JOGMEC 調査部 舩木 弥和子 アナリシス カナダ:オイルサンドと太平洋岸 LNG 輸出プロジェクトの最近の 動向 はじめに カナダの石油確認埋蔵量は 2 0 1 3 年末で 1,7 4 3 億 bbl で、ベネズエラ、サウジアラビアに次いで世界第 3 位とされている (図 1) 。 このように膨大な石油確認埋蔵量を誇るカナダだが、国家エネルギー委員会(National Energy Board:NEB) が 2 0 1 3 年 1 1 月に発表した Canada’s Energy Future 2 0 1 3 によると、石油確認埋蔵量 1,7 1 3 億 bbl の実に 9 8 %にあたる 1,6 7 9 億 bbl がオイルサンドであるという。 オイルサンドは主に、アルバータ州の Athabasca、Peace River、Cold Lake の 3 地域で生産されている。 アルバータ州政府はオイルサンドの原始埋蔵量を 1 兆 8,0 0 0 億 bbl と推定している(図 2) 。 砂や水から重質で粘性の高いビチューメンを分離して採取する必要があるものの、カナダが政治的に 安定した国であること、油層の深度が浅く固体であるため発見リスクが少ないこと、技術の進歩等を受 けてオイルサンドの開発が進んできた。同国のオイルサンド生産量は、2 0 0 5 年の 1 1 0 万 b/d から 2 0 1 3 年には 1 9 5 万 b/d まで増加し、全体の原油生産量の 5 6 %を占めるようになっている。CNOOC が Nexen を 1 5 1 億ドルで買収したり、Athabasca Oil Corporation の Dover プロジェクトを PetroChina が買い取っ たりするなど、カナダのオイルサンドに対する関心は高い。 しかし、オイルサンドの開発はコスト、環境問題、輸送等多くの問題も抱えている。これらをどのよ 350 300 十億bbl 298.3 アルバータ州 265.9 250 サスカチュワン州 200 174.3 157 150 150 101.5 100 97.8 93.0 48.5 50 37.1 ナ イ ジ ェリ ア リビ ア E ロ シ ア UA ク ウ ェ ート イ ラ ク イ ラ ン カ ナ ダ ベ ネ ズ エ ラ サ ウ ジ ア ラ ビ ア 0 出所:BP Statistical Review of World Energy, June 2014 図1 石油確認埋蔵量(上位10カ国:2013年末) 39 石油・天然ガスレビュー 出所:CAPP Crude Oil Forecast, Markets & Transportation Outlook に加筆 図2 オイルサンド主要生産地域 アナリシス うに解決していくかによって、カナダや北米のみならず、世界全体の石油の需給にも影響を与える可能 性がある。 一方、同国は、天然ガスについても、2 0 1 3 年の生産量が 1 5Bcf/d と世界第 5 位の産ガス国である。 そして、ブリティッシュコロンビア(BC)州はカナダの天然ガス生産量の約 1/4 を生産している(図 3) 。 天然ガス消費量について見ると、同国は生産したガスの約 3 0 %、BC 州は生産したガスの約 1 5 %を消 費しているのみで、余剰分はパイプラインで米国に輸出している(図 4)。しかし、シェールガス革命に より米国の天然ガス生産量が増加したことで、米国へのガス輸出は減少しており、新たな市場としての アジア等へ LNG を輸出することが計画されるようになった。 2 0 1 4 年 9 月初めの時点で、BC 州で計画されている LNG 輸出プロジェクトの数は 2 0 件に達している。 2013年11月時点では10件のプロジェクトが計画されていたのに対し、倍増である。BC州政府によると、 これらのプロジェクトの最終投資決定(FID)の時期は 2 0 1 4 年以降、生産開始は 2 0 1 0 年代末から 2 0 2 0 年代の初めで、フル生産時の液化能力は合計で 2 億 9,5 9 0 万 t/ 年、必要とされるフィードガスは判明分 1 8 プロジェクトで、4 2.5 1 5Bcf/d となっている。また、これに伴う、パイプラインプロジェクトは 6 件 あり、総延長は 3,4 5 7 ㎞となっている。もちろん、これらのプロジェクトが全て立ち上がるわけではな いが、そのインパクトは非常に大きいと考えられる。 本稿は、このように大きな影響力を持つカナダの 2 大プロジェクト、オイルサンドと太平洋岸の LNG 輸出の最近の動向をまとめた。 十億㎥ 120 十億㎥ 100 80 60 カナダから米国への 天然ガス輸出 米国からカナダへの 天然ガス輸出 40 20 0 出所:Northeast BC Industry Activity Update 図3 州別天然ガス生産量 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 年 出所:BP Statistical Review of World Energy, June 2014 より作成 図4 カナダと米国の天然ガス輸出 1. オイルサンド (1) オイルサンドの生産見通し したオイルサンドの生産見通しを比較する。 各種機関、研究所がカナダのオイルサンドの生産見通 NEBは先に述べた Canada’ s Energy Future 2 013 で、 しを発表しているが、本稿では、NEB、カナダ石油生 2035年までのカナダの原油生産見通しを発表している (図5) 。 産 者 協 会(Canadian Association of Petroleum NEB はタイトオイル(在来型軽質油に算入)について、 Producers:CAPP) 、カナダエネルギー研究所 (Canadian これまで行われてきた生産方法とは異なる水平坑井と多 Energy Research Institute:CERI)がこの 1 年間に発表 段階の水圧破砕を用いての生産であるため、今後どの程 2014.11 Vol.48 No.6 40 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 度生産量が増加するのかを推定することが難しいとして 2 0 3 5 年の地層内回収法による生産量は 3 %増加し、露天 いるものの、同国の原油生産量は 2 0 1 2 年から 2 0 3 5 年 掘りによる生産量は 9 %減少する見通しとなっている。 までに 7 5 %増加し、5 8 0 万 b/d となると予測している。 CAPP は、2 0 1 4 年 6 月に発表した Crude Oil Forecast, オイルサンドについては、活動中の企業が拡張計画を Markets & Transportation で、2 0 3 0 年のカナダの原油 発表し外資の参入も進んでいることから、開発の進展が 生 産 量 を 6 4 4 万 b/d、 オ イ ル サ ン ド の 生 産 量 を そ の 予想され、2 0 3 5 年には生産量が 2 0 1 2 年の 2.6 倍にあた 7 5 %にあたる 4 8 1 万 b/d としている。2 0 1 3 年の原油生 る 5 0 0 万 b/d に達するとしている。その結果、原油生産 産量に占めるオイルサンド生産量の割合は 5 6 %である 量に占めるオイルサンドの割合は 2 0 1 2 年の 5 7 %から、 ので、オイルサンド生産量が大きく割合を伸ばすことに 2 0 3 5 年には 8 6 %に増加する見通しであるという。 なるとの予想である(図 6) 。 生産方法としては、露天掘りよりも地層内回収法、特 その内訳は、2 0 1 3 年は露天掘りが 8 5 万 b/d、地層内 に SAGD(Steam Assisted Gravity Drainage)法が増加す 回収法が 1 1 0 万 b/d であったのに対し、2 0 3 0 年には露天 る傾向にあるとしている。2011年版の同レポートに比べ、 掘りが 1 6 0 万 b/d、地層内回収法が 3 2 1 万 b/dとなると 千㎥ / 日 百万 bbl/ 日 年 出所:NEB Canada’s Energy Future 2013 図5 NEBによる原油生産見通し 百万バレル / 日 年 出所:CAPP Crude Oil Forecast, Markets & Transportation 図6 CAPPによる原油生産見通し 41 石油・天然ガスレビュー アナリシス 表1 CAPPによる原油生産見通し 万 bbl/ 日 2013年 2015年 2020年 2025年 2030年 カナダ東部 23 23 26 17 9 カナダ西部 324 368 465 557 635 在来型 129 141 145 150 154 オイルサンド 195 227 320 407 481 露天掘り 85 100 133 152 160 110 127 187 255 321 347 391 491 574 644 インシチュー採収法 合計 出所:CAPP Crude Oil Forecast, Markets & Transportation 表2 CAPPによる2006・2014年対比の原油生産見通し 万 bbl/ 日 2 0 0 6 年発表 2015年 2 0 1 4 年発表 2020年 2015年 2020年 カナダ東部 23 16 23 26 カナダ西部 4 3 8.7 4 7 1.8 368 465 在来型 8 9.2 7 2.1 141 145 オイルサンド 3 4 9.5 3 9 9.7 227 320 露天掘り 175 2 2 7.3 100 133 1 7 4.5 1 7 2.4 127 187 4 6 1.7 4 8 7.8 391 491 インシチュー採収法 合計 出所:CAPP Crude Oil Forecast, Markets & Transportation 予測されている。NEB の見通し同様、露天掘りよりも地 の伸びが期待されていないことが分かる。これは、地層 層内回収法による生産が伸びる見通しだ (表 1) 。 内回収法については 2020 年に向け 60 %近く増産し ただし、 2013年にCAPPが発表した見通しと比べると、 2 0 0 6 年の予想を上回る生産が見込まれているものの、 2 0 3 0 年時点の原油生産量が 3 0 万 b/d、オイルサンド生 露天掘りについては 2 0 0 6 年時に比べ大きな伸びが期待 産量が 4 0 万 b/d 下方修正されており、前年に想定して されていないことによるものと考えられる。コンデン いたほどにはオイルサンドの生産量が増加しないとの見 セートを含む在来型にはタイトオイルが含まれ、2 0 0 6 通しになっている。一方、2 0 3 0 年時点のコンデンセー 年想定時より生産見通しが増加している。なお、2 0 1 0 トを含む在来型の生産量は 1 4 4 万 b/d から 1 5 4 万 b/d に 年の生産量については、2 0 0 6 年発表の原油生産目標値 上方修正されている。 が353万5,000b/dであったのに対し、実績は333万6,000b/ さらにさかのぼり、CAPP が 2 0 1 4 年に発表した石油 d で、目標値の 9 4 %となっている。 生産見通しを 2 0 0 6 年発表の見通しと比較すると、カナ CERI は 2 0 1 4 年 7 月 に 発 表 し た Canadian Oil Sands ダ全体の原油生産量は 2 0 1 5 年時点が 7 0 万 7,0 0 0b/d 下 Supply Costs and Development Projects(2 0 1 2 ~ 方修正、2 0 2 0 年が 3 万 2,0 0 0b/d 上方修正されているの 2 0 4 8)で、2 0 4 8 年までのオイルサンドの生産見通しに に対し、オイルサンド生産量は 2 0 1 5 年が 1 2 2 万 5,0 0 0b/ ついて三つのシナリオを紹介している。そのシナリオの d、2 0 2 0 年は 7 9 万 7,0 0 0b/d 下方修正されている(表 2) 。 うち、中間値を示す参考ケースシナリオでは、オイルサ オイルサンド生産量は、2 0 0 6 年に想定されていたほど ンド生産量を 2 0 2 0 年に 3 4 4 万 b/d、2 0 3 0 年に 4 9 3 万 b/ 2014.11 Vol.48 No.6 42 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 千 bbl/ 日 年 出所:CERI Canadian Oil Sands Supply Costs and Development Projects(2012 ~ 2048) 図7 CERIによるオイルサンド生産見通し 表3 CERIによるオイルサンド生産見通し 万 bbl/ 日 2013年 2020年 2030年 2048年 ハイケース 186 383 578 568 参考ケース 186 344 493 483 ローケース 186 279 417 428 出所:CERI Canadian Oil Sands Supply Costs and Development Projects(2012 ~ 2048) d としている。ピーク時の生産量はハイケースシナリオ 表した見通しを 1 年前に発表されたそれぞれの見通しと が 5 8 0 万 b/d(2 0 3 7 年) 、参考ケースシナリオが 5 0 0 万 比較すると、CAPP の見通しで見たように、オイルサン b/d(2 0 3 9 年) 、ローケースシナリオが 4 4 0 万 b/d(2 0 4 1 ド生産見通しの数字はわずかではあるが下方修正されて 年) となっている (図 7、表 3) いる。同じ機関同士の比較とは異なるのかもしれないが、 NEB、CAPP、CERI の 生 産 見 通 し を 比 較 す る と、 3 者のうち最も早く発表された NEP の見通しが最も高い 2 0 2 0 年頃までの生産見通しは、NEB、CAPP と CERI 数字となっているのも、この 1 年間でオイルサンドの生 の参考ケースシナリオはいずれも同じような数字となっ 産見通しが引き下げられる傾向にあることを反映したも ている。これは、いずれの機関も、開発中、計画中のプ のではないか。 ロジェクトを積み上げて、見通しを発表しているためと い ず れ に せ よ、 カ ナ ダ の オ イ ル サ ン ド 生 産 量 は、 考えられる。 2013年の195万b/dから、2020年には300万b/d台前半、 一方、2 0 3 0 年までで比較すると、NEB の見通しが 2025年には400万b/d強、2030年には500万b/d前後と、 CAPP と CERI の参考ケースシナリオよりも高い数字と 今後 2 0 3 0 年ごろまでは、大幅に増加を続けていくとい なっている。各機関が 2 0 1 3 年から 2 0 1 4 年にかけて発 うのが一般的な見方であると言えよう。 43 石油・天然ガスレビュー アナリシス 要プロジェクトは表 4 の 5 社が主導している。 (2) 主要なプロジェクトの状況 ひょう そく 各機関の生産見通しと平 仄 を合わせたかのように、 露天掘りプロジェクトは、併設するアップグレーダー Suncor Energy、Imperial Oil、Canadian Natural の資本支出額(CAPEX)が高く、また、人件費の高騰も Resources Limited 等主要なオイルサンド生産企業は、 あって、コスト的に問題があり、先に述べた通り、延期 今後数年間に生産量を増加させる計画である。しかし、 や中止される案件が増えている。2 0 1 3 年に操業を始め 各社の生産計画を精査してみると、決して全てのオイル た Kearl オイルサンドプロジェクトが、露天掘りのプロ サンドプロジェクトが順調に生産を開始し、生産量を増 ジェクトであるにもかかわらず、アップグレーダーなし 加させるというわけではない。 で操業を開始したのは、アップグレーダーの CAPEX が カナダのオイルサンド確認埋蔵量 1,6 7 9 億 bbl のうち、 高いことによるだろう。 約 2 0 %は深度が 7 5m よりも浅く露天掘りが可能である が、約 8 0 %は深度が深いため地層内回収法による開発 ② CSS 法 が必要とされる。 現在、商業的に使われている地層内回収法は、CSS ふ かん 今後の各社の生産計画を俯瞰すると、地層内回収法、 (Cyclic Steam Stimulation)法と SAGD 法のみである。 特に SAGD 法を用いた新規生産計画、拡張計画は多数 CSS 法は、井戸に水蒸気を圧入して井戸を閉め、水蒸 存在する一方で、新規露天掘りプロジェクトは延期、棚 気の熱がオイルサンド層に伝わりビチューメンが流動化 上げ等の発表が相次いでいる。2 0 1 3 年 1 1 月に Suncor したら、井戸を開けてポンプで汲みビチューメンを生産 Energy が 2 0 0 8 年の経済危機で開発がストップしてい する方法である。 たFort Hillsプロジェクトを再開した事例もあるものの、 CSS 法を使ったビチューメン生産は 1 9 8 0 年代中ごろ Shell が Pierre River オイルサンドプロジェクトを棚上 より、Cold Lake、Peace River で行われている。一つの げ、Suncor Energy が Voyageur South プロジェクトを 井戸でこの過程を繰り返すため、生産効率がよくないと 取りやめる等の状況がある。 されるが、Imperial Oil の Cold Lake でのプロジェクト オイルサンドプロジェクトへの投資は、露天掘りと改 等 CSS 法により相当量のビチューメンを生産している 質(アップグレーディング)を組み合わせたプロジェクト プロジェクトもある。主なプロジェクトを表5に示した。 く から、SAGD 法で重質油を生産し、希釈して輸送するプ ロジェクトに移っていく傾向にあることがうかがわれる。 ③ SAGD 法 SAGD 法は、同一のオイルサンド油層に上下平行な水 ①露天掘り 平坑井 2 坑を掘削し、上の坑井から水蒸気を圧入し、そ 露天掘りによる操業は、Suncor Energy が 1 9 6 7 年 9 の熱伝導によって加熱され流動化し重力により下方へ移 月に Millennium Mine プロジェクト、Syncrude(5 %の 動した周囲のビチューメンを下の坑井から回収するもの 権益を日本カナダ石油 /Mocal Energy 社として JX が保 である。 有)が 1 9 7 8 年 7 月に Mildred Lake Mine プロジェクトを 主要な SAGD 法のプロジェクトを表 6 に挙げたが、 開始したのが始まりである。現在生産中の露天掘りの主 SAGD 法のプロジェクトは生産中、開発中、計画中のも 表4 露天掘りの主要プロジェクト Suncor Energy ● Millennium、North Steepbank 生産中 ○ Fort Hills 開発中 Syncrude ● Mildred Lake、Aurora で生産中 Canadian Natural Resources ● Horizon で 2 0 1 4 年 1Q は合成原油(SCO)1 1.3 万 b/d 生産、2 0 1 4 年は 2 5 億ドルを投じ、生産量を 2 5 万 b/d に拡張 Imperial Oil ● Kearl Oil Sand 第 1 期(生産能力 1 1 万 b/d)生産中。2 0 1 5 年に同規模の第 2 期の操業を開始予定。アップグレーダー無しで操業を開始した最初の露天掘 りプロジェクト Athabasca Oil Sands Project ● Muskeg River で 1 5.5 万 b/d、Jackpine で 1 0 万 b/d を生産 (注)●は生産中、○は開発中。 出所:各種資料より作成 2014.11 Vol.48 No.6 44 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 表5 CSS法の主要プロジェクト Imperial Oil ● 1 9 8 5 年より Cold Lake で生産中 ○ Nabiye 拡張プロジェクトが 2 0 1 4 年末生産開始。4 万 b/d を生産予定 Canadian Natural Resources ● 1 9 8 5 年より Cold Lake、Wolf Lake / Primrose で生産中 Shell ● Peace River、Cadotte Lake で生産中 ○ Carmon Creek 開発中(生産量 8 万 b/d を予定) Baytex Energy ● Peace River Cliffdale で生産中 (注)●は生産中、○は開発中。 出所:各種資料より作成 表6 SAGD法の主要プロジェクト Suncor ● Firebag 1 5 万 b/d、MacKay River3 万 b/d を生産中 Cenovus Energy ● Foster Creek1 2.5 万 b/d、Christina Lake1 3.8 万 b/d を生産中。それぞれ 1 7.5 万 b/d、1 5 万 b/d に拡張計画 ○ Narrows Lake 開発中(4 0 年間、4 0 万 b/d 生産) △ Grand Rapids プラント建設許可取得(生産能力 1 8 万 b/d) △ Telephone Lake 開発許可を申請中 Devon ● Jackfish 約 5 万 b/d を生産中 Meg Energy ● Christina Lake5 万 b/d 超を生産中 ConocoPhillips ● Surmont3 万 b/d を生産中。生産量 2 8.3 万 b/d に拡張する計画 Nexen ● Long Lake7.2 万 b/d 生産中。地層内回収法でアップグレーダーがある唯一の プロジェクト ○ Kinosis 開発中。1.5 ~ 2.5 万 b/d 生産予定 Connacher ● Great Divide 生産中、生産能力 5.7 万 b/d、拡張認可済み Husky Energy ● Tucker 生産中 Statoil ● Kai Kos Dehseh 生産中。2 0 万 b/d を生産予定 JACOS ● Hangingstone 6,0 0 0b/d 規模で生産中。2 万 b/d の拡張を計画 Canadian Natural Resources ● Kirby South 第 1 期生産中。4 万 b/d を生産予定 △ Kirby North 申請中。第 1 期 4 万 b/d、第 2 期 6 万 b/d を生産予定 (注)●は生産中、○は開発中。△は申請中、許可取得済みプロジェクト 出所:各種資料より作成 のを含め多数存在し、今後のビチューメン生産の中心に 4 万 b/d の 生 産 を 目 指 す。 ま た、Cenovus の Foster なると思われる。本邦企業としては、1 9 7 8 年に石油公 Creek でも水蒸気量低減が試みられている。 団と民間各社が設立した CANOS(カナダオイルサンド 株式会社)のカナダ現地法人 Japan Canada Oil Sands ④コストの比較 Ltd.(JACOS)が Hangingstone プロジェクトにおいて オイルサンドプロジェクトのうち、露天掘りとアップ SAGD 法を採用している。 グレーディングを組み合わせたプロジェクトはコスト面 SAGD 法は水蒸気を多量に必要とする。一般的には、 で問題があり、SAGD 法で重質油を生産しこれを希釈し 1bbl のビチューメンを生産するのに 3bbl の水蒸気を要 て輸送するプロジェクトに移っていく傾向にあることを すると言われている。この水蒸気は天然ガスを燃料とす 見てきた。では、それぞれのプロジェクトのコストはど るボイラーによって生成されるため、水蒸気の量をいか うなっているのだろう(図 8) 。 に減らすかが SAGD 法の経済性を左右する。現在では、 CERIによると、輸送や希釈のコストを除いたビチュー Statoil の Kai Kos Dehseh フィールドでの Leismer デモ メン、合成石油のバレルあたりの供給コストは SAGD ンストレーションプロジェクトにおいて、1 0 ~ 1 5 %の 法のプロジェクトで 5 0.8 9 ドル、露天掘りのプロジェク 水蒸気量を削減する試みがなされ、この経験をもとに、 トで 7 1.8 1 ドル、露天掘りにアップグレーディングを組 同フィールド内で、2 0 1 7 年から Corner プロジェクトで み合わせたプロジェクトで 1 0 7.5 7 ドル、アップグレー 45 石油・天然ガスレビュー アナリシス カナダドル /bbl 出所:CERI Canadian Oil Sands Supply Costs and Development Projects(2012 ~ 2048) 図8 ビチューメン、合成石油のバレルあたり供給コスト(参考ケース) ディングのみで 4 0.8 2 ドルとなっている。これに輸送費 (3)オイルサンドプロジェクトに影響を与える要因 や希釈のコストを加えた Cushing までのバレルあたりの これまで見てきたように、カナダのオイルサンドは 供給コストで比較すると、SAGD 法のプロジェクトが SAGD 法のプロジェクトを中心に、生産量を増やしてお 8 4.9 9 ドル、露天掘りのプロジェクトが 1 0 5.5 4 ドル、露 り、今後もこの傾向が続くとの見方がなされている。し 天掘りにアップグレーディングを組み合わせたプロジェ かし、 (1)項で見たように 2 0 1 3 年から 2 0 1 4 年にかけ クトが 1 0 9.5 0 ドルとなる。 ては生産見通しがわずかではあるが下方修正されてい 近年の油価の状況からすると、経済的に成り立つのは る。この背景には、オイルサンドプロジェクトが抱えて SAGD 法のプロジェクトということになる。新規のプロ いるさまざまな問題があり、その解決が容易ではないと ジェクトは地層内回収法のものばかりで、露天掘りのプ 見られていることがあるのではないか。次にオイルサン ロジェクトは規模を拡張することによりコストを削減す ドプロジェクトをめぐる課題について考えてみる。 るなど、経済性が向上する既存のプロジェクトの拡張ば かりであるという状況は、このようなコスト環境を反映 ①市場 したものであると言える。 現在、カナダ西部で生産された原油はカナダ西部、オ なお、オイルサンドの価格は、パイプラインの空き状 ンタリオ州、そして、米国中西部(PADD Ⅱ)、ロッキー 況により、スムーズに輸送ができるか否かで大きく変動 山脈エリア(PADD Ⅳ)に供給されている(図 9) 。 しているが、平均すると WTI の価格に対して 4 0 %程度 2 0 3 0 年にかけてオイルサンド生産量が大幅に増加す のディスカウントとなっている。 ると見られることから、オイルサンド生産者にとっては 2014.11 Vol.48 No.6 46 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 千バレル / 日 出所:CAPP Crude Oil Forecast, Markets & Transportation 図9 カナダと米国の市場別原油の需要 表7 カナダと米国の主要パイプライン パイプライン カナダ 太平洋岸 カナダ東部 Kinder Morgan Trans Mountain 2 0 1 7 年 4Q 稼働予定。投資額 5 1 億ドル +5 2.5 万 b/d 2 0 1 8 年 3Q 稼働予定。投資額 7 1 億ドル TransCanada Energy East +1 1 0 万 b/d 2 0 1 8 年 4Q 稼働予定。投資額 1 2 0 億ドル 2 0 1 4 年 3Q に NEB に申請予定 3 0 万 b/d 2 4 万 b/d から 3 0 万 b/d に拡張し逆走。投資額 1.1 億ドル Montreal ~ Sarina 間操業中。その他 2 0 1 4 年 4Q 稼働予定 TransCanada Keystone 5 9.1 万 b/d 操業中(2 0 1 0 年~) Spectra Express-Platte 2 8 万 b/d 操業中(1 9 9 7 年~) 2 5 0 万 b/d 操業中(1 9 5 0 年~) Southern Access Alberta Clipper Spearhead TransCanada Keystone XL Enbridge/Enterprise Seaway TransCanada Gulf Coast 出所:各種資料より作成 47 石油・天然ガスレビュー 操業中(1 9 5 3 年~) +5 9 万 b/d Enbridge Mainline 米国 メキシコ湾岸 3 0 万 b/d 状況 Enbridge Northern Gateway Enbridge Line9 Reversal 米国中西部 送油能力 4 0 万 b/d +1 6 万 b/d 4 5 万 b/d 操業中 2 0 1 4 年 3Q 稼働予定。投資額 2,0 0 0 万ドル 操業中 +3 5 万 b/d 2 0 1 5 年 3Q 稼働予定。投資額 2 億ドル 2 3.5 万 b/d 操業中 +5 7 万 b/d 2 0 1 5 年 3Q 稼働予定 +8 3 万 b/d 2 0 1 7 年稼働予定。投資額 5 4 億ドル 4 0 万 b/d +4 5 万 b/d 7 0 万 b/d 操業中 2 0 1 4 年 2Q 稼働予定 操業中(2 0 1 4 年 1 月~) アナリシス 新たな市場を見つけることが非常に重要な課題となって ための新しいパイプラインが必要となっている。 いる。 Keystone XL パイプラインや Northern Gateway パイ 米国メキシコ湾岸には重質油を処理できる製油所があ プライン等大規模な新規パイプラインの稼働時期は未確 り、精製処理能力も高いことから、オイルサンド生産者に 定である。このため、アルバータ州で探鉱・開発を行っ とって同地は理想的な市場と見られている。 ている中小企業は投資決定が困難になっていると伝えら 消費量の多くを国外から輸入しているカナダ東部や、 れ る。 ま た、Marathon Oil は 保 有 す る Athabasca Oil 需要が増加しているアジアも、カナダのオイルサンドに Sands Project(AOSP)の権益の一部を ONGC、Indian とって新たな市場と考えられる。 Oil、Oil India、OVL に売却することで交渉を行ってい 2 0 1 4 年に入り、ウクライナ問題から供給源の多角化 たが、輸送インフラが不十分なため交渉が中止された。 を図ろうとしているヨーロッパの製油所への供給も検討 このように新たな市場が見つかっても、オイルサンド されるようになってきた。 を輸送する手段が十分に整備されなければ、生産量を増 パイプライン等の輸送手段が確立されれば、これらの市 やすことはできず、権益の売却にも影響が及んできてい 場への供給が急激に増加する可能性があると思われる。 る。同様に整備が急がれるカナダの天然ガスパイプライ ンプロジェクトと比較しても、オイルサンドのパイプラ ②パイプライン インに対する反対は強く、特に新規パイプラインの建設 カナダ西部と、同国東部や米国を結ぶ原油パイプライ には時間を要するのではないか(表 7、図 1 0) 。 ンインフラは限定的である。その上米国やカナダでオイ ルサンドやシェールオイルの生産量が増加したことから、 カナダ太平洋岸向けパイプライン パイプラインの送油能力が十分ではない。そのため、既 太平洋岸まで原油を輸送できれば、アジアやカリフォ 存のパイプラインの拡張や中国、インド、カナダ東部等 ルニア等へ原油を輸送できることから、太平洋岸向けの 成長が期待される新たな市場にオイルサンドを供給する パイプラインの敷設や拡張に対する関心は非常に高い。 出所:CAPP Crude Oil Forecast, Markets & Transportation 図10 カナダと米国の主要パイプライン 2014.11 Vol.48 No.6 48 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 しかし、現在は、1 9 5 3 年に操業を開始した Kinder が計画され、Enbridge は 2 0 1 2 年に Line9A を逆走させ Morgan の Trans Mountain パイプラインがアルバータ る許可を取得、2013年8月よりLine9Aを逆走させている。 州とカナダ太平洋岸を結ぶ唯一の石油パイプラインであ Enbridge は 2 0 1 4 年 3 月に、Line9B を逆走させ、送油能 る。Trans Mountain パ イ プ ラ イ ン は、 全 長 1,1 5 0 ㎞、 力を 6 万 b/d 増加させる許可を取得、2 0 1 4 年第 4 四半期 口径 2 4 ~ 3 6 インチ、送油能力 3 0 万 b/d で、アルバー から Line9B についても逆走させる計画である。 タ州 Edmonton から BC 州 Burnaby やワシントン州に原 TransCanada はアルバータ州 Hardisty ~ケベック州 油、石油製品を輸送するパイプラインだ。 Quebec City、ニューブランズウィック州 St. John 間全 Kinder Morgan は 5 4 億ドルを投じ、このパイプライ 長 1,8 6 4 マイルの Mainline 天然ガスパイプラインを石油 ンに並走して全長 9 9 4 ㎞、口径 3 6 インチのパイプライ パイプラインに転用し、Montreal からニューブランズ ンを敷設し、同パイプラインを拡張する計画である。既 ウィック州まで 8 7 0 マイルのパイプラインを追加で敷設 存のパイプラインLine1は送油能力35万b/dに拡張され、 する Energy East パイプラインプロジェクトを計画して 石油製品、軽質油、重質油を輸送し、新設される送油能 いる。送油能力は市場の需要に応じて 5 2 万 5,0 0 0b/d か 力 5 4 万 b/d の Line2 は、重質油を輸送、必要があれば軽 ら 8 5 万 b/d に拡張するとされたが、現在では 1 1 0 万 b/d 質油も輸送する。2 0 1 7 年末に稼働開始の予定で、完成 に変更されている。2 0 1 8 年第 4 四半期からの稼働開始 すれば送油能力は合計で 8 9 万 b/d になる。 を目指す。この Energy East パイプラインプロジェクト 一方、Enbridge は、6 5 億ドルを投じ、アルバータ州 は Northern Gateway パイプライン同様に先住民や環境 Bruderheim と BC 州 Kitimat 間に全長 1,1 7 7 ㎞、口径 3 6 保護団体の反対にあっているが、ケベック州、ニューブ イ ン チ の パ イ プ ラ イ ン を 敷 設 す る 計 画 だ。 こ の ランズウィック州では精製能力の拡張が計画され、州政 Northern Gateway パイプラインは、2 0 1 8 年に稼働を開 府の支援は得られそうだ。 始し、原油 5 2 万 5,0 0 0b/d を輸送する。2 0 1 3 年 1 2 月に、 NEB が 2 0 9 項目の条件付きで Northern Gateway パイプ 米国中西部向けパイプライン ライン計画を承認、2 0 1 4 年 6 月 1 7 日には連邦政府が同 米国中西部はカナダ原油の主要な市場で、TransCanada パイプライン計画を承認した。 の Keystone パイプライン、Spectra Energyの Express- た だ し、BC 州 の Christy Clark 首 相 は Northern Platte パイプライン、EnbridgeのMainline パイプライン等 Gateway の現在の計画には反対で、その上、同パイプ が操業中である。 ラインを実現するには、環境保護、石油流出時の責任、 Keystone パイプラインは、アルバータ州 Hardisty ~ 先住民との十分な話し合い、州政府への十分な経済的利 ネブラスカ州 Steele City 間を結ぶ送油能力 5 9 万 1,0 0 0b/ 益の公平な配分等五つの条件が満たされることが必要と d のパイプラインで、2 0 1 0 年 6 月に稼働を開始した。 される。BC 州の環境保護団体や先住民からも強い反対 2 0 1 1 年 2 月には Cushing extension も稼働を開始した。 を受けており、建設に至るまでにはまだ多くの障害があ Spectra Energy が 2 0 1 3 年 3 月に Kinder Morgan から ると思われる。 1 5 億ドルで買収した Express-Platte パイプラインは、 Express パイプラインがアルバータ州 Hardisty ~ワイオ カナダ東部向けパイプライン ミング゛州 Casper 間を結ぶ送油能力 2 8 万 b/d、Platte パ 現在、カナダ西部と同国大西洋岸を直接結ぶパイプラ イ プ ラ イ ン が ワ イ オ ミ ン グ 州 Casper ~ イ リ ノ イ 州 インは存在していない。そのため、東部の精製業者は必 Wood River間を結ぶ送油能力14万5,000 ~ 16万4,000b/ 要とする原油の多くを国外から輸入しており、その量は d のパイプラインである。Express パイプラインに比べ 2 0 1 2 年で 6 8 万 b/d である。 Platte パイプラインの送油能力が低いことが、Express Enbridge の Line9 パ イ プ ラ イ ン は、 ケ ベ ッ ク 州 パイプラインが送油能力いっぱいで稼働することのネッ Montreal とオンタリオ州 Sarnia 間の口径 3 0 インチのパ クとなっていた。しかし、近年は鉄道輸送を組み合わせ イプラインで、送油能力は 2 4 万 b/d である。このうち ることで、Express パイプラインも能力いっぱいで稼働 Sarnia と オ ン タ リ オ 州 North Westover 間 が Line9A、 できるようになった。 North Westover と Montreal 間が Line9B となっている。 Mainline パイプラインは、カナダ西部、モンタナ州、ノー 同パイプラインは当初、カナダ西部で産出された原油を スダコタ州から米国中西部、オンタリオ州の市場に、軽 オンタリオ州やケベック州に輸送していたが、1 9 9 9 年 質油、重質油、石油製品を輸送できる複数のパイプライ 以降逆走して利用されていた。今回再度逆走させること ンで構成されている。送油能力は 2 5 0 万 b/d である。し 49 石油・天然ガスレビュー アナリシス かし、同パイプラインには米国産の原油も流入するため、 Enbridge の Mainline パイプラインの Alberta Clipper ラ カナダ産の原油の輸送量は限られたものとなっている。 インが 2 0 1 5 ~ 2 0 1 6 年までに拡張され、2 0 1 9 年までに Trans Mountain パイプライン、Energy East パイプラ 米国メキシコ湾岸向けパイプライン イン、Keystone XL パイプラインのいずれかが承認、建 米国メキシコ湾岸は、カナダの重質油にとって市場拡 設されれば、増加するオイルサンドを輸送するには十分 大の可能性が最も大きい重要な市場である。同地域の精 であるとの見方もある。しかし、2 0 1 9 年までに三つの 製業者は米国内の原油や、メキシコ、サウジアラビア、 パイプラインのいずれかが最終決定、建設されなければ ベネズエラから輸入した重質原油を精製している。 オイルサンドへの投資が減少し生産量の伸び悩みにつな Enbridge/Enterprise の Seaway パ イ プ ラ イ ン は、 がるとの見方もある。 Cushing からメキシコ湾岸に原油を輸送するため 2 0 1 2 年 5 月に逆走されることになった。また、2 0 1 3 年 1 月に ③鉄道輸送 は送油能力が 1 5 万 b/d から 4 0 万 b/d に拡張された。既 鉄道輸送はパイプライン輸送よりもコストは高くつく。 存のパイプラインに沿って送油能力 4 5 万 b/d のパイプ とはいえ、各地に鉄道網が存在しており、原油を高く販 ラインの新設が進行中で、完成すると送油能力は合計で 売できる市場に輸送することが可能で、輸送時間を短縮 8 5 万 b/d となる。 できる利点がある。オイルサンドにとっては希釈剤が不 TransCanadaのKeystone XLパイプラインはアルバー 要または少量で済み、他の原油と混ざらず性状が明らか タ州 Hardisty とネブラスカ州 Steele City 間をつなぐ送 であるといった利点もあり、パイプラインの輸送能力の 油能力 8 3 万 b/d のパイプラインで、アルバータ州で生 不足と相まって鉄道による原油の輸送量は急増している。 産される重質油と Bakken シェールで生産されるシェー 原油や石油製品を輸送した車両の数は、2 0 1 3 年 2 月 ルオイルを米国中西部とガルフコーストに供給する。米 に前年同月比 6 0 %増の 1 万 2,9 8 9 両であったが、2 0 1 4 国との国境をまたぐパイプラインであるので、米国の承 年 1 月にはさらに増加し 1 万 7,0 0 0 両となった。1 車両あ 認を得なくてはならないが、当初の申請は 2 0 1 2 年に拒 たりの重質油輸送量は 5 0 0 ~ 5 2 5 バレルである。積み 否され、パイプラインルートを変更し、プロジェクトを 込み能力は 2 0 1 3 年初には 1 8 万 b/d だったが、現在は 2 分割して進められている。 3 0 万 b/d に増加し、2 0 1 5 年末には 1 0 0 万 b/d となる見 分割した南部部分については Gulf Coast パイプライン 通しである。カナダ西部で生産される原油の鉄道輸送量 として 2 0 1 4 年 1 月より操業が開始された。 も、2 0 1 3 年末の 2 0 万 b/d から 2 0 1 6 年には 7 0 万 b/d に ルートが変更された北部部分については、米国国務省 増加すると見られる(図 1 1) 。 が 2 0 1 4 年 1 月に、Keystone XL パイプラインの建設が 鉄道輸送が急激に増加したことで、原油輸送中の車両 あろうとなかろうと、カナダにおけるオイルサンド開発 の事故が増加したり、車両の確保に時間がかかったりす の開発ペースは変わらず、同パイプラインの建設が環境 る新たな問題が発生している。 に著しい影響を与えないとの環境影響評価書を発表し 増加する事故への対策として、連邦運輸省は 2 0 1 4 年 4 た。しかし、同パイプラインに関しては、ネブラスカ州 月に、車 両に関する規 制を発 表した。これによると、 地区裁判所でパイプラインの通行を許可したネブラスカ 2 0 1 7 年 5 月までに旧型の車両(DOT-111 車両)を処分また 州知事の法的権限について争われ、州知事の判断を州憲 は改良しなくてはならないことになった。また、基準を 法違反とする判決が下された。現在、ネブラスカ州知事 満たしていない車両は 3 0日以内に処分するよう求めてい が同判決に対してネブラスカ州最高裁判所に控訴してい る。さらに、人口密集地域での速度制限時速を 5 0 マイル る。これを受けて、国務省は 4 月に、ネブラスカ州での / 時に設定した。 訴訟が継続中でパイプラインルートに影響を及ぼしかね 輸送用の車両は、発注してから納入されるまでに通常 ないとして、パイプラインの建設の可否を判断する公共 2 年かかるという。2 0 1 3 年中に納入された車両数は 1 万 の利益審査期間を無期限延長すると発表、同パイプライ 2,0 0 0 ~ 1 万 5,0 0 0 両で、その大部分が重質油輸送用の ンの建設承認は 1 1 月の米国の中間選挙後になるとの見 車両であったそうだ。 方がなされている。 ④希釈剤 なお、パイプラインに関しては、次項で述べるとおり、 オイルサンドプロジェクトで生産される重質で粘性の 鉄 道 に よ る 原 油 の 輸 送 量 が 急 激 に 増 加 し て お り、 高いビチューメンをパイプラインで輸送する際には、コ 2014.11 Vol.48 No.6 50 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 千トン 鉄道千車両 年 出所:CAPP Crude Oil Forecast, Markets & Transportation 図11 カナダの石油の鉄道輸送量の推移 ンデンセート、天然ガソリン、合成原油等の希釈剤を ることや重質油の鉄道輸送が増加していることから、希 3 0 %程度混ぜる必要がある。現在、ビチューメンを輸 釈剤需要は予想よりも少なくなるのでは、 との見方もある。 送するために 2 0 万~ 2 5 万 b/d の希釈剤が利用されてい これまで、カナダのコンデンセートの生産量は減退す るが、大部分は米国(主にメキシコ湾岸)から輸入され、 ると見られていた。しかし、アルバータ州 Devernay その価格は米国内よりもバレルあたり 2 5 ドル程度割増 シェールで Vermilion Energy や Chevron 等がコンデン しとなっている。 セートを生産しており、米国の生産増に比べると緩やか オイルサンドの生産量が増加し輸送量も増加すると見 な伸びではあるが、その生産量は増加している。NEBも、 られることから、希釈剤需要も増加し、9 0 万~ 1 0 0 万 2 0 1 4 年のコンデンセートの生産量は前年比 1 3 %増加し b/d に達するとの見方もある。 1 7 万 2,0 0 0b/d になるとの見通しを発表している。今後、 オイルサンドの生産増、パイプラインの輸送能力拡張 シェールオイルの開発が進み、軽質の原油の生産量が増 に伴い、 逼 迫が予想される希釈剤の需給を緩和させよ 加すれば、希釈剤の手当てについての懸念は減少してい うとの動きがある。 くのではないかとの見方もなされている。 Kinder Morgan は Cochin パイプライン(輸送能力 9 万 また、鉄道輸送なら熱を加えることで希釈剤を用いな 5,0 0 0b/d)を逆走し、イリノイ州からアルバータ州 Fort いで、あるいは 2 0 %以下の希釈剤を混ぜることで輸送 Saskatchewan 近郊にコンデンセートを供給する計画で することができるので、パイプライン輸送ではなく鉄道 ある。これによれば Enbridge はイリノイ州 Manhattan での輸送に転換するものも増えてきている。 ひっぱく とアルバータ州 Edmonton 間を結び 2 0 1 0 年より希釈剤 を輸送している Southern Lights パイプラインの輸送能 ⑤水 力を現在の 1 8 万 b/d から 2 7 万 5,0 0 0b/d まで拡張する。 オイルサンドの生産にあたっては大量の水を必要と Enbridge はまた、Northern Gateway パイプライン計画 し、その確保が大きな問題となってきた。 の一環として希釈剤を輸送する輸送能力 1 9 万 3,0 0 0 b/d 2 0 0 9 年までは地層内回収法を用いるオイルサンドプ のパイプラインを敷設する計画である。TransCanada ロジェクトの水の使用量はビチューメンの生産量を上 も Grand Rapids パ イ プ ラ イ ン 計 画 の 一 環 と し て 回っていた。しかし、同じ量のオイルサンドを生産する Heartland から Fort McMurray まで希釈剤を輸送するパ のに必要とする水の量が減少し、また、水の再利用も進 イプラインを敷設し、2 0 1 7 年には希釈剤 3 3 万 b/d を輸 んだことから、使用される水の量がビチューメン生産量 送する計画である。 を下回るようになった。 しかし、カナダでコンデンセートの生産が増加してい CAPP によると、2 0 1 0 年時点で、地層内回収法で石 51 石油・天然ガスレビュー アナリシス 油 1bbl を生産するためには 0.4bbl の水が必要で、9 0 ~ このように大量の天然ガスを利用するため、オイルサ 9 5 %の水が再利用されている。地層内回収法では、飲 ンド開発はガス価格の影響を大きく受けることになる。 料用にはならない地下水が利用されていると聞く。 2 0 1 3 年中ごろには 3 カナダドル /MMBtu 程度で推移し 一方、露天掘りで石油 1bbl を生産するためには 3.1bbl ていたアルバータ州の AECO ハブのガス価格が、2 0 1 4 の水が必要であり、8 0 ~ 9 0 %の水が再利用されている。 年中ごろには 4 カナダドル /MMBtu 台の後半まで上昇し 露天掘りには、アサバスカ (Athabasca) 川の水が使われ、 た。オイルサンド事業者は今後も、ガス価格の動向を注 その量は同川の流量の 0.5 %である。 意深く見守っていく必要があるだろう。 このように、技術の進展によってオイルサンドを生産 さ ら に、2 0 2 0 年 代 初 頭 に か け て、BC 州 に 複 数 の するのに必要とされる水の量が減少し、水の再利用も進 LNG 輸出プロジェクトを立ち上げようとする動きがあ んできたものの、オイルサンドの生産量が増加している る。LNG 輸出プロジェクトが 8 件成立した場合のガス需 ために水の使用量は全体としては増加している。2 0 1 3 要は 1 9Bcf/d となるとの見通しもある。実際にいくつの 年に使用された水の量は、 2002年のそれの2倍以上となっ LNG 輸出プロジェクトが成立するのか、現時点では明 ている。 らかではないが、オイルサンドの開発と LNG 輸出プロ 今後の水の使用量は、オイルサンドの生産量増加と技術 ジェクトの立ち上げをどちらも円滑に進めていくために の進展の度合いにより左右されることになるだろう。 は、積極的に天然ガスの探鉱・開発を進めていくことが 要件となる。 ⑥天然ガス オイルサンド開発では、ビチューメンを砂から分離す ⑦労働力 るための熱源として水蒸気を用いているが、この水蒸気 アルバータ州の Grant Sprauge エネルギー副大臣によ を発生させるには天然ガスが利用される。ビチューメン ると、カナダオイルサンドが競争力を維持するには、コ 1bbl を生産するのに必要な天然ガスの量は約 1,0 0 0cf と ストを管理しマーケットを確保することが欠かせない されている。2 0 1 2 年のオイルサンドセクターの天然ガ が、同国西部では労働者数と労働者に対する需要に ス 需 要 は 1.8Bcf/d で、 カ ナ ダ 全 体 の 天 然 ガ ス 生 産 量 ギャップがあり、労働者確保はコスト決定の大きな要因 1 5.1Bcf/d の 1 2 %、カナダ西部の天然ガス生産量 1 2Bcf/ になっているそうだ。 d の 1 5 %を占めている。生産量の増加に伴い、オイル オイルサンドや LNG プロジェクトでは、設備に関す サ ン ド セ ク タ ー の 天 然 ガ ス 需 要 は 2 0 2 0 年 に は 2.8 ~ る資本コストの 2 5 ~ 3 0 %は人件費であると言われてい 3.3Bcf/d に増加する見通しである。 る。アルバータ州のオイルサンド開発プロジェクトだけ 人 年 出所:Oil Sands Construction, Maintenance and Operations Labour Demand Outlook to 2023 図12 オイルサンドプロジェクトの建設と操業に係る労働者数の見通し 2014.11 Vol.48 No.6 52 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 でなく、カナダ大西洋岸沖合での掘削、Montney 等で 大きな影響を及ぼしている。 のシェールの開発、BC 州での LNG 輸出プロジェクト等、 アルバータ州は、オイルサンド開発の環境への影響を ほぼ同時期に多くのプロジェクトが並行して実施される 調査するため、2 0 1 4 年初にアルバータ州環境監視評価 ことになるようで、労働者獲得争いは今後さらに激烈に 規制庁(Alberta Environmental Monitoring Evaluation なると思われる。 and Reporting Agency)を設置、6 月には探鉱・開発を アルバータ州等が行った調査によれば、オイルサンドプ 監督する機関アルバータ州エネルギー規制局(Alberta ロジェクトの労働者数は 2 0 1 4 年の 7 万 2,8 1 0 人から2 0 2 3 Energy Regulator)を設立、エネルギー資源保護委員会 年には 9 万 8,3 8 0 人に増加する見通しである。このうち、 (Energy Resources Conservation Board)の機能を引き オイルサンドプロジェクトの建設等に係る労働者数は 継ぐとともに、水や環境についても監視を続けていくと 2 0 1 9 年に 6 万 2,6 8 0 人のピークを迎え、その後減退する している。 ようだが、オイルサンドプロジェクトの操業に関わる労働 2 0 1 3 年には Canadian Natural Resources の Cold Lake 者数はその後も増加を続けるとされる (図12) 。 のプロジェクトでビチューメンエマルジョン 7,4 0 0bbl が漏出する事故が発生した。同社は機械の故障が原因と ⑧環境 見ているが、Alberta Energy Regulator の調査結果に オイルサンド開発については、 従来、廃棄土砂、汚染 よっては、効率の悪い技術を利用せざるを得なくなって、 物質の発生、 温室効果ガスの排出等環境面から問題が提 他地域を含めオイルサンド生産量の増加が停滞する恐れ 起されており、Keystone XL 等のパイプライン敷設にも があると見る向きもあり、 今後が注目される。 2. 太平洋岸の LNG 輸出プロジェクト (1) カナダ太平洋岸のLNG輸出プロジェクトの概要と背景 在来型ガスの割合は 2 0 0 5 年の約 2 0 %から 2 0 1 2 年には 冒頭で、 カナダは生産量が多いにもかかわらず国内で 約 6 0 %まで上昇し、同州の天然ガス生産量も増加して の消費が少ないために米国へ天然ガスの輸出を行ってい いる (表 8、図 1 3、図 1 4) 。 ると述べた。 その上、 シェールガス革命のあおりを受けて カナダ太平洋岸の LNG 輸出プロジェクトからアジア 米国向けの輸出量が減少し、BC 州で 2 0 件もの LNG 輸 市場への距離は 7,3 0 0 ㎞、輸送日数は約 1 0 日間とされ、 出プロジェクトが計画されていることを紹介した。 オーストラリアとほぼ同等、米国メキシコ湾岸やモザン しかし、シェール革命は米国だけに限らず、BC 州に ビークよりも短くなっている。 も有望なシェールプレイが存在し、豊富なシェールガス また、LNG 輸出プロジェクトが多く計画されている が 賦 存 し て い る。BC 州 の 天 然 ガ ス 開 発 省 に よ る と、 BC 州北部の年間平均気温は 7 ℃と低い。気温が 1℃低下 シェールガスの可採埋蔵量は Montney が 2 7 1Tcf、Horn すると電力消費効率は 1.7 %改善できる。したがって、 River が 7 8Tcf、Cordova が 2 0Tcfであ る。 シ ェ ー ル ガ BC 州の LNG 輸出プロジェクトは、平均気温が 2 5℃程度 スの開発進展により、同州の天然ガス生産量に占める非 であるオーストラリア、カタール、モザンビークや米国 表8 BC州のシェールプレイの状況 Basin Liard 面積(㎢) 原始埋蔵量 可採埋蔵量 9,3 4 0 Large! - 生産井数 2(2 0 1 4/3) 生産量 累計生産量 4.5MMcf/d 1 0.1Bcf 2 0 0(2 0 1 4/2) 4 9 2MMcf/d 6 3 5Bcf 1 1,4 0 0 4 4 8Tcf 7 8Tcf Cordova 2,6 9 0 2 0 0Tcf 2 0Tcf 1 9(2 0 1 4/3) 3 0MMcf/d 2 5Bcf Montney 2 9,8 5 0 1,9 6 5Tcf 2 7 1Tcf 1,6 4 4(2 0 1 4/3) 2.2 6Bcf/d 2.5 3Tcf Horn River 出所:Northeast BC Industry Activity Update 53 石油・天然ガスレビュー アナリシス ルイジアナ州のプロジェクトに比べガスの液化や LNG の に、BC 州の LNG 輸出プロジェクトの数は増加している 貯蔵のエネルギー効率の観点から有利となる (表 9) 。 と考えられる。NEB は、BC 州で計画されている LNG このように膨大な天然ガス埋蔵量と液化や貯蔵、アジ 輸出プロジェクト 2 0 件のうち、既に 9 件に輸出許可を ア市場への輸送のコストを抑えられるという利点を背景 与えている。BC 州政府も経済成長のために LNG 輸出を 促進したいとしており、Clark 首相は、2 0 2 0 年までに 3 件の LNG 輸出プロジェクトが操業を開始することを目 標としている。 しかし、顧客やパートナーを確保するために、また、 BC 州が導入するとしている LNG 税の詳細が決定される のを待って、いずれのプロジェクトも少なくとも 1 年程 度、稼働開始の時期を遅らせていることから、現時点ま でに最終投資決定(FID)を行ったプロジェクトはない。 (2)進行中の LNG 輸出プロジェクト BC 州で計画されている 20のLNG 輸出プロジェクトに は、Kitimat LNG のように全ての許可を取得し設計・ 調 達・ 建 設(EPC) 契 約 を 締 結 し た案件 や、Pacific Northwest LNG のように間もなく FID を行うのではな いかと見られているものから、プロジェクト立ち上げ の発表から 1カ月足らずの案件までさまざまな段階のプ ロジェクトがある。個別のプロジェクトの最近の状況 を図 1 5に示した。 ① Kitimat LNG Kitimat LNG は、2 0 0 8 年、2 0 0 9 年に連邦政府、BC 州 出所:Northeast BC Industry Activity Update 図13 BC州のシェールプレイ 政府から環境アセスメント認可を取得、2 0 1 1 年 1 0 月に NEB の輸出許可(LNG1,0 0 0 万トン、2 0 年間)を取得、 2 0 1 3 年 1 月には連邦政府より先住民居留区における同プ 兆 cf LNG輸出プロジェクト 表9 建設地の平均気温 年間平均気温 BC 州北部 年 出所:Northeast BC Industry Activity Update 図14 BC州の天然ガス生産量推移 7℃ オーストラリア 27℃ カタール 26℃ モザンビーク 23℃ 米国ルイジアナ州 22℃ 出所:LNG in British Columbia より作成 2014.11 Vol.48 No.6 54 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 ラント建設許可を取得し、最も早く全ての許可を取得し Haisla 族やパイプラインルート上の先住民 1 5 部族と たプロジェクトである。Liard BasinとHorn River のガス Benefits Agreement を締結している。最も先行してい を、 既 存 の Spectra Energy Transmission Pipeline で る プ ロ ジ ェ ク ト の 一 つ で あ る が、2 0 1 4 年 8 月 に、 Summit Lakeまで 輸 送、Summit Lake からは Kitimat Apache が投資額の増大や市場に対する懸念から同プロ LNG 専用の Pacific Trail Pipeline(全長:4 8 0 ㎞、パイプ ジェクトからの撤退を表明した。Chevron は Apache の ライン口径:4 2 インチ、送ガス能力:4Bcf/d) を利用する 持ち分を取得する予定はないとしており、今後の動向 計画である。当初、 Apache (40%) 、 EOG Resources (30%) 、 が注目される(図 1 6)。 Encana(3 0 %)から成るジョイントベンチャーで、マーケ ティングと資金力が弱いとされていたが、 2 012年12月に、 ② Douglas Channel LNG Chevron が EOG および Encana の持ち分を買収し Apache 先住民 Haisla 族が自ら出資、参画するプロジェクトで、 と Chevron の 5 0/5 0 のジョイントベンチャーが設立され 輸出許可もKitimat LNGについで 2 番目に取得した。小規 た。これにより、マーケティングと資金力についても 模であるため、パイプラインは既存の Pacific Northern 克服できると見られた。2 0 1 1 年から基本設計(FEED) Gas Pipelineと新設の Pacific Trail Pipelineの一部を利用 が行われ、2 0 1 4 年 1 月には日揮 /Fluor コンソーシアム する予定とされている(表 11、図19) 。また、バージを と LNG 施設について EPC 契約(9 4 億ドル)を締結した。 用いた LNGプラントであるため工期も短く、早期の操業 LNG プ ラ ン ト 建 設 地 が 居 留 区 と な っ て い る 先 住 民 開始が期待されていた。しかし、関連企業間の争議や資 Stewart ● Canada Stewart Energy Grassy Point-North Site ●▲ Aurora LNG Grassy Point-South Site ●▲ Grassy Point LNG Kitsault ● Kitsault Energy Dawson Creek AltaGas (国内供給用) Prince Rupert/Port Edward ●▲ Prince Rupert LNG ●▲ Pacific Northwest LNG ● WCC LNG ● Orca LNG Watson Island LNG Kitimat ●▲ Kitimat LNG ●▲ Douglas Channel ●▲ LNG Canada ● Triron LNG ● Cedar 1,2,3 LNG Export Squamish ●▲ Woodfibre LNG NEB 輸出申請 ● 審査中 ● 承認 Campbell River ● Discovery LNG British Columbia 州環境評価プロセス ▲ 審査中 ▲ 承認 ▲ 評価不要 Delta ● WesPac Alberni Inlet ● Steelhead LNG 出所:LNG in British Columbia に加筆 図15 BC州で計画されているLNG輸出プロジェクト 55 石油・天然ガスレビュー アナリシス 金不足からプロジェクトは停止状態にある。なお、Pacific Northern Gas Pipelineは、Summit Lakeと Kitimat 間の 5 2 5 ㎞に既存のパイプラインに並行して口径 2 4 インチの Kitimat パイプラインを敷設し、送ガス能力を拡張する計画である。 LNG Canada ③ LNG Canada Shell(5 0 %)がオペレーターを務め、三菱商事(1 5 %)/ KOGAS(1 5 %)/PetroChina(2 0 %) か ら 成 る LNG Douglas Channel LNG Canada は 2 0 1 4 年 5 月 1 日、参加 4 社が合弁事業契約を 締結し、プロジェクト開発に本格的に着手することになっ た。これに先立つ 2 0 1 4 年 2 月1 2 日には、Rio Tint Alkan と港湾施設と土地利用について契約を締結、広大な土地 Kitimat LNG を確保した。現在は 4トレイン、2,4 0 0 万 t/ 年の液化能力 が計画されているが、6 トレインまで拡張が可能な敷地 が確保されている。パイプラインは、TransCanada が Kitimat–Dawson–Creek 間に Coastal GasLink Pipeline を 建設する計画である。 出所:各種資料より作成 図16 Kitimatで計画されているLNG輸出プロジェクト Douglas Channel は不凍、深水で、LNG 船 2 隻を同時 に係留できる桟橋から 9 0 ㎞で海上に出ることができる (写 1、写 2) 。先住民 Haisla 族は、既に Rio Tinto Alcan 精錬所の操業を了承、天然ガスパイプラインや LNG 液 化加工施設の設置、操業に関しても許可を出している。 ④ Pacific Northwest LNG Prince Rupert 港 Lelu 島 に 計 画 さ れ て い る Pacific Northwest LNG は、最も早く FID を行うのではないか と期待されているプロジェクトである(図 1 7) 。2 0 1 3 年 1 2 月 1 6 日に NEB の輸出許可を取得し、2 0 1 4 年 2 月 に は、 環 境 影 響 評 価 書(EIS:Environmental Impact Statement)を環境規制機関カナダ環境評価庁(CEAA: Canadian Environmental Assessment Agency)とブリ 出所:LNG Canada 関係者の案内により筆者撮影 写1 LNG Canadaのプロジェクト模型 ティッシュコロンビア州環境評価所(BC EAO:British Columbia Environmental Assessment Office)に提出し、 2 0 1 8 年末から 2 0 1 9 年初にプロジェクトを実現させよ うと動いている。 Progress Energy が Northwest Montney で生産中のガ スを、Trans Canada が Prince Rupert–North Montney 間に敷設予定の Prince Rupert Gas Transmission Project を使って供給する計画である。 2 0 1 3 年 3 月、Progress Energy Canada(Petronas)が 保 有 す る シ ェ ー ル ガ ス 鉱 区 お よび Pacific Northwest LNG プロジェクトの権益の 1 0 %と、同権益相当のオフテ イク 1 0 %分を JAPEX が取得したのに続き、Petroleum Brunei が 同 プ ロ ジ ェ ク ト の 3 %、Indian Oil Corp が 1 0 %、Sinopec が 1 5 % の 権 益 を 取 得 し た。Progress 出所:LNG Canada 関係者の案内により筆者撮影 LNG Canada桟橋予定地 (停泊中の船はRio Tinto 写2 Alcan拡張工事の作業員宿泊用と見られるラトビア 客船TALLINK号) 2014.11 Vol.48 No.6 56 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 Terrace Tuck Inlet Tuck Inlet Tuck Inlet WCC LNGWCC LNG Prince Rupert Port Edward Prince Rupert Prince Rupert Lelu島 Kitimat Watson Island LNG Watson Island LNG Prince Rupert LNG Port Edward Prince Rupert LNG Port Edward Lelu島 Lelu島 Pacific Northwest LNG Pacific Northwest LNG Sh ip pi ng Ro ut e LNG Canada LNG Canada Douglas Channel LNG Kitimat Kitimat Kitimat LNG 出所:各種資料より作成 図17 KitimatとPrince Rupertで計画されているLNG輸出プロジェクト Energy の現在の権益保有比率は 6 2 %となっている。 2 0 1 3 年 6 月に NEB に輸出許可を申請し、同年 1 2 月に 輸出承認を取得した。なお、2 0 1 4 年 4 月に、CNOOC が ⑤ WCC LNG Prince Rupert LNG に参入することで BG と初期合意を Imperial/ExxonMobil は当初、Grassy Point に LNG プ 締結した。 ラント等を建設することを計画し、BC 州 Grassy Point の LNG プラント等建設に関する公募に応募していた。 ⑦ Woodfibre LNG その後、計画を変更し、現在は Prince Rupert 近くの Pacific Oil & Gas の子会社 Woodfibre LNG は、2 0 1 3 Tsimshian 半島 Tuck Inlet 東岸に LNG プラント等の建 年にバンクーバー北方約 3 0 0 ㎞、Squamish の木材工場 設を予定している。2 0 1 3 年 6 月 1 9 日に NEB に輸出許可 跡地を2,550万ドルで買収し、この地にLNG輸出プロジェ を申請し、 2 0 1 3 年 12月16日に輸出承認を取得している。 クトを立ち上げる計画である。陸上に液化施設を建設す 上流アセットとして Horn River、Montney、Duvernay るか、浮体式の液化設備を採用するかを検討していたが、 を保有、2 0 2 3 年から LNG 3,0 0 0 万トンを輸出する計画 浮体式の設備を採用することになった。EDF Trading である。 等とガスの供給で合意し、2 0 1 3 年 7 月に NEB に輸出許 可を申請、同年 1 2 月に LNG 2 1 0 万トンを 2 5 年間輸出 ⑥ Prince Rupert LNG する許可を取得した。2 0 1 5 年初に FID を、2 0 1 7 年に BG Group が Prince Rupert 港内の Ridley 島の南西部 生産を開始する。なお、親会社の Pacific Oil & Gas は中 2 5 5 エーカー(1,0 3 2 ㎢)に建設を予定している Prince 国沿岸に LNG 受入基地を保有している。 Rupert LNG は、当初 2 トレイン、液化能力 1,4 0 0 万 t/ 年を 3 トレイン、2,1 0 0 万 t/ 年に拡張する計画である。 ⑧ Triton LNG Ridley島周辺は水深が深く、安全な航行が可能とされる。 Alta Gas と出光興産は、LNG と LPG をアジア向けに 2 隻が着岸可能な桟橋を建設するが、道路や鉄道、既存の 輸出するために JV(5 0/5 0)を設立した。この Triton インフラが利用可能である。BGは、Spectra Energyと敷 LNG は浮体式の液化施設を採用する予定である。2 0 1 3 設が予定されるパイプライン Westcoast Connector Gas 年 1 0 月 2 9 日に NEB に輸出許可を申請し、2 0 1 4 年 4 月 Transmission によりガスを供給する計画だが、自らは上 1 6 日に 2 0 1 7 年より LNG2 3 0 万 t/ 年を輸出する許可を 流資産を保有せずカナダ西部の主要ガス市場 AECO 等 取得した。 のガスターミナルでガスを購入するとされる。 57 石油・天然ガスレビュー アナリシス ⑨ Aurora LNG Ltd.(Stewart Energy)は、Stewart で 2 0 1 7 年より液化能 2 0 1 3 年 4 月、BC 州政府は Prince Rupert の北 4 0 ㎞に 力 5 0 0 万 t/ 年の FLNGを設置し、その後、陸上に 2,5 0 0 位置する公有地 Grassy Point での LNG プラント等建設、 万t/年の液化設備を建設してLNG輸出を実施する計画だ。 操 業 に 関 す る 公 募 に 関 し Nexen(CNOOC、6 0 %)/ 同プロジェクトは、2 0 1 4 年 3 月5日に NEBに輸出承認を INPEX(2 0 %)/ 日 揮(2 0 %) 、Imperial/ExxonMobil 申請した。 Canada、Woodside Energy(Woodside Petroleum) 、SK E&S の 4 グループの応募を認めたと発表した。その後、 ⑫ WesPac 絞り込みを経て最終落札者を決定する予定とされたが、 WesPac Midstream Vancouver(WPMV)は、2 0 1 6 年 BC 州政府によると、Nexen/INPEX/ 日揮の Aurora LNG より Delta 近郊の Tilbury 島から LNG 3 0 0 万 t/ 年を輸出 が Grassy Point North Site、Woodside Energy の Grassy する計画で、2 0 1 4 年 6 月 2 0 日に NEB に輸出承認を申請 Point LNG が Grassy Point South Site の LNG 輸 出プ ロ した。 ジェクトとして選定され、Imperial/ExxonMobil の WCC LNG は Prince Rupert に建設予定という (図18) 。 ⑬ Discovery LNG Aurora LNG は、2 0 1 3 年 11 月に BC 州政府と土地利用 天然ガス上流開発事業者 Quicksilver Resources は、 に関する合意に達し、 2400万ドルを支払って土地6.149㎢、 バ ン ク ー バ ー 島 Campbell River の パ ル プ 工 場 跡 地 を 沖合 1.5 8 7 ㎢を確保した。同地は、ほぼ無人の半島突端 LNG プラント用地として購入し、ガス価格リンクでの で Aurora LNG はその北側に LNG プロジェクトを立ち上げる。同月 2 9日には NEBに輸出許可を申請、 2 0 1 4 年 5 月1日に許可を取得した。 また、2 0 1 4 年 4 月には、BC 州 政 府が先住民 Metlakatla、Lax Kw’ alaams 族 と 収 入 配 分 協 定 (Revenue-sharing Agreement)を 締 結 し て い る。Aurora LNGは、 FIDを 2 0 1 7 年 に、 生 産 開 始 を 2 0 2 1 年に予定している。 ⑩ Kitsault Energy Project Kitsault は Prince Rupert 北 方 1 4 0 ㎞の湾の奥深くに位置し、昔 鉱業で栄えた地域である。米国で の医療関連の業で財を成したイン ド系投資家が同地を買収し、開発 中である。他のプロジェクトに比 べ、パイプライン敷設距離が約 200㎞短くできるメリットがある。 Kitsault Energy は 2 0 1 3 年 1 2 月 31日にNEBに輸出許可を申請し、 LNG2,0 0 0 万 t/ 年を輸出する計画 である。 ⑪ C a n a d a S t e w a r t E n e r g y Project Canada Stewart Energy Group 出所:Woodside Energy ホームページ 図18 Grassy pointで計画されているLNG輸出プロジェクト 2014.11 Vol.48 No.6 58 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 表10 BC州で進行中のLNG輸出プロジェクト ■ Kitimat ■ Prince Rupert ■ Grassy Point * FLNG プロジェクト 場所 関連会社 液化能力 状況 Kitimat LNG Kitimat Bish Cove Chevron Apache 当初 5 0 0 万 t/ 年 1,0 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認取得:2 0 1 1/1 0 FEED 実施中 輸出開始時期:2 0 1 7 年 Douglas Channel * Kitimat Douglas Channel Gas Services Haisla 族 Golar LNG LNG Partners LLC 1 8 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認取得:2 0 1 2/2 FEED 終了 輸出開始時期:2 0 1 6 年 LNG Canada Kitimat Shell、三菱商事 KOGAS PetroChina 当初 1,2 0 0 万 t/ 年 2,4 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認取得:2 0 1 3/2/4 エンジニアリング、環境影響評価実施中 FID:2 0 1 5 年 Pacific NorthWest Prince Rupert 近郊 Lelu 島 Progress Energy JAPEX Petroleum Brunei Indian Oil Corp Sinopec 当初 1,2 0 0 万 t/ 年 1,9 2 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認取得:2 0 1 3/1 2/1 6 FS 終了 プレ FEED 実施中 FID: 2 0 1 4 年末 輸出開始時期:2 0 1 8 年 WCC LNG Prince Rupert Tuck Inlet Imperial Oil ExxonMobil NEB 輸出承認取得: 2 0 1 3/1 2/1 6 当初1,0 0 0 万~ 1,5 0 0 万 t/ 年 FID: 2 0 1 8 年 3,0 0 0 万 t/ 年 輸出開始時期:2 0 2 3 年 Prince Rupert LNG Prince Rupert Ridley 島 British Gas 当初 1,4 0 0 万 t/ 年 2,1 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認取得: 2 0 1 3/1 2/1 6 FID: 2 0 1 7 年 Woodfibre LNG * Squamish 2 1 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認取得:2 0 1 3/1 2/1 6 FID:2 0 1 5 年初 輸出開始時期: 2 0 1 7 年 Triton LNG * - AltaGas、出光興産 2 3 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認取得:2 0 1 4/4/1 6 Aurora LNG Grassy Point North Site Nexen INPEX 日揮 2,4 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認取得:2 0 1 4/5/1 FID: 2 0 1 7 年 輸出開始時期:2 0 2 1 年 Kitsault Energy Kitsault Kitsault Energy 2,0 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認申請:2 0 1 3/1 2/3 1 パートナーを募集中 Stewart Energy * Stewart Canada Stewart Energy 当初 5 0 0 万 t/ 年 3,0 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認申請:2 0 1 4/3/5 パートナーを募集中 WesPac Delta Tilbury 島 WesPac Midstream Vancouver 3 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認申請:2 0 1 4/6/2 0 Steelhead LNG Alberni Inlet Steelhead LNG 先住民部族 Huu-ay-aht 3,0 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認申請:2 0 1 4/7/7 Grassy Point LNG Grassy Point South Site Woodside Energy 2,0 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認申請:2 0 1 4/7/1 8 Discovery LNG Campbell River Quicksilver Resources 2,0 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認申請:2 0 1 4/7/2 8 Cedar1,2,3 LNG Export * Kitimat Cedar LNG Export Development(Haisla 族) 1,4 5 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認申請:2 0 1 4/8/2 8 Orca LNG * Prince Rupert Orca LNG 2,4 0 0 万 t/ 年 NEB 輸出承認申請:2 0 1 4/9/4 Watson Island LNG Prince Rupert Watson Island LNG - - Woodfibre LNG Export Pte. Ltd (Pacific Energy Corporation) 出所:各種資料より作成 LNG の販売を計画している。Campbell River 市周辺に ⑮ Grassy Point LNG は、既存の Fortis BC が所有する天然ガスパイプライン 2 0 1 4 年 1 月 1 6 日、Woodside Energy は Grassy Point がある。Quicksilver Resources は2021年よりLNG 2,000 の南側のサイトについて BC 州政府と土地利用に関して 万トン / 年を供給する計画で、2 0 1 4 年 7 月に NEB に輸 合意した。Woodside Energy は 2 0 1 4 年 7 月1 8 日に NEB 出許可を申請した。 に LNG 輸出許可を申請し、2 0 2 1 年の生産開始を目指す。 ⑭ Steelhead LNG ⑯ Cedar LNG Export Development Steelhead LNG と 先 住 民 Huu-ay-aht 族(HFN) は 先 住 民 Haisla 族 が 保 有 す る Cedar LNG Export Opportunity Development Agreement を 締 結 し、 Development は、 2 0 1 4 年 8 月 2 8 日、FLNG の 3 プロジェ Alberni Inlet の南 Sarita Bay の Anacla から 1 0 ㎞の地点 ク ト(Cedar 1 LNG Export、Cedar 2 LNG Export、 に位置する HFN 所有地で LNG プロジェクトを実施する Cedar 3 LNG Export)から LNG を輸出するための申請 計画である。Steelhead LNGは25年間にわたりLNG 3,000 を NEB に行った。Cedar LNG Export Development は、 万 t/ 年を輸出する承認を求め、2 0 1 4 年 7 月 7 日に NEB Kitimat 近郊に桟橋を建設し FLNG3 隻を設置する計画 に申請を行った。 だ。 液 化 能 力 は Cedar 1 LNG Export が 2 9 0 万 t/ 年、 59 石油・天然ガスレビュー アナリシス 表11 LNG輸出プロジェクト供給用のパイプラインプロジェクト ■ Kitimat ■ Prince Rupert プロジェクト 関連会社 概要 備考 Pacific Trail Pipeline Chevron Apache 全長:4 8 0km(Summit Lake ~ Kitimat) パイプライン口径:4 2 インチ 送ガス能力:4Bcf/d Coastal Gaslink Pipeline Trans Canada 全長:6 5 0km(Dawson Creek ~ Kitimat) パイプライン口径:4 8 インチ LNG Canada 専用パイプライン 送ガス能力:1.7Bcf/d Pacific Northern Gas Transmission Pipeline Expansion Pacific Northern Gas 全長:5 2 5km(Summit Lake ~ Kitimat) パイプライン口径:2 4 インチ 既存のパイプラインに並行してパイプラインを 敷設、送ガス能力を拡張する Prince Rupert Gas Transmission Trans Canada 投資規模:5 0 億ドル 全長:9 0 0km パイプライン口径:4 8 インチ 送ガス能力:2 ~ 3.6Bcf/d Pacific Northwest LNG にガスを供給 供用開始:2 0 1 8 年末 Westcoast Connector Gas Transmission Spectra Energy BG Group 全長:8 5 0km パイプライン口径:4 8 インチ 送ガス能力:4.2Bcf/d Prince Rupert LNG にガスを供給 供用開始:2 0 1 9 年 全長:5 2km パイプライン口径:2 0 インチ Woodfibre LNG 専用パイプライン Eagle Mountain – Woodfibre FortisBC Gas Pipeline Kitimat LNG 専用パイプライン 出所:各種資料より作成 Prince Rupert gas Transmission Project Westcoast Connector Gas Transmission DAWSON CREEK KITSAULT SUMMIT LAKE GRASSY POINT PRINCE RUPERT PRINCE GEORGE KITIMAT Coastal Gaslink Pipeline Pacific Northern Gas Pipeline Pacific Trail Pipeline 出所:各種資料より作成 図19 LNG輸出プロジェクト供給用のパイプラインプロジェクト 2014.11 Vol.48 No.6 60 カナダ:オイルサンドと太平洋岸LNG輸出プロジェクトの最近の動向 Cedar 2 LNG Export と Cedar 3 LNG Export が各 5 8 0 万 t/ 年で、合計で 1,4 5 0 万 t/ 年とされる。 ・税 率 1.5% の下で支払われた課税額は高い税額を支 払うようになった場合にそこから控除することが可 能である。 ⑰ OrcaLNG ・カナダ連邦法の所得税法や BC 州の従前の所得税法 米国企業 OrcaLNG は 2 0 1 4 年 9 月 4 日、NEB に 2 5 年 とは独立。従って企業によっては複数の所得税法の 間にわたって LNG を輸出する許可を申請した。同社は、 下で納税義務を負う。 Prince Rupert近郊にFLNG6隻 (液化能力は2,400万t/年) 今後、BC 州議会でどのような審議がなされ、最終的 を設置し、2 0 1 9 年に LNG の輸出を開始することを計画 にいつごろどのような内容の法律が成立するのか、注視 している。ただし、ガスの供給源やパイプラインについ していきたい。 ては明らかではない。 ②労働力確保 ⑱ Watson Island LNG 既述のように、アルバータ州でオイルサンドプロジェ Watson Island LNG は Prince Rupert、Watson 島に小 クトが進展しているため、カナダの石油、ガス産業の労 規模な LNG 輸出ターミナルを建設する計画であるが、 働者市場は既にタイトな状態にあると伝えられている。 NEB への LNG 輸出許可申請等はまだ行っていない。 そのため、米国の同様の石油、ガス産業の労働者と比較 した場合、カナダの労働者は米国の労働者よりも 6 0 %多 (3)BC 州 LNG プロジェクトの課題 く収入を得ている。このような状況が、オーストラリア ① LNG 税 の LNG プロジェクトのように、コスト上昇とプロジェク BC 州は 2 0 1 4 年 2 月に、LNG 税の税率を当初は純利 トの遅延をもたらすのではないかとの懸念が生じている。 益の1.5%、 建設コスト回収後は7%とする案を発表した。 BC 州政府とカナダ連邦政府は、2 0 1 4 年 3 月に、天然 しかし、Shell、Chevron、AltaGas 等から、建設コスト 資源はカナダの経済発展にとって重要であるとの MOU 回収後の税率 7 %では、BC 州からの LNG 輸出は競争力 を締結した。政府はこれに基づき、職業訓練プログラム を失うので、 税率を引き下げるようにとの要求があった。 を充実させ、外国人熟練労働者に対するビザ自由化を行 また、Kitimat LNG から Apache が撤退することもあっ うことで熟練労働者を増やす計画である。 て、BC 州政府には税率引き下げの圧力がかかり、BC 州 政府は投資を促進するよう、より産業寄りの税制を導入 ③先住民問題 するのでは、との見方がなされていた。 先住民は、一般的に、重質油やビチューメンの輸送に 同年 1 0 月 2 1 日に BC 州財務省が LNG 税の法案を議会 は反対である。しかし、LNG プロジェクトに関しては、 に提出した。税率等の概要は以下の通りである。 Haisla 族が Kitimat の 2 件の LNG プロジェクトに参画し ・純営業利益(net operating income)に対して 1.5% ている。また、ガスパイプラインのルート上に居住して (2 0 1 7 年 1 月 1 日以降) ・当期純利益(net income)に対して 3.5%(2 0 1 7 年 1 月 1 日以降) いる先住民との間では、収入配分協定や経済便益協定 (Economic Benefit Agreements)の交渉が継続中であ る。BC 州政府も、先住民に関しては多くの問題が生じ ・当期純利益に対して 5%(2 0 3 7 年 1 月 1 日以降) ているとはいえ、ガスの輸送に関しては楽観的な見通し ・コ スト回収期間においては、純営業利益に対する をしている。ガスプロジェクトに対してこのような反応 1.5% と当期純利益に対する当初 3.5%、2 0 3 7 年以降 が見られるのは、石油に比べ、パイプラインは破損等に 5% のいずれか高くなる税額を支払う。 よる流出時の影響が少ないことが原因と思われる。 まとめ 膨大な埋蔵量を誇るカナダのオイルサンドは、SAGD 種機関も、オイルサンドの生産量は 2 0 2 0 年に 3 0 0 万 b/ 法を中心に今後も生産量は増加させる見通しである。各 d 台前半、2 0 2 5 年に 4 0 0 万 b/d 強、2 0 3 0 年には 5 0 0 万 61 石油・天然ガスレビュー アナリシス b/d 前後に達すると見ている。ただし、パイプラインの のプロジェクトも少なくとも 1 年程度、稼働開始の時期 輸送能力や労働力の確保等課題は多い。 を遅らせているのが現状である。LNG 税の行方に加え、 BC 州の LNG 輸出プロジェクトは、膨大な天然ガス埋 労働力不足などこちらも課題は多い。 蔵量と液化や貯蔵、アジア市場への輸送コストを抑えら しかし、オイルサンドプロジェクト、LNG 輸出プロ れる利点を背景に増加し、2 0 1 4 年 9 月初めの時点で 2 0 ジェクトともに影響力は大きく、今後の動向を注視して 件と数を増やしている。しかし、顧客やパートナーを確 いきたい。 保するために、また、LNG 税の決定を待って、いずれ 執筆者紹介 舩木 弥和子(ふなき みわこ) JOGMEC 調査部で北米、南米を担当。 2014.11 Vol.48 No.6 62
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