIA-ISに は6領 域 れ らの領域 間 の関係性 につ いて本研 究 長 所 自体 が,ど や 長 所 に 関 す る概 念 を整 理 して 作 成 さ れ た 尺 度 で あ る の よ うな 位 置 づ け に置 か れ る べ き か とい う根 本 的 な 概 た め,パ 念 の 配 置 に つ い て も 今 後VIA-ISの ー ソ ナ リテ ィ特 性 の 概 念 と類 似 した 内 容 を 部 分 的 に 含 ん で お り,特 に,外 向 性 は熱 意,ユ 遊 戯 心 と,開 放 性 は 審 美 心,好 奇 心 ・興 味,向 ーモ ア ・ 学 心, 確 立 と と も に検 討 す べ き課 題 で あ る。 こ の よ う に,本 研 究 で 作 成 した 日本 版VIA-ISに つ 心 理 学研 究2005年 466 い て は 今 後 の 課 題 が 残 さ れ て い る が,ポ 学 の 研 究 を 行 う 上 で,本 第76巻 ジテ ィブ心 理 研究 で得 られた知 見 は今後 の 535. Myers, の 調 査 を 行 い,生 VIA-ISが 後 は 多 くの 年 齢 層 で D. 人 的 な 健 康 に 関 連 し て,VIA-ISの に もあ る 希 望 ・楽 観 性 は,学 性 楽 観 性 と 呼 ば れ,行 楽 観 性 な どの さ れ る な ど,ポ 康 や 病 気 の 予 後 に 良 い結 果 が もた ら Peterson, Bower,&Gruenewald,2000)。 Kemeny, るVIA-IS得 (Seeman, ま た,異 点 に つ い て も 検 討 す べ Dubin,&Seeman,2003),今 後, き で あ A Meaning, can Argyle, indica- York:Plenum T. E., review psychology of can Diener, M. of evolution E.(2000). American tions build happiness. Subjective and of happiness. Ameri- well-being:The a proposal B. L.(2001). in positive 井 theory Fredrickson, role index. of positive emo- broaden-and- emotions. tions trigger well-being. American Psy- (Hinohara, upward spirals き方 上 手 民 衛生 の動 向 and emotional Responses K. to hedonic people L.,&Kasri, conflicting happy European of and Social E. biological pathways. happiness. P.,&Csikszentmihalyi, New M.(2000). introduction. happier American social compari- positive A merican ・大 竹 恵 子 ・宇 度(Subjective Happiness と 妥 当 性 の 検 討 psychol- Psychologist,56,216- 津 木 成 介 ・池 見 陽 Scale:SHS)の 信 頼 性 日 本 公 衆 衛 生 学 会 誌,51,845上 S., Otake, Lyubomirsky, subjective happiness Japanese Public N., (SHS). ・権 藤 恭 之 通 Y., ・高 山 Nakazato, Tokyo:Tokyo Argyle, 緑(1999). ュ ア ル(成 K., Gondo, version M.,&Schwarts, 人 ・ Y.,& of NEO- N.(1991).Subjec- Kemeny, Oxford:Pergamon M. Gruenewald, Psychologis of Shinri.) well-being. resources, Journal マ ニ M.(1999).Japanese S. E., A.,& Japanese 京 心 理 (Shimonaka, E, Ikemi, of scale NEO-FFI共 大 学 生 用)東 Taylor, Utsuki, Health,51,845-853.) ・ 中 里 克 治 NEO-PI上R, Strack, K., S.(2004).Development positive T. E., Press. Reed, L. G. M., (2000). illusions, and Bower, Psychological health.一American t,55,99上109. people. Psychology,31,511- ・ 本 版 主 観 的 幸 福 感 尺 853, & F.(2001). unhappy L.(2001).Why S.(2004).日 tive are some sons:Comparing Journal 厚生 統計協 会 Psychologist,56,239-249. S., Tucker, for P.(2002).Authentic Takayama, ユ ー リー グ Welfare) S.(2001).Why health:Acritical ologist,58,53-63. psychology:An 志 PI-R. of Health evidence K.,&King, 哲 Sciences,13,172上175. others?American Lyubomirsky, toward emo- S.) 厚 生 省(2000).国 Lyubomirsky, T.(2002).Positive Psychological 日 野 原 重 明(2001).生 (Ministry E. M.(2003). and is necessary. 下 仲 順 子 B. L.,&Joiner, A meri- Press. (Shimai, psychology:The of positive optimism: fuzziness. F.,&Seeman, Lyubomirsky, science of a national The realistic warm 217. New chologist,56,218-226. than Sheldon, Psychologist,55,34-43. Fredrickson, the M. 09y Psychologist,55,15-23. of happiness L. Psych Seligman, 島 D. M.(2000).The of and Dubin, American Press. York:Routledge. Buss, Association. search knowledge, Human Washington, Psychologist,55,5上14. S. B.(1978).Social M.(2001).The E. P.(2004). manua1. Religiosity/spirituality り American Psychologist,56,250-263. Seeman, 引 用 文 献 New Bunka optimism. Psychological Positive well-being. M. S. L.(2001).In York:Free F. M.,&Withey, Nihon of classification DC:American Seligman, tors of 神 健 康 Japanese future C.,&Seligman, Schneider, 期待 してい る。 Andrews, of ologist,55,44-55. strengths: VIA-ISを 用 い て 国 際 的 視 野 か らの 新 し い研 究 が 発 展 す る こ と を 本 版GHQ精 Questionnaire. C.(2000).The Peterson, Reed, 文 化 間 にお け Health Psych ジ テ ィ ブ な個 人 特 性 の 影 響 や そ の 因 果 関 係 が 注 目 さ れ て い る(Taylor, faith Kagakusha.) ポ ジ テ ィブ な 特 性 が あ る こ と に よ っ て 心 理 的 な 資 源 が 多 く 活 用 で き,健 and Y.,&Daibo,1.(1985). General 動変容 の可 能性 が期 待 され てい る(Peterson,2000;Schneider,2001)。 friends, Psychologist,55,56-67. 日 本 文 化 科 学 社 (Nakagawa, 長 所 習 性 無 力 感 に 対 して 学 習 A merican ・ 大 坊 郁 夫(1985).日 調 査 票 涯 発 達 に伴 っ て 生 き方 の 原 則 で あ る funds, people. 中 川 泰 彬 どの よ うに変化 す るか を検 討 す る必 要 が あ る 。 ま た,全 G.(2000).The happy 研 究 に対 し て貢 献 す る もの と期 待 で き る。 こ こで は 大 学 生 を 対 象 と し て 検 討 し た が,今 第5号 -2004.3.1受 稿,2005.7.9受 理- J. E., 大 竹 ・島 井 ・池 見 付 VIA-ISの 注) 他:日 本 版VIA-ISの 作成 録 構 成 と各 長 所 の項 目例 日本 版VIA-ISの 著 作 権 は, Mayerson財 団 に あ りま す。 240項 目 に つ い て研 究 の た め に必 要 と さ れ る 方 は,用 途 等 を明 記 し て筆 者 に請 求 して 下 さい 。 467
© Copyright 2025 ExpyDoc