教職課程について

なる)、クラス担任的な指導を行うことを目的としている。今後、これ等の問題に対処する
ため、本格的なクラス担任制の採用を検討するべきであろう。
④
進級制について
学問を体系的に学習するという教育的目的の達成のためには、進級制は必要不可欠な制
度である。しかし、大学の大衆化・多様化に伴い、進級要件をクリアーすることができな
い学生が存在することも事実である。現在、選考進級制度を設け、弾力的運用をしている
が、進級できない場合には、自主退学につながりかねない。そのため、この制度を見直す
必要がある。例えば、進級に必要な科目の見直し、あるいは、進級に必要な単位数の引き
下げなどが考えられる。
⑤
研究会について
少人数教育や研究会の重要性からすれば、3・4年次の学生全員に履修を義務付けるか、
あるいは基礎演習、教員指導制度を活用し、学生に履修を奨励する措置の導入について検
討する必要がある。
5 教職課程について
(1)現状の説明
本学教職課程は平成 15 年度に設置され、その運営には教職課程運営委員会が当ってい
①
る。本学で取得可能な教育職員免許状は、中学校教諭一種免許状(社会)と高等学校教諭
一種免許状(公民)である。本教職課程は、法学部カリキュラムとの有機的連携を保ちつ
つ、教師としての情熱と使命感、幅広い教養と高度の専門的知識及び最新の実践的技術と
を兼ね備えた人間性豊かで実践的な指導力に富む教員の養成を目的としている。
平成 17 年度現在、本教職課程を履修する学生は 234 名である。
②
本学教職課程カリキュラムの基本的特徴は、可能な限り理論と実際の結びつきを重視
している点にある。このため 1~4 年次に教職課程の授業科目を段階的・発展的に配置し、
教育内容面での体系的・発展的連続性を保障している。具体的には 1 年次「教職研究」に
おける学生自身の教育・学校経験と結びついた授業の展開、2 年次「教職総合ゼミ」におけ
る我が国で現実に生起している種々の教育課題の発見、解決策の探求、必要資料の収集、
リポートの作成及び発表技術等を個人単位・グループ単位で指導している。こうした基本
方針は、次ぎに述べる 3 年次での「介護等体験」や 4 年次「教育実習」にも一貫している。
③
3 年次での「介護等体験」は、埼玉県教育委員会・埼玉県社会福祉協議会・養護学校・
各種福祉施設等との綿密な連携のもとで計画・実施している。介護等体験のための事前ガ
イダンスでは、十分な時間を取って講義・演習・個別面接・リポート作成などの方法によ
り、現場における体験学習の意義と方法、基本的なマナーと心得、各人の研究課題の発見
と研究テーマの設定及びリポート作成の方法等に関するきめ細かな指導を行っている。現
場での体験終了後に、各自設定した研究テーマに関するリポート提出を義務付けている。
④
教育実習に向けて、3 年次から 4 年次にわたり合計 4 回行う「教育実習事前指導」では、
24
大学での理論的学習と学校現場での実践的学習とを結合することの意義を明確化すると共
に、この延長線上に 4 年次での教育実習を計画し、実施している。実習校での実習に際し
ては、各自が具体的な研究テーマを設定するよう指導し、研究報告を義務づけている。ま
た、教育実習を全員が終了した時点で「教育実習事後指導」を合計 10 時間実施している。
ここでは学生各自が研究テーマに即して発表を行い、参加者全員で討議し、教員側から必
要な指導を施し、その結果を踏まえて各自が最終リポートを作成し、提出している。
⑤
本教職課程が設置されて 3 年目の本年度、本課程を履修し、教育職員免許状を取得す
るに至った学生は 29 人である。このうち今年教員採用試験を受験したのは 11 人である。
なお現段階で、平成 18 年度に教員採用試験受験を目指す学生は 16 人で増加の傾向にある。
(2)点検と評価
①
「介護等体験」についての現場指導者(校長・施設長)による本学学生についての評
価はきわめて良好であって、高齢者・障害者に関する理解の促進が顕著に認められる。
②
本学教職課程の最終段階に位置づけている教育実習(平成 17 年度)に関する教育実習
校側からの評価は、5 段階評価中の 5 段階が 12 人(40.0%)、4 段階が 13 人(43.3%)、3
段階が 2 人(6.7%)、2 段階が 3 人(10%)、1 段階は皆無である。なかでも「5 段階」と「4
段階」の合計は、30 人中 25 人で 83.3%に達しており特筆に価する。
これら実習校(殆どは出身校、一部は協力校)からの評価は、正しく一種の「外部評価」
なのであって、大学としても大いに注意を払ってきたところであるが、第一回の実習生と
して満足すべき成果である。例えば、実習校から「評価 5」を与えられた学生については、
「実習期間中、朝早くから夜遅くまで、着実に実習生としての勤めを果たした。近年稀に
見る立派な実習態度であった(松戸市立中学校)」
、「よく努力し充実した実習であった。教
え子の成長に感激した。授業以外にも学校行事、清掃、部活動などに参加した(富山県立
高校)」
、
「教諭による指導を素直に受け入れ、すぐに改善する態度が見られ好感がもてた(新
潟県立高校)
」、
「毎朝 7 時過ぎには登校し教材研究や資料準備に取り組んだ。自作プリント
の作成、学活や給食、清掃指導、昼休みのふれあいなど、どの面でも積極的に生徒の輪に
入った。有意義な教育実習を通して、教員になろうという決心を固めた(いわき市立中学
校)」などの評価が寄せられている。殆どの学生が教育実習を通して実践的指導力の基礎を
確実に習得し、人間的にも大きく成長した事実は教育実習の事後指導でも追認できた。
しかしながら一方で、数的には極少ないものの、一部の学生について専門的知識や一般
教養面での学力の不足、一般常識や基本的マナーの不足、教育実習に対する熱意や自覚の
不十分性等が、実習校側から指摘されている。
③
学生の教員採用試験受験準備支援については不十分で、新たな対策が必要である。
(3)将来の改善・向上に向けた方策
本学として初めての教育実習や教員採用試験等の結果を踏まえて、教育実習生の選抜基
準、特に教育実習生としてのミニマム・エッセンシャルズとは何かを改めて見直す必要が
ある。長期的には学力不足の学生が一部存在するこの現状をどのようにして改善していく
25
かが課題となる。一方、喫緊の課題としては、教員採用試験対策に必要な情報の幅広い収
集活動の展開、採用試験準備のための講座開設や模擬試験の導入などがある。さらに、「教
職研究」の授業等における教職に対する熱意と使命感を培うための授業の工夫、一人ひと
りの学生について総合的な理解を促進するための大学全教職員による協力体制の構築が必
要である。
26