海外 トピックス 18 英規制当局、アクティブファンドや投資コンサルティング市場の競争状況を懸念 英国の金融行為監督機構(FCA) に」負担するコストを提示しようとす は、2016年11月、資産運用業界に るもの。仮にファンドのコストが大き おける競争状況を点検し改善策を提起 くなった場合には、マネジャーが差分 した中間報告書を公表した。報告書で を負担することになる。 は特に、1)アクティブファンド間の 投資コンサルタントについては、年 価格競争と、2)機関投資家とファン 金基金など機関投資家の資産配分や資 ドマネジャーを橋渡しする投資コンサ 産マネジャーの選定に大きな影響力を ルタントの役割に焦点が当てられた。 持っているにもかかわらず、市場はか まずアクティブファンドについて なり集中し(上位3社の収益シェアは は、1)手数料水準が過去10年ほぼ およそ6割)、機関投資家が他の投資 変わっていない(パッシブファンドは コンサルタントに乗り換えることは少 過去5年で大きく低下)、2)ファン ない、と指摘した。また、投資コンサ ドの規模が大きくても手数料率は下が ルタントがレーティングの対象である らず、規模の経済による利益が投資家 資産運用会社から贈り物や接待を受け に還元されていない、と指摘した。ま 取っていることなどから、顧客である た、ベンチマークに近い運用をしなが 投資家と利益が一致しているか懸念も らパッシブより著しく高い手数料を徴 示した。報告書では、投資コンサルタ 収しているアクティブファンドについ ントのアドバイスの多くが現在FCA ては、手数料に見合った価値を提供し の規制管轄外であることから、競争監 ているか疑問を呈した。 督機関である競争・市場庁(CMA) こうした状況を踏まえ、報告書で に更なる調査を求めると同時に、今 は、投資家がファンドのコストをより 後、FCAの管轄下に加えるよう財務 正確に把握できる「オールイン」手数 省に勧告することを提案した。 料の開示が提案された。 今回の報告書の指摘については、既 現在、投資家向けの主要情報文書で に認識されている問題も多くそれほど は、運用手数料とさまざまな経費を 驚くものではないという見方もある。 含む「経常経費率(OCF)」が開示さ しかし、 「オールイン」手数料の提案 れている。しかしOCFは、1)証券売 などはこれまで当局や業界が進めてき 買の取引コストを含んでいないのに加 た手数料開示の取り組みより一段と厳 え、2)直近の実績値や予測値である しい基準を求めるもので、今後業界か ため、実際に投資家が負担するコス ら異論が出てくることも予想される。 トと必ずしも一致しない。「オールイ FCAでは、フィードバックなどをもと ン」手数料は、1)、2)の問題を踏 に2017年第2四半期までに最終報告 まえ、予測値でなく、投資家が「実際 書を公表することを予定している。 野村総合研究所 金融 ITナビゲーション推進部 ©2017NomuraResearchInstitute,Ltd.Allrightsreserved. 注目される米国版レギュラトリー・サンドボックス、フィンテック免許の議論の行方 米国の連邦銀行監督機関の1つ、通貨監督庁 とを決定した。ただし、OCCのカリー長官は、 (OCC)は2016年10月、同庁の金融イノベー パイロットが消費者保護などの規制に抵触しても ションヘの対応能力を向上させるためのフレーム 罰則を受けないようなアプローチは支持しない立 ワークを公表した。フィンテック企業が銀行規制 場を明確にしている。 の枠外で台頭する一方、銀行とフィンテック企業 2)については、12月にフィンテック企業向 の提携が増えており、そうした状況に対応したも けの特別免許制度を導入する方針を明らかにし、 の。同庁が掲げる「責任あるイノベーション」を 報告書を公表した。報告書では、特別免許でも安 推進するための専門部署の創設を軸とし、銀行や 易に基準を緩めず、他の国法銀行と同等の高い安 フィンテック企業との対話チャネルを拡充させた 全性や健全性を求める姿勢を示した。資本、流動 り、OCCスタッフのイノベーションに対する理 性、コンプライアンスリスク管理など、免許取得 解を高めるための施策などが盛り込まれた。 の要件の概略を提示し、コメントを求めている。 一方、OCCは、フィンテック企業などが主張して フィンテック企業向けの連邦銀行免許が注目さ いる、1)英金融行為監督機構(FCA)のレギュラト れる背景には、多くのフィンテック企業が、サー リー・サンドボックスのような、革新的な商品の導 ビスを展開する州ごとに貸付業や送金業などの免 入に際して通常の規則をそのまま適用しないで試す 許を取得するか、銀行と提携してサードパーティ ことができる実験場の提供、2)フィンテック企業 業者となり各州の規制を回避するか、の二者択一 向けの特別な国法銀行免許の新設、については慎重 を余儀なくされていることがある。前者は州ごと に検討を進めている。OCCの掲げる「責任あるイノ の免許取得や規則遵守のコストが大きく、後者は ベーション」には、銀行にとってイノベーションを 法的リスクの懸念がある上、事業をコントロール 受容することは大事だが、同時に、健全なリスク管 しにくいと指摘される。そのため、フィンテック 理を行い銀行全体の事業戦略に沿った形で対応すべ 企業の間には、OCCが一般の銀行ほど規制要件 き、という意味が込められており、そうした堅実な の厳しくない連邦銀行免許を導入すれば、全国に スタンスを反映したものと考えられる。 事業展開しやすくなるという期待もあった。 1)については、今回のフレームワークで、 フィンテック企業向けの連邦銀行免許に関する 銀行が新商品などを導入する前のパイロットに 議論はトランプ新政権下でも続けられる見込み OCCが関与するプログラムを新たに策定するこ で、どのような形で着地するか注目される。 <文責> 金融 I T ナビゲーション推進部 國見 和史 [email protected] Financial Information Technology Focus 2017.1 19
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